須賀京太郎の朝は早い。
父親が単身赴任で家を空けており、母親もそれに合わせて出ていったのだ。
家事の一切を自分の手で熟す必要に迫られた京太郎は、意外にも家事をしっかりと覚え、それ以外は自由気儘な一人暮らしを満喫しているのだった。
京太郎「そろそろ来る頃かな」
京太郎の呟きとほぼ同時に、ガタンと玄関のチェーンの音が響く。
ガタン。ガタンガタン。ガタガタガタガタ。
「中に入れてよぉー!京ちゃーん!」
鼻声涙声の叫びが、早朝のご近所に大変な迷惑である。
尤も、ご近所さんたちは一週間、二週間程で慣れてしまっており、いい目覚まし換わりなのだが。
京太郎「はやり姉、別に来なくてもちゃんと起きられるから、大丈夫だって」
はやり「でもダメなの、チェーンなんかしたらイケないって言ってるよね?」
京太郎「しないとはやり姉やユキが入ってくるだろ?和に怒られるのは俺なんだから」
はやり「またはやり姉って呼んだの!?はやり姉じゃなくてはやりん、はやりんって呼ぶんだゾ?」
京太郎「キッツ」
はやり「キツくないよ!」
「また京太郎君に迷惑をかけてるんですか、姉さんは…!」
京太郎とは十以上も年の差があるのに、見た目は京太郎と比べ物にならないほど小柄で童顔、脳が蕩けそうな甘い声の幼馴染。
その肩を掴むのは、はやりの妹。
京太郎と同い年の幼馴染、和だった。
和「昨日あれほど言ったのに…」
はやり「じゃあ和ちゃんは京ちゃんの寝顔とか、見たくないのかな?」
和「ごまんと見てきましたから、今更ですね。膝枕してあげると甘えてきますし」
和「一緒に寝たことだって何回もありますから」
はやり「!?」
京太郎「やめろ和、その暴露話は俺の心に突き刺さる」
和「とにかく!姉さんはいい年した成人なんですから!年の差の開いた子より、もっと成人した男の人を探してください。…そういえば、ユキは知りませんか?」
京太郎「ユキなら昨夜一緒に寝たぜ」
怖いテレビを見て、怖い夢を見たんだってさ──そんな京太郎の声を聞く前に響く、はやりの羨む声と、和の蔑む声。
ユキちゃんだけずるいよ、私も一緒に寝たいな♪とノーブラで薄着のおもちを腕に押し当てられては、京太郎に断る術もなく。
そして、これが須賀京太郎と幼馴染たちの、大体代わり映えしない朝の光景であった。
最終更新:2019年10月09日 10:04