「京太郎様!」
嬉々として自身を呼ぶ声に、須賀京太郎は何事かと振り向く。
様付けで呼ばれるほど偉い立場ではないのだが───
「あ、えーっと……神代さん?」
「神代さんなんて他人行儀な呼び方をなさらず、小蒔とお呼びください」
「………流石に、呼び捨ては…」
都会の真ん中で、都会に迎合しきった金髪の青年と、都会には似つかわしくない巫女装束の美少女が、間の抜けた会話を交す。
数日前、麻雀の団体戦の日程の最中に、京太郎は道に迷ったこの娘を助けた。
その日に、迷ったり困ったりしたらと伝えたメールアドレスではあるが、メールアドレスは専らその日に何があったとか、永水の巫女たちが何をしたとか、そういうのを伝えるツールと化していた。
霞さんが怒りますよ、と京太郎は巫女装束の姫を送り届けると提案し、小蒔も喜んで受けきれる。
そして、それを見つめる四人の巫女──
小蒔が一度の邂逅、一度救われただけで運命の人と乙女の如く語る男を見定める、厳しく冷たい眼差し。
無邪気に甘えようとする小蒔を受け止め、嗜めながらも、柔らかな雰囲気が変わらぬ男。
男慣れしていないとはいえ、神代の姫が心から甘えようとする相手──
神代小蒔がホテルに帰ったとき、仲間たちは警察に職質を受けており。
それを良いことに、小蒔は京太郎に甘えまくっていて。
押し付けられるおもち、鼻を擽る汗と美少女の匂い、無垢な好意に必死に耐えようとする京太郎。
巫女たちが帰ってくるまで、京太郎は果たして耐えられるのか──
最終更新:2020年04月06日 22:47