京太郎といちゃいちゃしながらも、一筋の不安を拭い切れずにいた、瑞原はやり。
京太郎と一夜を過ごし、彼の胸の中で心ばかりのマーキングをしながら、携帯端末で清澄高校麻雀部のメンバーを確認して。
ああ、何ということか。
下手をすれば恋敵になっていた少女の影に、はやりは一抹の嫉妬を覚える。
童顔で、爆乳で、低身長で、同級生。
はやりをブラッシュアップしたようなスペックの娘の存在は、はやりに不安の影を残す。
だが、そこはプロ。
ならばと不敵に微笑むと、京太郎の鼓動を子守歌代わりに眠りについた。
和、咲、優希の三人が、部内での軽い対局とはいえ、京太郎に敗れる。
京太郎はラッキーだ、勉強のおかげだなと喜んでいたが、三人──殊更和には解せないものが感じられた。
見た覚えのある打ち筋、見た覚えのある流れ──
その打ち筋の答えさえ分からないまま、答えを導く術さえ見つからぬまま、和はただ変わりつつある少年に、幾ばくかの違和感と仄かな恋心を抱いていた。
瑞原はやりは牌のお姉さんであった。
であった、という以上、今は違う。
出会い、恋をし、焦燥し、結ばれ、愛の証を宿し、それでも尚童顔は変わらないはやりだが、問題はそこではない。
孕んだはやりの姿が、あまりにあまりだったのだ。端的に、性癖を歪ませかねなかった。
だが、彼女の後継となる人材など──
そこで、はやりは一人の恋敵を思い出す。
彼女が変わっていなければ、或いは。
周囲の目もあるため、話し合いは京太郎も同卓の上で須賀家にて行われた。
構いませんよ、と桃髪の美女は容易に頷いて見せた後で、しかし、と付け加える。
学生時代に恋心を抱いていた相手を、横から掻っ攫った相手が妊娠しているのを見て、妬ましさが蘇ったか。
自分も一緒に住まわせて欲しい。
願わくば京太郎との子を孕みたい。
結婚しろ、籍を入れろ、そんな事は言わないから。
だから──
はやりの手前、京太郎は何も言えない。
だが、はやりは京太郎が認めるなら構わないと答える。
恋も愛も大切だが、それと同じぐらいに麻雀のことも大切にしているのは、はやりらしく。
それなら京太郎も構わないよと言って。
須賀京太郎は果報者だと自分を鑑みる。
原村和、瑞原はやり──二人の最愛を一身に受けながら、須賀家の夜は過ぎていく。
最終更新:2020年04月06日 22:48