「今日はカッコ悪かったよね」

『俺はそうは思いませんよ』

「京太郎くんは優しいもんね」

『はやりさんが一生懸命なのは判りますよ』

ベッドに寝そべりながら、情けないと分かりつつも敗戦の泣き言を連ねる。
電話口の相手は、どうやら今日の自分もテレビで見ていたらしい。
優しい言葉に胸が痛み、電話越しの声に愛しさが溢れ、不安に塗れた心が触れ合いを求め。
お酒という気分でもないし、車を飛ばしても気分は晴れそうにない。
明日は土曜、体調不良由縁の敗戦と言っていたこともあって、仕事は休みで。

「京太郎くんに会いたいなぁ」

『俺も会いたいですよ。みんな合宿だけど、俺は男だから参加できないんです』

「明日は出掛けたりしないの?」

『しませんよ。家でゆっくりしてます。両親が旅行に行ってますし、久しぶりに一人ぼっちですね』

「じゃあ、今から京太郎君の家に行っていいかな?」

好都合という訳ではないが、はやりと京太郎が二人きりで過ごせる時間は稀有である。
良いですよと答える声に、はやりはやった!と喜び。
すぐにお泊りの準備をして出掛けた。
沈んでいた気持ちがあっさり浮かぶ辺り、現金だなぁとひとりごちながら。
しかし、停める場所の関係で車で行くわけには行かず。
そそくさと駅に向かい、京太郎の待つ駅への片道切符を買って、新幹線に乗り込んだ。

須賀家の一室、京太郎の部屋で。
ベッドにもたれ掛かる京太郎の膝を枕に、はやりは泣き言を言い切り、甘やかされていた。
シャンプー仕立ての長髪を梳くように撫でられながら、京太郎は優しくはやりを受け入れてくれた。
一頻り泣き言を吐き出し終えた後は、逆に京太郎の頭を撫でてやる。
仕方ないとはいえ、致し方無いとはいえ、そしてはやりにとっては棚からぼた餅といえ、部活仲間たちと同じように出来ないのは、確かに寂しいものがある。
その寂しさを、自分にだけ打ち明けてくれた事が、はやりにとっては何より嬉しかった。
座っている京太郎の頭を胸に抱くようにしながら、思いの丈を詰め込んで。

「ね、京太郎くん?」

「はい?」

「明日は、二人で麻雀の勉強、しよっか?」

「良いんですか?」

「二人で麻雀の勉強をして、一緒に食事を作って、一緒にゆっくりしようね」

「はい、勿論!」

一つのベッドに並んで寝転びながら、二人は穏やかな時を過ごす。

次はもっとかっこよくて、可愛いはやりん(見せてあげるから。
だから、今は元気を分けてね?

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2020年04月06日 22:48