お姉さんの名前は瑞原はやり。そして幼馴染の弟分の名前は須賀京太郎。
極普通の二人は極普通の出会いをし、極普通の初恋をしました。
でもただ一つ違っていたのは、奥さまは麻雀プロだったのです!
「京太郎くん、もっとぎゅーっとしてほしいなっ♪」
寝巻き姿の童顔美女がねだると、少年は苦笑しながらも抱き締める力を強くする。
甘い匂いと、洗いたての髪からのシャンプーの匂い、嬉しそうな声と合わせて、毎日のハッピーセットのようだなと、少年は苦笑して。
「はやり姉さんは成人してる、立派なプロ雀士なんだろ?甘えん坊でいいの?ファンもかなりいるんだろ?」
「京太郎くんといる時は、甘えん坊の女の子でいさせてほしいな」
「俺もはやり姉さんに甘えたいんだけどな」
「え、甘えてくれるの?いいよ!沢山甘やかしてあげちゃうからね!」
何して欲しいの?膝枕?耳かき?耳舐め?
思いっきり甘えてほしいなっ!
はやりの声に、少年──京太郎は、膝枕と耳かきをねだる。
麻雀プロとして忙しい日々を送る幼馴染に無茶は言いたくないが、それでも彼女が恋人を作るまでは、初恋の人に甘えたかった。
というか、童顔巨乳美女の長年に渡る甘やかしと甘えっぷりに完全に歪められたか、生半可な美少女では恋愛の対象になることなど無くなっていた。
なお問題の女流プロ雀士は、京太郎と結ばれて嫁ぐつもりで日々を過ごしている。
ショタコンだのなんだの言われていたが、その頃から彼を愛で続けて、愛でられ続けて、完全に京太郎だけの女なのだ。
「ねぇ京太郎くん、早くはやりを恋人にして欲しいな?」
「アイドルがそんなこと言っていいの?」
「はやりは、京太郎くんだけのアイドルだよ?京太郎くんだけのはやり、京太郎くんだけのアイドル、京太郎くんだけの女──ずっと好きだよっ」
「毎晩言ってるよね…」
こそこそと耳かき棒を動かしながら、はやりの声に熱が籠る。
通算で百を超える告白だが、はやりの想いに翳りは見えない。
『はやりおねえちゃんとけっこんする!』
『じゃあ、はやりも京太郎くんと結婚するねっ!』
幼い頃の約束は、二人の胸に。
今しばらくは、この距離感で甘えて、甘えられて、いちゃいちゃしていたい二人だった。
最終更新:2020年04月06日 22:48