『京太郎は甘えん坊だねぃ』

『いいよ、咏お姉ちゃんにはどれだけでも甘えてねー』

『そう、咏お姉ちゃんと結婚。……いや、私は年下の男の子に粉かけてどうするんだ、って話だよ……』

『ああ、約束だよ。京太郎が立派な男に育ったら、結婚でも何でもするよぅ』


「…………なんて夢だよ……」

三尋木咏は寝起きに頭を抱え、嘆息一つ。
少し前に再会した年下の幼馴染は、なるほど立派な体躯の好青年に育っていた。
インハイの実況後、偶然に再会した幼馴染に抱き着いてしまい、周囲が凍りついて。
それでも懐かしさと愛おしさが限界突破して、散々に語り散らかし、連絡先を教えて──

「うぁぁぁぁ……絶対にからかわれるやつじゃん……」

熱を持った顔が、しばらく元の色に戻らないだろうと自覚しながら。
そして何より、抱き着いたときに受け止めてくれたがっちりした体躯、抱き返される時の強い力、明るく優しい笑顔。
自身の矮躯があれに抑え込まれ、身動きも出来ないぐらい情熱的に抱き締められて、耳元で何回も好きだよと言われたら──
どこぞのトッププロのような豊かな胸はないが、それでも幼馴染の少年は、約束を覚えていて、守ってくれるだろうか。
携帯端末を操作してニュースを確認すると、自分が幼馴染に抱き着いている写真が一面に写っていて。
困ったねぃ、と呟きながらも。
その童顔が、女の色に彩られた微笑みに満ちていることを、咏はまだ気付いていなかった。

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最終更新:2020年04月06日 22:49