「むぅ……やっぱり育ちすぎだねぃ」

「え?咏姉が育ち過ぎって…?」

「私じゃないって。京太郎がだよ。親子に間違えられたりするしねぃ……」

喫茶店の一角、麻雀のトッププロが男と二人で茶を飲んでいるという絵面は、周囲の人間には何とも言えないものがあった。
一部の女流トッププロのせいか、麻雀での強さを得るために恋愛などの一切を切り売りしていると言われる時勢。
一面記事としてスクープにしたいという願望も無いわけではないが、その一方でトッププロが男性とデートしている姿を黙って応援してあげたくもなるのだ。

「咏姉より小さいのも結構いるしなぁ。まだ育つ可能性もあるけどさ」

「でも小学生や中学生ではやりちゃんより大きい娘もいるんだろ?世も末だねぃ」

「…………それもどうなんだろうな」

「京太郎のとこにも一人いたじゃん?あのピンク髪の子」

「和か。和もなんか育ったとか言ってたな」

からからと笑う京太郎は、気付かない。
明確に重圧が増し、一瞬とはいえ殺気まで迸った咏に。
やっぱり京太郎も大きいほうがいいのか。
あんな贅肉の塊、肩が凝るだけ、邪魔になるだけなのに───

「咏姉は咏姉だろ?」

「……そうだねぃ」

「別に胸が全部じゃないさ。……さってと、待ちも結構増えてきたし、行こうか?」

「買い物だぜ?荷物持ちは頼んだよ?」

「任された」

二人が席を立って並ぶと、なるほど身長差がヤバいことになっている。
とはいえ姉としての威厳を保とうとする咏と、彼女を立てる京太郎の姿は微笑ましくて。


インターネット掲示板の咏のファンたちの集うスレッドに、祝福の言葉が溢れることになるのだった。

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最終更新:2020年04月06日 22:49