(───でけぇ)
初夏の鹿児島の、名も無き砂浜で。
京太郎が真っ先に抱いた感情はソレだった。
切っ掛けは数日前になる。
『京太郎は衆道でも嗜んでるんですかー?』
初美の辛辣な声が、お役目帰りの京太郎に突き刺さる。
『いえ、俺は真っ当に青少年ですから。可愛い女の子や綺麗なお姉さんが好きですよ』
『その割には姫様や霞ちゃんには手出ししないんですねー?』
『出せるわけないじゃないですか。若い身で自殺願望を抱きたくないです』
『………これは重症ですねー』
幼い、明らかに童女そのものの身体を必死に動かしながら、初美は溜息をつく。
『ショック療法もやむを得ませんねー。……次の休息日にみんなで海に行く約束をしていたのですが、私とはるると巴ちゃんは行けなくなりましたのでー』
『何ですかその雑なフリ。俺はその日はお役目があるんですが』
『京太郎がお役目を休みになった代わりに私達が入るのです。──で、姫様と霞ちゃんのボディガード役を任せますからー』
『………は?何ですかそれ?』
『姫様も霞ちゃんもとっても楽しみにしてましたよー?……逃げ道はないのです』
『………何だよそれ…』
雑いフリにも程がある。
とはいえ、小蒔の父にも霞の父にも善き也と認められてしまっては逃げられない。
精々理性を総動員して頑張ろう、と思い切ったのが昨日の事。
霧島の私有地のプライベートビーチに京太郎、小蒔、霞が来たのが今日であり。
(──
霞さん、またデカくなってる)
(──霞さんの隣だからまだ大人し目だけど、姫様もヤベー……)
水着が水着の役割を果たせてないとは、漫画だけの話かとも思ったが。
とはいえ、感想を期待している二人に、不埒な視線を向け続ける訳にもいかない。
息を吸って。覚悟を決めて。
「二人とも、すげぇ綺麗です。そこらの男なら、秒速で悩殺しきれるほどに」
「なら、京太郎様のことも悩殺出来ておりますか?」
「なぜ私と姫様の二人だけが京太郎君と海に来たのか。何故常日頃から清楚たれ、静やかタレと口を酸っぱくして言っているお父様たちが、このような格好を許したのか」
──分かりますよね?
──分かるわよね?
二人の目に、情の熱が籠る。
或いはそれは、京太郎が必死に逃げ続けた答えを求めての姿かも知れなかった。
一歩、また一歩と詰め寄る美女二人に、京太郎は────
最終更新:2020年04月06日 22:49