夕暮れの部室。
いつもは明朗な笑顔を絶やさぬ少年が、童顔の美少女を相手に、意を決したかのような迫真の顔をしている。
美少女は、幼い顔付きと低めの身長に似合わぬ豊かな胸を抱くようにしながら、喉を鳴らした。
告白されたらどうすれば?
襲われても悦んでしまいそうで。
彼だけのものだと刻まれたら、もう抗えないだろうし、抗うつもりもないけれど…!
こくりと幾度目かに喉が鳴った直後。
「頼む和!パンツを見せてくれ!」
「無理です。履いていませんから」
「そっか。……時間を取らせて悪かったな」
「………ってそれだけですか!?」
立ち去ろうとする背に追い縋りながら、美少女は媚びるような眼差しを向ける。
無理なものは無理だ。
パンツなど履いていない。
スカートの下には肌色がモロに見えるだろうから。
だけど、それだけとはどうなのか。
好きだとか、結婚してくれとか、俺の子を産んでくれとか、いっそ孕ませてやるとかでもいい。
なぜパンツなのか。
「なんでパンツなんですか!?」
「履いてなさそうな娘が妙に多いからだよ」
「否定できません…!」
「和も履いてないんだろう?」
「はい。優希や穏乃、玄さんも履いてませんよ」
「マジかよ同志に見せてもらおう」
「ダメです!須賀くんが見ていいのはここにいるでしょう!」
「ちょ、和!?」
それは、原村和渾身の叫びだった。
自分の全てを曝け出すから、自分の全てを捧げるから、だから──他の娘に靡かないで。
「どんなパンツでも履いてみせます!どんな酷いことでも受け入れてみせますから!だから……」
潤む眼差しを拭われながら、息を一つ。
ファーストキスを捧げる相手が彼でよかった、というトチった考えを彼は嘲笑うかのように距離を離して。
「パンツ履いてないのか…」
魂からの諦念だった。
最終更新:2020年04月06日 22:54