京太郎と穏乃が急接近した翌夜。

(京太郎くん、凄く我慢してたのです)

恋仲の自分と姉に対して、真摯であろうとしたのか。
それとも、穏乃が京太郎を焦らして手出しするように仕向けたのか。
深夜の松実館を二人で歩きながら、玄は愛おしげな眼差しを隠そうともしない。
汗や、様々な液体で穢れた身体さえ、今は愛おしく思える。
だが、このまま寝るには不快感も強い。

(きっと、京太郎くんはお風呂でも……)

普段は穏やかで優しい京太郎の、強すぎる情欲。
一身に受けて、孕んで欲しいと頼まれ、嬉し涙を流しながら快諾したのはどれだけ前か。

「すみません玄さん、我を失って酷いことしちゃって…」

「ううん、いいんだよ。私は何でも受け入れてあげるから。辛いことも、苦しいことも、悲しいことも、嬉しいことも、全部…」

着替えを持ってはいるけれど、互いにベトベトの服を羽織った程度の姿で。
特に、京太郎の臭いを全身に纏った玄などは、人に見られたらどうなることか。
──だがその一方で、他者に見られれば京太郎との関係をはっきりと知覚される、その利点をも考えてしまうのが玄だった。

(ごめんね、みんな……私は欲張りだったのです…)

「お風呂で、いっぱい洗いっこしたいな」

玄の手が強く握り返される。
それを了解ととった玄は、笑みを深めて──

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最終更新:2020年04月06日 22:54