松実家には、二人の子がいる。
片や母親譲りの朗らかさとスタイルを誇る、中学生とは思えないほどの美少女。
片や母親と父親を折衷したのではと思うほど、両親の良い点を細々と引き継いだ少年。
二人の母親は『別人である』。
姉妹で同じ人に焦がれ、父親は姉妹を共に愛してしまったのだ。
複雑な家庭環境ながら、少女は自分の境遇を恵まれたものだと信じて疑わないし、実際に恵まれているから仕方ない。

目下の悩みは二つ。
未だに新婚気分で毎夜イチャつく三人の親と、可愛い義弟のことである。
両親の愛が深いのは喜ばしいことだが、あの父親に抱かれていると考えれば羨ましくもなってしまう。
理想の男はお父様、なんて時代錯誤かも知れないが、あの父親に寵愛されて育つのだ。
クラスメイトや同級生など鼻で笑うほどの格差がある。
むしろ問題は最愛の義弟である。
義母の玄ママ曰く父親似で脇の甘いところや優しすぎるところがあり、その上で父親譲りの高身長イケメンに育ちつつあるものだから、そりゃあもうモテる。
モテるといっても、少女のように同級生にではない。
父や母の友人知人たちなのが問題なのだ。
義弟が理想の女性に母親たちのような母性的で包容力のある人と告げた日などは、もう戦争かと言わんばかりに揉めた。

(胸が全部じゃないって人と、まず外面から母性的であるべきだって人と……)

嫁ぎ先に困ったアラサー、アラフォーとはあんなにもおぞましいものなのか。
幾度目かの溜め息の後、少女は階下で論争している声を聞きながら──瞠目する。
あの声は和さん(和おばさんと言ったら怒られる)か、憧ねーさまか。
話を聞くに、父が和さんにフラレたことが切っ掛けで宥ママと玄ママが父と出会い、結ばれたとか。

「新しいママ、増えなくていいもんね「」

眠たいなーとベッドに仰向けになると、存在を高らかに主張する双丘。
久しぶりに父とお風呂に入りたいな、と思いながら、彼女の穏やかな時が過ぎていった。

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最終更新:2020年04月06日 22:56