須賀君の家のお風呂に入らせて貰って。
寝間着代わりに須賀君のシャツと短パンを借りて。
クーラーの効いた須賀君の部屋で、須賀君のベッドに寝転びながら、須賀君愛用の薄い掛け布団に顔を埋めて。

(須賀君の寝息……心音……体温……)

かあっとなる頬を抑えて。
高鳴る胸を撫でて。
別の部屋で寝ると言っていた須賀君でしたが、不幸にもクーラーが壊れていたとかでこの部屋に戻ってきました。
床に気休め程度の布団を敷こうとするのを押し留め、二人なら一緒に寝られると思考を誘導し、同じベッドで眠りについて。

(こんなの、妊娠しちゃいます…!)

無論咲さんや優希のような無垢さはあひませんし、妊娠のメカニズムも存分に知っていますが。
それでも今なら須賀君の子供を授かれます。
身体を反転させれば、ファーストキスはすぐそこにあります。
ファーストキスだけではなく、十回ぐらいしても許される気さえしますね。
キスして、キスして、キスして、胸を押し付けて、キスして、キスして、キスして──
もう我慢できません。
いざ決戦とばかりに私は身体を反転させて。

そこには須賀君の後頭部がありました。
寝返りにしても間が悪すぎます。
しかし好機には違いなく。
私は須賀君の背中に抱き着き、腕を回して。

高鳴る心音が、掌に伝わって。
回した手に、手が重ねられて。
それだけで、私は理解しました。
手と手が重なるように、思いが重なったとを
これはもう、大勝利間違いなしです。
とはいえ急ぎすぎて失敗するのはいただけません。
今晩はこれだけで満足としましょう。


翌朝。
家に帰った私を待っていたのは、両親による質問攻めでした。
母には攻め切らなかったことを咎められ、父は須賀君への評価を上方修正し。
私のスマートフォンの待受が、いかがわしくないほうのツーショットになりました。

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最終更新:2020年04月06日 23:04