高校最後の夏休みが終わって、二週間。
人生最良の日であったことは間違いないのだけど。神様も意地が悪い。
最良の日が来るのだったら、もう少し気を使ってくれてもいいだろうに。
「そう思わない、須賀君」
「-----すみません」
「夏休みの最終日に告白されたって、もう遊ぶ時間ないじゃない」
「-----いやもう本当にすみません」
まあでも。
あのまま夏休みの最後どころか、きっと勇気を出せずに卒業を迎えていたであろう私が
須賀君を責める権利なんてないのは百も承知なのだけどね。
でもまあいいじゃない。
私は彼女で、彼は私の彼氏なのだから。
そういう、関係になったのだから。
「来年------」
「ん?」
「来年の夏休みは、ずっと一緒にいますから」
だから許してください、って。
そう笑う彼の微笑みに、もう何だかどうでもよくなっちゃった。
「私、来年東京よ?」
「何とかお金を貯めますから」
はぁ。もう。
仕方ない。
いいわよ。私だって鬼じゃないもの。郊外でもいいから、ちょっと広めのお部屋を
探しておくわよ。仕方ないわねぇ、本当に。
風が吹く。
その涼しい風が火照った頬にあまりに気持ちよくって、思わず口元を綻ばせた。

カン

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最終更新:2020年04月06日 23:10