暑さと涼しさが拮抗しだして。
セミの求愛が鈴虫やコオロギの声に差し替わって。
三年間、情熱の全て──とまでは行かずとも、大きなウェイトを占めていた麻雀で、奇跡のような栄冠を手にして引退して。

(私って、ほんとに卑怯よね)

悪待ちは、何も麻雀だけに限らない。
頼れる部員たちの入部を待ったのも、分の悪い賭けのようなものだし。
───その分の悪い賭けに勝たせてくれた人への思慕が実るか否かも、賭け。
ただ、この賭けは勝てる自信があった。
眩いばかりの才覚と外面に恵まれた後輩たちは、仲が良い。良すぎるのだ。
だからこそ、男の告白を誰が受けたにせよ、絆を歪にしかねないソレを受けるとは思えなかった。
後は、傷心の男に近付いて。
ただ慰めればいい。受け止めればいい。
傷付いた心からスルスルと忍び込み、侵せば、もう逃れる術はないのだ。

麻雀が辛い?居場所がない?──なら逃げればいいじゃない。
逃げて、そこにいるのは間違いなく私。
貴方に依存しきってしまった私に、今度は貴方が依存する番でしょう?

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最終更新:2020年04月06日 23:11