「京くん」

「京太郎くん」

「京太郎様」

「旦那様」

───あぁ、どうしたことか。
親の帰郷に付き従って九州に行く度、幼馴染からの呼ばれ方に感情が籠もるようになっていて。
それでも、自分が斯様な大和撫子に慕われているということを理解出来てからは、自信をしっかと得られる所以となり。

「旦那様、会いたかったです!」

夏のインハイ。
部活の仲間といるところに斬り込んで来たのは、年々…否、日々美貌とおもちに磨きをかけているような、巫女装束の『幼馴染』。
飛び込んできた影を受け止めると、柔らかさがダイレクトに感じられる程のおもち感。
犬のように顔を押し付けてくる美少女にニヤけていると、その美少女を追ってきた四人も恭しく頭を垂れて。

殺気を増す一年生の三人、呆れる二年生、興味深いと笑む三年生。
あぁ、と気が付いたように声を掛けて。

「多分みんなも知ってると思うけど──俺の幼馴染で、一応親同士が決めた許嫁の小蒔と、妾の四人だ」

あ、と聞こえたのは、誰の声か。
殺気が、震えるような殺意になった事に、京太郎は幸運にも気付かず。

「京ちゃん……幼馴染って、何人いるの…」

地の底から響くようなおどろおどろしい声。

「えーっと……十人ちょっとかな」

真の幼馴染の立場を巡る争いが、始まる──

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最終更新:2020年04月06日 23:15