「あ───」

高身長に金髪、見紛うはずもない横顔。
かつてパンツを見せて欲しいと乞うた男だ。
何故恋仲になったのかと問われても、明確な解答など持ちはしない。有りはしない。
ただ自分に縋り、自分に頼ってきた男に絆され、そして自分がかの男に縋り、頼り、媚び、ねだってのことだ。

「こんにちは、ふく……美穂子さん」
「こんにちは、京太郎さん」

長めのスカートは彼女の誓い。
万が一にも、パンツを他の誰かに見られるなど耐えられない。
自分の下着を見て良いのは彼だけだという、歪んだ貞操の誓い。
差し伸べられた手を取り、慣れた様子で腕を絡め、ゆっくりと歩き出す。
目的などない、ただただ二人きりで歩いているだけで幸せに感じるのは何故だろうか。
歩幅を自分に合わせてくれる男に一層の愛おしさを感じながら、美穂子は幸せなひとときを過ごしていた。

一方、清澄高校の面子は苛立ちを隠せなかった。
戯言と切り捨て軽視した発言が、その実真に迫った懇願であったことを解せなかったこと、そして京太郎が自分たち以外に頼んだのも。
傲慢と揶揄されるやも知れないが、最後は自分たちにまた頼んでくるだろうと思っていた油断も。

「キョウチャンキョウチャンキョウチャンキョウチャンキョウチャン…」
「キョータローキョータローキョータローキョータローキョータロー…」
「スガクンスガクンスガクンスガクンスガクンスガクン…」
「どうしたもんかのう…」

新部長の悩みは、しばらく納まりそうになかった。

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最終更新:2020年04月06日 23:15