『須賀君だって年頃の男の子なのよ、きっとエッチな本の一冊や二冊……ううん、もっと沢山持ってるかも知れないわね…』
親友の言葉を反芻しながら、福路美穂子は隣の恋人の顔をちらりと見る。
確かに、パンツを見せて欲しいと乞われる以外に頼み事をされることも少ないし、時折耳かきされたいとか癒やされたいとかで。
もしかしたら、彼は自分のパンツ以外には興味がなくて、必要なのはパンツだけなのでは?
僅かな疑念が心を歪めて………
「美穂子さん、今日はどうしますか?」
「今日は……そうね、京太郎君のお部屋に行きたいわ」
「……俺の部屋、ですか」
自分の発言の意味に気付いた美穂子が、顔を真紅に染めるまで、然程時間は要さなかった。
で、である。
(そうよね、よくよく考えたら買える年齢じゃないのよね…)
親友に唆されたとはいえ、あまり良いとは言えない推測で彼の部屋をそれとなく探し、彼は窘めるでもなく破顔一笑。
からからと笑いながら、買える年齢ではないこと、美穂子がいるのに買う必要もないと許してくれた。
ベッドに腰掛けた美穂子の太股を枕にし、腹に顔を埋めながら耳かきされる姿に、自分が恥ずかしくなってきた反面。
年頃の、それこそパンツを見せてくれと滾るような熱情(誇張無し)を見せる少年が、エッチな本も無しで、日々を過ごせるのか。
偏見かも知れないが、もしかしたら自分とは別に『そういう』間柄の相手がいるのじゃあないか。
一度不安を覚えてしまえば、耳かきの最中の口数も減ってしまうもので。
「───ねぇ、京太郎くん?」
美穂子は、穏やかな気性の彼女が初めて見せる情熱と独占欲を以て、恋仲の人に媚びた。
『あら、どうだったの?須賀君の家、やっぱりエッチな本はあったのかしら?』
「買える年じゃないからって、なかったわ」
『あらそうなの。あの見た目なら買えそうなものなんだけど』
「それで、変な事を疑った私を許してくれたんだけれど……その、ね?」
『?』
「私、赤ちゃんが欲しいわ。京太郎君──ううん、旦那様の赤ちゃんが…」
『SOA』
最終更新:2020年04月06日 23:16