一「なにか……」
透華「え?」
一「なにか違和感がある……とてつもない見落としをしているような……そんな違和感……」
ザザッ……
透華「違和感ですの?」
一「うん……。見落としちゃいけない、見過ごしちゃいけない、そんな違和感。なんだ……何を見落としてるんだ……?」
すごい……須賀選手……逆転の……ザザッ! ザザザッ!
純「違和感ねぇ……オレにはわかんねぇなぁ」
牌を引く須賀の手付きは洗礼されていて淀み無く。
どこに引っ掛かる理由もない須賀の後ろ姿は。
しかしどうしても、ボクには見過ごす事ができなかった。
食い入るように須賀を観察する。
だが何も分からない。分からないまま、ボクの苛立ちは更に強くなっていく。
実況『ここで須賀選手のリーチだ!』
解説『順調に跳ねましたね。これは須賀選手の独走で決着となるのでしょうか?』
一「…………あ……あいつ!」ダッ
透華「ちょ、一!? どこに行くんですの!?」
実況『直撃! 須賀選手、決勝戦進出を決めたー!』
京太郎「………………」スタスタ
一「待ちなよ」
京太郎「ん? あれ、確か龍門渕の」
一「君、イカサマしてただろ?」
京太郎「…………はい?」
一「今でもどうなってるかは分からないけど、手口は分かった。少しふれただけで何の牌かを読み取って、瞬時に別の牌と入れ換えたんだろ?」
京太郎「………………」
一「まさに神業だ。カメラでも分からないなんて、凄い技術力だけど……ボクは見過ごせないよ」
京太郎「…………。あの」
一「なに?」
京太郎「なにか、証拠はあるんですか? 俺がサマやったって証拠は」
一「…………それは」
京太郎「無いんなら失礼します」スタスタ
一「待ちなよ! そんなやり方続けてたらいつかきっと後悔するよ!」
京太郎「…………そういえば。確か国広一さんでしたよね。イカサマして負けた」
一「……そうだよ」
京太郎「自分がやった事あるからって他人もやってると思うのは、正直どうかと思います。それでは失礼します」
一「…………」
京太郎「そうそう、いつか会ったときに言いたい事があったのを思い出しました」
京太郎「下手くそ」
一「なっ!? お前!」
一「…………見てろよ……! 絶対証拠を掴んでやる!」
最終更新:2020年04月06日 23:18