各々が役目を果たし、揃って夕食を戴き。
小蒔が湯浴みに行き、他の仙女たちも気遣ってか自分たちの部屋に帰って。
霞は、京太郎の為に与えられた離れの部屋で、二人きりの時を過ごしていた。
小蒔が訪れるまでの小一時間限りの逢瀬、
他愛もない雑談の中に紛れた『清澄』の言葉を耳聡く聞き当てて、霞の主は深い溜息。
一日分の疲れがぶり返したと言わんばかりの脱力を、霞は受け入れる。
巫女装束でも隠しきれぬ谷間に、京太郎の頭ごと抱き寄せて。
汗の臭いと、体臭と、気になることはごまんとあるものの、それよりも愛しさが勝る。

「大丈夫、大丈夫ですから。私も、姫様も、旦那様のお側を離れたりしませんから」

金髪を撫でながら、なるたけ柔らかい声を心掛けて。
どれだけ涙を流したか、どれだけ心を摩耗させたか、知る由もないが。
胸の谷間に涙の熱を感じた霞は、一層抱擁の力を増した。
まるで、この男は自分のものだとマーキングするように。
もしくは、私は胸も心も旦那様のものだとマーキングされたくて。

二人きりの逢瀬の最中、京太郎は苦しみ、悲しむと、決まって寝落ちしてしまう。
それは霞や小蒔の温もりに、胸の優しさにら母性に触れたことで、張り詰めた心身が癒やされてのことだった。

「京太郎様は……」
「疲れていたのね、眠ってしまったわ」
「そうですね…」

湯浴みより戻った小蒔は、霞がいっそ妬ましくなるほどの美しさを見せた。
本人にその気はなくとも、庇護欲が湧くような愛らしさと、大人の女と呼べるスタイル、恋が成就していることの幸福さ、穢れから最も縁遠くにあると思われるほどの清らかさが相乗効果を発揮しているのだろう。

だが羨む反面、この小蒔が京太郎と真に結ばれたとき、それさえも清らかさの糧にするのか、それとも反動で淫らな美しさに成り代わるのか、興味は尽きず。

「私は、旦那様の傍らにて同衾します」
「私も、京太郎様と床を共にしたいです」

川の字になるように、二人の美姫に一人の王子が挟まれるかの如く、横たわる。
灯りが落とされ、一つだった寝息が二つになり、三つになるまで、それほど時間は掛からなかった。

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最終更新:2020年04月06日 23:22