「本当にあんたたちは……」
呆れたような声に、明るい笑い声が返ってくる。
青年の太腿を枕に眠る少女と、しがみつくように寄り添う少女の二人の髪を撫でながら。
「どうした?憧も撫でられたいか?」
「………別にいいわよ、撫でられたいってわけじゃないし、また玄を泣かせるわけにもいかないじゃない」
「玄さんは……うん」
太腿を枕にしている少女は、姉が美人で巨乳なのもあってか自身の評価を低く見積もる悪癖があった。
充分に立派な胸──彼女曰くにおもちがあるのに、姉より小さいから出来損ない呼ばわりしたり。
そんな彼女が友人伝に知り合った嗜好を同じくする異性の同志。
打ち解けるまでは早く、心を開くまでも早く、やがて全てを曝け出して愛でられて。
二人の交流は幸せそのものだった。
彼女の姉が、ぬくもりを求めて彼に甘えたりするようにならなければ、だが。
最初は荒れた。荒れに荒れた。
だが、荒れた彼女をたっぷりと愛で、鳴かせ、陥落せしめたのは彼であり、姉である。
自分が一番であれば、という条件の元、姉や友人が恋仲の男と共にあることを許した。
そして、今に至る。
「まぁ、玄さんが一番でさえあれば二番目以降は何人いてもいいって言われたけどさ」
「何をどうやったって一番になれない勝負なんて、意味がないわよ。……精々、ストレス解消とかに付き合ってもらうぐらい」
もっと早く素直になっていれば、この男の一番になれたのか…と考えて、苦笑。
なったところで意味もないし、なろうとしていなかったのが全てだ。
「でも、そうね。三番目か四番目にいて……子供だけ貰うのも、ありかもね」
「そういう言い方は良くないぞ」
「……いいじゃない、少しぐらい。私だって女なのよ?」
これ以上三人の邪魔をするのも悪いと呟き、唇にキスをひとつ。
ファーストキスの相手ぐらいは自分で選びたかったとワガママを通して、立ち上がり。
「ねぇ、京太郎?」
「うん?」
「クロと宥さんの後でいいから、私もあんたの子供……産みたいな」
特大の爆弾だけを相手に押し付けて、足早に帰路に着く。
小悪魔を気取ったつもりなのに、どうしてだろう。
頬の熱さが、やけにリアルに感じられた。
最終更新:2020年04月06日 23:23