夕暮れ頃には小雨だったのに、いざ仕事を終えると雨は強さを増し、強風も相まって見た目以上の肌寒さを感じさせた。
ここから歩いて、もしくは走って帰るのもキツイなと思っていたが。

『そんならうちに泊まりんさい。明日は休みじゃろ、構わんわ』

見ず知らずならともかく、先輩の差し伸べた救いの手を払い除けるほどの度量はなく。
喜んで助けに縋ったのが、運の尽き。

「のう、京太郎?」

風呂上がりの染谷まこは、普段の染谷まこの印象を覆すほどの美人で。

「わしも、おんしが好きなんよ?」

布団が足りぬからと、まこと同衾することになって。

「確かに咲程長い付き合いはないし、和みたいな胸も可愛さもない。優希みたいにガンガン攻めたりも出来んわ」

冬の顔も多分に見せている季節には到底見合わぬ、薄手の寝間着が密着する。
甘い吐息、程々に実ったおもちが柔らかい。

「卑怯やと思うか?……わしはな、わしみたいなのは、こうでもせんと告白も出来んのよ」

染まった頬は、果たして何故か。
初めて緑髪を愛でて、抱き締めて、互いの匂いを胸いっぱいに吸い合って。

翌日。
恋人同士だ!と言わんばかりに腕を組み、京太郎に甘えながら部室に現れたまこと、普段以上に柔らかな微笑みを浮かべる京太郎を見て、部室が阿鼻叫喚になるのは言うまでもない。

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最終更新:2020年04月06日 23:26