「クリスマスですね」 

終業式が済んだあとの帰路。
雪が降るとは思えない、それどころか冬とも思えない暖かな日差しの下。
買い物に行こうとしたら、同じところに用事があると同行することになった同級生が呟いた。

「クリスマスだな」
「ホワイトクリスマスにはなりそうにないですね」
「暖かくて良いと思うけどな」

告白の返事を延期されて暫く。
急かすような真似も出来ず、話題も多くもなくて。
居心地の悪さとだけが内心を蝕みだして──

「これ、私からのクリスマスプレゼントです」

差し出されたのは、一枚の紙。
たった2文字だけが書かれたそれを読んで。
折った紙をポケットにしまい、無沙汰になった手に重なる細い指。
握り返すか逡巡する手を急かすように見つめる眼。

「今日は両親が二人で旅行に行っているんです」
「へ、へぇ。そうなのか」
「でも、クリスマスを一人で寂しく過ごすのは嫌ですよね?」
「昨日カピーと一緒だった俺にそれを言うか」

指と指が重なり、交わり。

「須賀君に、いっぱい麻雀のことを教えてあげますからね」
「まぁうちに泊まるのは構わないけどさ」
「須賀くんのこと、いっぱい教えて下さいね」

喜んで、という声が届いたのかは知らないが。
頬の紅は寒さのせいなのか。 
愛らしさと艷やかさを併せた微笑みに、笑顔を返して見せた。

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最終更新:2020年04月06日 23:33