京太郎インタビューその4
全国大会へとやってきた清澄高校。そしてSK君。
今回から全国大会中の様子を高スパンでお送りする予定の為、インタビューの様子を動画で配信する事となった。
それに合わせて、以前より問い合わせの多かったSK君の素顔の公表についても交渉し、これを受諾。
彼の身内と取材陣しか知らなかったSK君の端正な顔立ちが、今明かされる。
まずは動画配信、並びに素顔の公表を受け入れてくださって、ありがとうございます。
京太郎「はい。といっても、そんなに需要があるとは思えませんけどね。このインタビューって、基本的にうちとかの女子選手達の裏側が知りたい人が見るものでしょうし」
……需要しかないから問い合わせが殺到したのですが……まぁいいでしょう。
京太郎「それで、今回はどんな話をしましょうか」
それではまず気になった事なのですけど……気を悪くしないでくださいね?
京太郎「はい?」
良く来られましたね?
京太郎「? と言いますと?」
いえ、基本的に大会での遠征となると、選手や監督、コーチくらいのもので、それ以外の応援する部員となると、それこそ大手の学校になるのですよね。
京太郎「あ、あーそういう話ですか」
S君一人分にしても遠征費は馬鹿になりませんし、男子となるとまた別で部屋を押さえる必要があるので、それだけのお金を学校から出してもらえたということに……まさか自費ではありませんよね?
京太郎「それは無いですけど……うーんと。聞くところによると、どうやら学校としては元々俺も付いていかせるつもりは無かったそうです。理由はさっき言ってた通りで」
では、何故?
京太郎「俺ももっともな理由だと思ったんですが、部長がそれについて先生方に抗議したらしくて」
部長さんが、ですか?
京太郎「はい。なんでも「何言ってるんですか! S君がいなかったら咲は広い東京で迷子のまま帰って来なくなりますし、優希はエネルギー切れで行き倒れますし、和なんか道行くわるーいお兄さんに連れ去られて行方不明になるでしょーが!!」とか」
後輩達に対する信頼がまるでありませんね……。
京太郎「心配なんだと思いますよ。かくいう俺も同じ所で心配ですから。そんな訳で、応援兼ボディガード兼マネージャーという形で一緒に東京来る事になりました」
成程。
京太郎「咲は東京に着くまでの駅でも何度か迷子になりますし、優希は遠征に思ったより時間が掛かったせいでエネルギー切れて自分で歩かなくなりますし、和は俺と一緒にいる時にも遠目でジロジロ見られてたみたいで、付いてきて正解だったな……とは思いましたね……」
それはまた、予想を裏切らない方達ですね……。
東京に来た事はありますか?
京太郎「無いですねー。今の時代、電車やら新幹線やら飛行機やらでどこでも行けますけど、特別用が無いとそれだけの時間と金を掛けて出掛ける事無いですし」
長野から出た事も無い?
京太郎「いえ、家族旅行とか修学旅行とかではありますけど……、東京方面に行った事は無いかな」
どうですか? 東京に来てみて。
京太郎「圧巻、ですよね。色んな建物が所狭しと立ち並んでますし、何より人が多いのなんの」
初日にして東京の洗礼を浴びましたか。
京太郎「そうなりますかね。で、初日の昨日は遠征ってのもあってみんなは旅館で休んでました」
みんなは?
京太郎「俺も疲れてましたけど、みんな程じゃなかったし、ちょっと休んだらじっと落ち着けなくなって、周りの地理を把握する意味でもと思って散歩したんですよ」
迷子にはなりませんでしたか?
京太郎「旅館の名前やらはメモってたので、地図アプリを開けば場所は分かりましたから、特に問題ということは無かったですね。咲とは違うのだよ! 咲とは!」
それ以上は宮永さんに怒られそうですが。
京太郎「あいつ麻雀絡ませない限りは怒っても大して怖くないですしねー。で、テキトーにその辺をほっつき歩いてたら、「あ! え、S君だ!」って突然声掛けられまして」
目線を入れない素顔の公開は今回が初なのに、掛けられたんですか。
京太郎「ええ。誰だ? と思って見てみたら穏乃……阿知賀女子の高鴨穏乃でして」
阿知賀女子のというと、奈良県代表高校の?
京太郎「ええ。そういや雑誌でそんな高校もあったな、と」
穏乃……というと。
京太郎「あー。まぁ話してる内に思いの外仲良くなった、というか。その時は向こうも礼儀正しくして、「あ、あの! 私麻雀部で、奈良県から出場してる高鴨穏乃って言うんですけど! 長野で清澄高校のS君ですよね!?」って聞かれまして」
前から思ってましたが、物真似上手いですよね。
京太郎「そうですか? それで、そうだけどって返したら、どうやら和の昔の友達らしくて」
ほほう。意外な所に接点が。
京太郎「他にも和の友達がいて、今の和について聞きたいからっつって阿知賀の人達が泊まってる部屋に案内されまして」
ホイホイと連れ込まれてませんかそれ。
京太郎「まー普通なら警戒するとこでしょうけど、毒気が抜かれるというか危機感を持つだけアホらしいというか、これで騙されてたら俺の見る目を一生信用出来ないってくらい無邪気だったんで。大人しく連れていかれました」
それで、連れ込まれてからどうなりましたか?
京太郎「一応俺を連れてくるっていう連絡は事前に入れてたみたいで。部屋に入った時に紙袋を被った人に「ふっふっふ、良く来たのですSK君!」って出迎えられました」
紙袋。
京太郎「頭を覆い隠してた紙袋の穴から長い黒髪が伸びてましたし、他の特徴と阿知賀女子の人ってのと照らし合わせて正体は松実玄さんってのはすぐ分かったんで、指摘したら「はうっ!? な、なんで分かったの!?」って言った後にハッとして「ち、違うよ!? 私は謎の覆面女子高生MK! 奈良県代表阿知賀女子麻雀部先鋒で、旅館を経営してる松実家の次女で、ドラ保有率100%故に阿知賀のドラゴンロードと呼ばれている松実玄ちゃんではないのです!」なんて取り繕い始めまして。隣にいた鷺森さんに「玄。余計な事までバラしてる」ってツッコまれてました」
なんでそんな奇天烈な行動を……。
京太郎「さぁ……? ともかく正体バレバレなのが分かると松実玄さんは紙袋脱いで、阿知賀女子の四人の人と自己紹介しました」
四人、ですか? 五人ではなく?
京太郎「一人は男性慣れしてないとの事で布団に包まってました」
布団に包まって。
京太郎「……まぁ男慣れしてる人ってのは一人もいませんでしたが、特にって感じで。あと監督もいたそうなんですが、その時は席を外してましたね」
それで、その四人と原村さんについて?
京太郎「いえ、和の友達は五人の内三人で、内一人は包まってたので、穏乃と玄さんの二人と、ですね」
玄さん?
京太郎「あー。姉妹で一緒にいたんで、松実さんだと混ざるからって名前呼びするように、と」
阿知賀女子の方と仲良くなるスピードが尋常じゃないですね。
京太郎「俺も結構なものだと自負してますが、向こうも向こうでコミュ強でしたからねぇ……」
彼女等の部屋にいる間はその二人とずっと原村さんについて語ってたのでしょうか?
京太郎「それがそうでもなくて……しばらく話してる内に、話の流れで玄さんが「ええ!? S君、おもちに触った事無いの!?」とか言い出しまして」
おもち?
京太郎「直訳すると女の子の胸の事です」
何故そんな話の流れに……。
京太郎「なんだったかなぁ……。和は今あれだけ大きいけど、小学生の頃から凄かったんだよーって玄さんが語り始めたからだったような」
それで、それから松実玄さんが胸…………おもちについて語っていたんですか。
京太郎「いや、そこからは話すぐ終わったんですよね。……いや終わらせられたというか……」
というと?
京太郎「俺が触った事ないです、と返したら玄さんが「それは勿体無い! 大丈夫なのです! おもちは友達! 怖くないよ! ほら!」とか言って、俺の手を掴んで自分の胸を鷲掴ませまして……」
え。
京太郎「俺が呆気に取られて何秒かぐいぐいさせられたら、玄さんも自分のやってる事に気が付いたんでしょうね。一気に顔が真っ赤になって弁解らしき言葉を口にしようと」
かなりおばか…………勢いで生きてる方なんですね。
京太郎「あまり包めてませんよオブラート」
ちなみに鷲掴んだ感触は如何でしたか?
京太郎「………………………………ノーコメントで」
京太郎「で、なにか言葉になる前に新子さん……包まってた人ですね。が、「くーーーろーーー……?」って、笑顔で怒ってる感じで玄さんの後ろに立ってまして」
いつの間に出て来てたんですか。
京太郎「俺達が話してる内に顔だけはちょこっと布団から出してたのは見えてましたね。で、それ見て怯えた玄さんを「逆セクハラ娘は出ていきなさい!」つって部屋から蹴り出してました」
先輩に容赦がありませんね、新子さん。
京太郎「幼馴染みだと年の垣根ってあって無いものかもですね……。それで、閉め出された玄さんが部屋の外で「お、お゛ね゛え゛ぢゃああああん!!」って泣き叫びながら、何故か部屋から遠ざかっていって、その後で宥さん……姉の方の松実さんが「く、くろちゃー……」つって追いかけてって、まず松実さん二人が部屋から消えまして」
まず?
京太郎「その後、新子さんに助け舟出してくれた事にお礼を言ったら、聞いたことの無い悲鳴? を上げられまして」
悲鳴? ……具体的にはどのような?
京太郎「確か「ふきゅ!」だったかな?」
また新しい悲鳴ですね……。
京太郎「そんでまくし立てるように穏乃にあれこれ言った後、新子さんも部屋から出て行っちゃって、俺と穏乃と鷺森さんの三人が取り残されました」
それで、その場はもう解散となった?
京太郎「俺はそうかなと思ったんですが、穏乃的にはそうでなかったらしく、ちょっと言い辛そうな感じでもじもじしてたんですよ」
おや、面白そうな反応が……。
京太郎「俺がどうした? って聞いたら穏乃は意を決した感じで「あ、あのね!」つって」
これは、まさか……!?
京太郎「「S君ってドラゴン○ール読んでる!?」って」
ズコーッ!
京太郎「うわっびっくりした! なんですか急に顔面スライディングして!」
い、いえ……思ってた反応と違ってたもので……。
767名無しさん@お腹いっぱい。2021/07/01(木) 17:45:44.38ID:PTFFyHFK0
京太郎「まぁ俺も唐突! とは思いましたけどね。どうやら穏乃ってドラゴ○ボールの大ファンなんですけど、周りにそういうの語れる人がいなかったらしくて。男で同年代で和の友達の俺ならもしかしたら、って思ったらしいです」
同年代の男の子ならともかく、原村さんの友達は関係あるんでしょうか……。
京太郎「ある程度信用出来る男って意味なら、あるかもですね」
それで、S君は読んでるんですか? ドラ○ンボール。
京太郎「そりゃあもう。漫画は読破してますし、アニメもDVDが全部家にありますし、ゲームも全部とはいきませんが古いのから新しいのまで揃ってます」
かなりのファン度ですね。
京太郎「穏乃はゲームこそ無いものの、数あるド○ゴンボール映画をコンプリートしてましたよ」
そうなると、とても話が合ったんじゃないですか?
京太郎「そうですね。俺は男友達にもファンはいますけど、穏乃はそうじゃなかったんで、今までに語れなかった分を語り尽くそうって勢いで話してました」
その流れで下の名前呼びになったんですか?
京太郎「ええ。そろそろ帰らないとって時間になって、語り足りないし連絡先交換しようっつって、その時に」
東京初日で女の子の連絡先ゲットしたんですね?
京太郎「言い方!」
では、最後になにか一言。
京太郎「東京でオススメの、テイクアウト出来るタコスが売っている店を知っている方がいらっしゃれば、どうかコメントの方お願いします」
晴絵「…………私がいない間に何やってんだあんたら」
穏乃「いやーごめんなさい! 初めての東京でテンション上がって、その辺をダッシュしてたら京太郎君ぽい人見掛けちゃって! 確認したら本物だったからそのまま連れ込んじゃいまして!」
晴絵「いやそれもだけどさぁ……見ず知らずの男を部屋に招くとかさぁ……」
穏乃「? 和の友達だし、見ず知らずじゃないですよ?」
晴絵「そーなんだけどさぁ……」
灼「ハルちゃん。穏乃には何言っても無駄……」
憧「しずもしずだけど、玄も玄よ。なんであんなに恥を晒したわけ?」
玄「言い方酷くない!?」
灼「須賀君が部屋にいる間、ほぼずっと布団に包まってた憧も大概だと思……」
憧「そ、それは仕方ないでしょーよ! 部屋でだらだら過ごしてたらいきなりしずから連絡来て「S君見つけた! 今そっちに一緒に向かってるー!」とか言うのよ!? 心の準備ってものがあるでしょ!?」
穏乃「でも憧、雑誌で京太郎君の写真とかコメントとか読んで、「ふーん。まぁ、悪い奴じゃないかもね」とか言ってたし、男の子苦手な憧でも大丈夫かなって思ったんだけど」
憧「……違うのよ……悪い奴どころか、本物見たら超タイプだったのが問題なのよ…………」
穏乃「へ?」
憧「と、とにかく! どーすんのよ玄。あの時の事が知られて、アンタこれから「初対面の男に胸触らせた痴女」って事になるんだけど?」
晴絵(動画のコメントだと「勢いで胸触らせちゃうおばか女子高生」って感じだけどな……)
玄「痴女!? ち、違うよぉ。私本当にそんなつもりなくて……」
憧「和だってそんなつもり無いけど、ネットじゃ「長野が生んだエロの化身」とか呼ばれてるわよ。そこ行くと玄は「奈良が生んだエロの化身」になるわね」
玄「うぇぇん! そんな渾名つけられたらもうお嫁に行けないぃぃぃ!!」
灼「そしてそんな化身と一緒に出場する私達……」
憧「言うな……言わないで…………」
玄「おねえちゃぁぁぁん!!」ビエー
宥「だ、大丈夫だよ玄ちゃん。その時は、ほら。責任を取ってもらう? って事で……」
晴絵「逆セクハラした立場でそれは難しくない……?」
穏乃(今度は和や清澄の人達とも一緒に話せたらいいなー)
ちなみに、公表されたSKの素顔に注目が集まったので、阿知賀女子麻雀部の事柄はそれ程話題に挙げられなかったという。
カン
最終更新:2021年07月07日 08:50