043-288 歌姫、舞う!! 第4話「波乱万丈な一日の始まり」 @名無し



「兄上、本気なのですかっ…」
絶句するコーネリア。
それを涼しげな表情で見つめるシュナイゼル。
「彼をユフィのものにするためには、そこまでしないと駄目だと思ってね」
「ですが、これでは……」
見せられた計画書と映像にだだコーネリアは愕然とする事だけしか出来ない。
そして、実の妹さえも道具として扱う兄に恐怖さえ感じてしまう。
そして、この件を兄上に相談した自分の不甲斐なさに情けなくなっていた。
「この計画は、もう社長の許可ももらっているからね。後は、実施するだけだよ」
まるで計画書どおりに進むと決定しているかのような口調に、ますます苛立ちが強くなる。
兄上は……。
この人は危険だ。
ブリタニアを潰す災いになる。
そうコーネリアは思い始めていた。

《OPスタート OP曲「彼と私の世界は……」TVサイズバージョン 歌/紅月カレン》


歌姫、舞う!! 第4話「波乱万丈な一日の始まり」


《スポンサー紹介 メインスポンサー/万歳なみこー サブスポンサー/べくたー 》

「はぁ、ふう、はぁ、ふう……」
深呼吸を繰り返す。
そして、パンと自らの両頬を叩き、気合をいれる。
ライ、見てて……。
私は、決意をより高めると井上さんと一緒に事務所を出発した。
その様子を見つめるゼロ。
仮面の為、表情はわからない。
だけど、期待してくれていると私は思っている。
今日は、みんなの期待を一気に花咲かせるときだ。
そう、ライの苦労を無駄にしないためにも……。


「行ったか……」
社長室の椅子に座り、身体中の力が抜けた。
休憩をいれつつ、練習はさっきまで行われていた。
結局、最後はカレンの気迫におされ気味で、ゼロは精神的にも肉体的にもクタクタの状態になっている。
あの体育会系のノリは嫌だ……。
そんなことを考えてしまう。
練習風景が頭に浮かんだが、まさに一昔前のスポコン漫画のノリだったのだ。
言い出したこっちが止めるとは言いにくい上に、カレンがこれまた燃え上がってしまって止められない。
気分は、暴走列車を一人で止めている感じだ。
今日ほど本当にライのすごさを感じたことはない。
こんなパワフルなカレンを一人で制御し、押さえ込んでしまっていたのだから。
いや、これも愛の力というやつか……。
一人そんなことを考えては納得してしまう。
まぁ、どちらにしても、やはり、やつは有能だな。
そんな風にライの才能の再評価さえしてしまっていた。
だが、その特訓のおかげで、結果は上々といったところか。
いや、最高にいいという状態だ。
これならいける。
そう確信できるほどに……。
すでに、今回の新曲披露以降の作戦も練ってある。
ラジオ局にはもう手をまわしており、非ブリタニア系のほとんどのラジオ局とは、ヘビーローテーションとして1週間以上流してもらう事が決定している。
それに雑誌なんかの出版関係やインターネット関係もうまくいきそうな感じだ。
ただ、TVだけは、ブリタニアの力が強すぎてうまくいっていないが、それでも話題になれば取り上げなくてはならなくなるだろう。
「くっくくくくくく……。ブリタニアの舞台で火蓋を切ってやる。シュナイゼルめ、今回はこっちが一泡ふかせてやる番だからな……」
独り言がもれる。
だが、その時だった。
卓上の電話機が鳴りだす。
その音に、慌てて姿勢を正すゼロ。
それは、まるでいたずらを見つかった子供のような反応だった。
深呼吸をして、気分を落ち着かせるとゼロは受話器を取ろうとする。
だが、ディスプレに映し出された相手の表示を見て動きが止まった。
そこには、「おでんやナナちゃん」と表示されていた。

「では、ライさん、まいりましょうか……」
ユーフェミアにそう言われ、僕は状況が把握できずきょとんとしてしまう。
「えーっと、どこに……」
確か撮影やインタビューはさっきので終わりのはずだ。
だから、カレンの傍についてやらないと……。
そう思っていたのだから、余計に驚いた。
「何を言っているのですか? 写真集の紹介ですわ」
そう言ってにこやかに笑うユーフェミア。
えっ……そんな仕事あったっけ?
「だって、今日1日は、私に付き合ってくださらないと契約違反ですよ」
少しふくれっつらで文句を言うユーフェミアだったが、その言葉と行動に違和感を感じてしまう。
彼女は、こんなことをいう女性だったのか?
なんか、僕を自由にしたくないという感じがして気持ち悪い感覚に襲われる。
自分の知らないところで、よくないことが進行している。
そんなことを考えてしまいそうになっていた。
いかん、いかん……。
どうしたんだろう、僕は……。
こんなことを考えるなんて……。
今浮かんだことを、頭を振って消し去るとユーフェミアに聞き返した。
「どこに行くんですか?」
「ええ、エリア11チャンネルです。そこのベストヒットロードという番組で宣伝するのですよ」
実に楽しそうなユーフェミアの声。
だが、その言葉が、ますます僕を不安にさせる。
カレン……。
これほどカレンの傍にいたいと思ったことはなかった。


ライさんは、一瞬怪訝そうな表情をされたものの、一緒に行くよと言ってくださいました。
うふふふ……。
うれしいわ。
私は、一週間の間、行動を共にする事で、もうすっかりライさんに夢中になっていた。
これからもずっと一緒にいたい。
そう思うまでに……。
すーっとライさんの手に自分の腕を絡ませる。
真っ赤になったライさん……。
すごくかわいい。
くすくすくすくす……。
なんて甘い時間なんだろう。
そんなことさえ考えてしまう。
ああ、それが今日で終わりだなんて……。
何とかならないかしら……。
また、シュナイゼルお兄様にお知恵をお借りしないと駄目ね。
ライさんを私のものにするの。
うふふふ……。

それはとても甘美な考えにしか思えなかっただろう。
初めて知った愛するという行為に、完全にユーフェミアは舞い上がってしまっていた。
それは仕方ないことなのかもしれない。
これは初めての恋なのだ。
だから、相手のことなど考える余裕などないのかもしれない。
いや、違う。
初めてだからとかは関係ないのかもしれない。
恋は、盲目。
自分以外のことが見えなくなってしまうのが、恋なのだから。


《アイキャッチ ユーフェミアバージョン》

《万歳 ブルーレイソフト「歌姫舞う!」2巻 予約CM》
 予約特典----初回限定版 ユーフェミア等身大抱き枕
 全巻購入特典----ライ等身大抱き枕
 収録内容 3話、4話 ファイナルカットバージョン
 音声特典 本人達のオーディオコメンタリー

《万歳なみこー ぷれいしちゅえーしょん3ゲームソフト「歌姫舞う! 木漏れ日の中の君へ」 発売決定CM》
ヒロインは、もちろんカレンとユーフェミア。だけど、それだけでは終わらない。
 黒の騎士団編では、マネージャー仲間の井上さん、女性演歌歌手の千葉さんが攻略可能。
 ブリタニア編では、作詞家セシルさん、上司のコーネリア様、マネージャー長のアリアさんも攻略可能となっている。
 さらに、第2弾で発売される追加ディスクで攻略キャラ、シナリオが増加する発展する恋愛アドベンチャーゲーム。
 さぁ、期待して待てっ!!
 ―― 予約特典として、シャルル記者会見演説映像集とゼロ記者会見演説集が入ったDVDが付いてくる。
 こいつはすごいぜっ
 さぁ、いますぐ予約だっ!!

《アイキャッチ カレンバージョン》


「な、何っ……」
電話の内容を聞き、ゼロは絶句した。
自分達の予想以上の事が実施されようとしていることに……。
「ほ、本当なのかっ……ナナリー」
なんとかそう言うだけで精一杯の声。
だが、電話越しのナナリーの声は、肯定する。
躊躇もせずに……。
「はい。間違いありません、お兄様」
その言葉に迷いはなかった。
ナナリーより知らされた事実。
それはシュナイゼルの行おうとする策の内容だった。
「くうっ……。まさかそこまでやるとはな……。しかし、ナナリー、なぜそこまで詳しい内容を知ることが出来たんだ?」
その言葉に、電話越しのナナリーの声がやっと柔らかく、そして楽しいものになった。
「お兄様は、私が元人気アイドルだったということを忘れてしまったのですか?」
そう、今でこそ「おでんやナナちゃん」の看板美少女店長だが、ブリタニアが日本進出するまでは、ナナリーはアイドルとして活動していたのだ。
それも国民的美少アイドル「奈々」として……。
実際の活動期間は、1年と短いものの、その圧倒的な可愛さと存在感。
そして癒され系の魅力とたまに出る毒舌がかもし出すバランス感に、いまだに根強いファンも多く、業界にも知り合いが多い。
事実、ブリタニアの中にでも彼女のファンは存在している。
だからこそ、彼女の周りには情報が集まる。
いまや、影の日本芸能界の情報通No.1といわれるほどに……。
「そ、そうだったな……。で、対策だが……」
ゼロが、いやこの場合は、仮面をしていてもルルーシュと言うべきだろう。
ルルーシュが慌てて対策のことを口にしようとしたが、ナナリーの言葉が割って入る。
「お兄様の会社が契約しているレコード会社の買収は、カグヤ様が動かれてキョウトの方で何とかするそうです。他の策も何とか無効とまでいけませんけど、手は打ってもらっています」
淡々と当たり前のように言うナナリー。
「そ、そうか……。手際がいいな……。さ、さすがだ……、ナナリー」
我が妹ながら、怖さを感じる……。
もしかしたら、父上やシュナイゼルよりも手ごわい相手なのかもしれない。
そう一瞬、ルルーシュは思ってしまう。
いかん、いかん……。
ナナリーに限って……。
そんなことがあるわけがないじゃないか……。
ルルーシュは慌てて今頭に浮かんだ考えをかき消す。
そして、それにあわせるかのように受話器の向こうのナナリーが言葉が続けた。
「ほとんどのものは対応できたのですが、どうしてもTV局の方だけは間に合わなくて……」
言いながらナナリーの声が一気に沈んだものになる。
その声に、ルルーシュの心が奮い立たないはずがない
「大丈夫だ、ナナリー。そっちはわれわれが何とかしょう……」
すばやくそう答える。
そして、それを実施する術を彼は持っている。
「はいっ。さすがお兄様ですわ。期待していますから……」
まるで、そう返事されるのがわかっていたかのように、ナナリーの声が変わった。
沈んでいた声が、一気に嬉しそうなものに変わる。
そして、そう返事を返すと、電話はナナリーの方から一方的に切られたのだった。
いきなりの事に、頭が真っ白になるルルーシュ……いやゼロ。
だがすぐに止まっていた思考がゆっくりと動き始める。
なにかナナリーの好きなように使われているという感覚。
そういう違和感を感じたものの、今は考えている暇などない。
そう、残された時間はあまりにも少ないのだ。
ゼロは、すぐに内線ボタンを押して内線00に電話を入れる。
暫く呼び足し音が続き、その後にけだるそうな女性の声へと切り替わる。
「なぁにぃ~?」
「ラクシャータか……。今すぐやってもらいたい事がある」
「ふーん」
ゼロの真剣な声にもけだるそうな女性の声は代わらない。
「映像技術の魔術師といわれる貴方の技術でしか出来ないことだ」
「ふーん。面白そうね。いいわよぉ~。うちの最高の編集機械紅蓮と月下が活躍できるなら文句はないし……」
「もちろんだ。活躍してもらわなければならない。ともかく今からそっちに向かう……。よろしく頼む」
そこまで言って、ゼロは受話器を戻した。
シュナイゼルめっ……。
貴様の思い通りにさせるものかっ……。
そう決意して、ゼロは社長室を飛び出したのだった。


つ・づ・く


《EDスタート ED曲「貴方が好き好き~、大好きなの」TVサイズバージョン 歌/ユーフェミア・リ・ブリタニア》


次回予告
「放送時間が刻々と迫っていく中、ゼロの作戦はうまくいくのか……」
「えーと……」
「そして、私の新曲は、きちんと放送されるのでしょうか……」
「あのさ……」
「次回 歌姫、舞う!!第5話『ベストヒットロードその1』にご期待くださいっ」
「僕は無視なのか?」
「………」
「………」
「ふんっ……」
「な、何っ。何かなカレン」
「胸押し付けられて、よかったわねぇっ。鼻の下伸ばして……真っ赤になっちゃって……」
「あ……い、いや…その……」
「な、なにさっ、わ、私の方が大きくて柔らかくて気持ちいいんだからねっ……、ライのばかぁぁぁあっ。」
「あ・あはははははは………(ライの乾いた笑い)」
(音声、画面フェードアウト……)


最終更新:2009年10月14日 22:32
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