044-076 荒ぶる神、蒼きスサノオ降臨 @パラレル"

ナリタ連山での戦い以降、ライは客将として日本解放戦線に加わり、その戦力の回復と四聖剣の復活に尽力。
その結果、解放戦線の戦力は十分すぎるほどに回復、いや増強された。
しかしそれに費やした多大な時間はブリタニアにも等しく与えられるのは当然の事。
そしてそのスピードは明らかに早く、増大した戦力の多さは圧倒的にコーネリア側が多かった。


そのため今イシカワゲットーは、コーネリア率いる大軍団に包囲されてしまった。


序盤戦は藤堂立案の防衛作戦で敵部隊に大打撃を与える事に成功し、コーネリアに部隊の立て直しを余儀なくされるまでに追い込んだ。
ライは特別編制された直属の2個小隊(月下2、無頼改6)と共に奇襲部隊に参加し、遭遇した敵部隊の大半を撃破。
崩れ始めた陣形を突き崩し突撃、突撃すると見せかけ引き、追撃して来た所を待ち伏せて叩くなど考えうる全ての策を講じ、あっという間に奇襲部隊は敵全軍の半数近くを撃破していった。
この勢いに乗じてライは好機と、騎士団に救援要請を出し一気に決着をつけようと連絡を入れ了承を得た・・・・その直後の出来事だった。


中盤戦に差し掛かった時、日本に投入されていたナイトオブラウンズ、ジノ、アーニャ、モニカの率いる救援が接近。
その情報に本陣が前線を捨てて退却を開始し始めたのだ。
たちまち解放戦線は総崩れとなり一気に形勢は逆転、戦局はブリタニア側に完全に傾いてしまった。
しかし、今迄まともに戦わなかったのが天罰となったのだろうか・・・・。
本陣の退路上にラウンズが出現した為、まともに正面から撃ち合う形となってしまったのだ。


結果、本陣はまさに“袋の中の鼠”、前からはラウンズ、後ろからは部隊を立て直したコーネリア以下の主力部隊の挟み撃ちにあって全滅した。


この状況に、藤堂は残っている部隊に騎士団と合流するよう指示を出し、撤退を開始したのだった。
追撃をはじめたブリタニア軍の前に被害は大きくなっていくばかり・・・・・その攻撃は緩むどころか、激しさを増していった。
それを目の当たりにしたライは一つの決断を下す、藤堂以下その場にいた全員がその決断に反対した、が彼の決意は固く揺るぎなかった。
それまで乗っていた月下を部下に託したライは、味方の撤退の時間を稼ぐため新型KMF「スサノオ」を駆り、たった一人でコーネリアの主力部隊に特攻をかける事を。



「ふふふふふふ、こうも簡単にふりだしに戻るなんてな」
コックピットのライはニヤッと笑って見せる、まるでこうなる事を予期していたかの如く。



「スサノオは、主力部隊に特攻する」
「しかし隊長!!」
「戦力をズタズタにされすぎた、これ以上の戦闘続行は不可能だよ。僕は出来る限りの時間を稼ぐ、お前達も速やかに撤退し騎士団と合流しろ」
「で、ですが隊長一人じゃあ!!」
「無駄死にはするな!僕はただじゃ落ちはしない。今迄だってこんな修羅場、幾度も潜り抜けてきただろ?」
「「・・・・は、はい」」
「よし、発光信号上げぃ!!この場は僕が預かる!!」



「荒ぶる神、蒼きスサノオ降臨」


突如として出現した巨大なKMFを目の当たりにしたブリタニア軍人達はアサルトライフルやキャノンをスサノオめがけて乱射する。
しかし、あろう事かその弾丸はことごとく命中しているにも関わらず、まったく効いていない。
ジノはその信じられない光景に度肝を抜かれる。
「蒼い巨大KMF、弾丸を跳ね返してるだと!?」
「なめるなよ!?このスサノオは、ブリタニアの通常兵器などどうという事は無い!!道ずれに一人でも多く、地獄に引きずり込んでやるわ!!」
ライは右腕に装備している口径300mmの大型拡散荷電粒子キャノンを敵部隊に向けて放った。
鼓膜を破る程の大きな轟音と共に、蒼白い閃光は射線上に居たサザーランドやグロースターを瞬く間に蒸発させた。
この諸手の攻撃で少なくとも2個中隊の損害を出すにいたった、たった一撃で。



後の戦いを楽にする為にも、少しでも多くの仲間を救えるよう、ここで出来る限りの敵戦力を道ずれにしてやると。



「あ、圧倒的じゃない!!」
現存するどのKMFの攻撃をも受け付けず、さらにたった一撃で大多数のKMFを葬り去ったその力にモニカは恐怖を覚え冷や汗をかいた。
「ふっはっはっはっはっはっはっ!!見たか、スサノオが量産のあかつきには、ブリタニアなどあっという間に叩いてみせるわ!!」
この威力を目の当たりにし、ニヤッと狂気じみた笑いを浮かべるライは、直ぐにキャノンを指揮車であるG1にむけ引き金を引く。
その閃光は指揮所にいた者達に逃げる暇すら与えず、瞬く間にG1は大爆発を起こし沈黙した。
「な、なんて火力だ!?」
「接近して格闘で仕留めよ!!」
「さがるな!!ブリタニアは常に勝者であらねばならんのだ!!」
ブリタニア軍は攻撃の隙を突き、遠距離攻撃が効かないなら接近戦に持ち込もうと勇猛果敢にスサノオに接近した、だが接近した軍人達を待ち受けていたのは容赦ない弾丸の雨。
頭部に備え付けられているバルカンは一瞬にしてKMFを蜂の巣と化す、爆発こそしなかったがコックピットもただでは済まない、中の人間は“マグロ”状態であるだろう。
モニカはこの状況を理解できずにいた。
「冗談じゃないわよ!?こんな卑怯な兵器なんて、チートもいいところだわ!!」
「モニカ、私とアーニャが奴の注意をひきつける!!その隙に接近してコックピットを叩いてくれ、ランタナの機動力なら突破できるはずだ!!」
このままでは味方の損害が大きくなる一方。
高速戦闘が可能なトリスタンと、火力と防御力が高いモルドレッドで注意をひきつけ、加速力と俊敏性が高く格闘力の高いランタナで直接コックピットを叩き止める手段だ。
(理解するのは後ね、目の前の敵を叩く、それが今やらねばならない事!!)
「OK!アーニャ、援護頼むわよ!!」
「任せて」

ランタナが駆け出すと同時にアーニャは正面からミサイルをほぼ全弾、スサノオめがけて撃ち尽くす。
「モルドレッド、アーニャか!!」
ライは頭部バルカンをミサイルに乱射しそのことごとくを撃墜し、息つく暇すら与えぬ様に今度はモルドレッドめがけて放つ。
「そんな攻撃、効かない」
「どうかな!?」
「っ!!」
これはアーニャにしては計算済みだった、動きが遅いこのKMFの攻撃は当たらない、
たとえ格闘が来ようと回避するのは容易、そう思っていた。
しかし甘かった。
バルカンは囮、左手を固く握り、モルドレッドめがけ拳骨の要領でおもいっきり叩きつけた、アーニャからは巨大な隕石とも思える物が迫ってきた感じに見えたと言う。
しかも、こっちの回避経路を読んだ正確な攻撃!
「きゃああっ!!」
とっさに反応しかわそうとしたが完全にはよけられなかった、まじかで受けたその衝撃は凄まじく、重いモルドレッドは廃墟ビルに叩きつけられ沈黙した。
「ううっ!!く・・・・駆動系が・・・・」
「まずは1つ!!」
あっという間に1つ、敵が多い現状では止めを刺す暇は無い。
姿勢を戻そうとしたその時、急接近を知らせるアラームが鳴り響いた。
「っ!!このスピードは!?」
「この機動力にはついてこれまい、蒼い巨人!!」
アーニャに気を取られすぎた、ジノのトリスタが右側から急接近し、あっという間に足もとまでたどり着かされてしまった。
「この距離なら!!」
「いけると思ったか、ジノ!!」
右足を破壊しようとトリスタが構えたその瞬間をライは見逃さない、右腕にもこういった状況に備えてバルカンが装備されている。
その威力は抜群で射撃してから瞬く間にトリスタの片足を吹き飛ばす。
連射音の後に聞こえる爆音、トリスタも行動不能に追いやられた。
「くそっ!!上手くいけば儲け物だったんだが―――」
「こんな単純な攻撃、かわせ―――」
トリスタを行動不能にさせた時にライは気付く、攻撃が単純な事に。
(そうだ、攻撃が単純すぎる。まさか!?)
「かかった、モニカ!!」
「遅いわよ、うすのろ!!」
「しまった、横合いから!?」

ランタナにはランスロットと同じ機構のヒートサーベルが装備されている、これで今迄切れなかった物は無い。
モニカはランタナをフルスピードで左斜め後方から接近しコックピットめがけて飛びこんだ。
「せえええええい!!」
「間に合えっ!!」
振り下ろしたサーベルはガードの為に上げてきたスサノオの左腕に振り下ろされ、装甲に刃が触れた瞬間激しい火花が散る。
ところが、切断するどころかスサノオの腕はそのサーベルの刃を受け止めてしまったのだ。
「そんな!?」
「うおおおおおお!!」
腕を振りかざし、ランタナをサーベル諸共吹き飛ばしたスサノオ。
吹き飛ばされたランタナは廃墟ビルに背中から激突し、その場に横たわったまま動かなくなってしまった。
「くそっ・・・・バランサーがいかれた」
「これで3つ全部落とした、残りは何処だぁ!!」
休んでいる暇はない、体勢を立て直し次の敵を探すライに今度は緑の閃光がスサノオの左腕を突き破り、爆音が響き渡った。
「何だ!?」
「ライ、君なんだろ?返事をしてくれ!!」
そこに現れたのは、ユーフェミアの専属騎士にしてライの友が駆る白いKMF、スサノオの真正面に位置する格好だ。
その声はライが渡した、彼等にしか聞こえない無線からの声。
「スザク!!」
「もう降伏してくれライ、これ以上の戦闘は無意味だ!!」
スザクの叫び、事実スサノオは損傷こそ確かに少ないがそのダメージは確実に蓄積していっている。
この時点で残っている解放戦線の部隊は全機撤退を完了していた、ライの目的は達せられている。
コーネリア本隊も追撃できる戦力はもはや無くモニカ達も動ける状況ではない、ミッションは達せられているのだ。
しかしこの場を包囲する戦力はまだ持っている、ライがジノ達に気を取られているその間にコーネリアはスサノオを完全に包囲し、逃げ場を無くしていた。
「いくら装甲が固くても限界がある、これだけの数を相手に1人で戦うなんて無茶だ!!死ぬ気なのかライ!?」
「そうだな、仲間の為に死ねるなら本望だ!!」

自分の居場所を、そこに住まう仲間達を守る。
最初からそう心に誓っていた、それにここでライが残れば日本に来ているあいつは必ず来る。
このスサノオならそいつに―――。
「そんな!?」
「私情は禁物だぞスザク!!」
スザクのその叫びが何を言いたいのか判る、だが退くわけにはいかない。
ライはすでに覚悟を決めている、例え友の言葉でも退きはしない、だって――――



「悲しいけど、僕達にとってこれは戦争なんだ!!」



ライは涙を流しながらもキャノンをスザクめがけはなつ、閃光を間一髪のところでかわされたが、後ろに控えていた部隊に命中させ消滅させる。
「さぁどうするユフィを守りし騎士よ!!僕を倒さねば多くの命が星となるぞ!!」
そう叫んだその時、今まで聞いたどの爆音にも及ばない程の大きな音と共に左腕が消滅したのだ!!
「があっ!!な、何だ!?まさか、っ!!」
爆発の衝撃、コクピット内の破損で頭を切り血を流したライは、レーダーとディスプレイを確認した。
そこには、遠くから目視してもハッキリとその姿がわかる新手の存在をハッキリと映し出している。
「蒼き死神!!ここで貴様の首、打ち取ってくれる!!」
「やはり来たか、黒の破壊神!!(くっ、なんて威圧だ!!)」
圧倒され、気を失うのではないかとも思わせるような威圧感を受けながらも、ライはキャノンを構えようとする、が!!
「目の前の敵だけが全てじゃないのよ!!」
「何!?」
消滅した左腕の方向から1機、さらに―――
「周囲を常に警戒しなきゃ、命を落とすぜ?」
「しまった、挟まれた!!」
そのまた反対の方向から1機と、合計3機のKMFが現れた。
ナイトオブラウンズ.NO2、エドワード率いる巨人小隊。わずか3機のKMF「オシリス」を前にした敵の中で生き残った者はいない。
「「「沈め、死神!!」」」

3機は装備しているバズーカを撃つ。
轟音と爆風が巻き起こったその光景を、ライはほんの少ししか確認できなかった。
「動きが鈍い!!」
スサノオが巨大過ぎたが故の鈍足、今迄の蓄積されたダメージ、そしてライの反応スピードに機体がついに悲鳴をあげ反応が僅か、ほんの僅か遅れてしまった。
放たれた3つの凶弾はスサノオの左足を完膚なきまでに破壊し、片足を失ったスサノオはその場に黒煙と共に崩れ落ちていく。
「うおっ、ご、ごはっ!!く、くそぉ!!」
崩れゆくスサノオと共に闘うライもまた、その想像を絶する威力の前に簡単にうちのめされてしまった。
ライはいよいよ、己の最後を悟る。
「ハァ・・ハァ・・たかが3機のKMFごときに・・・・このスサノオがやらせるか!!」
「「「「!?」」」」」
でも諦めない、最後の最後まで戦い抜くと誓った自分の決意に従う、その強い心、それは湧き上がってくるオーラとなり周囲を圧倒していく。


「やらせはせん!!貴様ら如きやからに、騎士団の栄光を、僕の居場所を、仲間を、日本の未来をやらせはせん!!この僕がいる限りは、やらせはせんぞぉ!!!」


最後の一撃とばかりにキャノンを撃とうとするも、そこまでだった。
雄たけびをあげた人がふっと静かに息を引き取っていくように、スサノオはその巨体を静かに横たわらせた、それと時を同じくしてライもまた意識を闇の中へと手放したのだった。
「・・・・終わった・・・・のか?」
「最後の気魄・・・・見事なものだ」
エドワードは、自然と呟いていた。滅多に敵を褒める事の無いブリタニアの破壊神が、部下の2人も同じだった。
全てが終わった時、イシカワには風が吹く音しか聞こえなかったと言う。


イシカワ決戦は、片瀬少将以下の解放戦線を壊滅させる事に成功した。
しかしながら、コーネリア本隊も投入した戦力の60%を失う大打撃を被ってしまう。
さらにジノ、アーニャ、モニカの3人のラウンズが一時的ではあるもののたった1機のKMFに再起不能となった事実は日本のみならず、全世界に衝撃を与えた。

また、藤堂以下の四聖剣やコーネリア本隊に大打撃を与えた奇襲部隊(解放戦線全体ではわずか5%の戦力)は、その80%が騎士団との合流をはたし、そのまま戦力として加わることとなった。
大局的には結果としては痛み分けの戦いでしかなかったが、騎士団と合流した戦力がここまで多かったのと、コーネリアの損害の増加、ラウンズ3人の敗退はひとえに、ライが撤退時間を稼いだのが大きかった。


その英雄的働きをした戦士は・・・・・・。


「まさか・・・・」
「こんなこと!?」
「・・・・・・・ッ!!」
ジノは自分の目を疑い、ただ立ち尽くすしかなくなったモニカ、信じたくないと唇を噛みしめ目を背けるアーニャ。
其々がうけた衝撃は、決して計り知れないものだったと、後に彼等は語っている。
あのエドワードでさえ―――――。
「貴様だったとはな、死神・・・・いや、ライよ」
やっと絞り出した言葉、その言葉もどこか震えている様に聞こえたという。
(ライ・・・・どうして!?)
スザクも友のこんな結末に理解できず、ただ目を背ける事しか出来なかった。
意識を失っていたライはその後、アーニャとモニカ、ジノ、スザクの介抱により一命をとりとめるも、そのばにて逮捕されることとなった。



この後、とある一つの無線が流された。



発、エリア11総督 コーネリア・リ・ブリタニア
蒼き死神、黒の騎士団戦闘隊長兼作戦補佐、騎士団の双璧の一翼を担う者、ここに捕らえる。
後顧の憂いを断つため、コーネリア・リ・ブリタニアの名の下に、この者の処刑を命ずる。
処刑の日は後日追って通達する故、それまでこの者をチョウフ基地にて収監せよ。



と。




最終更新:2010年02月21日 22:51
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