守りたかったものがあった。そのために手を汚した。
だが、手に残ったの言いようのない喪失感と
第二次太平洋戦争の事実。
思い知らされたのは間違った方法で手に入れたものに価値はないのだという事。
罰がほしいと願って、そして撃たれた。
これでよかったのだ―――
コードギアスLOST COLORS replay 2話後編 覚醒の白き騎士
「ざ~んねんでした~ぁ。天国に行きそびれちゃったねぇ~。枢木一等兵」
名前を呼ばれて目を開けると、目の前にブリタニア人の男女が立っていた。
「あれっ?ここは…いや、僕は撃たれたはずなんじゃ…」
「これがあなたを守ってくれたのよ。」
女性の方が時計を持って答えてくれた。
「正確に言えば跳弾を防いだだけなんだけどね」
男の方はふざけながら付け足す。
「あっあの!戦局はどうなりましたか?」
スザクは気になっていたことを聞く。
「テロリストにKMFを奪われ、こちらの部隊の損害は8割越え。毒ガスは拡散したとのうわさが立っているけど?」
「ルルーシュっていう男は確認されていますか?」
「ルルーシュ?そんな連絡は入っていませんけど…調べましょうか?」
「いえ…いいです…」
ルルーシュが少なくとも死亡者リストに入っていないことにスザクはほっとする。
「時に枢木スザク一等兵、KMF騎乗経験は?」
「イレブンは騎士になれませんよ」
「なれるとしたら?」
目の前の男が試すように聞いてくる
「えっ?」
スザクは何を言われたか判らなかった。
「おめでとう~ぉ!世界でたった一騎の第7世代KMFが君を待ってるよぉ」
何かを訊こうとしたら、男に先に答えられてしまった。
「これに乗れば君の世界は変わる」
「望もうと望まずとも…」
スザクには女性士官の呟きが聞こえなかった。
『各機、このまま検問を突破しろ』
男から連絡が入った。
その指令に従いながらライは先程の光景をリフレインする。
(敵を一ヶ所に集中させて、地下道を利用して殲滅する…やるな)
男の手腕に感嘆を洩らしながらライはこれからのことを考える。
すでに敵KMF部隊は全滅し、戦力も7割撃破し、突破も容易となった。加えて、エナジーフィラーはすでに交換してあり、念のため予備に2パック持参してあるため活動時間を気にする必要もない。だとすれば―――
(これ以上彼等に付き合う必要もないな)
そのような結論にいたった。
(どうせこの戦いももうすぐ終わるし―――)
ライはサザーランドを左折させて戦線を離脱しょうとする。
「何!?」
まさに戦線を離脱しょうとした時にライはこちらに高速で接近してくるKMF1機を捕捉する。
(サザーランド?いやっ!資料にあった新型KMFかッ!)
捕捉したKMFが研究所から奪ったメモリーにあった新型だという事にライは驚く。
だがライの思考が高速で回るがそんなことはお構い無しに白いKMFは腕部のスラッシュハーケンを地面に撃ち込み空中に跳び上がった。
(ハーケンで飛んだ?!)
呆気に取られたがすぐさま迎撃行動に移る。アサルトライフルを空中に跳び上がり、まだ腕部ハーケンを巻き戻していない白いKMFに向けようとして、
白いKMFが腰部のスラッシュハーケンをサザーランドに向けて発射する。
(何!?ハーケンが4基!?)
すぐさま回避行動をとろうとするが間に合わず、左肩の装甲を削られる。
空中に跳躍するために射出した腕部のスラッシュハーケンが腕に納まると白いKMFはこちらに向けて再び放つ。
両方ともの回避は不可能だと判断すると、ライはサザーランドのトンファーを起動させる。
片方のハーケンをかすめるようにして機体をずらし回避すると同時に左のトンファーでもう片方のハーケンを叩き落とす。
(これで…なっ!しまった!)
ハーケンに集中していたために本体に注意が行かず、白いKMFが真上にいたことにライは気付かなかった。
(まずいッ!!)
すぐさまハーケンを白いKMFに向けて発射するが叩き落とされてしまう。
(この距離でハーケンを?!なんて反応速度…)
くり出される踵落としを後退して避け、続いてくるパンチも機体を右にずらしかわす。
さらに攻撃を繰り返そうとした白いKMFだったがハーケンを警戒してすぐさま距離をとる。
それを見たライは両脇のビルに向けてUN弾を撃ち込み倒壊させる。
無数の瓦礫が白いKMFに降り注ぐ。
だが白いKMFは降り注ぐ瓦礫の雨を瓦礫と瓦礫の間を縫って回避する。
「貴様は曲芸師かッ!」
白いKMFの異常な機動性能に思わず音をあげる。
土煙の中をつき抜け白いKMFが姿を顕す。
するとライはサザーランドの腰に装備されていた『物体』を白いKMFに向けて投げつけると同時にライフルを撃つ。
白いKMFは一瞬『物体』に気を取られたが囮と判断したのか、銃撃を回避しょうとする。
しかし、ライが投げた『物体』はケイオス爆雷だった。
白いKMFもようやくそのことに気付いたがすでにケイオス爆雷は展開されている。
いくら先程の反応速度をもってしてもこれはかわせない。
念のためさらにUN弾を何発か撃ち込む。
(やったな…)
ライは勝利を確信したが、突然殺気を感じ機体を右にそらす。
直後、土煙の中からスラッシュハーケンが飛来し、すでに半分削られていた左肩の装甲をかすめていく。
(まさかッ!!!)
ライの最悪の予感が的中し、土煙の中から白いKMFがあらわる。
(莫迦なッ!!あれだけの攻撃を凌ぎきっただと!?)
UN弾の直撃を受けても白いKMFは健在だった。しかし完全には無傷ではなかったらしく、左腕の銃弾を弾いた装置が微かにスパークしていた。
「完全には無傷とはいかなかったか…だが」
白いKMFが再びこちらを攻撃しょうとした時、ライはスラッシュハーケンを地面に撃ち込む。
今度は完全にフェイクだと判断したのか、白いKMFはそのまま突撃を行う。
だが、突然水蒸気爆発が地面から起こる。
そう。ここには大量の水道管とガス管が通っている。ライはテロリストからここの地図を提供してもらったときからいざという時のためにっとここに目をつけていた。
前方よりテロリストのサザーランドが3機来ている。
「足を引っ張られるのは癪だ…不服だが、一時撤退させてもらおう」
そういいながら、ライはその場を離れた。
「よし!」
背後より攻撃してきたサザーランドを3機撃破したスザクは先程のサザーランドのついて考えていた。
「あれだけの腕を持っていれば、内部から世界を変える事だってできるのに…」
スザクは先程のサザーランドのパイロットが並以上の反射神経と操縦技術を持っていたのにテロリストとして活動していることを悔やむ。だがパイロットの技術が高くとも、サザーランドとの機体性能の差がなんとかスザクに勝たせた。
「そうだった。まずテロリストを全滅させてルルーシュとあのこを助けないと…」
本来の任務を思いだし、スザクはランスロットを走らせた。
『特派のランスロット、敵KMFを11機撃破!』
「おおおぉ~」
ブリッジで部下たちが歓声を挙げるのを聞いて、クロヴィスはほっと息を下ろす。
「これで兄上に借りが出来たな。」
「はい殿下。」
側にいたバトレーが相槌をうつ。
「一時、イレギュラーズを国外に派遣したのをさっきは後悔したが、まさか特派がこれほどの働きをするとは…今後特派の扱いもあげなくては…」
「はい殿下。」
ブリタニアに復讐の牙を剥ける魔神がここまでたどり着くまであとすこし…
「ねぇセシル君、さっきのサザーランドどう思う?」
「どうとは?」
セシルとロイドは特派のトレーラーにいた。二人の目の前には多数のモニターがあり、その内の一つには現在のランスロットのデータがリアルタイムで表示されている。しかし、今二人ともそちらを見ていない。二人が見ているのは先程のサザーランドとの戦闘だ。
「KMF研究所から送られてきたデータを見るならあのサザーランドは今、機動力が普通のサザーランドどころかグラスゴーよりちょっと上ぐらい。それなのにランスロットと戦闘してもほとんど負傷していない。これをどう思う?」
「実は先程、データを基に敵の行動を予測してみました。その結果が…」
「その結果が?」
口が詰まるセシルをみて、ロイドは口元をつり上げて聞いた。
「その結果、敵は最速時に毎秒12回前後の入力を行ったという結果になりました。もちろん誤差はありますが、それでも8回前後の入力を行っています。ですがこれではサザーランドの反応速度では間違いなくついていけない筈ですが…」
「読まれてるね。スザク君の動きが」
セシルの疑問にロイドは嬉しそうに答える。
「それって、つまり動きが単純だからということですか?でもラウンズならともかく、一介のテロリストにはできるとは…」
セシルは信じられないように聞いてくる。
「確かにスザク君はランスロットに初めて乗ってるから動きも単純かも知れない。だけどそれだけじゃない。現にそのスザク君は20分足らずで敵を9機…いや、今は11機かな。とにかくそれぐらいの数のサザーランドを処理している。なのに敵は逃げ切った。」
「ですがランスロットには従来では想像もできなかった装備を多数搭載しています。それをも予測するのはいくらなんでも無理過ぎませんか?」
それが出来るなら、優秀どころじゃない。化け物だ。
「うん。だからこの場合は敵が異常過ぎるんだろうね。だからスザク君は早急にランスロットに慣れるしかない。」
楽しいそうにいうロイドの横で、セシルはただスザクの無事を祈るしかなかった。
「見つけた!あれが最後の…!」
スザクは先程逃がしたサザーランドをついに見つけた。すでに他のサザーランドは倒してある。
向こうもこちらに気付いたようで、左肩の装甲のないサザーランドは先程とは違い、とくに焦った様子もなく、こちらを迎え討つ。
「これで!」
スザクは確実に決められる距離まで詰め、両腰のハーケンを発射する。恐らく相手はこれをかわす。スザクはそう予測した。
だが現実はスザクの予想を斜め上にいく。
相手は手にしたライフルで高速に動くブーストされたハーケンを撃ち落としたのだ。まぐれではない。明らかに狙い撃ったのだ。
それでもスザクは怯まない。使えなくなったハーケンをパージし、腕部のハーケンをメザーモードで待機。即座に距離を詰めて、格闘戦に持ち込もうとする。
それを察したのか、相手はサザーランドを後退させる。
だが圧倒的に機体性能差がそれを許さない。すぐに追い付く。
放たれるスザクの拳を相手はトンファー起動させて受けながし、続いて繰り出される回し蹴りも姿勢を低くしてかわす。
分かっていたことだが、相手のあまりの操縦技術にスザクは舌を巻く。
ランスロットが拳や蹴りを繰り出す度に、サザーランドの装甲に傷がつくが、どれも外装についた傷で、いまだに戦闘に影響するダメージを与えていない。
しかし、ついにサザーランドが対処仕切れなくなり、スザクはハーケンを手刀のようにして腕を振り下ろす。
何かを切り裂いた手応えがスザクにはあった。
だがそれがサザーランドの本体でもなければ腕でもなく、ライフルであったことに気付いた時、
一閃
ランスロットの右側のファクトスフィアが切り裂かれる。
慌てて距離をとると、相手のサザーランドの手には赤く変色した剣が握られていた。
「あれはMVS?」
『おめでとう~。あれはMVSであってるよ。』
ランスロットのカメラでサザーランドのMVSを見たのか、ロイドが通信を入れてきた。
「でもなんで敵手に…」
『以前ね、クロヴィス殿下にねたまには研究データを公開したらどうだって言われてね、仕方なく公開したんだけど。まさか先に完成されるとはね~』
何故か嬉しそうに話すロイドにスザクは戸惑う。
『注意してねスザク君。KMF研究所が公開したデータによると、あれは稼働時間に限界があるものの、切味はこちらのものと同じぐらいで、さすがのランスロットの装甲でももたないわ。気を付けてね』
セシルもスザクの身を案じて注意を促す。
「…はい。」
スザクはランスロットのレバーを握り絞め、機体を前進させた。
「なっなぜ誰もいなくなってるのだ?!バトレー…バトレー!」
突然部下がブリッジから退出したことにクロヴィスは驚きを隠せずにいた。
目の前の男が銃つきつけてくる。
「まっまて!きっ貴様は何が欲しい?金ならくれてやるぞ!」
「ではまず―――」
目の前の男の声をどこかで聞いたような気がしたがクロヴィスはすぐに男の指示に従った。
スザクはランスロットの片方のハーケンをサザーランドに向けて射出する。これに対してサザーランドは同じようにハーケンを射出してこれを相殺する。
スザクは焦らない。対処されるのは予測済み。倒壊寸前のビルを足場にサザーランドに急接近。手刀を振り下ろす。サザーランドは後退してこれをかわすと予想する。
しかしサザーランドは後退するどころかMVSを構え、鍔ぜりあい。
ならばっと目の前のサザーランドにもう片方手刀を振り下ろそうとする。これに対してサザーランドは振り下ろしの動作の反動を利用して距離をとる。
だが運悪く、サザーランドの後ろは突然瓦礫が落ちて行き止まりになってしまう。
「これで決める!」
スザクは両腕のハーケンを時間差で射出する。必殺とも呼べる攻撃。サザーランドにはかわせない。しかし―――
「バカなッ!」
スザクは信じられなかった。
サザーランドは先程のランスロットのようにビルを足場に『飛んだ』。
ランスロットならともかく、グロースターにもできない機動をグラスゴーと同等の機動性能しかもたない目の前のサザーランドがやってのけたのだ。
さすがのスザクでも一瞬怯む。その隙にサザーランドがランスロットに飛び蹴りを食らわす。
回避が間に合わないと判断したスザクはとっさに両腕を交差させて防ぐ。5t近い重量の鉄の塊同士が衝突する。
突き飛ばされたランスロットの中でスザクはサザーランドが何かを投げるのを見る。
思い起こされるのは先程のケイオス爆雷。
「また同じ手を!」
スザクはハーケンを射出して『それ』に命中させる。だが―――
それはケイオス爆雷などではなく、ライが予備として持っていたエナジーフィラーだった。
ドンッ!
「ぐッ!視界が…ッ!」
爆発するエナジーフィラーが出す煙が視界を埋め尽す。
「このままではまた逃げられ―ッ!」
何かを感じとり、スザクはランスロットを後退させる。
煙の向こうからMVSを構えたサザーランドが突進してくる。
突然の後退が功を期したのか、ランスロットとサザーランドの間に距離があった。そして、ほぼゼロ距離でスザクは拳を放ち、
「すり抜けた!?」
スザクにもわかる。現実的にはそんな事は起きていない。しかし敵はギリギリのところで姿勢を低くしたのだ。それがあまりにも速すぎたのでそう見えただけ。
だがそんな隙をついて敵はランスロットの右腕を切り落とす。
「だが、これで!」
目の前のサザーランドの腰に残りの左腕をつきつける。同時にサザーランドもMVSをランスロットの右脇につきつける。
そこから動こうてして、その時―――
『全軍に告ぐ!…』
「えっ?」
ゲット―にクロヴィスの声が響く。
『直ちに停戦せよ!』
「停戦…?」
まったく違うところでテロリストの紅月カレンが同じようにつぶやく。
『エリア11総督にして第3皇子、クロヴィス・ラ・ブリタニアの名の下において命じる。全軍直ちに停戦せよ!』
ランスロットとサザーランドは時間が止まったように一歩も動かない。クロヴィスの声だけが夕焼けに紅く染まった空の下に響いてゆく
『建造物に対する破壊活動を止めよ。負傷者はブリタニア人、イレブンに限らず救助せよ。繰り返す。クロヴィス・ラ・ブリタニアの名の下において命じる。直ちに停戦せよ!これ以上の戦闘は許可しない!』
停戦命令が出されてからしばらく両機は動かなかったが、スザクが手を下ろした。それを見てサザーランドも剣を鞘に戻して、どこかへ去っていった。
紅い空は暗く染まり始める…
「言われた通りに停戦命令を出したよ。」
いまだにブリッジにいるクロヴィスは目の前の男に話かける。
「さて、次は何をする?何でもしょう。歌か?ダンスか?それともチェスでもしょうか?」
「チェスですか…懐かしいですね。昔よくアリエルの離宮で指しましたよね。もっともいつも俺の勝ちでしたが…」
「なに?」
目の前の男が訳のわからない事をいい始める。クロヴィスがその疑問を口にしょうとした時、目の前の男がヘルメットを脱いだ。その下に現れたのは
「お久しぶりですね、兄上」
「ルルーシュ…!」
見間違えるはずもない。8年前に死んだと思われる実の兄弟である。
「よかったよルルーシュ。生きていたのか」
「そうです兄上。」
「そっそうだルルーシュ。私といっしょに本国へ帰ろう…」
「また政治の道具にする積もりか」
怒りを滲ませながらルルーシュは銃をクロヴィスにつきつける。
「答えろ!母さんを殺したのは誰だ?」
「しっ知らない…!」
「ッ…では答えろ。『母さんを殺したのは誰だ!?』」
その瞬間、クロヴィスの目に不死鳥が飛込む。
「…わからない」
「なにッ!…では誰が知ってる?」
ギアスを使ったのに答えが出なかった事に苛立ち、ルルーシュは質問を変えてゆく。
「シュナイゼルとコーネリアが知ってる」
「そうか…もういい」
そう言って、ルルーシュはギアスを切った。
「私はなっなにも知らない!信じてくれ!」
ギアスの切れたクロヴィスが弁解する。
「わかった」
「しっ信じてくれたんだねルルーシュ」
「ええ」
ルルーシュは一旦銃をしまう。それを見てクロヴィスはほっと息をつく。しかし―――
「だが殺した。」
「えっ?」
ルルーシュは再び銃をクロヴィスにつきつける。
「多くの罪のないイレブンたちを」
「やっやめろ!腹違いとはいえ実の兄だぞ!」
クロヴィスは必死に命ごいをするが
パンッ―――
戦闘が終わってからもう6時間ほど経過した。
とりあえずサザーランドをまた誰かに見られないような場所に隠して、ライは外を散策していた。もうすでにブリタニア軍の姿はなく、多くのイレブンたちもすでに眠りについていた。
しばらく歩いていると、ライは緑色の髪をした少女を見つけた。だがもっともライの気を引いたのは彼女が着ていた拘束服だった。あれはライがいた研究所にあったものだ。
「おい、お前…!」
気付いた時には声をかけていた。少女は始め警戒の色を浮かべていたが、そのうちこちらを見定めるような目線に変わった。
「…お前、王の力を持っているのか?」
「王の力…?」
聞き返そうとしたが、一瞬頭に痛みが走った。
「あっ!待って…!」
少女はこちらに背を向け、
「私はC.C。また会うだろう…」
行ってしまった。
とりあえずC.Cの言葉が気になって、ライは気付いたら租界に入っていた。すでに日にちが変わって昼になっていた。一晩中ライはC.Cを探していた。もうあきらめよと思った時、視界に昨日会ったC.Cが飛込んでくる。あちらもこっちに気付いたらしく、突然走り出した。
どれだけ走ったのか、いつの間にかライは廃ビルの中にいた。C.Cを追ってきたが、どうやら見失ったみたいだ。
不意に背後に気配を感じ、ライは振り向く。
「ほぉ、気配を読むのがうまいな。王よ」
C.Cがそこに立っていた。
「C.Cと言ったか。なんで僕の事を王と呼ぶ?」
「なぜかと言われても、お前は王の力ーギアスを持っているだろ?」
「ギアス?」
ライはその単語を聞いた瞬間、何かわかったような気がしたが、それも原因不明の頭痛によって中断された。
気を失いそうな痛みに耐えるライを見てC.Cは笑うのをやめ、真面目な顔つきになる。
「…そうか。記憶がないんだったな」
「ぐっ…なぜそれを…」
しかしC.Cはライの疑問に答えようとはせず、ライの頭を掴む。瞬間―
現世の理はあてはまらないパズルのピース。完成しないパズルの矛盾。
その矛盾を解消するために合わせ鏡の常世が解読不能の原理で持って失われた理想郷を構築する。
天は上に無く地は下に無い。海はダイヤモンドより硬く、星々はどんな闇よりなお昏い。
正と否は入れ替わり混じり合う。誰よりも尊い誰かが涙を流し、生まれた混沌だけが静かに浸透していく無限宇宙―――
そんな世界の中でただC.Cの声だけが響いてゆく。
『お前は人とは異なる理の中で生きている。異なる摂理、異なる時間、異なる命。
王の力はお前を孤独にする。それを忘れるな―――』
もうどれだけの時間が経ったのかライにはわからない。
ただ気付いたら見しらぬ施設の 中にいた。
「とりあえずどこかに行かなきゃ…」
そう思ったライだが、体から力がぬけ、地面に倒れこむ。
「ごめんね~急な仕事入れちゃって。でも前にサボったからこれでチャラね」
「ですから、あれは不可抗力だと何度いえば…」
話し声が聞こえる。離れなくてはと思うのに思うように体が動かない。
「不審者…という感じではなさそうだが、生徒じゃないな。どうします、会長?」
「とりあえずルルーシュが保健室に運んで。ほらほら、ルルーシュ。ガーッツ!」
ライはなんとかしょうとしたがあらがいようもなく、意識が闇に落ちた―――
2話完
最終更新:2011年01月29日 01:05