「ふんふんふん~♪」
「すごく機嫌がいいですね、ロイドさん」
スザクがそう声をかける。
その言葉にいつも以上の微笑を浮かべてロイドが答える。
「いや~ぁ、今日ねぇ~、限定販売プリンをねぇ、30個も買えちゃったんだよ~っ」
その数に少し驚くスザク。
「そんなにいっぱいですか?」
そのスザクの問いに、ロイドが当たり前だろうという表情で言う。
「だって、なかなか手に入らない一品だったんだよぉ~。買える時に買っておかないとねぇ~。むふふふ~」
多分、今、ロイドさんの頭の中では、プリンの事でいっぱいなのだろう。
顔がいつも以上にニヤけている。
まぁ、幸せそうとも見れるが……。
「でも、限定の奴をそんなにまとめ買いしちゃったら、次の人、買えなくなっちゃうんじゃないんですか?」
そう言われて、ロイドは少し考え込む。
「そういやぁ、僕までで終わりだったんだよね。次の人、呆然としてたねぇ~」
そうさらっと言うとケタケタと笑うロイドさん。
スザクは、次に並んでいた人に心からお悔やみを言いたい心境に駆られていた。
そのころのライ……。
「す、すみません……井上さん…。駄目でした……」
私は、疲労困憊したライの姿に驚いてしまった。
買えなかったということよりも、今のライの哀れなほどにボロボロの姿が痛々しい。
「ううん、いいのよ、ライ。君はがんばったんだから……」
私は、優しくライを抱きしめて頭を撫でる。
「うっうっうううっ……井上さーーーーーんっ……」
そのまま、ライは泣き出した。
もう仕方ないなぁ。
「いいのよ、本当にいいんだからね。買えなかったことなんて、気にしてないんだからね。よしよしよし……」
私は、そんなライが可愛くて可愛くて仕方なかった。
「仕方ないんだからっ。ほら、おいで……。おねーさんが慰めてあげるから……」
そういって、私は彼を落ち着かせるかのように軽く何度も背中をたたく。
「買えなかったことは残念だけど、ライのせいじゃないからね」
だが、井上は気が付かなかったが、慰めるつもりで何度も何度も「買えなかったけど」を繰り返し言い続けていた。
そして、その言葉は、ライの心の中に深く深く刻まれていく。
彼の心を切り刻むかのように……。
こうして、誰も知らない間に、ブリタニア崩壊への種は蒔かれたのだった。
《おわり》
最終更新:2010年02月23日 00:33