現時刻 18:56 アルプス山脈、ポイント60番脈引き込み線
1ton爆弾でも爆発したんじゃないかと思えるほどの爆発と爆音が山々を包みこむ中ライ達は、それと同時に上がる黒煙と火の手を見る.。
その勢いは真っ暗な夜空を照らすほど・・・・。
「大変だ・・・・」
「そんな、脱線でここまでなるのか?」
「何かに衝突でもしなけりゃこんなには―――」
ライ、ノネット、ルキアーノの3人の言葉を遮るかのようにナナリーのトランシーバーが鳴った。
「こちらオリエントエクスプレス車掌のナナリーです」
(ナナリー君か?司令室の藤堂だ)
「藤堂司令、脱線事故ですか?」
恐る恐る尋ねたナナリーに総合司令室司令の藤堂は、ナナリーだけでなくライ達に最悪の報せを持って来たのだ。
(ああ、ゼロが玉城の貨物列車と衝突した。)
「鉄の道 第8章 エマージェンシー 」
ライ、アーニャ、ジェレミア、ノネット、ルキアーノ、C.Cとプラネタリュウムに乗客を連れ、さっきの爆発の揺れで大急ぎで乗客を列車に乗せ、戻ってきたミレイは5号車の車掌室に集まる。
(先ほど3分前にゼロは待避線に待機中の貨物列車1074号と衝突事故を起こし脱線した。)
藤堂が状況をまず説明する。
(緊急発令をアルプス山脈上下全列車に通達し、他の列車に危険は無い、玉城も生き残った貨物を切り離して脱出したそうだ。)
「ちょっと待ってくれ藤堂、ゼロは安全運転で運行してるんじゃなかったのか?」
「ルルーシュが太鼓判を押していたにもかかわらず、どういった不始末?」
ルキアーノとミレイが疑問に感じる、あれほど安全だと言っていた列車が処女運転でいきなりだ。
(それは君達が3年前に言った事が現実になったんだよ。)
(ほーんと、あの時の忠告をしっかり受けてればこうはならなかったのにねぇ。)
「ロイド、ラクシャータ。」
(お久しぶりアーニャ、そしてオリエントの皆さん!お元気?)
ロイドとラクシャータは技術部門の主任でC62を開発した世界有数の技術者だ。
「あの時の事、具体的に?」
C.Cが尋ねると早速返答が返ってきた。
(3年前、君達がルルーシュ達に抗議した改善点の事よ。ルルーシュ達は当然の事、携わった技術者も皆ね。)
(そう、これは起こるべくして起こった当然の結末なんだ。)
事故の経緯
オリエントエクスプレスが「スノーガーデン」に停車している最中、ゼロはちょっとしたトラブルに巻き込まれていた。
(ゼロのコンピューターはダイヤ通りに運行するのが絶対条件とされているんだ、だから遅れた分はどんな事が有ろうとも取り戻すようにプログラムされてる。)
ロイドが言うには、あの時ゼロは何らかの理由により若干の遅れが生じてしまったと言う。
それが全ての始まりだった
ダイヤを正確に守ろうとするゼロは、アルプスに入る時にはその遅れをだいぶ取り戻していたが、玉城の貨物が大幅に遅れ、後続に多大な影響を与えてしまった。
(それで遅れを取り戻そうとしたゼロは、本来出してはいけない120kmで走行を始めたんだ、それもアルプスに入ってからね。)
ロイドの言葉にただ唖然とするライ達は声もでなかった、ブリタニアはダイヤよりも安全運転をかかげて運行するように絶対な命令が敷かれている。
「ルルーシュは何もしなかったのかよ。」
(ええ、なーんにも。)
ラクシャータの返答にルキアーノも皆、さらに呆れかえるしかなかった。
話を続けるがオリエントが「スノーガーデン」を出発した時には、さらに遅れが生じてしまった。
そこでルルーシュ達は暴挙と言っても良い信じ難い行動に出る。
「「さ、さらにスピードを上げただって!?」」
ライとノネットが揃えて驚愕の言葉を発する。
(そう、ダイヤ通りに運行しなきゃメンツが立たないって理由でね。さて、皆さんお待ちかね!ここからが悪夢の始まりなのさ。)
ロイドの軽い口調もライ達には届かない、それだけ唖然としているからだ。
更にスピードを上げたゼロは、そのまま全速力で走っていた所にまたしてもトラブルが起こった。
先行するオリエントエクスプレスの緊急停車だ。
そのためルルーシュ達はやむなくブレーキを掛け止まる事にした、ところがだ・・・・。
(ゼロのブレーキは、悪条件での性能テストは一切行っていないの。だからその力はC62の10分の1にも満たないレベルだったわ。)
「そ、そんな。じゃあお兄様達は・・・・。」
(そぉ、止まるには時間がかかるわ。でもね、それは“人間”がブレーキを掛けたらの話。)
「どういう事?」
(解らないミレイ君?ゼロの運行管理は、全部コンピューター任せ。だからスピードが0になるまで、ずっと掛け続けるんだよ?)
つまり、200kmものスピードから0になるその時まで、ずっと掛けっぱなしなのだ。
「でも私だって、急ブレーキの時は―――」
(言ったでしょアーニャ、ゼロのブレーキ力はアルプスの様な悪条件下では弱いの。
本来1分かかるようなところを、3分も懸けなきゃいけないのよ。)
「「「「!!」」」」
その瞬間、ライ達はゼロに何が起こったのかを理解した。
ゼロのブレーキは、オリエントを追い抜かした時点ですでに焼き切れ、止められなくなっていたのだ!!
(沈黙するって事は、何が起きたのか理解したんだね?そう、オリエントを追い抜かした時には暴走していたんだよ。)
金属にも摩擦熱というものが発生する、その温度が高温で長時間続けば、金属は擦り減っていき、しまいには使い物にならなくなる。
「あのブレーキは、焼き切れた物が外れたやつだったのか。」
ライは全ての条件が生みだした結論に納得がいく、だが――――。
「では何故、玉城の貨物と衝突したのだ?」
(それについては、私が説明しようC.C)
それまで話していたロイドとラクシャータに変わり、藤堂が説明する。
(玉城が退避した61ポイントは、雪と氷で切り替わったままだった。ナナリーにその報告は行っているはずだ。)
「あの時、ナナリーが伝えてきたやつだな?」
(そうだジェレミア、あの時ゼロにも緊急で伝えたのだが・・・・何も報告してこなかったせいもあり、対応が遅れてしまった)
ゼロは司令室への報告を怠っていた、と言うよりは現場がそこまで頭が回らなかったのだろう。
それでも、すでに手遅れだった。警告を伝えた時、ゼロはすでにブレーキが効かない状態なのだから。
(玉城にはポイントを復旧するように言ったのだが、ゼロがポイントに到達するのがあまりにも早すぎた・・・・)
とにかく、司令室は何の対策も打てないままゼロを走らせてしまった。
その結果・・・・。
「玉城と衝突した・・・・」
(そうだ、ライ。)
両方に重い沈黙が漂う、だが何時までも黙っている場合では無い。
「ゼロの乗客はどうなってるんだ!?」
ノネットが詰め寄る様に聞くと、ロイドとラクシャータが答える。
(おそらく、メチャメチャになった車両の中に閉じ込められてるだろうね。ドアの開閉もコンピューター任せだからね。)
(全機能が停止した今のゼロには、ドアを開ける事はおろか、窓も開かないわ。)
「じゃあ、打ち破れば良いじゃない!!」
(ミレイ、不可能よ。窓ガラスは防弾性だからびくともしないわ、車内からの脱出は出来ない。)
それに、打ち壊すだけの道具も何もないしと続く言葉は、もはやライ達には届いていなかった・・・・。
不可能、これほど絶望的な言葉が有るだろうか?だが―――。
「藤堂さん、ゼロに1番近い列車は?」
(君達、オリエントエクスプレスだ。)
その言葉にライは皆を見渡す、どの顔も同じ、思いは一緒だった事を意味している。
「僕達が救出に向かいます!!」
(そう言ってくれると思っていた!だが注意しろ、タンクローリーはまだ何台かは残っている。更なる爆発の恐れもあるからな・・・・頼むぞ諸君!!)
「「「「「「了解!!」」」」」」
掛け声と共に一斉に動き始める、アーニャ達機関士は出発準備に、ミレイ達乗務員は貨物室から車体を破るための機材の準備をする。
「車掌さん、何かあったんですか?」
乗客達がミレイに詰め寄る、急に列車に戻れと言われたら聞きたくもなる。
「先行した列車が脱線事故を起こしました、我々はこれより救助に向かいます。」
乗客達はざわめくが、ここで思いもかけない助っ人がこの中にいた。
「ならば、我々も協力させてもらいます!」
「危険です!!お客様は――」
と言いかけたミレイに男は手帳を見せる。
「フランス消防旅団の者です、後ろの5人は、私部下。」
「レスキュー隊?ですが、せっかくのご旅行を・・・・。」
「人命救助、目の前に助けを求めている人がいれば、例え休日であろうと活動するのが我々の使命であり、任務です!!」
6人の隊員の目は本気そのもの、彼等も自分達と同じ側の人間という事を、ミレイは感じる。
「・・・・解りました、ご協力感謝します!!」
それからすぐに出発準備を整えたオリエント。
「では行ってきます、夫妻もご無事で・・・・。」
「安心なさい、私達はそんなやわじゃないですよ。」
ビシッと敬礼したライは機関車に飛び乗ると、アーニャは列車を発車させる。一刻を争う事態であるが、ゼロの二の舞にならない様に慎重に進む。
(ルルーシュ、皆・・・・待ってろよ、今助ける!!)
ライは心の中で思う、例え疎遠になろうとも、一時であろうとも友であった者を見捨てる事は出来ない・・・・必ず助ける!!と。
そのころゼロはまさに地獄絵図にも等しかった。
タンクローリーと衝突したゼロ、20両も有った客車は8両も原形をとどめないまでに破壊され、横転したのからその横転した車両に乗り上げているのまで、まともに立っているのは僅かに3両のみ。
辺りには勢いよく燃え盛る炎、金属が焼けるきつい臭い、助けを求める悲痛な叫び、森は燃え広がる、事前に乗客は最後尾に避難してはいたが衝突後迫りくる炎に怯えていた。
「どうにも・・・・ならないの?」
脱出も出来ず、何もできないこの中で諦めの言葉をもらしていまうシャーリー。
「「・・・・・・。」」
答える事も出来ず、虚ろな目で顔を伏せるカレンとユーフェミア、3人共顔は煤で汚れ新調のスーツはボロボロになってしまっている。
「何で、こんな事になっちゃったんだろう・・・・。」
同じく虚ろになっているスザクはルルーシュに問いかける。
「・・・・解らない。すまないが、今は何も考えられないんだ。」
喋る気力すらも無いルルーシュだが、今になってあの時のライの言葉が頭をよぎっていた。
(何時か必ず君は後悔する事になるだろう、この計画の中での最大の見落としの為に起こる事に)
(フッ、まさか本当にこんな事になるとは・・・・あの時のライの言葉は、この事を予言していたのか?)
今さらではあるが、ルルーシュは後悔する・・・・友の言葉を、受け入れておけば―――。
と思っていた時だった。
「・・・・何か聞こえる」
乗客の1人が言ったこの言葉に、それまでの悲鳴は静まっていく。
「「「「・・・・」」」」
生き残っている人々は耳を澄ます・・・・確かに、何かが聞こえる。
そして17:15、希望を生む光が見えた。
それと共に、ハッキリと汽笛の音が聞こえた、その瞬間にその場は歓喜に包まれる。
「C62・・・・オリエントエクスプレス!!」
「た、助けが来たんだ!!」
「よかった、これで助かる!!」
乗客に今、生界への乗車券を手にした瞬間の出来事た!ここからは時間との勝負、間に合うか?
To Be Continued
最終更新:2009年07月13日 21:35