第11の座――破壊大帝


 時刻は既に丑三つ時だ。
 夜更かしをしては翌日に響く。良い子は帰って寝なければならない。
 にもかかわらず、その少女は、石畳を全力で走っていた。
 穂群原高校1年生・未来は、柳洞寺へと向かう階段を、一心不乱に駆け上がっていた。
(あたしには分かる!)
 左手に令呪の浮かんだ腕を、精一杯振って上へと進む。
 短い手足を懸命に使い、幼い体躯とは思えない速さで、山道を一挙に踏破していく。
 失われた記憶を取り戻してなお、彼女の元に来訪者はなかった。与えられるべきサーヴァントが、その場に現れなかったのだ。
 しかし未来には分かる。未来にはその声が聞こえている。
 もっと力を――そう求める声が、彼女の意識に響いている。
(声の聞こえてきた方向はこっちだ! この寺にあたしのサーヴァントがいる!)
 未来のサーヴァントが現れなかったのは、未来が見放されたからではない。
 そのあまりに強大な力ゆえに、未来の持っている呪力だけでは、目覚めさせるには不足だったからだ。
 裏を返せば、この先に待つのは、それだけの力を持った大英霊だということだ。
 確かにあの寺に近づいてから、妙な気配を感じている。足元にエネルギーが渦巻くような、そんな感覚を覚えている。
 であればこの場所は当たりだ。これだけの力に満ちた場所なら、その先には必ず奴がいるはずだ。
「さぁ、来たわよ……さっさと姿を見せなさい、あたしのサーヴァント!」
 遂に石段を上りきった。
 最後の一段を大ジャンプで飛び越え、未来は高らかにそう叫んだ。
 無人で放置された寺に、黒髪の少女の絶叫が、ハウリングを伴って響き渡った。
「っ!?」
 その、瞬間だ。
 どぅっ、と轟く音と共に、突風が巻き起こったのは。
 煽られそうになるのを何とか堪えて、未来は地面に着地する。
 突如として吹き荒れた烈風の先を、真紅の隻眼で見据える。
 風の中心に光るのは、ファンタジー作品でよく見る魔法陣だ。
 眩い光を放つそれが、エネルギーの旋風を巻き起こし、光と音とをばら撒いていた。
 同時にその中心から感じるのは、とてつもないまでの存在感。
 呪力――魔力と言うのだったか――それが一点に集中し、巨大な質量を形成する感覚だった。
 これはさすがに予想外だ。未来は無言で息を呑む。
 これだけの力から生まれるものは、もはや人間大の域には収まらない。
 聖杯戦争で用いられるサーヴァントとは、人間の時代を生き抜いた、人間の英霊ではなかったのか。
「ぬぅぅおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ……ッ!!」
 地の底から響く地鳴りのように。
 魔法陣のその更に下から、その声は響き渡っていた。
 旋風の雑音の中にあって、なおもそれすらも押しのけるような、力強い唸り声だった。
 やがて光が炸裂し、魔法陣の中心部から、それは姿を現した。
 地中深くから浮き上がるように、大地を穿ってこじ開けるように。
 無人の柳洞寺の敷地を、鈍く振動させながら、それは未来の前に顕現した。
 一瞬桃色と見まごうかのような、薄紫に染まった巨体だ。
 されどその色の印象とは対照的に、その全身を象る衣装は、攻撃的な刺々しさに満ちていた。
 片膝をついた姿勢ではあったが、それですら並の人間に倍するほどだ。直立した姿を想像すると、くらくらとしてくるような心地だった。
 何より異質に思えたのは、その全身を包む金属の光沢だ。
 人間の英霊ならまだ分かる。半獣や竜人の類であっても、生体ならギリギリ許容できる。
 しかしあの姿は一体何だ。鋼鉄のように光る皮膚と、機械的な関節は、まるでロボットのようではないか。
「答えよ、小娘……お前が俺様を呼び寄せたのか」
 緑の光が未来を射抜く。
 人間の顔を象ったような、頭部部分に備わった両目が、小さな未来の体を見下ろす。
「そ……そうよ! あたしがアンタのマスターよ! そういうアンタこそ名乗りなさいよ!」
 思わず気圧されそうになった。
 それを隠さんとした結果、自然と語気が荒くなった。
 冷や汗をオーバーリアクションで振り落としながら、未来はサーヴァントに向かって叫ぶ。
 腕を振り大仰な動作を見せながら、巨大な機械の怪物へと問う。
 お前は一体何者なのだ。
 一体いかなるクラスを持って、この偽りの世界へ現界したのかと。
「フン! 知らぬというなら答えてやろう……俺は破壊大帝ガルバトロン!
 バーサーカーのクラスを得て、再び現世に蘇った、この宇宙の覇者となる男よ!」
 びりびりと大気が振動した。
 がさがさと周囲の樹木が騒いだ。
 さながら世界そのものすらも、一斉の元に従えるかのように。
 狂戦士のクラスを冠したサーヴァントは、高らかに己が名を宣言した。
 バーサーカー――それは確か、狂化現象と引き換えに、高いステータスを得て現界する英霊だったはずだ。
 言うほど狂っているようには見えないが、確かにその不遜な佇まいからは、それ相応の覇気が感じられる。
 身の丈5メートルほどはありそうな、紫色のその巨体は、それだけのパワーを発している。
「小娘、貴様こそ名乗ったらどうだ。破壊大帝に対して無礼であろう」
「なっ!? 何よ、アンタこそ無礼じゃないの!? あたしの奴隷(サーヴァント)のくせに!」
 しかしその態度だけは癪に障った。
 あまりにも無礼なその物言いに、未来はいよいよ激昂した。
 こいつは自分の手下ではないのか。それが主人に対して命令するとは、一体どういうことなのだ。
「お前のような小娘などに、忠誠を誓う義理はないということだ」
「何ですってぇ……!」
 わなわなと肩を震わせながら、未来は眉間にしわを寄せる。
 ファッションで身につけていた眼帯が、表情の動きに合わせてズレる。
 許せない。絶対に許せない。
 どれほど強いかは知らないが、奴隷の分際で主君に歯向かうなど、到底許容できるものではない。
 分からせなければ。マスターとサーヴァントの絶対的な差を、こいつには知らしめてやらなければ。
「アンタなんか! アンタみたいなサーヴァントなんか、絶対にあたしには逆らえないんだから! この令呪がある限りはね!」
 ばっと突き出したのは左手だ。
 その甲に刻まれた赤い紋章だ。
 サーヴァントを従えるマスターには、三角の令呪が支給される。
 その強制力を発揮すれば、たとえどんな命令であろうと、意のままに下すことができるという。
 人間より遥かに強い英霊が、人間であるマスターに従うのには、この令呪という存在が大きかった。
「おうやってみせろ! だが分かっておるだろうな!?」
 されど狂戦士は一喝した。
 巨木のような足を踏みしめ、地面を揺らせながら叫んだ。
 地震のような衝撃が、大地を伝って未来へ伝わり、その身をびくりと震わせた。
「その3つの令呪を使い切った時、その時お前がどうなるか……!」
 脅迫だ。
 それこそ従者にあるまじき行いだった。
「……っ!」
 それでもその時の未来には、それを咎めることはできなかった。
 その言葉の後に続く意味を、否応なしに理解させられたからだ。
 令呪を使い切った時――すなわちマスターたる未来が、サーヴァントへの強制力を失った時。
 恐らくその時バーサーカーは、躊躇わず自分に牙を剥く。
 その圧倒的な巨体から、暴力的なまでの力を解き放ち、間違いなく自分に襲いかかるだろう。
 そうなれば待ち受けているのは破滅だ。
 皮肉にも期待した通りだったが、恐らくこいつは凄まじく強い。
 他の忍の仲間達や、蛇女の教師相手にすら、ここまで気圧されたことはない。
 仮に焔紅蓮隊の全てが揃い、全員で挑んだとしても、返り討ちにあうのではないか――そこまで思わせる迫力が、彼にはあった。
 破壊大帝ガルバトロンを名乗る、この巨大なバーサーカーには、それだけの存在感があったのだ。
「分かったらせいぜい協力してもらうぞ。このガルバトロンが聖杯の力で、真の意味で復活を遂げるためにな」
 言い返すことはできなかった。
 いっそのこと令呪の力によって、自殺を命じることもできた。そうすればこの怪物に対しても、対抗することは可能だ。
 それでもその手段を取ってしまえば、聖杯戦争の勝利そのものが不可能となるという、本末転倒な結果を迎えることになる。
 恐らくバーサーカーはそれも知った上で、先の脅迫を仕掛けたのだろう。
 全く、何が狂戦士だ。わがままな上頭も回るとは、あまりにも厄介極まりないではないか。
「……未来よ。それがあたしの名前。そんなに聖杯が欲しかったら、せいぜい成果を上げてみせなさい」
 結局未来はバーサーカーに対し、素直に自分の名前を明かした。
 そうすることしかできないままに、破壊大帝の要求を呑んだのだ。
(確かにこいつは強いけど……でも、思い通りにはさせない)
 その裏でなお、思いは巡る。
 こいつの言われるままにはならないと、強く決意を胸に抱く。
 何より万能の願望器は、自分達にこそ相応しいものだ。
 それを奴隷風情に渡すなど、絶対にあってなるものか。
 当面はその強大な力を利用し、聖杯戦争を勝ち抜かせてもらう。
 そして聖杯を手にする瞬間、令呪によって自由を奪い、聖杯を使わせないようにする。
 それまで令呪は温存だ。自分が聖杯を持ち帰るために、せめて最後の1個だけは、使うことなく取っておくのだ。
 苦境を強いられている焔紅蓮隊が、満足のいく生活をできるようになるためにも。
(見ててよ、みんな……未来は絶対に負けないから!)
 屈するものか。
 他の参加者達相手にも、自分の手駒であるバーサーカーにも。
 必ず聖杯を手に入れて、紅蓮隊の仲間達のためにこそ、その願望の力を使うのだ。
 令呪の宿った左手を、固い意志と共に握って、未来は内心でそう宣言した。



【マスター】未来
【出典】閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-
【性別】女性

【参加方法】
『ゴフェルの木片』による召喚。本人の私物に紛れていた。

【マスターとしての願い】
よく分からないけれど、紅蓮隊のために使いたい。

【weapon】
仕込み傘
 銃器を仕込んだ西洋傘。これに呪術を付与して戦うのが基本スタイル。

ガトリング砲
 秘伝忍法発動時に用いる、巨大なガトリング砲。
 スカートの下に隠しており、なんと股間からせり出すような形で使用する。

秘伝忍法書
 必殺技・秘伝忍法の力を引き出すための巻物。

【能力・技能】

 日本に古来から存在する、諜報や暗殺を主任務とした工作員。
 蛇女子学園の元選抜メンバーとして、ひと通りの忍術をマスターしている。
 更に未来は呪術を修得しており、攻撃に呪いの力を付与している。

忍結界
 忍同士の決闘時に発動される結界術。

忍転身
 現代の忍の戦闘形態。上述した秘伝忍法書の力を引き出すための姿。
 この術を発動した未来は、ゴスロリルックスへと変貌する。

コンピューター知識
 パソコンの扱いに精通している。
 クラッキングの技術も身につけているらしく、他人のブログに不正アクセスし、内容を書き換える場面もあった。

文才
 文章を書く技術・才能。
 彼女はインターネット上で「仏麗」というハンドルネームを名乗っており、オリジナル小説「忍の家のラプンツェル」を連載している。
 本人いわく「読者の要望に応えるうちに収拾がつかなくなってきた」とのことだが、周囲からは素直に賞賛されている。

【人物背景】
非合法な任務であろうと遂行する忍・悪忍を養成する機関である、秘立蛇女子学園を出奔した少女。15歳。
未だ荒削りな部分は目立つが、1年生にして最強の選抜メンバー・五人衆に名を連ねていた実力者である。
また、元は悪忍と相反する正統派の忍・善忍の家系に生まれた子供だったが、
幼少期にいじめられたことを受け、いじめっ子に仕返しする力を得るために悪忍へと鞍替えした。
その後出資者・道元に歯向かったことから、蛇女を追われた選抜筆頭・焔に合流し、他の選抜メンバーらと共に焔紅蓮隊を結成している。

15歳にしてはかなり幼い容姿をしており、そのことがコンプレックスになっている。
そのため大人ぶった態度を取ることが目立つが、未だ子供っぽさを捨てきれておらず、ムキになる場面もしばしば。
意外と仲間達への情は深く、皆の力になろうと懸命に戦っている。
いじめられっ子時代のトラウマから、他人に無視されることが嫌い。

得意技は銃火器を用いた攻撃だが、本人が呪術を身につけているため、サーヴァントにもダメージを与えられる。
必殺技である秘伝忍法は、巨大なガトリング砲を乱射する「ヴァルキューレ」と、
複数のガトリング砲を展開し乱射しながら突撃する「ヴォルフスシャンツェ」。
また現時点では未習得だが、自らの大切な何かを自覚した時には、更なる奥義である絶・秘伝忍法を発現することができる。
未来の絶・秘伝忍法は、山のような重火器を満載した戦車を乗り回し、周囲を火の海に変える「ラントクロイツァー」。
この絶・秘伝忍法は、一般には「善と悪の力がぶつかった時に発現する」と言われており、善なる者との戦いが、発現の引き金となる可能性が高い。

【方針】
優勝狙い。バーサーカーが勝手に動かないように、上手く手綱を引く。



【クラス】バーサーカー
【真名】ガルバトロン
【出典】ビーストウォーズⅡ 超生命体トランスフォーマー
【性別】男性
【属性】秩序・悪

【パラメーター】
筋力:A 耐久:A+ 敏捷:C 魔力:A 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
狂化:E
 厳密には後付のスキルではなく、彼自身が持っていたバーサーカーの適性。
 圧政による宇宙平和を標榜する彼には、生まれついての暴君の資質がある。
 通常時は狂化の恩恵を受けない。その代わり、正常な思考力を保つ。

【保有スキル】
怪力:B
 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
 機械生命体であるバーサーカーも、便宜上「魔物」にカテゴライズされている。
 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

勇猛:B
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

カリスマ:D
 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。

変身:E
 トランスフォーマー固有の機能・トランスフォーム。
 体を変形させることにより、ロボットモード・ドリル戦車モード・ドラゴンモードの3形態を取ることができる。

【宝具】
『突き抜ける撃滅の轟槍(ドリルデストロイヤー)』
ランク:B 種別:対城宝具 レンジ:1~20 最大補足:20人
 ドリル戦車モードの必殺武器。文字通りの巨大なドリルを用いた突撃である。
 その絶大な破壊力は、あらゆる敵を破砕する。

『万象包みし破滅の業火(アンゴルモアファイヤー)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大補足:50人
 ドラゴンモードの必殺武器。
 惑星ガイアに眠っていた力・アンゴルモアエネルギーを、炎と変えて直接吐き出す技。
 この技で全てを焼き払う姿は、まさしくガイア最強の生命体そのものである。

【weapon】
ガルバアックス
 ロボットモード時の武器。2本の手斧。

ガルバトリング砲
 ロボットモード時の武器。両膝に設けられたガトリング砲。

アックスミサイル
 ドリル戦車モード時の武器。尾部についたガルバアックスを、射撃武器として発射する。

シザーハンド
 ドラゴンモード時の武器。鋏のように展開する翼。鋸状になっており、敵を切り裂くことができる。

【人物背景】
ロボットの体を有した超生命体・トランスフォーマーの1体。
ガルバトロンはその中でも、悪の心を持った種族・デストロンに生まれている。
彼はデストロン機甲部隊を編成し、「圧倒的な力による平和の維持」のため、武力による宇宙支配へと乗り出した。
その後は善のトランスフォーマー・サイバトロンと激しい戦いを繰り広げ、
最期にはライオコンボイと呼ばれるトランスフォーマーとの決戦により、命を落としている。

非常に頑固で気難しい印象を受けるが、意外にも人間的な度量は大きく、部下達からの信頼は厚い。
弟のメガストームの反抗には頭を痛めていたが、「愚かだからこそ可愛くもある」と考えており、
ゆくゆくは自らの後継者として成長することを期待していた。
また、エネルギー酔いが酷く、度数の高いオイルで酔っ払い、大暴れしたことがある。

惑星ガイアと呼ばれる星の、最強の兵器と生命体の姿を我が物としており、それに見合った凄まじい戦闘能力を誇る。
基本形態のロボットモード、突撃戦を得意とするドリル戦車モード、
最強の格闘戦闘力を誇るドラゴンモードの3形態を持ち、それらによって他の追随を許さない破壊力を発揮する。

【サーヴァントとしての願い】
現代に受肉し、再び破壊大帝として君臨する。



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最終更新:2015年02月15日 21:33