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一泊二日生活

ぐったりしながら、上条は布団へともぐりこんだ。お決まりの台詞を発する気力もない。
疲れと地獄と理不尽さを併せ持ちながら寝ようとし、その前にもう一度状況を確認してみる。
(不幸だ……不幸すぎる……。つーか、そんなレベルじゃないぞこれは!)
しかし言葉にする余力はなかった。

先日の事件>someday in the public bath?で覗き魔の汚名(というか濡れ衣)を着せられた上条は、これまでの諸々の事柄
(賞金首など)とも併せ持ち、学園ブラックリスト最高位に認定。そしてこれまでの罪状の清算の名の下に、
ライトノベル学園中が敵に回る形での、「(刑)罰ゲーム」が執行されることとなった。「さすがに一人では」という
ことから、さきの「ラノベ学園変態四天王」の中でも特に危険視されていた草壁桜も強制執行(まきぞえ)となり、
本日ついに執行となったのである。

「絶対に『反応』してはいけないライトノベル学園一泊二日生活」
 ルールは以下のようなものだ。
①二人は24時間の間通常通りに生活する。ただし放送等での指示に従い行動する。 
②その間さまざまなことが起こるがそれらに絶対に『反応』してはいけない。(例として、笑う、驚く、叫ぶ、泣く、
怒る、突っ込みを入れるなど。)通常の反応(呼びかけに答えるなど)は良い。ただし、瞬間的反応でないことが条件。
③もし反応してしまった場合は、黒尽くめのお仕置き人(正体不明)からお尻に一撃が与えられる。
④どのような一撃かは、お仕置き人の判断に一任する(つまりお仕置き人により違う)
⑤主催側が用意した仕掛けは当然のこと、指令外の事故による反応も、罰の対象となる場合がある。
このルールの下、上条、桜の二人はここまで生活してきた。二人ともすでに回数こそ多くはないものの、半端で
ないダメージをお尻に食らっている。ちなみに桜にいたっては一回死んでいる。そのときのお仕置き人は黒尽くめ
であるにもかかわらず、鋼鉄釘バットを持っていて、天使の輪が浮かんでたのでばればれであった。
 今いるのは学園中庭の「宙の湯」の一室。桜は隣の部屋だ。今回の罰のためだけに特別に営業してもらい、仕掛
け満載の巣窟と化している。やりすぎもいいところである。

しかしもう睡眠時間である。この地獄の一日もようやく終わる。上条は目をつむり、平穏な夢の世界へ
コンコン
……行こうとしたらドアがノックされた。
アウトにならないようにゆっくりと体を起き上がらせる。だるい体を引きおこし、ドアへ向かう。
幼い少女の声がする。用心しながらドアを開けると、つい数時間前に見た顔があった。かなり下に。
「かみじょーおにーちゃん」
「あ、えーと、コッペ……だっけ? 何でここへ?」
「今日あそんでもらったから、おれいにえほんよんであげるのー」
今日の授業終了後、放送の指示に従い、桜と二人で幼稚部の先生のお手伝いに行ったことを思い出す。そこの子達
の中でもひときわ元気で目立っていた子だ。もちろんこれも罰ゲームの一環なので、二人してえらい数のお仕置き
数を数えたが。
この子は簡単にはひかない。さらに疲れている。さっさと帰ってもらおう。そう判断し、部屋の中へ入れる。
まさか絵本読むだけなら仕掛けはないだろうと思いながら。
「んじゃよむよー?」
「はいはい」
「えーと……『フランダースのいぬどれい』」
「!?」
「『あうーん、あうーん、だめだよぱとらっしゅてんてんてん』『くうーんくうーんごしゅじんさま、わたくしはいぬでございますてんてんてん』
むかしむかし……どうしたのおにいちゃん」
「な・ん・な・ん・だ・よこの本はよ!!」

「上条、アウト」

「アウトじゃねーよ! いかに仕掛けでもやっていいことと悪いことがあるだろ!」
「おにーちゃん、おしおきだよ」
「何が」
「放送が流れたら、お尻ぺんぺんしてきなさいって」
「……あー、そう……」
まあ幼稚園児のペンペンだったら大したことじゃない。そう思い素直に四つんばいになる。
「んじゃーいくよー」
そのとき、思い出した。
(こいつって、確か……)

「おしおきーー!」
究極の戦闘兵器として作られた人造人間たる少女の小さな手が上条の尻にめり込んだ。ペン、なんてもんじゃない、
肉が肉を叩く音がした。
「カッ……………………」
息が止まった。
「あ、ごめんおにいちゃん! つよすぎた? だいじょおぶ!?」
しかし子供に心配かけまいと必死で声を絞り出す。
「だいじょぶだから、本も十分だから、もう帰っていいよ……」
「うん、つぎはさくらおにーちゃんのとこいってくるね。バイバイ」



部屋を出て行くのを見届け、その場にくず折れる。もう何も考えられない。ずるずると布団に入ったころ、

「草壁、アウト」
続いて聞こえる声。
「ちょっと待ってくださいよ! まだ何にもしてないですよ! 見た瞬間興奮なんてしてないですよ! 絶対に
僕はロリコンじゃないしそういう風なイメージ付け本当にやめて『ビ シ イ ッ!』」
そのようなことも、もうどうでも良かった。

隣も静かになり、上条の意識が夢の世界へとようやく入り始めたころ。音楽が流れた。一気に現実に引き戻された。
聞こえてくるのはリコーダーの演奏だ。
(まだ寝かせてくれないのかよ……)
そう思いながら聞いていると、歌声が合わさってきた。

静かにココロ とぎすまし
希望を持って あなたへと
ララ 夢の中なら言えるのに 目覚めた僕は弱虫で
ブ器用だけど まけないよ

終わると同時に隣で桜がなんか叫びだした。「何で僕の歌が!?」とかなんとか。当然のように、

「草壁、アウト」

(あー、桜専用トラップだったか……。よし、今度こそ寝よう。いくらなんでも、もう終わりだろ)

しかし地獄はまだ終わらなかった。

「今夜がやまだ」
目が覚めた。
「こんやがやまだ」
何だよ、と思いつつ、上条は状況を確認する。
「こ・ん・や・が・や・ま・だ」
この声は聞いたことがある。新庄という生徒会の一員だ。あの副会長とよく一緒にいて、一部ではBLの関係かと噂されている人だ。
「今夜が山田!」
(何言ってんのかわかんねぇけど、これには反応のしようがねぇな)
「こんやがやま『だ、だからそんな硬いの、い、いけないよ、ボク……!』

「……はぁ!?」
いきなりの内容変化に混乱する上条。さらに放送がとどめを刺しに来る。
『時間がない。だが、なんとも非常に興味があるね。さあ、恐れることはない。強く激しく言ってみたまえ。
――さあ!』

「さぁ! じゃねぇよ!」
「いったい何を流してるんだよ! こんな夜中に!」
二人の絶叫が同時に響いた。

「上条、草壁、アウト」



おまけ。
新庄がすごい勢いで放送室に飛び込んできた。
「ちょっと佐山君! 何勝手にボク達のテープ流してるの! そんな予定なかったでしょ! というか
覗きメンバーの一員として『罰で』この罰ゲームで働いてるのにさらに問題起こしてどうするんだよ!」
「ははは、『新庄君、アウト』」
「え? な、何をいきなり……」
「残念ながら反応してしまった新庄君には罰ゲームだ。確か罰の内容は、『お尻に棒で一撃を与えられる』だったね。
さて、尻神様の降臨といこうか」
「もうどこから突っ込めばいいのかわからないよ! ボクは罰ゲームしてないし明らかに意味が違うし!」
「そうか、『棒で突く』というのもありだね? ありがとう新庄君」
「だから意味が違うんだよ!」

夜はまだ続いていく……。


CAST

  • とある魔術の禁書目録
上条当麻

  • 撲殺天使ドクロちゃん
草壁桜

  • コッペとBB団
コッペ

  • 終わりのクロニクル
新庄・運切
佐山・御言

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最終更新:2007年12月09日 22:47
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