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佐々木 登場(上)

「やあキョン」
と、母親の作った弁当を食い終えて、昼休み中に廊下をブラブラしていた俺の背後に声をかけてきたのは...
「なんだ、佐々木じゃないか」
「なんだとはご挨拶だな。ここでは初登場な僕との再会を、もう少しよろこんで欲しいものだ」
ああ、そういやお前はまだ登場した事無かったんだな。意外にも
一応紹介しておくと、こいつは佐々木。俺の中学の頃の....まあ、友人だ
別々の高校に進んだので、約一年は全く交流が無かったし、これから先もあまりあるとは予期していなかったのだが....
「なんでお前がこの学校にいるんだ?」
はて、他校の生徒を招くようなイベントは現在行われていない。そして俺は校舎の中にいて、今日は平日だ
「うん、別々の学校に通う二人を引き合わせる道理は、この状況では存在していないね。でも僕たちは再会している
この現状を正しく理解するためには、発想の転換が必要なんだ。キョン」
相変わらず小難しい喋りをする奴だ。もう少し簡単な語彙を使っていただきたいね
しかし、言わんとしている事は分かる。今がこの学校の奴以外と出会う状況でないという事は、逆に佐々木がその『以外』でなければ
十分に会う可能性のある状況だという事だ。要するに.....
「ここに転校してきたんだ。これからよろしく頼むよ。キョン」
わざわざこんな異次元か魔界みたいな学校に転校してくる事も無かろうに
「再会のついでだ。学校を案内してくれないかい?転入してきて日が浅いのでね。迷ってしまいそうなんだよ」
無駄に広く、無駄に様々な施設があるからな、この学校は。ちょうど暇だったし、旧縁を暖めるのも良いだろう。いいぞ
「頼む。まずは文芸部を見てみたいんだが...」
あそこは止めとけ。魔窟とエルサレムが融合したような場所になってるからな

 ******

「....こちらウルズ7、例の転校生が彼と接触後、二人で歩き始めた。引き続き尾行を行う」
『了解ウルズ7。我が校の機密を狙うスパイかもしれない。細心の注意を払ってくれ。通信終了』
「....ふっふふ、いつもいつもいつも二股とか言ってくれて、キョンだって二股じゃないか。その証拠を掴んでやる.....!!」
「異様に燃えてるな.....坂井の奴」
「しかし暑いね。まだ五月中旬だというのに」
まあな。東と西にある両大国が揃って二酸化炭素を無制限排出してたら暑くもなるだろうよ。迷惑な話だよな
「他国の事ばかりをあげつらって自国の失態を棚上げするのは良くないな。キョン
我が国日本も、CO2排出量は前年度に比べて増えているんだよ。京都議定書の調印国であるにも関わらずね
様々な要素があってこうなってしまったのだから、僕にはこの問題で母国を特に責めようとは思わないけれども
偉そうに文句ばかり言えるほど結果が出ていないのも事実なんだ」
「そりゃあ悪かったな。だが……」
などと今日の気温を発端にした地球環境問題について議論を佐々木としつつ、図書室へ案内する俺である。こんな会話も久しぶりだな
「あ、キョンくん」
ふとかけられた声の方角を向いた所、魔王陛下率いる文芸部二年六人組がそこにいた。正確には五人と一神隠しだ
「おや、友人かい?キョン」
友人ではないが、所属する部室が同じでな。まあ知り合いってとこか
「あれ?その人誰?SOS団の新団員?」
俺に声をかけた日下部稜子が、転校生である佐々木を見て聞いてきた
それはいいが、佐々木はあのけったいな団の事など、まだ欠片も知らんのだからそんな質問をしてくれるな。俺の恥ずかしい秘密が佐々木にバレてしまうじゃないか。どの道すぐバレるだろうが
「私は佐々木、この学校に転校してきました。今は彼に学校を案内して貰ってたんです」
俺が答える前に佐々木自己が自己紹介をした。男女別に口調を変えるのも相変わらずだな。見ろ、日下部が驚いてるぞ
「……でも、ならキョンとも出会って日が浅いんでしょ?にしてはずいぶん仲良いみたいだけど……」
「近藤、初対面で下世話な事聞くんじゃないの」
おずおずと質問した近藤を木戸野がバッサリと斬り捨てた。哀れな
一応言っておくが、聞いて下世話になるような関係は俺と佐々木の間には無いぞ。俺達は……
「一年ほど前、親密な付き合いをしていた仲だよ」
瞬間、世界が停止した
あのー、佐々木さん?あなたは何を言っているんですか?
「キョン、君と僕は約一年間ぶりに再会したにも関わらず、昔と全く変わらずに話が出来ているんだよ。それは僕達の培った絆が如何に強いかを十分に表していると、僕は思うのだけれど」
いやそういう事じゃなくてだな……
「え!?なになに!?つまりキョンくんの元カノ!?」
「止めてやりなよ稜子。他人の、昔の色事に首突っ込んだって面白い事無いよ」
「いやでも、これは結構大スクープだぜ!まさかキョンに元カノがいたとは……」
ほれ見ろ、無用の誤解が生まれちまったじゃないか
「こんな誤解は中学の頃もあったじゃないか。今更気にするのかい?」
ああ気にするね。中学の頃とは違い、この学校でのこんな誤解は命に関わる
ただでさえ危険値の臨界点をたびたび突破する学校生活に更なるスリルを求められるほど、俺の心臓は強く無いんだ
「ねぇねぇ!二人はどんなお付き合いを……」
止めてくれ、佐々木と付き合った過去など一度たりともない。ただの誤解だ。誤解なんだ。誤解するな
「近藤、稜子。いい加減にしな。こういうデリケートな事で、あんまり困らせるんじゃないの」
そうだ。俺を困らせないでくれ。ついでに木戸野、お前も俺に対する誤解を止めてくれないか?
「え~?でもさ亜紀ちゃん……そうだ。魔王様はどう思う?」
「何がだ?」
「佐々木さんとキョンくん、アヤシイと思わない?」
思わん。思わんぞ。アヤシイ事など何一つ無い!
「それは分からんし興味も無いが……」
空目が口を開いた。頼むから妙な事をこれ以上言ってくれるなよ
「日下部達のその反応には興味をそそられるな。そこの女の一言で、二人の関係についての推測図が根拠も無いままに絞り込まれてしまっている
人間は何故か、極一部の根拠を元に過剰とも取れるほど、人物や物事の評価を定めてしまう傾向があるな
本来、そういった事は数々の証拠を積み立てて事実を明らかにし、多角的な見地から検討すべきである事は理解しているはずであるにも関わらずだ
これは恐らく、人には潜在的・顕在的に、自分好みの評価が下る事を期待する心理があるせいだろう
望む結論が先に存在するため、それに対する検証と検討は自ずとその望む結論に辿り着きやすいように指向してしまうのだと思う
この心理を利用してプロパガンダを行う事で、民衆を洗脳する事に権力者は腐心してきただろうな。特に新聞社や宗教家などは………」
「空目、空目」
「なんだ村神」
「誰も聞いていないぞ」
「そうか」
そう言ったきり、空目は講義を止めて黙ってくれた

やれやれ



空目の蘊蓄のおかげで、どうやら日下部も俺達の仲を邪推する気力を失ったようなので、この隙にさっさと逃げ出す事にした
「じゃ、じゃあ俺達はもう行くから......」
「待て」
意外にも、魔王陛下に呼び止められた
「佐々木と言ったな。お前にもこいつを紹介しておこう」
「こいつ?君達五人はもう.....」
「いや、こいつだ」
そう言って空目は、まず佐々木を右手で指差した。佐々木の目が空目の指先に集中する
空目の右手が、俺から見て左下にゆっくり動く。佐々木の目もそれを追う
そして、空目の手が停止し......佐々木が驚愕した
「え....えーと....すみません」
そこにはあやめがいた。正確には、さっきからずーっといた
佐々木以外の奴はそれが分かっていた。佐々木には分からなかった。"紹介されなかった"からな
「え.....どこにいたの...?」
気にするな佐々木
「もういいぞ。行け」
魔王陛下のお許しが出たので、俺達はようやく図書室への移動を再開した。やれやれ
「......僕が言うのもなんだけど、変わった人だね。あの空目って人」
そうだろう。ここはお前を遥かに超える奇人変人超人ばかりだ。なんでこんな所に来たんだ?
「さて、どうしてだと思う?キョン」

 *******

我が校の図書室は異様に広大で、驚嘆すべき蔵書数を誇る
地平線でも見えそうな大空間に、高層ビルもかくやという高さの本棚が所狭しと並ぶ荘厳な光景には、呆れを通り越して感動すら覚える
しかも、ここは『本だけ』のスペースで、映像やらの電子データやらの閲覧室はまた他にあるらしい
「すごいな勉強家には夢のような空間だね」
「むしろ悪夢だろ。どんだけ必死に学んでも、一生をかけてもここの本の本当に極一部しか読めん
『お前が知らない事はまだまだこれだけあるぞ』と言われてる気分になるんじゃねえか」
「くっくっく、相変わらず面白い見方をするね。君は」
褒めても何も出んぞ
「それは残念だな」
さっさと次に行こうぜ。こんなとこにいて、地震が起きたら致死率100%だぞ
「そうだね。じゃあ、次は校庭にでも....って、校庭が複数あるのかい?」
ああ、用途によって使い分けるからな。航空機とかも使う事あるし
「ふうむ。じゃあ、その航空機を使う校庭に行ってみたいな」
 .....流れ弾ならぬ流れ砲弾で死ぬなよ。いや、普通の砲弾ならまだラッキーかもな

 *******

「着いたぞ。ここが大気圏内戦闘演習用校庭。第3グラウンドだ」
「広いね。広すぎて、ここから見てもどれだけ広いのか分からないほどに」
地平線が普通に見えるからな。だが、航空機なんかに乗る奴からするとこれでもまだ狭いらしい
「普通の兵器でも、音速飛行ぐらいするからね。ましてや、ここのは”普通の兵器”じゃないだろ?」
ご明察だな
今ここを使っているのは.....エドのウィリアム・シェイクスピアと、原川達のサンダーフェロウか。模擬戦してんのか?
「いかにも」
うげ....嫌な奴が来やがった
「キョン、彼は誰だい?」
佐山御言。変質者。以上
「なんだねその説明は。世界の支配者たる私の魅力を五兆分の一も表現出来ていないではないかね
そこの、私にとって未知な女性にちゃんと解説したまえ。私の素晴らしさを!」
「変わった人だね。キョン」
あまり近づくな佐々木。佐山菌に感染するぞ
なんであんたがここにいるんだ?副会長だろ。生徒会の仕事しろよ
「ふむ、その仕事なのだが、学校内での騒ぎを鎮めるのに兵器が使えないかと思い立ち、エド君とヒオ君の協力でデータを取っているのだよ」
兵器で鎮圧か。この学校では妥当と思えてしまうのが悲しいぜ
「君こそ、転校生の女生徒を連れ回しているそうじゃないかね。君も手が早いね」
人聞きの悪い事を言うな
「そうだね、キョンの手が早い訳が無い。僕がキョンと一緒にいるのは、キョンと僕が中学時代に付き合いがあったからだよ。」
「「えーー!」」
突如、足下から声が響くと共に、出雲と飛場がモグラの如く地中から飛び出て来た!
何してるんだ?こいつら
「聞いたか飛場!キョンに昔の女がいたぞ!」
「聞きました出雲先輩!しかも元カノが追っかけてくるなんて....このシチュは堪りませんよ!?」
二人の馬鹿が馬鹿話を馬鹿デカイ声で叫びまくる。どうして一々勘違いされるんだ?俺達は
それを見た佐山は、携帯らしき物を操り出している
「落ち着け飛場!本番はこれが多角関係のドロ沼に嵌ってからだ!そしてそれに焦った女子の方から誘い受k」
出雲の妄言が、数百の螺子状の触手の包囲攻撃で中断された!
佐山の携帯画面には『これでいい?』と表示されている
「完璧だエド君。エロい出雲とややエロい飛場少年は完全沈黙したよ」
よくやったエド。俺も褒める
「不快な物を見せてしまったね転校生君。お詫びにマロ茶をプレゼントしよう。購買へ来たまえ」
本当にお詫びがしたいならIAI製飲料なんて贈呈するなよ。佐々木が腹を壊したらどうする?
「なんだか、今日は随分とキョンに心配されてる気がするな」
いや、そりゃ心配するに決まってるだろ。こんな学校じゃな
「それなら、僕がこの学校に転校してきたのは正しかったというになるね」
いやいやいや、意味分からんぞ。何言ってんだ?佐々木よ
「はっはっは、人前でイチャつくとはなかなかやるね貴様ら」
あんたも何言ってんだ
「そう照れるな。君達が衆人環視の元で破廉恥行為をするのに干渉はしないよ
ともかく、私の厚意を受けたいのなら購買に来たまえ」
「うーん、せっかくの厚意だし、購買にも行ってみたいけど.....キョンはどうする?」
無論、俺も行くぞ。本心では行きたくないが、佐々木を一人にする訳にもいかんからな
「ありがとうキョン」



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  • 4スレ目>>423-425、435-436、460-461
最終更新:2007年06月02日 13:53
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