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千の偽り、万の貌。
億の欲望、兆の財宝。
神出鬼没の男は全てを欲しいがままとした。
”世の中のありとあらゆる財宝を?”
ああ、もちろんこの手の中に。
”人々に語り継がれる名声を?”
ああ、もちろんその全てを此処に。
…だがしかし、欲望のままに生きた男は少しも満足を知らなかった。
”世の中のありとあらゆる財宝は?”
ああ、既にそれらは誰かの元へ。
”人々に語り継がれる名声は?”
ああ、なるほどそれはつまらない。
男はニヤリと不敵に笑う。
戦慄。緊張。挑戦。達成。
「やはり生きるならスリルがなくちゃあ」―――と。
…そも、欲望とは湖のようなもの。
枯れる時は、死ぬときだ。

だがそれも、全てに当て嵌まる訳ではない。
大馬鹿者とは、悉く常識から外れているものだ。
死して尚尽きぬ欲望は、スリルを求めこの世に再び現れた。
狙うは聖杯。競うは英雄。
付き添うは小さなヒーロー。




「さあ―――聖杯を盗りにいこう」








○    ○   ○


むむむ、と少女は唸る。
少女の部屋だろうか―――年相応の可愛らしい部屋の中心で、少女は唸る。
首を傾げ、その小さな掌に掴まれた『モノ』を見る。
赤いジャケット。
手触りは心地いいが、どうやら大人用のようで着るにはかなり大きい。
皺をつけないように優しい手つきで、少女はそれを眺めている。
そして、搾り出すように、一言。

「…見覚えがないぞ」

そう。
見覚えがないのだ。
少女の記憶といくら照らし合わせても、このヘルメットが何者なのか検討もつかない。
少女―――南条光は、ヒーローをこよなく愛し憧れる14歳である。
趣味は特撮。夢も特撮。
ヒーロー一筋まっしぐらの少女である。
だからこそ、光は頭を悩ませていた。
特撮、ヒーローに対する愛なら人一倍だと自負しているし、聞かれればある程度のことまで答えられるほど知識もあると思っている。
なのに、少しも分からない。
誰が着ても派手であろう真っ赤なジャケット。その色は眩いほどに赤く、情熱を感じさせる。
親のものが自室へ紛れ込んだのだろうか、とも思ったが両親はこのような派手なものは着用しない。
自室にあり、この色からして特撮関係のものであるのは確かだと思っているが―――記憶にないのだ。
色の派手なジャケットや革ジャンは特撮ヒーローの嗜み。
戦隊ヒーローならば赤どころかピンクなどを基調とした衣装のあるだろう。。
もしかすれば、劇中の衣装がグッズとして発売された可能性はないだろうか。
『彼が着ていた赤ジャケットを完全再現!これで君も○○だ!」―――といったような。
しかし、そんな愛に溢れるアイテムともなると印象深いもの。
そんなアイテムをこの自分が忘れるはずがあろうか。
それとも『アレ』だろうか。
『何度捨てても戻ってくる人形』とか。
『放っておいたら髪が伸びている日本人形』だとか。
『目を離したら首を折ってくる不気味な人形』だとか。
そういった類の、所謂ホラーアイテム的な『アレ』だろうか。
…想像すると少し背筋が寒くなったが、このジャケットがそんな邪悪なものには見えないのだ。
何はともあれ、購入したかはたまた貰ったかは不明だが、自宅の自部屋にある以上自分ものなのは確か。
わからないままなのは、落ち着かない。
…それに。

「なあ。…君はどのヒーローのアイテムなんだろーな」

元がどのヒーローのアイテムなのかわからないままでは、このジャケットも可哀想だ、と思った。


▲  ▲  ▲


翌日。
両親も覚えがないというジャケットを手に、光は街へと繰り出した。
行き着けの玩具屋。学校の友人。教師。
両親の知り合い。ご近所。
手当たり次第に、『このジャケットに見覚えはないか』と聞いて回った。
しかし。
案の定、大した情報は得られず。
得られたのは敗北感と、疲労だけだった。
結局、手掛かりすらなしで光は一つの公園に辿り着いた。
友達とよく遊ぶ公園だ。一休みするなら丁度いい。
ばさり、と持ってきておいたジャケットを拡げる。
…大きい。

「アタシも君が誰のものなのか知りたいんだけどなあ…いや」

まだだ、と。
持ってきておいた水筒の蓋を開け、弱気になった気持ちを茶ごと流し込む。
乾いた喉に冷たい液体が流れ込み、何とも心地よい。
―――諦めちゃだめだ。
ヒーローを目指すものは簡単に諦めてはいけない。
助けを求めている人がいれば駆けつけ、物言わぬ花や物であっても慈しむ心を持たねばならない。
たとえ。
それが、得体の知れないジャケットであったとしてもだ。
何も知らないまま捨てるのも忍びない。物も大切にしてこそヒーローだ。
…だが。
さすがに何も手掛かりなしは、すこし堪えた。
道の端のベンチに腰を下ろし、空を見上げる。
アタシにも特撮みたいなサポートメカみたいなのがいたらなあ、と適当なことを考えながら少し身体を休ませる。
誰かがラジオでも置いて聞いているのだろうか。
遠くから、ニュースの音声のようなものが聞こえてくる。
ああ。
サポートメカか、または―――

「アタシが有名人だったら色んな人に聞き取り出来るんだけど―――、な…?」

痛烈な、違和感を感じた。
頭の上から爪先まで閃光が奔るような感覚。
何かで塗り固められた心に、罅が入るような感覚。
待て。待て。待ってくれ。
『アタシが有名人だったら』と仮定した瞬間に。
『もうアタシは○○○○じゃないか』と反論し主張する何か。

理性ではない、意識ではない。
自分は有名人でも何でもないし、テレビやラジオに出る機会などない。
そんなこと分かりきっている。
なのに。
他でもない、この体が叫んでいる。
ぐらぐらと頭が揺れる。
流れ込んできているのかはたまた戻ってきているのかはわからないが、見覚えのない記憶の奔流が少女の脳を駆け巡る。
そして、ソレが続くこと都合一分。
ヒーローを夢見る少女は、













「あ、アタシアイドルだ」



―――あまりにも唐突に、己が存在を理解した。
…思い出してみれば何と容易い。
何故こんなこと忘れていたんだろうという感情と、じゃあ今アタシは何故アイドルとして活動していないんだという謎。
違和感を解消したと同時にやってきた謎に首を傾げた瞬間。
じりり、と何かに手の甲を焼かれたような痛みが奔る。

「痛っ!?」

思わず跳ね上がり、右手の甲を見つめると。
まるで。刺青でも彫ったかのような、痣が出来ていた。

「何だろこれ…あっ」

跳ね上がってしまったのが失敗だったか。
手を離してしまったジャケットが風に煽られ、空高く飛んでいく。

「あ、ちょ、待った!!」」

舞い上がったジャケットを走って追いかける。
手を伸ばすが、ギリギリ届かない。
足の速さには自身がある方だったが、何故か追いつけない。
みるみる内に高度と速度を上げたジャケットに追いつけず四苦八苦。

「この…!」

スピードを上げる。追いつけない。
もう少しスピードを上げる。追いつけない。
疲れた。ちょっと休憩。距離は更に開いていく。
そして。
少し眺めていると、風は弱まったのか。
赤いジャケットは―――公園の隅の茂みに落下した。
再び飛び去らないうちに捕まえておこう、と光は歩いて近寄る。
歩いてみると、そう長い距離飛んでいなかったようで、すぐ手の届く範囲に到着した。

「全く、飛んでいったらどうしようかと思ったぞ」

回収しようと、手を伸ばす。
が。
残念ながら、光の手は空を切った。

「?」

ジャケットが、立ち上がった。
風に煽られたのでもなく、持ち上げられたのでもなく、立ち上がった。
―――いや。

「いててて…だーれだこんなトコで召喚したの。俺おしり打っちゃったじゃないの」

赤いジャケットに。サル顔のおっさんが付属していた。
付属していたというか、なんというか、いつの間にかジャケット着られていた。
なんという早業。ホームレスの方だろうか。物盗りかもしれない。不審者だ。

「ん?どしたのお嬢ちゃん目ェ丸くして。頭でも打ったか?」
「いや、その、それアタシの」
「ああ、これ?まったまたあ、面白い冗談をいうおガキ様だこと。
 ほら、小銭やるからジュースでも買って帰んな」

しっし、と男は手で掃うような仕草を見せると、そそくさと去ろうとし―――ピタッと止まると、すぐに引き返した。
あまりの急展開に光は抗議する暇すらない。
何処から現れたのか。いつの間にジャケットを羽織ったのか。というか何故人のものを我が物顔で羽織って去ろうとしているのか。
ただただ唖然とした顔で、目の前の男を見つめていた。

「ちょーち待ってお嬢ちゃん。手の甲、見せてみな」
「え、はい」

言われるがままに右手を差し出す。
先程痣がついてしまった右手の甲を見て、意外とくっきり痣がでてしまっていることに驚いた。
すると。
それを見た男は、さらに驚いているようだった。
そして二度三度考えるような素振りを見せた後、

「嬢ちゃん―――悪いことは言わねーからお家帰んな。それでなるべく外に出ちゃ駄目だ。オーケイ?」

などと言い放った。
光にはこの発言の意図が読めない。
何故ならば、光は『聖杯戦争』を知らない。
これから数多くの主従が現れ、血で血を洗い杯を奪い合う凄惨な儀式が行われるとは夢にも思っていない。
目の前の男―――『ライダー』が、己のサーヴァントであることも。
この男が。
自分を、危険から遠ざけようとしてくれていることにも。
だからこそ。
光は純粋で真っ直ぐな瞳のまま、言い放った。

「嫌だ」
「…ほぉ~ら、実はおじさん超悪い人なの。お家帰らないとこの拳銃でパーンしちゃうかもよ?」
「だったら尚更だよ。悪い人を見逃しにできない。それに、今おじさんが着てるジャケット、返してもらわなきゃ」
「ぐぬ」

脅しが逆効果に出てしまったことに男は歯噛みする。
光の瞳はどこまでも真っ直ぐだった。
見逃すわけにはいかない。
悪い人ならば、善として許してはいけないと信じている目だった。

「…」

その瞳に。男は―――在りし日のライバルと同じものを感じたからか。
頭をガシガシと乱暴に掻き回し、振り切れたように男は告げた。

「お嬢ちゃん。俺、誰だか知ってる?」
「?…いや、知らない」
「んじゃあ教えてあげちゃおっかなー」

まるで、悪戯をしかけた子供のように。


「『ルパン三世』…すっごい泥棒なの。返してほしくば捕まえてごらんーなさい」


ルパン三世。
世紀の大怪盗。
正義の味方をこよなく愛する少女の元へ召喚されたのは―――類稀なる、大悪党であった。
怪盗としてもマスターが少女であったのは完全なる計算違いだったが、死なせる訳にもいかない。
少々お荷物が増えたが、どうってことはない。
生前から日常茶飯事だ、慣れっこである。


小さなヒーローと大怪盗。
未だ闘争を知らぬ少女と共に、彼は行く。
戦争なぞするつもりはない。
闘争なぞするつもりはない。
大怪盗の目的は、一つ。
稀代の宝―――聖杯の、奪取である。
さあ。稀代の英雄達よ。
止められるものなら止めてみるが良い。

さあ―――聖杯を盗りにいこう。





【マスター】
南条光@アイドルマスター シンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
(マスターとしての自覚なしのため)なし。
【weapon】
なし。
【人物背景】
特撮をこよなく愛する少女アイドル。
何故か部屋に紛れ込んでいたルパン三世のジャケットを触媒に、記憶を取り戻したことによりマスター権を獲得、ルパン三世を召喚した。
何故部屋に紛れ込んでいたかは不明。理由があるのか、それとも全くの偶然なのか…?
【能力・技能】
特になし。
【方針】
おじさん(ルパン三世)を追う。
ジャケットも返してもらう



【CLASS】
ライダー
【真名】
ルパン三世@ルパン三世シリーズ
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷A+ 魔力D 幸運B 宝具C
【属性】
 中立・中庸
【クラススキル】
騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。
ルパン三世の場合、機械仕掛けの類いならプロすら敵わないほどの腕前を見せる。

【保有スキル】
千の偽り万の貌:EX
大怪盗ルパン三世の得意技。
変装技術であり、逃走技術である。
人相は勿論のこと体格から声まで、完璧に変装してみせる。
見破るのは難しく、高ランクの直感スキルでさえ見破れない。
ルパン三世がその気になればマスターにも変装させることができる。
逃走及び潜伏時に見つかりにくくなるなど有利な判定を得る。

芸術審美:B
芸術品・美術品への執着心。
芸能面の逸話を持つ宝具を目にした場合、低い確率で真名を看破できる。

道具作成:D
魔力を帯びた器具を作成可能。
ルパン三世の場合、盗生前使用した道具。
電子機器から解毒薬まで何でもあり。

専科百般:B+ 
 あまりにも豊富なその知識・及び能力。
戦術・射撃・体術・医療・デジタル・その他数多くの専業スキルについて、Cランク以上の習熟度を発揮できる。


【宝具】
『逃げろ逃げろや大逃走車!』(ルパン・ザ・カー)
ランク:E- 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

彼がライダーたる由縁の宝具。
なんてことないただの車であり神秘もほとんどないが、「大怪盗ルパン三世の逃走を補助した代表的な手段」として宝具化している。
故にこの宝具は「車」ではなく「ルパン三世の逃走の歴史・逸話が車の姿を形どった」宝具である。
彼が生前使用した車を何処からともなく召喚する。
宝具であるが、壊れれば新たに召喚可能。
ルパン三世は怪盗であって暗殺者ではない。
故に逃亡者、乗車の逸話が優先されライダーとなった。

『地を駆け空飛べ怪盗団』(ルパン・ザ・ファミリー)
ランク:C 種別:- レンジ:- 最大補足:-

彼の生涯の仲間―――石川五ェ門、次元大介、峰不二子を召喚する。
彼らそのもの宝具であり、サーヴァントである。
一人ずつ召喚することも可能であるが、峰不二子だけは彼女の気分で召喚に応じてくれないことも。

『ルパン三世』(ルパン・ザ・サード)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――

彼を彼たらしめる、『ルパン三世』としての逸話が宝具になったもの。
故に、彼の生き様そのもの。
『この世全てのものを盗み出す』という、反則極まる宝具である。
発動すれば彼に盗めぬモノなどない。
が、サーヴァント相手に発動した場合成功の確率は下がる。
しかし。
  • サーヴァントの真名把握
  • 対象と出会う回数が多ければ多いほど
  • 何より、ルパン三世が乗り気であること(盗み出す課程・及び対象に価値を感じているか)
この三つの条件のうち、一つ満たせば成功率は格段に上昇する。
二つ満たせば成功率は更に上昇。
三つ条件を満たせば―――大怪盗は、対象が宝具だろうと形のないものだろうと、確実に盗み出すだろう。

【wepon】
  • ワルサーP38。
神秘も少なく、通常のワルサーP38と威力はさして変わらない。
射撃に長けたルパン三世が扱えばサーヴァント相手でも立ち回れる程度にはなるが、一つの武器を極めた「究極の一」たちには敵わないだろう。
  • 生前使用した道具
不思議驚き改造道具たち。
盗みに関した道具ならば特製迷彩から盗聴機なんでもござれ。
スキル「道具作成」で作成可能。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯を盗む。
そして嬢ちゃんを巻き込むのは悪いため、離そうとも追ってきそうなので適当に自分のことを追わせつつ安全に生きて帰す。
ジャケットは自分のトレードマークなのでできれば返したくない模様。



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 23:01