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「おい、チビ野郎」


少年は、弱者だった。
ただ奪われ、怯えることしか出来ない弱者に過ぎなかった。
怯える少年を見下ろすのは、下衆な笑みを浮かべる若者達。
所謂「不良」と呼ぶべき人間達だ。
人気の無い路地裏で、少年は不良に囲まれていたのだ。


「お前さぁ、金は?まだ払って貰ってないんだけど」


不良の一人が少年に顔を近づけながら威圧的に言う。
少年は怯えながら不良を見上げる。
不良達にとって、少年は「金蔓」だった。
常に気弱でおどおどとしていて、その上何も出来ない。
カモにするには丁度いい相手だったという訳だ。
それ故に少年は無慈悲な簒奪の対象となる。
不良達に金を巻き上げられる被害者となってしまったのだ。

「ご、ごめんなさい…!今月はちょっと厳しくて…
 その……あの額は……流石に……!」

少年は俯き、おどおどと答えた。
少年は不良達に幾度と無く「友達料金」を払っていた。
友情の証。友達としての信頼。
そんな嘘っぱちを吐きながら、不良は少年から金を絞り取り続けていたのだ。

時間と共に不良達は少しずつ過激に、更に傲慢になっていった。
月日の経過と共に不良達は料金を釣り上げていった。
最早少年には払い切れない額となるまでに。


直後、少年が殴り飛ばされた。
不良の一人が手を出したのだ。


「友達料金払えないんならさぁ、もう友達じゃなくなっちまうんだよ!
 いいの!?友達じゃなくなってブチのめされたいの!?」

壁に叩き付けられた少年の胸倉を、殴り飛ばした不良が掴む。
脅し文句と言わんばかりの言葉を怒声と共に吐き出す。

少年は絶望した。
口答えなんてした所で、無駄なのだと。
彼らは徹底的に自分から搾り取るつもりなのだと。

全てを諦めようかと思った。
もう、どうせ何をやっても無駄なのだから。
そのまま少年が、素直に金を払おうとした。
その時だった。



「ヘイッ!そこの兄ちゃん達!」



どこからともなく、軽快な声が聞こえてきた。
不良達や少年が視線を向けた先に居た者。
それは大柄な体格を持つ、外国人の青年だった。


「そのおチビくんさぁ、俺の親友なんだよねェー……
 だからさぁ兄ちゃん達、そいつのこと放してくんねえかなぁ~~~?」


突然現れた外国人に、不良達も少年も唖然とする。
こいつは一体誰なんだ。
当の外国人を除き、この場に居る全員がそう思っていた。
その態度は何処か気さくで、悪く言えばおちゃらけている。
しかし、その容貌は不良達を警戒させるには十分だった。
190cmを超える身長。屈強な肉体。見慣れぬ肌の色。
小柄な日本人にとっては未知の風貌であり、異様とも言える存在だ。
不良達が僅かにでも怯むのは無理も無い。


「……ッ、何なんだよテメェは?」


そんな中、気性の荒い一人の不良が外国人の前に躍り出る。
体格で勝る外国人を見上げ、鋭い目付きで睨みつけたのだ。
外国人は真顔で目の前の不良を見下ろす。


「何?正義のヒーローごっこ?悪いけどさ、ぶちのめされたくなかったら―――――」


そう言って、不良が外国人の胸倉を掴もうとした瞬間。
不良の身体が、勢い良く吹き飛んだ。
外国人が容赦なく顔面に拳を叩き付け、殴り飛ばしたのだ。
不良はそのまま地面を転がり、呆気無く気絶する。


「そいつを『放せ』っつったんだよ!このスカタン共がッ!」


外国人は声を荒らげ、残る不良達に言い放つ。
不良達は外国人の力に動揺し、怯み出す。
目に見えて統率が乱れている。
今にも逃げ出しそうな様子だ。


「こ、この野郎ォッ!!」


そんな中で、一人の不良が――――懐からナイフを取り出した。
柄を握り締め、そのまま勢いよく外国人へと向かって駆け出したのだ。
仲間の静止も聞かず、不良は突進していく。


対する外国人は、平然と待ち構えていた。
拳を構えることも無く、武器を取り出すことも無く。
あるいは、逃げ出すこともせず。
突進してくる不良を真っ直ぐに見据えた。
そして、彼がゆっくりと取り出したのはコーラ入りのペットボトル。


瞬間。
ペットボトルの容器に詰められたコーラに、奇怪な電流が迸る。
直後に不良は目の当たりにした。
コーラが水鉄砲の如く噴射する様を。
コーラの勢いに乗せられ、ペットボトルの蓋が飛ぶ様を―――――!


「ぎゃあッ!!?」


素っ頓狂な声と共に、不良はナイフを落とした。
ペットボトルの蓋が弾丸の如く飛び、ナイフを『弾き飛ばした』のだ。
ナイフを弾かれた衝撃によって腕が痺れ、不良は驚愕の表情を浮かべる。
対する外国人は、余裕の態度。
ペットボトルの中に余ったコーラを、一気にがぶ飲みし始めた。

何が起こったのか解らない。
何なんだこいつは。
一体何をしたんだ。
不良達の表情はそう言わんばかりに青ざめていた。

目の前の外国人は、ヤバい。
不良達は本能的にそう理解した。
敵わぬ相手を前に混乱し、その場から必死に逃げ出したのだ。


「ヘッ!ザマーみやがれ!」


まるで悪戯小僧の様な表情でにししと笑い、外国人は不良を見送る。
そんな外国人を、少年は唖然とした様子で見つめていた。

彼はおちゃらけた態度で瞬く間に不良を撃退した。
少しばかり、怖いと思っていた。
だけど。
彼は、不良に金を巻き上げられている自分を救ってくれた。
名前も顔も知らない自分を、助けてくれた。

少年にとって、目の前の外国人はヒーローだった。


◆◆◆◆


外国人――――ジョセフ・ジョースター。
祖父は貴族の家系だったと言う英国人。
その性格は貴族には程遠く、おちゃらけた若者と言った風体だ。
他者を茶化す様な言動も多く、軽い人間と見られがちだ。

しかし、その胸の内には熱い正義感が秘められていた。
先程、彼は拳と波紋によって見ず知らずの少年を助けた。
ただ偶然少年が囲まれているのを目にしたから、それに割り込んだのだ。
彼にとっては得にもならない人助けだ。
だが放ってはおけなかった。見て見ぬふりをするのも後味が悪い、というのもある。
何より彼が秘める『黄金の精神』が、踏み付けられる弱者を見捨ててはおけなかったのだ。

さて、ジョセフ・ジョースターという男の人となりを語った所で一つ。
ジョセフにはある悩みがある。
それは――――――。


(ったくよォーーー……ここは一体何なんだ?
 俺は確かエリナおばあちゃんと一緒にニューヨークに来てたはずだよな…)


自分が『全く見知らぬはずの日本の街に居る』ということだ。
ジョセフはアメリカに飛んだ英国人である。
当然ながら日本に縁など無いし、訪れた記憶も無い。
だというのに、今の自分は日本に住むフリーターの外国人として存在している。
少し前までジョセフはそのことに何の疑問も抱かず生活していた。

しかし、ある時突然ジョセフは思い出した。
自分の素性を。自分が何者であり、何をしてきた人間なのかを。

更に今の日本は20XX年だと言うではないか。
自分の記憶が正しければ現在は1938年のはず。
まさか自分はタイムスリップをしたと言うのか。
何故か縁のない日本で暮らしている自分。
認識している西暦のズレ。
奇妙なことが起こりすぎている。

不良を撃退した後、ジョセフは一人そのことを悩んでいた。
市街地を歩きながら、一人悩み続けていた。
はっきり言って、自分はとっととニューヨークへ帰りたい。
その為に空港への移動も試したが、タクシードライバーは聞く耳持たずだ。

ジョセフはこの街の異常性に気付いていた。
時間のズレのみならず、『東京都から出る為の行動』の一切が妨害される。
まるで自分をこの街に閉じ込めているかの様に。
一体此処は、何なんだ――――?


「…あ?」


唐突にジョセフは足を止める。
市街地を歩いている最中、ジョセフはあるものに気付いた。


(何だこりゃあ…高級テーラーか?
 つか、こんなトコに高級テーラーなんかあったっけ?)


彼が目にしたのは、高級紳士服店―――テーラー。
この街は日本に住むジョセフにとっての主な行動区域だ。
街の地理はある程度把握してるつもりだし、目立った店も記憶している。
だというのに、この高級テーラーは『全く記憶にない』のだ。
更に不思議なことに―――通行人は高級テーラーに見向きもせず素通りしている。
突然出現した高級テーラーの存在を全く疑問に思っていないのだ。
まるで初めからそれが存在していたかの様に、受け入れている。
一体何がどうなっているんだ。そうジョセフが思った時だった。


「御機嫌よう。君を待っていた」


突如として、ジョセフに声を掛ける者が現れた。
ジョセフが視線を向けた先に存在していた者。
それは、高級テーラーの壁を背に立つ白人男性だった。
年齢は50代程か。整えられた髪、小綺麗なスーツ、知的な眼鏡といった風貌。
その出で立ちはさながら英国紳士とでも呼べるものだ。


「失礼ながら、先程の少年を助ける一部始終を見させてもらった。勇敢な青年だ」
「ちょっと待て、アンタ一体何者だ?突然話し掛けてくるどころか、堂々と覗き見宣言とはよォー!」


一方的に語りかけてくる紳士。
対するジョセフは少し苛立った様にそう吐き捨てる。
紳士は少しばかり思考した後、手招きをしながら高級テーラーの中へと入っていく。
店の中に入れ、とでも言いたいのか。
ジョセフは眉を顰めながら、ずけずけと入店をする。

紳士服が綺麗に並べられた古風な店内を眺めた後、ジョセフは紳士を見据える。
この男は、先程の少年を助ける一部始終を見ていたと言っていた。
一体いつから見ていたのか。
男の気配は一切感じられなかったし、それらしい人影さえ見当たらなかった。
ジョセフは男がただ者ではないことを見抜いていた。
そもそもこの男は、一体何者なんだ。
カウンターの前に立つ紳士を睨み、彼の返答を待つ。


「この街は聖杯戦争の会場。君は聖杯戦争のマスターとして選ばれた。
 たった一つの奇跡の願望器を巡る、所謂殺し合いだ。
 そしてマスターには必ず一騎の従者(サーヴァント)が宛てがわれる」


淡々と語る紳士に対し、ジョセフは再び眉をしかめる。
聖杯――――エリナおばあちゃんから聞いたことがある。
円卓の騎士とかいう英雄達が探したという聖遺物。
そして、この東京都はその聖杯を巡って争う殺し合いの会場だという。
普段ならば「テメー、一体何言ってやがんだスカタン野郎」とでも憤っていただろう。

しかしジョセフは、街の異常に気付いていた。
この世界のおかしさを既に感じ取っていた。
それ故に彼は、目の前の紳士の話を無言で聞く。

それにしても、殺し合い?
何故自分がそんなことに巻き込まれなきゃあいけないんだ。
姿を眩まし続けて、エリナおばあちゃんに寂しい思いをさせたくなんかない。
その為にも、この街から抜け出さなければならない。
手段は未定だが、出来ることなら殺し合いは避けたい。
乗り気な奴なら兎も角、自分の様に巻き込まれた者まで手にかけたくない。
もしそういった者と出会ってしまった場合は、出来ることならば助けたい気持ちもある。
思考を続けていた最中、ジョセフはあることに気付く。

聖杯戦争は、奇跡の願望器を巡る殺し合いという。
参加者であるマスターには必ず一騎のサーヴァントが宛てがわれる。
ならば、自分のサーヴァントはどこにいる。
まさか。



「私はアサシンのサーヴァント」



口元に微笑を浮かべ、紳士はそう答える。
そう、目の前に立つこの紳士こそがサーヴァント。
ジョセフ・ジョースターの元に召還された、一騎の従者。



「君の正義の心に可能性を見出した『紳士』さ」



彼は高級テーラーに務める英国人だった。
同時に、かつて聖杯伝説に登場した騎士の名をコードネームとして冠するスパイだった。

男の名はハリー・ハート。
コードネームはガラハッド。
諜報機関「キングスマン」に所属していた、紳士だ。





【クラス】
アサシン

【真名】
ハリー・ハート@キングスマン

【ステータス】
筋力D+ 耐久D 敏捷C+ 魔力E 幸運D 宝具D+

【属性】
秩序・中庸

【クラス別スキル】
気配遮断:C
自身の気配を絶つ。
完全に気配を絶てば発見することは難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
心眼(真):C
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”

専科百般:C+
諜報員としての多才な技能の具現。
戦術、学術、隠密術、暗殺術、詐術、話術といった数々の技能を体得している。

【宝具】
「礼節が紳士を作る(アクト・オブ・ガラハッド)」
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
キングスマンに所属する一流スパイ―――コードネーム「ガラハッド」。
一流のスパイとしての卓越した技術が宝具へと昇華されたもの。
諜報活動・隠密行動を行う際に有利な補正が与えられる。
更に自身が標的に先制攻撃を仕掛けた場合、戦闘中に筋力・耐久・敏捷のステータスにプラス補正が掛かる。

「紳士は群衆に潜む(ディセント・キングスマン)」
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
高級テーラーを隠れ蓑とし、キングスマンとしての正体を秘匿していた逸話の再現。
彼の現界と同時に自動発動し、高級テーラー(紳士服の仕立て屋)を街に出現させる。
高級テーラーは会場そのものに影響をもたらし、契約したマスター以外の人物からは「初めからその店が存在していた」ものとして認識される。
高級テーラーの存在を知らない、あるいは高級テーラーを宝具と認識していない者に対し、ハリーの全ステータスと魔力を秘匿する。
この宝具が機能している間、ハリーは単なるNPCの店員としか認識されない。
高級テーラーが宝具によるものだと認識された瞬間、その者に対しての秘匿は一切機能しなくなる。
自動発動したまま維持され続ける宝具だが、魔力消費は極めて小さい。

「引き金に敬意を込めて(ガンズ・アンド・ヨセフ)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ハリー愛用の傘型ライフル。
実弾・非殺傷弾・リング状のスタン弾を自由に切り替えることが可能。
更に低ランク・低威力の飛び道具なら傘の布で防御することができる。
高威力の飛び道具は防ぎきれないものの、魔力を消費することで破損した傘を修復することが可能。

【Weapon】
《拳銃》
キングスマン特製のオートマチック式拳銃。
威力は低いものの、急所に当てればサーヴァントも十分殺傷が可能。
銃身にはアンダーバレル式のショットガンも装着されており、散弾によって混戦にも対応できる。

《仕込み刃》
靴に仕込んだ刃。
速効性の毒が塗られており、人間相手ならば一撃を当てるだけで毒殺することが可能。
ただしサーヴァントには効果が薄く、一定時間体力を徐々に減少させるのみに留まる。
リーチが短くサーヴァント戦で有効ではないため、暗器としての使用がメイン。

《指輪》
右手に嵌めた指輪。
スタンガンが仕込まれており、対象を感電させることが可能。

《手榴弾》
ライターに偽装した手榴弾。

《紳士服》
紳士を形作る特注のスーツ。
防弾仕様であり、拳銃弾程度ならば弾くことが可能。
とはいえサーヴァント戦で期待できる程の防御機能は無い。

【人物背景】
表向きは高級テーラーに勤める英国紳士。
しかしその正体は諜報組織「キングスマン」に所属するベテランスパイである。
コードネームはガラハッド。
キングスマンはどこの国にも属さず、難事件やテロリズムの解決を任務とする。

【サーヴァントとしての願い】
なし。
ちょっとした「人助け」のつもりで召還に応じた。

【方針】
マスターを手助けする。
その過程でマスターが持つ素質と正義を見極める。




【マスター】
ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険 第二部「戦闘潮流」

【マスターとしての願い】
とっとと帰りたい。

【weapon】
なし

【能力・技能】
「波紋」
仙道とも呼ばれる術。
呼吸のエネルギーが生み出す生命の波紋の力。
ジョセフは波紋の素質を生まれ持っている。
その技量は未熟ではあるものの、吸血鬼を倒すには十分な威力を持つ。

「頭脳」
ある意味でジョセフ・ジョースター最大の武器。
数々の策や機転を駆使し、敵を翻弄する策士としての能力。
あらゆる状況・道具を利用した変幻自在の搦め手を得意とする。

【人物背景】
ニューヨークにやってきた英国人で、第二部のジョジョ。
第一部の主人公であるジョナサン・ジョースターの孫。
おちゃらけた軽い性格だが、その胸の内には黄金の精神を宿す。
祖母であり唯一の肉親でもあるエリナ・ジョースターを大切にしている。

この聖杯戦争におけるジョセフはニューヨークに来たばかりの時期から呼び寄せられている。
その為波紋の腕前は未熟であり、柱の男の存在も知らない。

【方針】
この世界から抜け出す方法を探す。



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 23:06