アットウィキロゴ


















「オレのそばに近寄るなああ――――――――ッ!!」


















「これは困った。マスターに近寄るなと言われてしまったぞ、こういうときはどうしたらいいんだ?」
「放っておけばいいんじゃないか」
「おいバール、それは怠慢ってもんだよ。こうしてサーヴァントとして召喚された以上は、マスターを盛り立てるのが僕らの義務にして責任ってもんだ」
「本人がやりたくないと言うなら無理強いすることもあるまい」
「いや、彼は錯乱しているんだ。僕にはわかる。うん、僕もまあ最初に死んで次に起きた時はあんな感じだった。シンパシーを感じるよ」
「だったら二人で仲良くやってくれ」
「おいバール、なんでそうやる気が無いんだ? ベリアルを見習え、忠犬のようにじっとマスターの命令を待って……おい馬鹿、寝てるんじゃない」
「……あぁ? ふぁ……俺はお前らに任せるって言うたやろ」
「だからと言ってサボるのは良くない。お前は生前からそうだった、めんどくさいことは全部僕らに投げて楽ばかりしようとして。良い機会だ、ここらでちょっとその性根を叩き直してやろう」
「また始まったか……勘弁せえや、そういうシチュエーションちゃうやろ」
「お前のせいだぞ、何とかしろ」
「何とかせえゆうたってな。ううん……」
「おい聞いてるのかベリアル。お前はだいたい昔から適当なところがあったが、こうして一心同体のサーヴァントとして召喚されたからにはそんな真似は許さないぞ。
 そもそもだ。僕らがまたこうして召喚されたのには何らかの意志が介在しているかも」
「あーッ! るっさいわちょっと黙っとけや! お前が喋ってたらなんも話進まへんやろが!」
「それには同意する」
「な、なんだよ……急に結託するなんてズルいぞ。多数決で少数派を圧殺するのは数の暴力であって、僕らの間ではやめようという話だったじゃないか」
「時と場合による。特にこの場合、お前に任せていたらいつまで経っても状況は変わらん」
「せや。おとなしくしとけ」
「お前たち以外と話すのは久しぶりなんだ、少しくらい見せ場をくれても」
「ベリアル、ベルゼブブを黙らせろ。俺が話をする」
「あいよ」
「ちょっ」






「騒がしくて済まないな。混乱しているところ悪いが、少し俺の話を聞いてくれ。
 俺……いや、俺たちはキャスターのサーヴァントだ。お前が俺たちのマスター、でいいんだな?」



――ディアボロの大冒険――

   PUSH ANY KEY


「こんなところだ。理解したか?」
「……ああ、何とかな」

オレ、ディアボロの前に立っているのは東洋人の男だった。
線の細い、そこらのチンピラに殴られたらそのまま昏倒しそうな男。
腕力自慢というわけでも、スタンド使いのような凄みもない。なのに、何故か本能がこの男には気を許すなと叫んでいる。
オレより一回り以上は若いはずだろうが、この落ち着き様は……まあ、サーヴァントとか言う化け物であれば外見から推し量れる年齢など無意味というものか。

「しかし、永遠に繰り返す死とはな。酷い地獄もあったものだ」
「お前たちがオレをあそこから引っ張り出したのか?」
「いいや、俺たちではないな。というか、俺たちもむしろお前と同じく引っぱり出された側だ。この東京……そして聖杯にな」
「トウキョウ……たしか、ニホンの首都だったな。じゃあオレはニホンにいるのか?」
「というわけでもない。ここが東京であるのは間違いないが、お前の知る東京でも俺の知る東京でもない。
 そうだな、何者かが東京を模して造った街、というのが一番近いと思う」
「戦わせるため。聖杯を奪い合わせるために、か」
「そういうことだ」

ようやく、落ち着いてきた。
オレの名はディアボロ……イタリアのギャング「パッショーネ」のボス。
スタンド「キング・クリムゾン」、健在。「エピタフ」もある。

「ほう。それは悪魔か?」
「悪魔? いや、オレはスタンドと呼んでいるが」
「スタンド! 興味深いね。傍に立つもの……悪魔とは似て非なるものだ。各々の魂、いや精神のビジョンか。なるほど、実に面白い」
「黙ってろと言ったぞ。ベルゼブブ」
「はいはい」
「ちょっ、もうちょっとだけ……」
「脱線したな。ふむ、ともあれマスターがある程度の戦闘力を備えていることは僥倖だ。なんせ俺たちは弱いからな」

な……何だ今のは? この東洋人の顔が、一瞬違う別の誰かに切り替わったような……

「そういうものだと理解してくれ。俺たちは三つの人格を共有している。俺、さっきのうるさいやつ、もう一人の頭が軽そうなやつ。俺たち三人でキャスターだ」
「おい、頭が軽そうなやつって誰のことやねん」
「俺でもベルゼブブでもなければ一人しかいないと思うが」
「あーさいですか、そりゃ悪かったなぁ!」
「話を続けよう。とにかく、俺たちはお前を勝たせるためにここにいる。とりあえずは味方だと思ってくれていい」

三つの人格……俺とドッピオのようなものだろうか?
そう、キング・クリムゾンを出した時に気付いたのだが、ドッピオはもういない。
ポルナレフのスタンドに魂を入れ替わらされたとき、ドッピオはそのまま逝ってしまった。
数少ない、というか唯一オレが信頼する他人……オレ自身が。

「……それで。オレは何をすればいいんだ?」
「だいたいは説明したとおりだ。もしお前が聖杯を手に入れられれば、永遠に続く死の運命からも逃れられるだろう」

このとき、深く底のない闇に、光が差した気がした。
もう何度繰り返したかわからない圧倒的な死の恐怖。一瞬とて気の休まることのない殺意のジェットコースター。
何も信頼できず、未来に希望を持てず、ただただ死に続ける日々。
あの憎き裏切り者ども、あの新入り……ジョルノ・ジョバァーナ。あいつにしてやられたあのときから、一体どれだけの時間が経ったのだろうか。
死を前に意識を閉ざすこともできず、常に覚醒したまま新たな死に放り込まれる。狂いたくても狂えない、無限に続く暗黒の時間。


それを、終わらせられる。
もう一度、頂点に返り咲くことができる。
聖杯を手に入れたのならば。
いいや、それでなくてもここで死ねばあの運命からは解放されるんじゃないか?


「どうする? あいつらはともかく、俺としては無理強いはしたくない。危険な、そして勝算の薄い戦いだからな。お前が元の死に続ける運命を良しとするなら、ここで退散するが」
「いや、そんな戦いをしなくてももう助かったも同然だろ。ここで死ねば本当に死ねるんだろ?」
「うーん、それはどうだろうね。もしここで君が誰かに負けたとして、多分君だけは元の死に続ける運命に引っ張られると思うよ?」
「うっわ、キッツいなそれ。聖杯獲るしか助かる道ないやんけ」
「な……おい待て、ここで死んでも俺は助からないのか?」
「死んで助かるってのも変な話だけどね。普通、聖杯戦争で負けたら元の自分の肉体と魂も一緒に死ぬだろう。
 だけど君の場合、戻るべき肉体も魂も既に死んでいる……いや、今も死に続けている、か。元の状態に戻るだけだろうね」
「なん……だと……」
「聖杯もアフターケアまでは万全じゃないらしい」

死んでも助からないっていうのか。ここでもなのか。
あっのっ小僧……どこまで、どこまでオレをコケにしやがる……!
いいだろう、肚は決まった。やってやろうじゃないか。

「……あー、なんだ。同情はするが……どうする? 負けても今までどおりだが、勝てば帳消しになる。答えは、訊くまでもないか」
「やる。オレは聖杯を手に入れる。どんな手段を使っても、どんな屈辱を呑もうともだ。力を貸せ、キャスター」
「いいとも! いやね、僕らも僕らで叶えたい願いというものはあるんだ。でもほら、古今東西あらゆる英雄が集う聖杯戦争だろ?
 僕ら程度の木っ端サーヴァントを召喚するマスターなんていないと諦めていたんだけど、そこへ君が来たんだ! このチャンスは逃せないね」

おい待て、今木っ端サーヴァントって。ていうかこいつら、さっき自分のことを弱いって言ったよな。
何ということだ。せっかくチャンスを掴んだと思ったら、こいつら頼りにならんのか。

「待て待て待て、あのメガネの言うこと全部真に受けたらアカン。そりゃ確かにガチンコの殴り合いやと俺らは多分下の下の方におんのは間違いない。
 でも俺らはキャスターや。律儀に正面からケンカをする必要なんてないで」
「幸いなことに、マスターはそれなりに戦える力を持っているようだ。しょせん俺達サーヴァントはマスターを寄り代にここへ出張してきてる亡霊にすぎん。
 俺たちの特性をうまく使えば、格上の相手だろうと喰うのは不可能ではない」

サーヴァントではなくマスターを暗殺しろ、ということか。
それなら……やれるかもしれない。我がキング・クリムゾンは健在だ。
サーヴァントを相手にするのは無理だろうが、人間のマスター相手ならオレが勝てない道理はない。

「お前らが強かろうが弱かろうがどうでもいい。オレには他にアテがないのだからな」
「物分りの良いマスターで助かるよ。では契約成立だ。マスター、お前の名を教えてくれ」

一瞬躊躇ったが、こいつらに素性を隠しても仕方ない。
信頼などできるわけもないが、今はこの怪しげな東洋人どもしか頼れないのだから。

「オレの名はディアボロだ」

名を告げる。
すると、キャスターは。三人の男たちは。
弾けるように、笑い出した。


「ギャッハハハハハハハハッ! 聞いたか? 聞いたか? ディアボロゆーたぞこいつ!」
「ククッ……おい、笑ってやるな……失礼だろう……クク」
「いやあ、はっはっは! これはいいね! 僕達にぴったりだ! よりによって、よりによってディアボロと来たか!」

キャスターが地面を転げ回りながら爆笑している。
顔が見える度に別人になっているのだが、腹立たしいことにどいつもこいつも笑っていやがる。
だがムカつきよりも困惑が先に立つ。

「おい、いったいどうした。何がそんなにおかしい」
「いや……失敬……クッ。ちょっとその、ディアボロという名がな……ククク」
「あー、腹痛いわ。でも、気を悪くすんなや、マスター。別にお前を笑い者にしとるわけやないんや」
「そうそう、その逆さ。むしろ、僕たちは君をとても好きになった。君こそが僕たちのマスターだ。
 君以上に僕らに相応しいマスターはいない。そして僕ら以上に君に相応しいサーヴァントはいない。絶対に。いや、これは確信だよ」

涙さえ浮かべてキャスターたちが言う。なんなんだ?

「ふう……すまなかったな、マスター。では、今度は俺たちが名乗ろう。俺たちの名は、執行細胞(ファーストセル)」
「僕たち三人を指し示す名さ。で、もちろん僕たちを個別に指す名前もある」

と、キャスターがワインレッドのスーツを纏った軽薄そうな男に変わる。

「俺がベリアルや。よろしゅうな」

メガネを掛けた細っこい男に変わる。

「僕はベルゼブブ。ベルゼブブ・パターン略してベルパー、と呼んでくれてもいいよ」

そして最初に出てきた、何を考えているか表情からは伺わせない落ち着いた男に変わる。

「俺はバール。まあ……もうわかっただろう? 俺たちがお前を気に入った理由が、な」

なるほど、そういうことか。納得がいった。
ディアボロ、それはイタリア語で「悪魔」という意味を持つ。
そしてバール、ベリアル、ベルゼブブ。これらもたしか、どこかの宗教において「悪魔」「堕天使」の意味を持っていたはずだ。
ディアボロ、バール、ベリアル、ベルゼブブ。
悪魔の名を冠するオレたち。
オレがこいつらを呼び寄せたのか、こいつらがオレを選んだのか。
そんなことはわからん、どうでもいい。オレのやることは一つだ。

「オレに力を貸せ、悪魔ども。オレは聖杯を手に入れ、もう一度、帝王となる……!」
「アイ、サー。マスターのお望みのままに」
「帝王。帝王か。女王とはソリが合わなそうだが、洒落が効いてていいじゃないか」
「なんや、おもろなってきたやんか。久々に楽しくなりそうやで」

こうして、騒がしい悪魔どもと共に。
オレの、ディアボロの、二度目の戦いが幕を開ける。
この「試練」……オレを絡め取る死の運命を、何としても乗り越えてみせる。





【クラス】
 キャスター
【真名】
 執行細胞(ファーストセル)@Dクラッカーズ
【パラメーター】
 筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:C 幸運:A 宝具:EX
【属性】
 混沌・善
【クラススキル】
道具作成:C
 「魔術師」のクラス特性。魔力を帯びた器具を作成可能。
 ただしキャスターが作成するのは「道具」ではなく、道具の形をした「悪魔」である。
陣地作成:B
 「魔術師」のクラス特性。魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
 ただしキャスターが作成するのは「陣地」ではなく、複数の端末によって構成される「領土」である。
【保有スキル】
扇動:A
 数多くの大衆・市民を導く言葉と身振りを習得できるスキル。個人に対して使用した場合はある種の精神攻撃として働く。
気配遮断:D
 自身の気配を消す能力。バールの「人の認識を操作する力」により、「傍に立っていても見えなくなる」「初めて会うのに親しみを覚える」といった擬似的な気配遮断の効果を得る。
【宝具】
『執行細胞(ファースト・セル)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:自分
 キャスターの真名にして、彼らの在り方そのもの。常に発動しているが、魔力の消費はない。
 本来は個別に存在する三人の人間だったが、「悪魔」という存在を召喚・分析そして理解し、やがて自らも「悪魔」に成り果てた者たち。
 一つの身体に「バール」「ベリアル」「ベルゼブブ」の三つの人格を宿す。
 どの人格が主人格というわけでもなく、三体は常に思考を共有し常にお互いを認識している。
 バールは人の認識を操作する力を、ベリアルはカプセルによって自らの悪魔を召喚する力を持ち、ベルゼブブは洞察力や人を扇動/先導する弁舌に長ける。
『掌の悪魔(カプセル)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 執行細胞によってドラッグの形に擬態させ召喚された“悪魔”。
 才能ある者が服用した場合、「悪魔」を召喚して使役することが可能になるが、その機能は今回オミットされている。。
 しかし魔力を内包していることに変わりはなく、悪魔を召喚できないユーザーであっても、一錠の服用で少量の魔力を補給することができる。
 多量に摂取すればその分莫大な魔力を獲得するが、悪魔とはいえドラッグに変わりはないため中毒症状を発症する可能性は大きくなる。
 カプセルに自意識や行動性はない。また、放置しておき監視の目がない状況であれば“少量ずつ、不自然ではない程度に”自己増殖する。
 このため生産設備はない。一度キャスターが生産しマーケットに放出すれば、それ以降カプセルはキャスターの魔力を消費することなく緩やかに増殖していく。
 通常、一部の例外を除いて一度発生したカプセルにキャスターが何らかの干渉をすることは不可能。
 カプセルを飲んだ対象はキャスターの支配下に置かれるわけではなく、カプセルを服用して生まれた魔力でキャスターを害することも当然可能である。
『始末屋(スイーパー)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:10人
 かつてファースト・セルの面々が興したセルネットという組織において、外敵を屠る剣として猛威を振るったベリアルの「悪魔」を召喚する。
 ベリアルの悪魔は全長15メートルにも及ぶ大蛇。姿こそ大蛇であるが、悪魔であるため物理法則に縛られず浮遊することも可能。
 巨体を活かした物理攻撃や拳大ほどの鬼火、さらには対象の魔力・精神力そのものを燃やし尽くす黒い炎を吐く。
 召喚中にカプセルを服用することで、さらに出力の上昇・持続時間の延長を行える。
『王国(リミテッド・ワールド)』
ランク:EX 種別:対精神宝具 レンジ:1-100 最大捕捉:1000人
 カプセルを多量に服用した者は、やがてある夢を見る。
 緑の木々に囲まれ、鳥たちが唄い、川がせせらぎ、柔らかな陽の光が指す。そして、その中心に高い塔が立つ。
 塔には女王が座し、三人の忠臣が女王の命を受け塔に集った者を導く――すなわち、「王国」である。
 一定数以上の重度のカプセルユーザーが生まれたとき、彼らの精神は無意識下でリンクして巨大な一つの意志となる。
 これこそが「王国」であり、夢が現実を侵食するための架け橋。固有結界の亜種。
 現実世界においてキャスターを中心に発生した王国は、効果範囲内に立ち入ったあらゆる者の自己認識を奪う。そしてキャスターによって新たな役割を与えられる。
 この認識阻害は対魔力スキルによって抵抗できるが、範囲内にいる間、一分ごとに成功判定を行う。一度王国に囚われた者は、外部からの働きかけがなければ現実に復帰できない。
【weapon】
 なし
【人物背景】
 かつて地方都市・葛根市のアンダーグラウンドで勃発した、カプセルを巡る騒乱。その始まりにして終わりの場所に立っていたのが、三人の人間たち。
 人間から悪魔に堕ちた三つの意思は一つの身体に収まり、それぞれが別個の意識として存続する。
 彼らの目的は、地上に「王国」を建国すること。そして、夢の悪魔――「女王」を新たに召喚し、王国を永遠のものにすることである。



【マスター】
 ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風
【weapon】
 なし。
【能力・技能】
スタンド「キング・クリムゾン」 【破壊力 - A / スピード - A / 射程距離 - E / 持続力 - E / 精密動作性 - ? / 成長性 - ?】
 「時間を消し飛ばす能力」と「数秒先の未来を予知する能力」を持つ。
 ただし対魔力スキルを持つサーヴァントの時間を消し飛ばすことはできない。
【人物背景】
 ギャング組織「パッショーネ」のボス。強力なスタンド使いであり、決して他人に心を許さない。
 自らの過去・正体に繋がるものはたとえ娘であろうとも無慈悲に排除しようとし、感情に動かされることはない。
 新入りの小僧のせいで永遠に終わらない「死」、無限地獄を繰り返すことになる。
 ドッピオはいない。
 与えられた役割はギャング組織のボス。
 聖杯戦争の間だけ、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの効果は解除されている。ただし死ねばまた死を繰り返す日常に回帰する。



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 23:13