誰もいない、寒々としたビルであった。
かつてはオフィスとして使われていたのだろうが、今ではがらんどう、埃が積もるばかりの廃ビルだった。
不況のあおりを受けたのか、はたまた状況の変化で立地に価値がなくなったのか、いかなる理由かこのビルからは人が消えていた。
雑多な人々が行きかう街、東京。
道では深夜であってもそれなりに人が行きかっている。歓楽街のチカチカするネオンサインを遠目に、オフィス街においても未だ光が灯っていた。
そこは、そんな街にぽっかりとできた空白。社会におけるデッドスペース。
――厭な臭いがする。
エレベーターは止まり、電灯一つ付かない。
それでいて窓はぴっちりと閉ざされており、外界からは完全に遮断されているように見える。
そんなほの暗い灰色に包まれながら、彼は階段を一段、一段と上っていく。
靴音が空虚に響く中、鼻に来る埃の臭いを嗅いで彼は顔をしかめた。
――ああ、厭な夜だ。
彼は心の底からそう思っていた。
誰もいないこんなビルに、特に縁もない身分で乗り込もうというのだから気が滅入る。
階段を上りながらも、彼はこの状況に対してうんざりする心地だった。
とはいえ――怖くはないのだ。
夜分の街に誰もいない場所に行く。ともすれば非常に“怖い”場面だ。
幽霊、妖怪などなどの都市伝説の類を想起する者もいるだろうし、そうでなくとも何かしら危険人物が潜んでいそうな雰囲気がある。
何より暗い、というのはそれだけで本能的な恐怖を齎すものだ。
「…………」
だが、今ここにいる彼に“怖い”という感情はなかった。
あるのはただ目の前の状況に対する面倒くささ――厭だ、という感覚だけだった。
それも当然で、彼は魔術師であった。
根源を求め、世俗の律とは切り離された道を生きる者、魔術師。
彼にしてみれば、たかだか数十年の歴史の浅いビルに縛られる霊など恐るるに足らぬし、追剥や乞食の類はもっとどうでもいい。
こと夜の世界において彼は捕食者であり、決して被食者ではないのだった。
また――それだけではない。
今の彼には、飛びきりの武器があるのだから。
聖杯戦争、というものがある。
それは英霊を従え、それを競合わせることで根源へと至らんとする魔術儀式。
過去に活躍した英傑をサーヴァントなる不遜な名で縛り、従える。彼はそんな儀式の参加者――なのであった。
つまり彼には幽霊がついている。それもとびきりのだ。そこらの有象無象など一ひねりできる英傑を支配下に置いて、何を怖がるものがあるというのか。
「しかし、方舟の船団ね。安直なネーミングだ」
彼は、やれやれ、といった風に呟いた。
方舟の船団なる組織が聖杯戦争において結成されている――などという情報を掴んだのは、今朝のことだった。
この聖杯戦争には多くの陣営が参加している。その中である程度結託するのは、まぁ、考えることだ。
最後には袂を分かつにしても、数の力と言うのは大きなものだからだ。
そこにおいて、ある陣営が一般市民をも巻き込んだ組織を動かしている――などという情報が入ってきたのだ。
彼はそこで考えた。これは早めに潰しておいた方がいい、と。
この手の組織というものは、時間が経つほど厄介になる。ならば序盤に優先して打倒すべきは、こういった手合いである。
そしてこの組織は、今夜この場所で幹部格が集うとか――ならばそこを襲って一網打尽である。
彼は魔術師らしいシンプルかつ合理的な――あるいは短絡的かつ強引な――思考を持ってして、そう決断した。
事前の情報収拾によれば、この組織に参加しているサーヴァントは非常に弱い。
恐らくはキャスターかアサシンに属するものだろう。
弱いからこそ徒党を組むのだからある意味当然だが、たとえ複数相手取るにしても脅威にはならない、と彼が判断する程度の戦力のようであった。
だから、彼にしてみればハンターが狩場に赴くのに相違なかった。
これから始まるのは一方的なハントであり、決して戦争などではない。
ただその狩場が少々不快な空気をしていた、とそれだけのことだった。
「…………ン」
けだるげな心地で階段を上っていると、不意に彼は足を止めた。
真っ暗やみなビルの中、ぼう、と光るものを視界の隅に見たのだった。
何だ――と思い、彼は足を止めそちらの部屋を窺う。
その先には埃臭い部屋と――そこにぽつんと置かれた小型のディスプレイがあった。
奇妙な物体に彼は頭を捻る。彼はこうしたメカニカルなもの――もっといえば近代的かつ現実的なものに弱い性分であった。
それ故、誰もいないビルにそんなものが置かれてあることの異常性が分からない。
いや、何かおかしい、とは感じるのだが、そのおかしさが具体的にどういうものであるか分からず、ぼやけてしまっているのだ。
ザーザー、と砂嵐のようにノイズが走る画面を前に、彼はしばし動きを止めた。
「――ようこそ、愚かなる魔術師くん」
その時、突如として画面が暗転した。
そこにい映っていたたのは――少年だった。
月夜、赤く巨大なタワーを背景に彼は佇んでいる。
彼は黒と白のコートに巨大なマントを羽織っており、またところどころに据えられた金の装飾が目立つ。
その整った顔立ちと相まって“王子様”とでもいうべき趣を身に纏っていた。
中でも目を引くのはその眼で、艶々とした黒髪の向こう側に真っ黒な眼帯が据えられているのだ。
まるでその瞳を押さえつけるように、あるいは何かを隠すように、彼はその左眼を覆っている。
「我々、方舟の船団を狙いに来たのだろうが、この手はいささか安易と言わざるを得ないな」
彼はそう言って仰々しく手を広げた。
照明に照らされた赤いタワーの下、ばっ、とマントが舞う。
その所作は傲岸かつ高慢なものだった。それでいて、どこか線が細い。
まるで思春期の万能感を凝り固めたのような、現実味の薄い人間性を感じさせる。
「何だ? お前は。名を名乗れ」
だが魔術師たる彼としては、その挑発が特に鼻に障った。
決闘の申し込みならいい。愚か者の不遜だというのならば笑ってやろう。
だが、コイツは――船団の襲撃というこちらの目的を看破したうえで、ディスプレイなどと言う世俗の技術越しにこちらを挑発した。
そのやり方が、彼を苛立たせたのだ。
「我が名はキャスター。
――お前の敵にして、聖杯を手にする者だ。括目して相対するがいい」
その言葉に対応するように――ディスプレイの少年は高らかにそう名乗った。
「キャスターだと……!」
キャスター。聖杯戦争の一クラスにして“魔術師”のサーヴァント。
ディスプレイの向こう側の少年は、英霊だというのか。
「ああ、そうだよ、君の考えている通りだ、魔術師くん。
君はそう――まんまと引きずりだされたのだよ、このキャスターの罠にね」
その言葉に、彼はぐっとその手を握る。
そう、今まさに彼はその可能性に思い至っていた。
方舟の船団を一網打尽にしてやろうとやってきたのだが――しかし、その先ではキャスターの挑発が待っていた。
これはつまり、彼の襲撃を事前に予想して罠を張っていたということではないか。
「君が掴んだ我が“方舟の船団”の情報。それは半分当たりで、半分間違いだ。
確かに我々は今夜、そのビルに集結する。だがそれは――お前を撃つためだ。
今からお前を我がマスターとその同胞が襲う。数の暴力を持ってして、お前は敗けることになるのだよ」
少年は意気揚々とそう語る。その語り口は非常に挑発的で、余裕綽々、といった風な口ぶりが非常に勘に障った。
「――バーサーカー」
それ故に、彼はいら立ちを持ってその名を呼んだ。
途端、一人の狂戦士がその身を結ぶ。幽体として潜んでいたその身が解き放たれ「■■■■■――!」と濁った叫びがビルに響き渡った。
「行け、とっととこの愚か者を始末しろ。
あの赤いタワー――東京タワーへ向かえ」
魔術師はそう叫びを上げ、狂戦士を夜の街へ解き放つ。
バーサーカーは雄叫びを上げながら命令を遂行――ディスプレイの向こう側のキャスターを殺しにかかった。
「……馬鹿はお前だ、キャスター。そんなアホみたいに目立つものを背景にして、俺が気づかないとでも思ったのか!」
彼はディスプレイに掴みかからんばかりの勢いで、キャスターへと挑発し返す。
少年が送ってきた動画には赤いタワー――この街の象徴たる建築物が映っていた。
ということはその場所に今彼はいるのだ。英霊たるバーサーカーならば、すぐにでも駆け付けることのできる位置だ。
「馬鹿め。これでぶち殺されるのはお前だ! 何が括目して見ろ――だ」
キャスターは一般的に直接的な戦闘を不得手としている。
このキャスターもその例に漏れないことは、こうして動画を送ってきていることからも明らかだ。
故に――バーサーカーを送り込めばそれこそ一瞬でひねりつぶすことができるだろう。
そう確信して、彼はキャスターに対して嘲笑する。
対するキャスターは何も言わなかった。それまでの雄弁が嘘のように、しばしの間沈黙している。
「どうした! 恐ろしくて声も出ないか。だがもう遅い俺のバーサーカーは……!」
「――だからお前は短絡的なんだよ、魔術師くん」
はっ、と彼は顔を上げた。
それは明らかに異常な事態だった。
そう、キャスターの声が聞こえたのだ。
「フフフ……フハハハハッ! どうした幽霊でも見たような顔をして」
――ディスプレイの向こうのキャスターは、未だ沈黙を保っている。
その声が聞こえたのは、彼の背後からだった。
目を見開き、振り返るとそこには“王子様”のようなキャスターがいる。
ディスプレイの向こうと、こちら側の両方に彼が同時に存在している――!
「人形でも使ったのか……!」
魔術師として彼が思い浮かべたのはそれだった。
このキャスターが人形使いに類する者であり、その技を使って自身を擬似的に二つ並べた――のかと考えたが、
「違うな、間違っているぞ」
――だがキャスターはそれを真っ向から否定した。
「私が吐いた嘘は一つだけだ。それをお前が幾重にも勘違いした、それだけだよ魔術師くん。
――私は最初からあの画面の向こうにはいない」
そう宣言され、彼は思わず液晶を振り向いた。
東京タワーの下で、キャスターの姿はなおも動かない。
「馬鹿な。だがお前は確かに俺と会話して――」
「一つ教えてあげよう、魔術師くん。画面を介しての会話と言うのはね、思いのほか面倒な用意がいるんだ。
コンピュータとか、ネット回線とか、こんなビルに整っている訳もないだろう?
だから――」
魔術師の現代技術に対する無知を嘲笑い、ニィ、とキャスターは口元を釣り上げる。
その所作から、彼はキャスターの策を知る。
「まさか! お前は俺の思考を呼んで」
「そうだ。私はお前のことを調べる時間があった。お前は今朝ようやく船団のことを知ったのだろうが、しかし我々はその前からずっとお前に目をつけていたのだよ。
――次なるターゲットとして。思考パターン、会話の間、何を知って何を知らないか、お前の全てを把握できるようにな」
キャスターの言葉に彼は舌打ちをする。
ディスプレイ越しの会話は全て茶番だ。あれはきっと数日前に録画したものだろう。
それをこの場で流し、あたかもキャスターが東京タワーにいるように錯覚させる。
「――だがそれがどうした。
お前ごとき軟弱な魔術師、俺の敵ではない」
まんまと嵌められたことを自覚しつつも、しかし彼は声高にそう叫ぶ。
マスターたる彼にはキャスターのステータスが見えている。
筋力:E- 耐久:E 敏捷:E ――と非常にひ弱なステータスしか持っていない。
同じ“魔術師”として、敗けるとは思わない。このキャスター相手ならば直接対決でも負けるとも思えない。
「起動/awake」
故に彼は揚々と魔術を行使する。
そして――闇の中に、ぬっ、と彼のもう一人の従者が立ち上がる。
煌々と不気味に照り光る瞳。陶器のような真っ白なボディ。ぎぎぎ、と歪な音を立てる間接。
魔術師として、彼が得意とする“人形”の魔術であった。
その自信に裏打ちされるように、彼の人形は多機能かつ強力、操る彼の詠唱もまた洗練され無駄がなく、そこに関しては慢心がない。
「……二つ、教えてあげよう。
一つは、確かに私は君よりも弱いだろうということだ。私の本分は軍師であり、王だ。
チェスにおけるキング。それが私だよ。対する君はナイトか、あるいはルークか、何にせよ王よりは強い駒だ」
立ち上がった人形を前にしても、キャスターは変わらず傲岸に告げる。
「そして、もう一つ。これは――方舟の船団なる組織は初めから存在しない、ということだ」
「何っ!?」
「ここにいるのは――我がマスターだけだ!」
ばっ、とキャスターがマントを広げた――と同時にその男はやってきた。
「――何時まで待たせる気だ、キャスター」
その男は――えらく古風な格好をしていた。
古風な、というのは魔術師たる彼の感覚だ。真っ白いローブを羽織り、デカい杖を持っているその姿は、現代性とは程遠い魔術師から見ても古風な――あるいは陳腐な外見をした魔術師のように見える。
「何で僕が待っていなくちゃならない」
「マスターの役割は神官/ビショップだろう? サーヴァントは言うならばクイーンだ。
鬼札は引き離しておくに限る」
「何でもいいから――」
キャスターと会話を交わしつつも、敵マスターは眼鏡を、くい、と上げた。
――マスター同士の戦いと来たか。
その思惑を把握して、彼は自然とその手に力が籠る。
キャスターはどうやら戦闘能力がないらしい。故にバーサーカーを引き離し、マスター通しの戦いへと持ち来んだ。
彼は目の前の陣営の行いをそう分析した。
――望むところだ。
その思惑に対し、魔術師たる彼は「Start!」と叫びを上げた。
ぎぎぎ、と人形が動き出す。魔術師の決闘。ならば敗ける気はしない。
故に彼は令呪でバーサーカーを呼び戻すような真似もしない。受けてたとう。そんな心持であった。
「我が炎を前にして、決闘とは良い覚悟だ。我が名は――」
「――いくぞぉ!」
――が、格式に則り名乗りを上げようとした彼を、敵マスターは完全に無視した。
ばっ、と敵マスターはリノリウムの床を蹴る。
白いローブがふわりと舞い、同時に積み重なった埃が散った。
その向こうから敵マスターが「おらあああああああああ」と獰猛な雄叫びを上げながら迫ってくる。
その突飛な行いに彼は面を喰らい、一瞬人形の動きが止まる。そこに敵マスターが杖を振るってくる。
人形に対し敵マスターはまず杖を使い殴打。次に殴打。そのまた次にも殴打――殴り殴り殴り殴っている。
――コイツ、魔術を使わないのか。
その殴打に“強化”だとか“エンチャント”だとか、そうした技術の香りは一切なく、彼はただ物理的に杖を振るっていた。
ガンガンガン、と敵マスターは人形を殴り続ける。我に返った魔術師は人形を動かし、敵マスターを追い払わんとする。
こちらは腕部に刻んだルーンにより呪いを込めた一撃。生身で喰らえばひとたまりもないであろう一撃だ。
「もともと! これは! 僕の戦いだったんだよ!」
が、敵マスターはさっとそれを避け、すぐさま反撃に転身した。
殴り殴り殴りまくって、人形の攻撃が来たらすぐに身を逸らし、また殴る。
別に奴が敏捷という訳じゃない。動きは常人の範疇だし、何よりローブが動きにくそうだ。
が、えらく肝が据わっているのだ。人形の一撃一撃を必要最低限の動きだけで躱している。
一撃の危険さを理解していないのか――それとも自分を不死身だと思っているのか、敵マスターは一心不乱に攻めてくる。
「それを! あんのキャスターが! 余計なことしやがって!
ここはグリムガルじゃないみたいだから! 精々従ってやったが!
ああクソ! クソ! クソ! クソ! やっぱりお前の! 敵は! 僕! なんだよ!」
敵マスターは攻めている。攻める以外の行動を知らないのか、叫びながら杖を振るってくる。
無論、人形だって攻めている。耐久やら攻撃の威力やらで勝っているのは間違いなく彼の人形の方で、普通に考えたら勝つのも自分の方だ。
が、敵マスターはそんなこと知ったことかと言わんばかりに攻撃だ。
その様子を例のキャスターは涼しげな表情で見ており、彼は本当に戦闘に参加しない心積もりのようだった。
「おらあああああああ、旋回破斬/トルネード・スラム!」
そして――遂に人形が打倒されていた。
敵マスターが、ぶうん、と回るようにして杖を振り回した結果、ぐら、と人形が態勢を崩す。
そこを更に攻められる。強引に作った隙にねじ込むようにして攻撃が叩き込まれる。更に殴打殴打殴打殴打、だ。
結果として――人形は倒れていた。
糸が切れたようにその人形は動かなくなり、後には、はぁ、はぁ、と息を切らす敵マスターだけが立っている。
「そんな――」
馬鹿な、と思わず魔術師たる彼は漏らしそうになった。
魔術師同士の対決で、単なる物理的な攻撃のみで勝利するなど。
そもそもそれでは魔術師の決闘では――
「うおらぁぁぁぁ! 輪転破斬/サマーソルト・ボム!」
――言葉を遮ったのは、今度はこちらに回ってきた敵マスターの攻撃だった。
がん、と頭が殴られる。血が滲み、前歯が飛び、よだれが舞った。
痛みの中にあって、敵マスターのエキセントリックな叫びが耳を打った。
「クソ! あほ! しね! ばーか! ばーか!」
その叫びと共に、彼は令呪を使うまでもなく意識を喪った――
◇
「あああああったく、気に入らないんだよ!」
呼び寄せた魔術師は、キャスターの策により撃破することができた。対するこちらの消耗はないに等しい。
聖杯戦争序盤においては完璧な立ち回りであったが、しかし白いローブのマスター――タダにとっては不満しかない結果だった。
次はこうはいかない。聖杯戦争において記憶を取り戻してから未だ日は浅いが、しかし立ち回り方は分かってきた。
呼び寄せた人形使いのマスターは既に倒れている。
殴打により地に伏せた彼の身体はビルの床に塵のように放置されていた。頭部から伝う赤い血が床を汚す。
何もしなければすぐにその身を散らすだろう。
聖杯戦争もつまりはグリムガルと同じ。とにかく殴れ、だ。
――タダが記憶を喪うのは、一度目のことではなかった。
この聖杯戦争において、マスターの資格を有する者は記憶を喪っている。
それと同じくタダが元いた世界――グリムガルにおいても彼は当初記憶を喪っていた。
そうして訳も分からないまま義勇兵の仕事を押し付けられ、戦士を経て神官という職についた末に、彼はまた別の世界へと連れてこられた。
「なんで僕がバーサーカーの戦いを避けなくちゃいけないんだ!
――今からでも呼びに行く。トーキョータワーとかにまだいるんだろ!?」
「フフフ……落ち着け、これは戦争だ。王には王の、神官には神官の戦いというものがある」
一方で眼帯の少年のキャスターは傲岸に構えている。
非常に好戦的なマスターに対して、彼は狡猾な笑みを浮かべ、
「私にかかればこんな戦争、すぐに終わらせてみせよう。
瞬く間にお前に勝利を握らせてやる。帰還の際には、我らの勝利を祝う民でこの東京を埋め尽くしてやろう。ありとあらゆるものを使ってな!」
キャスターは声高に叫ぶ。それに対しタダは「は?」と苛立たしげに漏らした。
タダにしてみれば、このキャスターのやり方はとにかく性に合わなかった。
このトーキョーでの初戦だけは従ってみたが、次はやり方を考えることをその身に誓う。
が、そんなタダの想いを無視してキャスターは言葉を重ねる。
「民衆も、国家も、友も、社会も、そして――家族でさえも利用し尽くして……うっ」
その時、不意にキャスターが左眼を抑えた。
そのまま彼は膝をつき「ああああああああああああああ!」と叫びを上げる。
「家族? 家族? うあああああああ、トーキョ―? うぅぅぅ……?
私は! 俺は! 私はぁ! あああああああああああああああああああ!
ナ、ナナナ、ナナリぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
異様な叫びを上げながらキャスターは身体をびくびくと震わせる。
何か強烈な頭痛が彼を襲っているようだった。稲妻に撃たれたかのようにキャスターは苦しみだした。
「あん? どうしたんだお前?」
その豹変に、さしものタダも困惑しているようだった。
何をやってるんだコイツは、と冷たいまなざしで己がサーヴァントを見つめている。
「あああああああ、水を! 水をくれ……水をくれ、マスター」
ぶるぶると手を震わせながら彼はマスターへと手を指し延ばす。
「水をくれ」と言いながらも彼はもう一方の手で左眼を抑えている。
傲岸不遜な態度はどこへやら、少年から一転して、弱々しい態度で倒れ込んだ。
「水を……水をくれないか」
「水くらい勝手に飲め。僕はあのバーサーカーを探しに行く。
まだ消えてるまで間がある筈。今度こそ僕がぶっ飛ばす」
「水を……」
既に勝利したというのにまだまだ戦い足りない殴らせろと杖を振り回すマスター。
突然身体を震わせ「水を……」と連呼する情緒不安定な軍師のキャスター。
――何だ、コイツら。
床に転がっている魔術師――人形使いの彼は、薄れゆく意識の中、頭上で騒いでいる彼らに対してそう思った。
思いながら、死んでいった……
【クラス】キャスター
【真名】ジュリアス・キングスレイ(またの名を■■)
【出典】コードギアス 亡国のアキト
【性別】男
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:E- 耐久:E 敏捷:E 魔力:B 幸運:A+ 宝具:D
【クラススキル】
彼にとっての陣地とは集団における主導権を指す。
多人数の集団において強引かつ巧みにイニシアティブを握る。
【保有スキル】
戦闘の準備段階で相手の戦力を削ぎ落とす才能。トラップの達人。
Aランクの場合、進軍前の敵軍に六割の損害を与えることが可能。ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格が低下する。
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。
数多くの大衆・市民を導く言葉と身振りを習得できるスキル。個人に対して使用した場合はある種の精神攻撃として働く。
時おり顔を見せる■■の残滓。無理な人格改竄の弊害。
保有者は、あらゆる行動が失敗するリスクを伴うようになる、デメリットスキル。
発生確率はそれほど高くないが、戦闘時に発動した場合のリスクは計り知れない。
キャスターは眼帯で左眼を隠しているが、その奥にある魔眼は既に喪われており、使用できない。
【宝具】
『方舟の船団(フィクション・オーガ二ゼーション)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1-100 最大補足:1000
キャスターが生前“でっち上げた”架空のテロ組織。
情報の捏造と巧妙かつ大胆な扇動工作によって民衆にその存在を信じ込ませた。
特定の事件、出来事を“方舟の船団”なる組織による犯行であるという噂を発生させる。
噂が噂を呼び、結果、あたかもそのような大組織が実在しているかのような影響力を社会に与える。
『我が下へ来たれ七番目の白き騎士(ナイトメア・ランスロット)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1-10 最大補足:10
生前、キャスターの護衛にして監視役を務めた騎士を呼びつける宝具。
七番目の騎士たる彼はランスロットと呼ばれるマシンを駆って戦場に駆け付ける。
たった一騎であろうとも、無数の敵を軽々と蹴散らしていくその勇猛さには対人宝具でなく対軍宝具がふさわしい。
キャスターが号令を掛ければ彼は剣と共にやってくる。
……筈だが、当の騎士はキャスターのことを常に軽蔑と苛立ちに満ちた視線で見下ろしている。
よって状況次第では呼びかけに応じてくれないかもしれないし、場合によっては騎士の方がキャスターを殺しにかかるかもしれない。
【人物背景】
皇歴2017年、E.U.(ユーロピア共和国連合)と神聖ブリタニア帝国との戦いの最中、本国より突如として送り込まれてきた軍師。
ナイト・オブ・ラウンズの一角である枢木スザクと共にユーロ・ブリタニアに派遣された。
左目は大きな眼帯で覆われている。自信過剰な言動を隠しもしない高慢な性格。
テロを装った犯行声明と高度な情報操作によりE.U.国内を大混乱に陥れ、その隙を突いて攻め込むという大胆な作戦を提案・実行する。
皇帝の名代とされているが、E.U.での戦い以降の消息は杳として掴めず、またかのような人物はブリタニアには存在しなかったという説もあり、その正体は謎に包まれている……
【サーヴァントとしての願い】
???
【基本戦術、方針、運用法】
元よりひ弱な身体であるのに加え、常に情緒不安定かつ突然「水を……!」と呻き始める。
他のサーヴァントとの直接対決を挑めば即敗ける。マスターに挑んでも瞬殺される。
宝具で切り札たる騎士を呼べるが、何度も呼ぶと向こうが猛烈に不機嫌になるのは想像に難くないので安易には使えない。
なので、軍師は軍師らしく集団を動かして戦うべきだろう。
扇動や軍略などのスキルを活かして、とにかく戦況を混乱させ敵を潰し合わせる。
フラッシュバックが起こる等、本当にどうしようもなくなったら宝具を使うしかない。
【マスター】タダ
【出典】灰と幻想のグリムガル
【性別】男性
【マスターとしての願い】
戦いたいのかもしれない。
【weapon】
グリムガルにおける杖。タダはこれで殴る。癒すのではなく殴る。
【能力・技能】
グリムガルにおける義勇兵の職業の一つ。光明神ルミアリスの加護を授かる。
癒し手・癒光・光の奇跡といった傷を癒すものから、状態異常回復の浄化の光、基礎能力を向上させる護法の光といったサポート系のスキルを習得でき、戦士同様、パーティには欠かせない職業。
後衛が主だが、護身として強打などのスキルも習得できる。ただし、ギルドの掟で刃が付いた武器は持てないため、スタッフや錫杖などを用いる。
タダ自身は神官だが、元々は戦士であったためこちらのスキルも使用可能な模様。
ただし神官の掟で刃のついたものは持てない。
【人物背景】
異世界“グリムガル”に召喚された人間の一人。
他の義勇兵と同じく召喚前の記憶を喪っており、選択の余地なく戦場に送り込まれている。
トキムネ率いるクラン“トッキーズ”の一員であり、職業は神官。イロモノだらけのパーティの中では眼鏡をかけた一見まともに見える男。
が、元戦士の神官というおかしな経歴が示す通り、彼もまた変人であり、仲間を癒すことが仕事の神官でありながら“自分が最強”というよくわからない信条を持っている
そのため戦闘となれば前衛で元気よく戦鎚を振り回し、ガンガン敵を殴っている。闘う神官。
魔物を見れば迷うことなく滅殺、人間相手にも挑発を欠かさない。ちょっと怖い先輩に対しても変わらず強気。でもトキムネとアンナには従順。
実際、前衛としてはかなりの力量は持っているが、神官の本分であるパーティの回復は基本的にやらない。それでいいのか。
【方針】
サーチ&デストロイ(でも主従共に後衛職)
候補作投下順
最終更新:2016年03月03日 23:22