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 私はあなたを見つけ、あなたは私になる。
 私は人々の間を駆け抜け、現実としてこの世に現れる。
 私は、既に勝利している。虚構から現実へと転じているのだから。
 例え貴方が、信じようと信じまいと。




 私……いや、"私達"の名は――――。


 ――



「なぁ。こんな話、知ってっか?」
「これ、人から聞いた話なんだけどさ……」

 最近、人々の間で実しやかに囁かれている物語がある。
 都市伝説のようで、それでいて何故かリアリティを感じる物語。

「ウッソだろお前。んなのあり得るわけねーじゃん」
「何それ? どーせ作り話でしょ」

 一般的な人間が聞けば、他愛も無い創作であると一蹴するようなもの。
 だが、そんなものでも、幾多もの人間の間を駆け抜ければ。
 それは、創作と言う殻を破り、現実へと姿を変えていく。
 如何に、荒唐無稽であろうと。

「俺はマジだと思うぜ。だってこの間さ……」

 それの流布は言葉だけに留まらない。
 時には紙を通じて。
 時には電脳空間を利用して。
 時には人を介して。
 ……伝達方法など、誤差の範囲でしかない。
 伝える人間がいる限り、それは際限なく広がっていくのだから。

「私も最初はウソだと思ったよ。でも、アレを見たら……」

 偽りが真実を塗りつぶす。嘘が本当を踏み越える。
 創作が……現実へ変わっていく。
 その瞬間は、誰にも分からない。知覚など、出来るはずがない。


 ――――何しろ、それを伝播させている本人にすら、分からないのだから。


 ――




 空は澄み渡って、雲一つない良い天気。
 ぼく以外は誰もいない、病院の屋上。
 一陣の風が吹き、そこらに干してある洗濯物を揺らす。
 さわやかな気分になるはずなのに、ぼくの心はそれとはかけ離れた状態だ。

 何度繰り返したかわからない思考を、また繰り返す。
 ……ぼくは、いつからここにいるんだろうか。
 気が付いたときにはもう、ぼくは名前も知らない病院の一室にいた。
 どうやら、ぼくはここに急病を患って運び込まれ、そのまま入院。
 そして、その後遺症で自分の名前以外すべてを忘れている……と言う事になっているらしい。
 どう言う経緯でそうなったのか。なにがあってこうなったのか。ぼくには分からない。

(うぐっ……)

 このことを考えてはいけない。
 考えると、またぼくの頭はひどく痛むのだから。
 痛いのはいやだ。だから、考えるのはやめよう。

「……」

 それでも、ぼくは考えてしまう。
 ぼくは何のためにここにいるんだろう?
 何かをするために、ここにいるような気はするのだけれど。
 だが、その"何か"が一体何であるのか、分からない。

「……どうして、思い出せないんだろう?」

 いくら考えても答えは出ない。
 ぼくの頭の中には、ずっと霧がかかっている。
 晴れることのない霧が。
 いつになったら、ぼくの頭はすっきりしてくれるのだろうか。
 ぼく自身にもその見通しが立たないのだから、きっとまだまだかかるのだろう。

「ああ、こんなところにいたんですか」

 不意に、誰かがぼくに話しかけてくる。
 声のした方に向き直ると、見慣れた顔の看護婦が立っていた。
 どうせ、いつものようにぼくを病室へ連れ戻しに来たのだろう。
 看護婦の表情も仕草も、全てが妙に無機質に感じる。

「勝手に出歩いてはダメだと言われているでしょう?」
「……」

 あんな、何の面白みもない部屋に一日中いられるものか。
 どうして、ぼくを縛りつけようとするんだ。
 とは言え、ここで反抗した所で何にもならないことは分かっている。
 結局、ぼくはこの人に素直に従う他ない。
 ……ここを出た所で、ぼくが向かう場所なんか存在しないのだから。

「さあ、病室に戻りましょうか――――矢島透さん」


 ――


 街に、東京に、私達が浸透していく。
 虚無で成り立つ人々の間を、私達が駆け抜けていく。

「おい、こんな話知ってるか? 24枚撮りの使い捨てカメラに時々……」

 私達が駆け抜けた後には、現実が残る。決して否定できない、現実が。
 何があろうと、現実はそこに残り続ける。
 誰であろうと、現実を斃せはしない。

「"殺人鬼"っつー職業に就く条件を知ってるか……?」

 人々が騒いでいる。自らが生み出した存在の所為で。
 彼、もしくは彼女達は何も知らないし、知ることもない。
 知らず知らずの内に、それらは確実に現実へ浸食してくる。
 私達の生んだ"現実"は、何食わぬ顔でそこにいる。

「聞いた話なんだけど、とある漁師が雪山で……」

 そもそも、これらの"噂話"はもともと私達の知識。
 これは、彼(もしくは彼女)達が強制的に知らされたもの。それをやったのは私達だ。
 何の為に? 無論、"噂話"の存在を広め、現実を塗りつぶす為に。
 この虚無の街に蠢く人間全て、私達の為に利用する。
 最も、自分達が利用されていると見抜ける人間はいないだろう。

「……おいちょっと待てよ。それ、見たことあるぞ」

 だが、それらが現実になっている事に気付いた者がいる可能性は捨てられない。
 有象無象の中の一人か、それとも"名前のある"存在なのか。
 それは私達には知りえないし、知る必要もない。
 気が付いているのが有象無象であればそれはそれで構わない。
 もしも"名前のある"存在であったとしても、私達の処に辿り着けはしない。

「本日未明、港区にて男性が何者かに殺害されている状態で……。遺体の損傷が激しく、警察では身元の確認を……」

 興味本位でそれを追いかけてはならない。
 深淵を覗く時は、深淵もまたこちらを覗いているとはよく言ったものだ。
 何も考えず、好奇心のみで追いかければ、死に至る事もあるのだから。



『さて。次は何を広めようか』

 私達は虚無を"現実"で塗り替える者。
 私達は神の掌に止まらず、その指の間から抜け出す者。
 光でもなければ闇でもない。
 善でもなければ悪でもない。
 ただただ、自身を吹聴させ続けることに固執する者。
 例え、この世界が虚無でしかないとしても。



『私達の名はフォークロア』
『信じようと、信じまいと――』





【クラス】キャスター
【真名】"フォークロア"@2ちゃんねる(信じようと、信じまいと――)
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
筋力E 耐久EX 敏捷E 魔力A 幸運C 宝具EX

【クラススキル】

 陣地作成:-
 道具作成:-
 2つとも失われているが、宝具が上記の2つの代わりを務めている。

【保有スキル】

 精神汚染:EX
 数百の"人格"が1つに圧縮されている。
 そのため、精神の中身は誰にも理解できないほどに濁り、汚染されている。

 自己保存:A+
 自身はまるで戦闘力がない代わりに、マスターが無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。

 情報秘匿:A
 サーヴァント自身に繋がる情報を隠蔽・秘匿し、サーヴァントが発見される確率を下げる。
 "噂話"の出所を正確に掴むのは困難なもの。


【宝具】
『四行伝承(ビリーブ・イット・オア・ノット)』
ランク:EX 種別:対衆宝具 レンジ:東京全域 最大補足:1人~
人々の間にフォークロアを流布し、それに纏わる人物・物体・事象を現実化させる。
一度現実化したものは、物語の大本を絶つ(=キャスターの抹殺)以外の方法では完全に消すことはできない。
現実化した対象への干渉は可能。殺害できる存在であれば殺せるし、破壊できるモノであれば破壊可能。
現実化したモノ達がどこに現れるかはキャスター次第だが、タイミングまでは制御できない。
なお、物語が現実へ変わる為の魔力はサーヴァントからではなく人々から捻出しているので、
サーヴァントやマスターにかかる負担はかなり低い。

キャスター自身の敏捷性は最低ランクであるが、フォークロアの広まるスピードはそれとは無関係。
また、フォークロアの流布度合をキャスターは"感じ取る"事ができる。


【weapon】
 なし

【人物背景】
 2ちゃんねる・オカルト板に立った1つのスレ。そこに書き込まれた、奇妙な文章達。
 それを契機に、電脳の海に次々と現れた"物語"達……。
 そんな、数百ものフォークロアが聖杯戦争の場にて1つになり、形而下した存在。

【サーヴァントとしての願い】
 サーヴァントとして呼ばれた時点で、"現実に成る"という願いは叶っている。
 ならば、後は自身の存在を人々の間に広めていくのみ。
 そのためであれば、何がどうなろうと構わない。

【基本戦術、方針、運用法】
 そもそも、本人(この表現は正しいのか?)に戦う気がない上、"自己保存"もあるので……。
 せっせとフォークロアを吹聴して東京中に奇妙な現象を広めよう。





【マスター】
 矢島透@かまいたちの夜2 監獄島のわらべ歌/妄想編

【マスターとしての願い】
 ???

【weapon】
 なし

【能力・技能】
  • 推理力
 本来なら持っているはずだが……。

【人物背景】
 愛ゆえに狂い、罪を犯した青年。

【方針】
 ???

【備考】
 都内のどこかの病院に収容されているようです。



候補作投下順



最終更新:2016年03月12日 21:46