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 黒の帳が降りた東京のどこかで、時代錯誤なそれは鳴り響いた。

「ち……うぜぇッ!」

 吐き捨てるような男の怒鳴り声。
 どこか焦燥感を感じさせるそれは、東京という世界でも上位の治安を誇る都市であろうとどこかで耳にすることができるものだ。
 しかし、それに追従して響き続ける連続した剣戟の音は、およそ現代日本でなかろうと現実に聞く機会などまずないものであろう。
 このご時勢にチャンバラなどと、時代劇の中で見るか、もしくは子どもの戯れでしか見ることは叶わない。
 だが、そこで行われているそれは。ドラマの撮影や即興の舞台でもなければ決して児戯の類でもなく。
 よほど酩酊した者でもなければそれを見紛う者はいないと断言できるほど明確に。
 そこで「戦争」は行われていた。

 相対する形で二人。
 手に持つ武器は互いに刀剣。
 規模も装備も現代における戦争とはかけ離れており、形容するとしたならば精々が殺し合い止まり。
 到底戦争になど及ぶべくもない。警察が出動すれば片付く程度の物でしかない。
 それが一般市民が抱く、特徴だけを論ったこの闘争への評価だろう。
 だが、それは誤った認識だ。
 そもそもが前提からして絶対的に間違っている。

 人間離れした速度で刃が風を刻み、剣と剣は間断なくぶつかり合って無機質な音を東京の夜空に奏で続ける。

 人間は微塵の疲れも見せることなく刀剣を振り回し続けることもできなければ、踏み込みで舗装された道路に亀裂を入れることもできはしない。
 そう――姿形は人なれど、そこに在るは人間ではない。
 古今東西を問わず、伝説を打ち立て偉業を為し得た英雄偉人は信仰を得て英霊となる。
 互いの首級のみを見定め、自らの敗北を露も考えていない彼らこそはその現身。
 信仰を以って得た力を揮い、神秘を以って奇跡を常とする超常の存在――すなわち、サーヴァント。

 二人ではなく二騎の、戦闘機にも例えられる存在が、東京という都市の中で縦横無尽にその力を揮っていた。

「てめえ一体なんなんだ。ふざけてんのか」
「ふざけているかですって? そちらこそ何を馬鹿なことを言っている。わたしは365日いつでも大真面目ですとも!
 ええ、閏年には流石に有給を取らせていただきますが」

 着物を流し着している大柄の男が、敵対している小柄な少女へと文句を零した。
 少女の振るう二振りの剣を刀一本で同時に捌き、返す刀で的確に急所を突いていくその技量はおよそ現代の達人では到達不可能な領域にある。
 しかし少女も英霊。巧みに双剣を操りのらりくらりと必殺の反撃をやり過ごす。
 その掴み所の無い立ち居振る舞いや顔に貼り付けた不敵な笑みから、どちらが優勢であるかは窺い知れる。

「そうかい。ふざけたナリとふざけた言動と、そして振るうたびにブンブン鳴るふざけた得物。
 そういう風に見えてるんだが、どうやら俺はサーヴァントになったってのにまた耄碌しちまったらしいな」

 しかし――いくら圧倒的優位に振舞っていようと、実際に優位かどうかを推し量ることはできはしない。
 事実男が指摘したように、少女はおよそ英雄とは思えない珍妙な出で立ちと奇妙な武器を手にしていた。
 英雄というものの大半が己が勝利を信じて止まない生き物である以上、その自信に根拠などありはしない。
 少女が元々そういう性質であるのだとしたら、まだ勝負の趨勢はわからない。いや、仮に現在優位であろうと、たった一枚のカードで戦局は激変する。

 彼らの手に在る物はただの武具ではなく、英雄たる彼らの象徴。物質化した奇跡。
 天を裂き、地を割り、因果律にすら干渉し得る貴い幻想――宝具。

 あらゆる逆境を打破しうるワイルドカードは、未だ切られていないのだ。

「当然ですがサーヴァントは弱点も引き継ぎますから、耄碌した逸話があるならばそれも引き継がれたのでは?
 アイルランドの神殺しもそうですが、英雄が晩節を汚すなんてよくある話。
 その点老いることなく最期の時まで英雄然としていたわたしこそまさに最優の中の最優、セイバーの中のセイバーと言えるでしょう」
「いやサーヴァントは最盛期の姿で召喚されるし、それにマスターが言うにはお前アs――」
「ゴチャゴチャと五月蝿いよカリバ――――――!!」
「なぁあああああああああああ――――!?」

 逆を言えば、切ってしまえば即座に戦闘が終了することもありえるわけだが。

「フッ、真名解放はしないとでも高を括っていたようですが、残念でしたね。
 セイバーを抹殺する為ならば多少周囲に被害が出ようと知ったことではありません! どうせ迷惑を被るのはガス会社くらいだし!」

 少女が宝具の真名解放(?)を行ったことにより、その一帯は一瞬だけ夜の闇を忘れ、星明りを束ねたような光条が周囲のすべてを飲み込んでいた。
 光が消滅した後も地面は赤熱し煙をあげており、光に飲み込まれた室外機は消滅し、衝撃で路地の側壁には大きなひび割れが走っている。
 さらに光の奔流の先に存在した河川の川底は大きく抉り取られ、水蒸気爆発によって巻き上げられた川の水は雨のように周囲一帯に降り注いだ。

 自らの行いによって発生した被害について少女はなんら悪びれる様子も特には見せず、「いやあ最初からこうしてれば早かったですね!」とむしろその行いを称賛すらしている。
 ある意味で英雄らしいといえばらしい少女であった。

「XとZがいてどうしてYがいないと思うでしょうか、いやない!」

 川底でガス管が破裂したとしても、なぜ路地まで表面が融解するような被害が出ているのかなんて言い訳はすべて投げ捨てて、少女は装いを正すと誰に向けてでもなく反語でそう宣言した。

「XもZも詰めが甘い。どれだけセイバーを葬った所で聖杯戦争が執り行われる限り奴らは必ず現れる……
 ならば聖杯の力を利用して、座から私以外の剣の英霊を消し去ることが最も効果的で直接的な方法ですよね!
 いやあ、マスターが聖杯戦争の知識すら与えられない聖杯なんて胡散臭すぎて正直そんな物利用して大丈夫なの? とか甚だ疑問は尽きませんがそれはそれ。正直マスターがまともな性格してたら絶対に止められる自信ありますし逆に好都合というものです」

 などと言いながら少女が歩を進める先には、先ほどまで彼女と打ち合っていた刀の男が倒れていた。
 刀は根元から折れていたが全身に傷は見えず、おそらくはそういった類の宝具であったと推測できる。
 しかしダメージ自体は残っているようで身動きは一切無く、いずれにせよここで少女によって討たれる運命であろうことは容易に想像できた。

「ぐぅ……っ!」
「全てのセイバーの抹殺こそが我が使命。
 恨むならセイバーで現界した己が不幸か、わたしみたいなのが誕生するくらいにセイバーを増やした神を恨むがいい」

 そう嘯き、掲げた剣を少女が力の限り振り下ろさんとした、まさにその瞬間。

「そこまでです!」

 その行いを阻止すべく、凛然とした制止の声が割って入った。

「すでに力尽き倒れている者に止めを刺そうだなんて、一人の騎士として見過ごすなんてできません!」
「センサーが反応したと思ったら、まさかキミだったとはな――――リリィ」

 Yと名乗った少女の凶行を諫めたのは、彼女よりもさらに幼さを残した百合のように愛らしい少女騎士であった。
 リリィと呼ばれた少女が、その身を包む装束の騎士然とした意匠からサーヴァントであるということは推測できたが、しかしその身に纏う雰囲気には歴戦の猛者といった覇気は一切感じ取れはしない。
 そんな、ただでさえYと戦闘を行うことができるか怪しいというのに、Yはリリィの正体について既に情報を有している素振りを見せたのだ。

 宝具はサーヴァントの切り札であると同時に、象徴としての側面から正体を喧伝する弱点にもなり得る。
 もちろん正体が判明したところで容易く弱点を突かれる英雄などそうそういないが、相手も英雄である以上、守り抜くことが至難であることは明白だ。
 だからこそ宝具は軽率には使われない。弱点がなかろうと特徴や性質が割れれば罠を仕掛けやすくなるし誘導もし易くなる。
 サーヴァントにとって真名とは、可能な限り隠し通さねばならない物なのである。
 それが既に露見している可能性がある。
 その事実は、格上と見られるYと戦う上で重大な問題であるということを――――リリィは特に気にしなかった。

 リリィはむしろ、目の前にいる自身と同じ背丈の少女にこそ関心を持っていた。
 それは英霊としての自分について、知っている者などほぼ存在しない筈であると思っていたからだ。
 しかし彼女は自分を知っている。その事実は、リリィにとって真名を知られていることのデメリット以上に衝撃的なことであった。

「わたしを知っているんですか……?」
「フッ、どうしてわたしがキミを知っているかなんて些細な話。だってキミもここでわたしに倒されるのだから!
 行くぞリリィ、覚悟しろ。なんて言わないむしろ油断して楽に倒されて……って、なんですかその後ろのナニカは……?」

 呆けてつい疑問を投げかけるリリィを前に、即座に戦闘を終わらせようと構えたYもまた、あるものに関心を抱いた。
 ……抱いて、しまった。

「おい。歩く時は私の三歩後ろを歩く約束だろう」
「あ、すみませんマスター。あのセイバーさんがやられそうになったので、つい」
「マスター? その変なのマスターなんですかリリィ?」

 リリィの後ろからやってきた白いナニカは、既に臨戦態勢に入っているYに背を向けてリリィと会話を始める。
 人間ではないだろう。骨格的にまず違う。だが服は着ている。上だけだが。
 鼻? の長いこれはいったいなんなのか、そんな疑問をYが抱いている間にさらにそれとリリィは会話を重ねていく。

「次からはきちんと項目を守って貰いたい。いいね?」
「はい、すみませんマスター」
「え? 本当にそれマスターなんですか? 使い魔か何かじゃなくて」
「む? なんだ君は。私は今リリィと話しているのだ。横から話しかけるなどマナーも知らんのか」
「いや、貴方に話しかけたのではなくてわたしはリリィに――」
「私の伝説は12世紀から始まった」
「――――は?」
「私の伝説は12世紀から始まったのだ」
「はあ、そうですか。いえ、そんなことよりもですねリリィ。これは一体」
「おい」
「なんですか! 横から話しかけてくるのはマナー違反じゃなかったんですか!?」
「バカめ。誰もマナー違反の話などしていない。私はマナーを知らないのかと聞いたのだ」
「な、なんですかそれ! そんなの屁理「そうだ。私の鼻唄を披露してやろう」ちょっと台詞に台詞を被せないでください!」

 強い語気での抗議も意に介さず、白いナニカは本当に鼻唄を奏で始めた。

「リリィ! なんなんですかこいつは!」
「えーと……」

 意思疎通が成立しないと判断したYはしかし吹き飛ばすより先に、釈然としない気持ちを晴らすべく疑問をぶつける。
 対してリリィは、暫しの逡巡の後に口を開いた。

「……この方は、わたしのマスターの『エクスカリバー』です」
「…………………………………………………………………は?」





























































「――ちょっと待った!」

 衝撃的過ぎた言語を理解するのに、Yはたっぷり五秒もの時間を要した。

「なんだ? トイレ休憩はまだだぞ」
「違います!
 え? リリィ? 冗談でしょうそんな……あ……ああ、そうか! エクスカリバーという名前なだけのSCPかナニカですよね!?
 擬人化が流行るこのご時勢だから、本気でエクスカリバーがこんなことになってしまったのかと心配してしまいました!
 聖剣の代名詞とも呼べるエクスカリバーが擬人化しようものなら、それはもう絶世の美人か美形になるに決まってますよねえ。ははは……」
「その……信じ難いでしょうが、この方がアーサー王が振るった聖剣であるという点には相違ありません」
「ははは、ははははははは…………マジデ?」
「挨拶が遅れたな。私がエクスカリバーである」
「それはさっき聞きました! それよりも貴方本当にエクスカリバーなんですか。これがこうなるとか信じたくないんですけど!」
「その剣はまさか……」

 気が動転してリリィの言葉の意味を理解することができず、Yは慌てて自分の得物をリリィに見せ付ける。
 発光こそしているが、エクスカリバーという言葉とともに突きつけられたことでリリィもその剣がなんであるかということに察しはついた様だった。

「これです。こうでなくてはいけません! あまりに有名すぎて一目で持ち主の真名が露見するようなザ・聖剣って感じでなくては!


                 「私とアーサーの出会いについて聞きたいか?」


 こんな訳のわからないショボイのがエクスカリバーとか認められる筈もなし! どうせエクスカリパーとかそこら辺のパチモンです!


                   「あれは蒸し暑い夏の日のことだった」
             「あれ? 世界が静止したような真冬の日ではなかったですか?」


 ええ、わたしのも光ったり二振りあったりと偽物感半端ないですが! おまけにブンブンブンブン鳴ったりもしますし。


                 「私が話をしているのに水を差すでない」
         「うう、すみませんマスター。でも項目578では勇者は常に真実を伝えるべし、と」


 しかし貴方のように奔放に話すこともなければ、五月蝿くてもウザいなどということはありません。そこ、会話文中に会話文を入れないでください。


             「バカめ。君にとっての真実が、いつも客観的な真実であるという保証などどこにもない」
        「ましてや私とアーサーの付き合いについて、聞いたことのみしか知らない君が、私に意見できるはずもなかろう」
 「しかし君の行いは項目どおりのものであり、言われてみればあれは湖の乙女も湖ごと凍る恐ろしく寒い朝だったかもしれない。いや、そうだった」
「いやいや確かに恐ろしく寒い朝であったが、だからと言って冬だと決めつけることは早計であると言え、もしかするとすでに春の芽吹きを迎えた後だった可能性も捨てられないだろう。いや、ひょっとすると一足早く訪れた冬に苛まされた秋の一日だったかもしれない。とにかく私とアーサーは出会ったのだ。そう、あの場所で」


 段々会話文増やすのやめてください文章が見にくい! しかも最初はわたしの台詞よりも少なくするために区切ってたのに最後に長文持ってきて台無しだ!」

 思わず叫んだ後、己以上のイロモノを前に完全にペースを乱されている自身を悟り、Yは頭を掻き毟る。

「ああああああああああああっ! もう、いい! 話し終えるまで黙ってるから早く全部話してください!」
「…………」
「……?」
「………………」
「あの?」
「……………………」
「あのー、話してくれないんですか? 貴方を振るったなんていう頭おかしい、もとい寛大なアーサー王について興味あるんですが」
「…………………………」
「無視ですか! せっかく人が話を聞いてやろうというのに無視するとはどういった了見だ! でもよく考えなくても最初から無視されっぱなしだったなわたし!」
「………………………………」
「リリィ! なんなんですかこいつ!」
「バカめ! 自己紹介は済ませただろう。名前も覚えられないのか君は」
「うぜぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!」
「そもそも君はなんだ? 名も名乗らんとは無礼な奴め」
「今までに名乗る暇ありましたか!?
 ゲフンゲフン……、まあこちらに注意を向けてくれるだけマシなので今の内に名乗っておきましょう!

 わたしこそはすべてのセイバーを滅ぼす為にユニヴァースより差し向けられたX、Zに次ぐ第三の刺客!
 赤ジャージ(ネロカラー)でトリコロールと思ったか! 残念わたしは黒ジャージ(オルタカラー)!
 わたしの名前はヒロインY! XもZも出し抜いて、唯一のセイバーとなる為に、聖杯を手にする者です!」

「私の帽子は英国製最高級品なのだ」
「そうなんですか」
「聞けよっ!」

 素で放ったツッコミに、びっくりしたように目をぱちくりさせたリリィが、一拍の後にぺこりと頭を下げて来た。

「あ、すみません」
「ああ、もうリリィは倒さなくてもいい気がしてきました……ですが使命を果たし、リリィを倒さなければこのマスターからは逃れられないのもまた事実。
 これもすべては定めというものでしょう。というわけで覚悟してもらうぞリリィ」
「そういえば君は唯一のセイバーになると言ったな」
「まさか話を聞いていたなんて……そんな当たり前のことに感動している自分が不憫で泣けてきます」
「バカめ! 君のクラスはセイバーではない。自分のクラスもわからんのか愚か者め」
「おっとそれ以上は虫唾がやばいよカリバァアアアアアアアアアアア――――――!!!!」
「マスター!」

 目の前のエクスカリバーを名乗る謎の生き物に向けて、Yは全力の聖剣を放った。
 リリィが庇おうがなにをしようがすべてが無意味となるその一撃は、再び路面を削り溶かし、直撃した川の周囲にはしばらく生物が寄り付かないであろう被害を発生させる。

「乙女のシークレットを荒らすような輩には、聖剣をブッパせねばなりません。SG荒らし、ダメ、ゼッタイ!」

「まあ特に荒らされなくてもブッパしますけどね」と聖剣脳全開なことを呟きつつ、Yは晴れやかな顔で自分が行った破壊の痕跡を見つめていた。
 リリィ諸共に、そこにはあのウザイ物体は存在していない。

「まったくわたしとしたことが、どうしてああも話し込んでしまったのかわからない。
 普段は話し合いなんて面倒なので剣・即・斬だというのに、無駄に怒りを溜め込んだしまいました」

 冷静になって振り返ってみると、それは本当に謎であった。
 本来の彼女であれば、とりあえずウザければ聖剣一発で片をつけていた筈なのだ。

「今の一撃で仕留め損ねたセイバーも同時に葬ったようですし、ここに長居するのも得策ではないですね。次のセイバーを仕留めるためにも再び潜伏するとしましょう」

 しかし些細な疑問であると断じたYは、二度の聖剣の使用による大爆発を聞きつけて、直に他のサーヴァントがこの場所に来ることを見越して身を潜めることにした。
 コスモリアクターを発動し、闇に紛れようとしたちょうどその瞬間。

「逃がしません!」
「その声はまさか……生きていたのかリリィ!」

 先ほどのやり直しのように、可憐な騎士姫がYの行動を阻害した。
 センサーに感知されずいきなり出現したリリィに驚いたYがそちらの方に視線をやると、確かにリリィがそこにいる。
 だが、そこにいるリリィは先ほどまでのリリィとはある点で違っていた。

「その翼はいったい……。例えキミがifの存在だということを鑑みても、固有の宝具やスキルなんてそれこそキミの在り方に関与する物だけの筈!
 わたし(アルトリア)にそんな伝説はなかったし、キミにもそんな能力を手にする未来はない筈だ!」
「いいえ――いいえ。確かにわたしは本来存在しない嘘偽りの、虚無のサーヴァントと言えるでしょう。
 途中で分岐した「もしも」の存在であろうと、すでに定まっている結末を覆すことは叶わないかもしれない。
 ですが、結末が変わらなくても。今生においてわたしが得た絆や関係は、確かに存在する、わたしだけの物語を紡ぎ出してくれます!」
「その手に持つ剣はカリバーンではない……? まさか!」
「剣を構えろ、ヒロインY……ッ! 同じセイバー(アルトリア)から生まれ出た者として、セイバー・リリィが貴様に引導を渡してやる!」
「ちょ、ダメだリリィ! ただでさえわたしたちみたいなイロモノが増えているのに、そんなものを手にしたとあってはいよいよわたし(アルトリア)の評判が!」
「邪悪を断て、エクスカリバー!」
「邪悪扱いですかぁああ――!?」

 それは光の翼を生やしていたことにか、選定の剣とは異なる聖剣を手にしていたことにか、あるいはその精神面かそれらすべてにか。
 当惑の分迎撃の送れたYは、リリィの一振りと同時にいきなり発生した爆発に巻き込まれ、遥か彼方へと吹き飛ばされていた。

「は!? なぜか爆発に巻き込まれたけど特にどこも斬られていない!
 やはりコスモ時空の法則(コメディなので死なない)は最強ですね!」

 それが彼女が、この世界で最後に残した言葉となった。
 何故なら次の瞬間、エクスカリバーによって進路上に創り出された空間の切れ目の中へとYは吸い込まれ、別の時空(サーヴァントユニヴァース)へと放逐されてしまったのだから。

「……さようなら、ヒロインY。いつかまた会うときがあるのなら、互いに違う関係で会いたいですね」

 違う道を辿った己の別側面、その最期を見送ったリリィが地に降り立つと、手にしていた貴き聖剣も元の白いナニカに戻って両足を着く。
 そのまますぅっと背筋を伸ばした彼に、リリィは恥らうような微笑を湛えて感謝を口にした。

「ありがとうございましたマスター。マスターの力がなければ今頃……」
「何を言っているリリィ。君が修行の過程にありまだ未熟者で半人前な騎士であるということは周知の事実だ。君は幼子がひとりでなんでもできると思うかね? いいや、できまい。とは言っても私は小さな頃からなんでもできた。今でもそうだ。小さな頃から段々とできることも増えていったが、やっぱりそんなこともなくはじめからなんでもできていた気がする。しかしそれは私に限った話であり、それを自身に当てはめようとする行いが如何に愚かなことであるかは火を見るより明らかであるということは語るまでもないだろう。いや、私以外の者にはそれを理解するのは難しいかも知れないがそれは所詮視点の問題に過ぎず視点を変えてしまえばやはり簡単な問題でであると言えよう。いやいや、その視点を変えるという行い自体が難しいということを失念してはならず、それこそが何故今なお世界で争いが繰り返されているかという重大なファクターなのであるということを胸に刻んでもらいたい。君がニンジンを食べられるからと言って私も同じようにそれを食べられると思うかね? 違うだろう。誰にでも苦手な物はあり、だからこそ人という字は人と人が支えあっているのである!
 以上が私の職人になるにあたり守ってもらいたい1000の項目その349! 職人は好き嫌いをせずなんでも食べるに繋がるのだ!」
「あの……マスター、要望は極力応えていけるように努力しますが、わたしはあなたの職人(マイスター)ではなく、あなたのサーヴァントです」
「黙れ。誰が口答えをしていいと言った。私を扱う者は職人と相場が決まっているのだよ、相場が」
「す、すみません……」
「七時の報道番組までまだ時間があるな。よし、私の歌を披露してやろう。正座したまえ」
「はい! マスター!」
「ヒア ウィ ゴー!」

 そうしてエクスカリバーの、独唱の幕がここに開いたのであった。




【ヒロインY@サーヴァントユニヴァース 生還】





【クラス】セイバー
【真名】セイバー・リリィ(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/Grand Order


        エクスキャリバ~~~♪


【属性】秩序・善
【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A 幸運:A+ 宝具:B


        エクスキャリバ~~~♪


【クラススキル】


        フロム ユナイテッド キング♪


対魔力:B
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。



        アイム ルッキング フォ ヒム♪


騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 野獣ランクの獣は乗りこなせない。


        アイム ゴイング トゥ♪ キャルフォルニァ~~~♪


【保有スキル】


        エクスキャリバ~~~♪


直感:B


        エクスキャリバ~~~♪


 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近


        フロム ユナイテッド キング♪


い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
 しかし、勘がいいのも考え物。とにかく目に付く人の悩みを敏感に感じ取ってしまうため、会う人会う人、つ


        アイム ルッキング フォ ヒム♪


い手助けをしてしまうことに。


魔力放出:A


        アイム ゴイング トゥ♪


 武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば魔力によ


        キャルフォルニァ~~~♪


るジェット噴射。
 絶大な能力向上を得られる反面、魔力消費は通常の比ではないため、非常に燃費が悪くなる。


花の旅路(聖剣伝説):EX
 ふむ、ゲームだけではスキルの詳細がわからない?
 ヴァカめ! 私との出会いで彼女が旅路の勝利と栄光は既に約束されている!

【宝具】
『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』
ランク:B(条件付きでA+) 種別:対人宝具 レンジ:不明 最大捕捉:不明


        エクスキャリバ~~~♪


 カリバーン。


        エクスキャリバ~~~♪


 彼女が引き抜き、王となった選定の剣。これを引き抜いた時点で彼女は老化と成長が止まっている。
 対人宝具の「対人」とは敵ではなく剣の所有者、つまり選定対象に向けられたもの。所持者が王として正しく、


        フロム ユナイテッド キング♪


そして完成された時、その威力は聖剣に相応しいものとなるという。
 権力の象徴であり、華美な装飾が施された式典用の剣で、武器としての精度は「約束された勝利の剣」と比べ劣


        アイム ルッキング フォ ヒム♪


る。真名を解放すれば「約束された勝利の剣」と同規模の火力を発揮できるが、刀身はアルトリアが持つ膨大な魔


        アイム ゴイング トゥ♪


力に耐えられず崩壊してしまう。


        キャルフォルニァ~~~♪


【人物背景】
選定の剣カリバーンを抜き、王としての道を歩み始めたばかりのアルトリアの姿。


        エクスキャリバ~~~♪


まだまだ半人前の少女騎士。


        エクスキャリバ~~~♪


その姿は愛らしい百合のようであり、また、その瞳も輝かしい希望に満ちている。


        フロム ユナイテッド キング♪


多くのことを経験するために国中を渡り歩き、多くの冒険譚を残した。彼女に助けられた者はその華やかさから騎


        アイム ルッキング フォ ヒム♪


士姫と称えたらしい。


        アイム ゴイング トゥ♪ キャルフォルニァ~~~♪




 ――――以上が、あり得たかも知れない、アルトリア・ペンドラゴンが選定の剣を抜いて、王になるまでの間にあった「もしも」の側面として召喚された彼女の物語である。
 実際のアーサー王にも修行時代は存在したが、それはこのように華やかなものではなかった。



 ……何? 行間の歌が五月蝿い?
 ヴァカめ! 歌というものが人類の文化史の中で、どれほど重要な役目を果たしたかも知らない君たちが歌を否定して良いわけがなかろう。
 ましてや私が歌うという極めて個人的な行いを君たちがとやかく言う資格などない!
 さらにステータスシートに余分なものを書き込むなと言いたそうだな? ヴァカめ! すでに私と同じく英国出身の若者(アストルフォ)が実践済みだ!
 リスペクトは大事なのだよリスペクトは! いいね?


 ……余談であるが、彼女のマスターであるエクスカリバーは強力な汚染源である。結末までの道中が定まっていない彼女は如何様にでも変質する可能性を有しており、エクスカリバーとパスを繋いでいることによって汚染されてしまえば、彼の騎士王のようにその性質を反転(リバース)する恐れも十分ありえる。



【マスター】
自己紹介が遅れたな。
私がエクスカリバ――――――(@ソウルイーター)である!

【マスターとしての願い】
願いだと? ヴァカめ! そんなものはない。しかし私の5時間に及ぶ朗読会には是非参加願いたい!

【能力・技能】
技能だと? ヴァカめ! 魔武器が武器にならずになんになるというのだ。
そうだ。私の歌が聞きたいか? 何? 十分堪能した? ヴァカめ! 君たちに拒否権など存在しない!

【人物背景】
























                  ヴァカめ!!!!



















何事も自ら行動せずに与えられるのを待つだけなど愚の骨頂! そのような怠慢や心構えが、今後の人生を如何に左右するかということはこのエピソードからもわかってもらえるだろう!
そう、あれは根無し草と呼ばれ各地を放浪している時期のことだった………………


………………かくして、私は七時の報道番組は欠かさず見るようになったのだ。そして諸君には鼻唄と報道番組の間には密接な関連性があるということをしっかりと記憶していてもらいたい。


私の伝説について詳しくは諸君の目で確かめてもらいたい。とはいえいきなり調べようと思っても大変だろう。
そこでさわりとして私の職人になるにあたり守ってもらいたい1000の項目の一部を抜粋したので、諸君にも是非実践してもらいたい!


守ってもらいたい1000の項目その1、私の朝は一杯のコーヒーから始まる
守ってもらいたい1000の項目その22、さわやかな朝はさわやかなあいあさつからはじまる
守ってもらいたい1000の項目その58、わたしが鼻歌を口ずさんでいる時は話しかけない
守ってもらいたい1000の項目その75、エクスカリバーの誕生日は盛大に祝うこと
守ってもらいたい1000の項目その172、和の精神を持て
守ってもらいたい1000の項目その202、トイレは最高級のものを用意すること
守ってもらいたい1000の項目その278、私の食事にはニンジンを使用しない
守ってもらいたい1000の項目その349、職人は好き嫌いをせずなんでも食べる
守ってもらいたい1000の項目その452、毎日行われる私の5時間に及ぶ朗読会には必ず参加すること
守ってもらいたい1000の項目その573、歩く時は必ずエクスカリバーの三歩後ろからついて行く
守ってもらいたい1000の項目その578、勇者は常に真実を伝えるべし
守ってもらいたい1000の項目その602、食べ物は必ず新鮮なものを用意すること
守ってもらいたい1000の項目その667、いつもエクスカリバーを賛美すること
守ってもらいたい1000の項目その679、部屋には必ず除湿機を置く
守ってもらいたい1000の項目その778、宅配便は着払いでは絶対に送らないこと

もしも私の職人になりたいという有望な者がいるならば、宛先はこちら。

〒167-030303030300330030303030高尚かつ偉大・この私エクスカリバーが住む、楽しい最高偉大ポップ&クールな土地・略してユーホップブリテイン島北ギスナミ区348番地12-3 妖精の楽園悠久の洞窟内最深部中央偉大なる伝説の聖剣エクスカリバー様宛

今なら限定一名に限り、リリィの補欠職人としての椅子が空いている。厳正なる抽選の上、選ばれし君を旅路の一員として迎えよう! 奮って応募してくれたまえ!



候補作投下順



最終更新:2016年03月13日 18:00