「あれ? なんだコレ?」
この俺、滝澤政道は警視庁に勤める警察官だ。
本日の職務を終え、俺は帰宅の準備を始めていた。
その際に自分のロッカーの中から見知らぬアタッシュケースを見つけたのだ。
色は光沢を放つ銀色。中身を見てみようとしたが、不思議な事に俺にはこれの開け方が分からない。
かと言って、このままロッカーの中に放って置くのも何なので、俺はこのアタッシュケースを1度自分の家に持ち帰る事にした。
落ち着ける自分の部屋でもう少し詳しく調べたら他に分かる事があるだろう。
スーツに着替えて、制服と拳銃を所定の位置にしまい、俺は部署の部屋を後にした。
帰り際に廊下で同僚とすれ違い、その際別れの挨拶を受けた。
俺もそれに言葉を返す。
「今から帰りか? 例の殺人鬼には気をつけろよ。犠牲者の中にはたしか警察官も居たからな」
「おう、気をつけるよ。ありがとな」
普段持ち歩いてる鞄を右手、見知らぬアタッシュケースを左手に俺は職場を後にする。
持つのは初めてなのに、何故かそのアタッシュケースは俺の手にしっくりきた。
◆
「殺人鬼、か……」
日がすっかり落ち、光を放つものが電柱に付けられた薄暗い街灯だけになった路地を歩きながら、俺は先ほどの同僚との会話で上がった単語を口にする。
今現在、都内を騒がせている連続殺人鬼。その被害者は100人近くも居るそうだ。遺体が発見されていない者も居るだろう。
警視庁内にはその事件についての捜査本部が設けられたが、生憎俺はそこに属していない。こうして帰宅している今も警視庁内の会議室では捜査本部の調査員たちが会議を開いているのだろう。
いち警察官として、捜査に加わる事が出来ないのは歯痒い気分だが、しかしそんな危険な事件に関わる事がなくホッとしてしまっている自分が居るのも確かだ。
「情けねえなあ、俺……」
そう呟きながら道の角を曲がる。
途端、生々しい鉄の匂いが俺の鼻腔を刺激した。
自然と、視線が道の向こう側へと移る。
そこには全長2メートルほどの人型の化物が立っていた。全身が黒ずんでて、その上に返り血のドレスを纏っている。
化物の周りには血の水溜りが出来ていた。
化物の周りには人の死体が散乱していた。
化物の周りには――『死』が充満していた。
それはあまりにも非日常的な光景だった――が、同時に何処か見覚えのある光景でもあった。
目の前に広がる血と肉、そして『死』。
俺はこれに似た光景を見た事がある……。
それは……。
それは…………。
「『喰種』……」
人殺しにして人喰いの亜人を意味する言葉を、俺は小さな声で呟いた。
同時に、さっきまで朧げだった記憶が一気に鮮明になり、脳の中を駆け巡る。
忘れていた記憶を思い出すほど、この光景は人が死に、喰種が死ぬあの戦場に似ていた。
化物は俺の呟きに反応してこっちを振り向き、静かに、それでいて逃亡を許さない力強さを放ちながら歩き向かって来た。
目撃者の俺も殺すつもりだ。
俺は咄嗟に右手に持つ鞄を離し、左手のアタッシュケース――いや、記憶を思い出した今となっては『クインケ』と呼ぶべきだろう――のスイッチを入れる。
正しい操作が行われた銀色の箱は、一瞬のうちに赤いボウガンの様な形状へと変化した。
俺は『クインケ』を目の前の化物に向ける。当然、撃つためだ。
しかし、そうは出来なかった。
何故なら、俺がそうする前に突如化物の背後に現れた真っ赤なスーパーカーがそれを跳ね飛ばしたからだ。
化物は空中をくるくると回り、俺の頭上を越えていく。
クルマはそこからスピードを緩めて、俺の身体の1センチ手前でようやく止まった。同時に、背後から『どしゃっ!』という落下音が聞こえた。
「は……はぁ?」
いったい何が起こったのかさっぱり分からず、俺は呆然とする。
すると、目の前のスーパーカーのドアが開き、中から赤い女が出てきた。
――『赤い』という言葉は己を形容するために生まれたのだ、と言わんばかりに赤い、全身をワインレッドのスーツに包んだ、赤髪の女である。
「はっはっはっ。危ないところだったな、お兄ちゃん。怪我はねえか?」
「……」
気安く笑いながら、彼女はそう言った。
対して、俺はあまりに激しく変わりゆく状況に混乱し、声が出ない。
それを不満に思ったのか、彼女は
「おいこらてめえ。返事しろ」
とドスの効いた声でそう言って、俺の腹筋に拳を叩きつけた。
さっきまで『お兄ちゃん』と呼んだ相手を『てめえ』と呼ぶとは、かなり気分を害されたのだろう。
俺は呻きながら、膝を崩して倒れた。
すると次は
「おいこらてめえ。勝手に倒れてんじゃねえ」
と先ほどのとほぼ同じ組み立ての台詞を言いながら、彼女はピンヒールを履いた足裏を俺の背中に押し付けた。
ぐりぐり、と。
「ぐっ! ……ってぇな! なんだよお前!?」
彼女の余りの理不尽さに混乱よりも怒りの方が勝った俺は勢いよく起き上がってそう言った。
しかし、その瞬間、俺の背後から何かが動く物音がした。
振り向くとそこでは先ほど真っ赤なスーパーカーから轢かれ、宙を舞った後地面に落下した化物が起き上がろうとしていた。
「あちゃー……霊核は破壊できなかったか。やっぱ、ブレーキを踏まずにフルアクセルで轢いときゃ良かったかなー」
そんな化物の姿を見て、そう呟く彼女(そんな事をされていたら、俺まで轢かれてたのだが)。
っていうか、霊核ってなんだ?
そんな風に未だ多少の困惑が残りながらも、俺は改めて『クインケ』を化物に向ける。
クルマで轢いてもすぐに起き上がるほどの化物だ。対『喰種』用のクインケでもない限り、それを倒す事は出来まい。
しかし、今回もまたこの試みは出来なかった。
何故なら、横から伸びた赤い女の手が俺の『クインケ』をひょいと奪い、地面に投げ捨てたからである。
「はあ!? 何するんだお前!」
「あの化物を倒すために戦おう、というお兄ちゃんの心意気は気に入った。だが、それを撃つのはやめておきな。無駄撃ちになるぜ。
どうやらその武器は普通のボウガンや拳銃とは違うらしいが、それでもあの『サーヴァント』――『バーサーカー』には傷1つつけられねえよ」
「? 『サーヴァント』? 『バーサーカー』? 」
「あー……お兄ちゃんはそういうの知らないのか。
ま、その辺の説明は面倒くせえから後でな。今あたしはとりあえず――コイツを倒す」
彼女は口元にニヒルな笑いを浮かべ、狩りをする鷹のような目で化物を見つめた。
化物は依然、こちら側に向かって来ていた。
距離が近くなり(正確には近くなって、離れて、また近くなり)、その分化物の醜悪で凶悪な風貌が詳細に目に映る。
確かに今改めて考えると、あんな『喰種』以上に人間離れした存在に『クインケ』による攻撃が効くのかは少し疑問だ……
「……ん? いやでもお前、武器持ってねえじゃねえか!?」
「あん? 武器? そんなもん持ってねえよ。あたしは武器を持つと、むしろ弱くなるんでね」
「じゃあ、いったいどうやって……『クインケ』すら効かないって言う相手を倒すってんだよ!」
俺の質問に対し、赤い女は『決まってんだろ』とでも言うように口元のニヒルな笑みをより一層深め、両手の拳を握りしめた後、次のように言った。
「ブン殴って倒すのさ」
◆
「あたしは『ライダー』。人類最強の請負人で、お兄ちゃんの『サーヴァント』――まあ、つまり味方さ」
宣言通り、化物を殴って倒した彼女、改めライダーはそう名乗った。
ちなみに、今俺とライダーが居るのは彼女のスーパーカーの中である。
彼女が運転席で俺が助手席という位置だ。
何故スーパーカーの中に居るのかと言うと、化物――ライダーが言うところの『バーサーカー』を倒した後、『このまま血塗れの現場に居るのはマズいだろ』と言うわけで、クルマで移動する事になったからだ。
ていうか、彼女はそのセリフを言うと同時に俺と、ついでに先ほど地面に投げ捨てた『クインケ』を助手席に無理矢理押し込んだのである。
おかげで身体のあちこちが痛い。
クルマが発進した後、すぐさま俺は彼女に今俺の居る世界はおかしいという事や、『サーヴァント』や『バーサーカー』の意味について彼女に尋ねたが、『説明は後ってさっき言っただろうが』と一蹴された。
「いや、その『後』が今じゃないのかよ!?」
「んなわけねえだろ。ジョジョの奇妙な冒険のポコみてえなこと言ってんじゃねえ。
それに、クルマの中みたいな閉塞的な空間よりも、もうちょい広い場所で話した方がお兄ちゃんも落ち着いて聞けて、理解しやすいだろ?」
「ん……たしかにそう……なのか?」
突然記憶を消されて違う世界に連れてこられ、その上『バーサーカー』や『サーヴァント』という言葉が飛び交うバトルに巻き込まれたことについてなんて、どれだけ達者な説明をどれだけ落ち着ける環境で聞いても、理解できるとは思えない気もするが……。
「なあに、そん時はぶん殴ってでも理解させてやるさ」
そんな物騒なことを言いながら彼女はクルマを走らせる。
「ん? ところで、ライダー。今何処に向かってんだ?」
「決まってんだろ。お兄ちゃんのマンションさ」
それを聞いて、俺は思わずシートに座る体勢を崩した。
「俺のマンション!?
たしかにこの世界にもそう呼べる場所はあるけど……でも、俺はまだお前にその場所を教えてないぞ!? それになんでそこに行く必要があるんだ!?」
「はっはっはっ。あたしは読心術が得意でね、今までの兄ちゃんとの会話の端々でマンションの大体の位置は特定できたさ。それに、偽物とはいえ自分の部屋が1番落ち着くだろ?
……おっ、そろそろ着くぞ」
彼女がさらっとトンデモないスキルの説明をした後にそう言うと、クルマのスピードは下がり、やがて完全に止まった。
彼女のスーパーカーが止まったのはこの世界で俺が住むマンションであった。
見覚えがあると同時に、見覚えの全くないマンション。
彼女はクルマから降りてマンション入り口へと向かって歩いて行った。俺もそれに続く。
エントランスのドアを開けるパスワード入力の際、一応命の恩人で、(おそらく)味方であるものの、かなりの危険人物な彼女を自宅に入れていいものか迷ったが、最終的には入れる事にした。決して、彼女の鋭い目つきに気圧されたわけではない。決して。
かくして、この俺滝澤政道と『1度入った建物全てを例外なく崩壊させている』という伝説を持つライダーは出会ったのであった。
【クラス】
ライダー
【真名】
哀川潤@戯言シリーズ
【ステータス】
筋力A+ 耐久A+ 敏捷A+ 魔力E 幸運B 宝具 EX
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
対魔力:E
無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。
騎乗:D
乗り物を乗りこなすスキル。
哀川潤の場合、自身の宝具やバイクなどの乗り物をプロ顔負けの腕前で運転できる。
【保有スキル】
専科百般:EX
多方面に発揮される天性の才能。
哀川潤は万能者(ジェネラリスト)である。一般的な技術は勿論、声帯模写や読心術、鍵開けといった専門技術などでAランクの習熟度を発揮できる。
戦闘続行:B
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
直感:A
戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
【宝具】
『緋色の疾走(スーパー・ヒーロー・カー)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
哀川潤がライダーたる由縁の宝具。
見た目はただの真っ赤なスーパーカー『コブラ』であり神秘性は殆どないが、『人類最強の請負人に愛用されていた』という理由から宝具化した。
彼女は何処からともなくこの車を召喚することが出来る。たとえ壊れたとしても新たに召喚する事が可能。
主に移動手段として用いられるが、この宝具で人を轢き飛ばす事も当然出来る。
『我最強、最強故に理由なし』
ランク:EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大補足:-
『人類最強』と呼ばれるライダーの存在自体を現した宝具。
一時的に自身の全ステータスを上昇させ、『戦闘続行』にプラス補正をかける。
元々のステータスが高いライダーの場合、この宝具を発動すればステータスの一部は最早規格外――EXランクまで到達する。この状態の彼女に勝てる存在はまず居ないであろう。
しかし、その分発動中に消費する魔力は多く、発動しなくてもライダーは元からかなり強いため、この宝具を使う事は殆どない。
もし発動する機会があるとすれば、彼女の目の前に『人類最強』以上――『人類最終』レベルの存在が現れた時くらいしかないだろう。
【weapon】
素手(本人曰く、むしろ武器を持つと弱くなるらしい)
【人物背景】
職業、請負人。
数々の武勇伝を持つ、向かうところ敵なしの人類最強。
かつて3人の男たちによって『因果を崩壊させる存在』として作り上げられた人間であり、そのため人外じみた力と耐久を持つ。
赤色の髪、ワインレッドのスーツ、真っ赤なコブラ、ととにかく赤色が好き。
極上のプロモーションを持つが、目つきが異様に悪い。
ワイルドで攻撃的な性格をしているが、身内には非常に甘く、裏切られると予想できても信じる方を選んでしまうほど。
【サーヴァントとしての願い】
なし。
強いて言うなら、戦いに勝つ事を目的としている。
【マスター】
滝澤政道@東京喰種
【能力・技能】
クインケ操術:
上司から譲り受けた『ドゥヒ』という羽赫のクインケを用いる。
神秘性を持たないため普通のサーヴァントにはダメージを与えられないが、相手が『喰種』に属す者ならば多少のダメージを与える事が出来る。
喰種捜査官:
喰種を殺す、もしくは捕らえる者――喰種捜査官に必要な様々な専門技能。
【人物背景】
アカデミーを次席で卒業した優秀な新人捜査官。
しかし、自身以上に優秀な人物から1番の座を取られ、いつも自分は2番である事をコンプレックスに思っている。
喫茶『あんていく』襲撃戦の際、喰種集団『アオギリの樹』に捕らえられて行方不明となり、2年後に半喰種となった姿で現れるのだが、それは彼にとってまだ先の話。
【マスターとしての願い】
(まだマスターとしての自覚がないため)なし
【備考】
参戦時期は『あんていく』襲撃戦の途中からです。
候補作投下順
最終更新:2016年03月14日 01:44