吹き抜ける夜風が気持ちいい。
そんなことを思いながら、黒いスーツを着た男は、夜の歓楽街を悠然と歩いていた。
道行く誰もが振り返るような妖艶な魅力こそないが、ひとたび流し目を向けられたら、世の女性の何割かは頬を紅潮させるに違いなかった。
男はつい先程まで、行きつけのバーで同じ会社の後輩たちと飲んでいた。
自分より若い相手と飲むのは案外と疲れるものだと、男は二人の後輩が酔い潰れたあとで実感した。
女性を侍らせるのが好きな男と、まだまだ社会の酸いも甘いも知らず少年っぽさが抜けきらない男。
彼らをタクシーで自宅に帰らせてから、酔いが程よく回りつつある頭で、スーツの男は別の店を探し始めたのだ。
「――めてくださいっ!」
歓楽街の外れまで歩いてきたところで、ふと少女の声を耳にした。
周囲を見回せば、あからさまに暗い路地裏がある。
なにやら近頃、大規模な事件が発生したとかで、防犯がこれまで以上に大々的に叫ばれ、監視カメラの数は倍増していた。
そんなご時世に好んで通りたがる奇特な人物など、滅多にいない道だ。
「――っ!――!!」
それでも、ごく稀にではあるが、こういった事例はある。
歓楽街はおろか都会にも慣れていない少年少女が、つい気まぐれで深淵を覗いた末路を、男は良く知っていた。
死にはしない。ただし、二度と自分からこの街を歩くことはない。
濁して言えば焼きを入れる。有り体に言えば拷問だ。
誰あろう男自身が、その役割を果たしていた。
「やめ――!やっ――!!」
それにしても、今日の少女は抵抗が激しい。男は気になって暗がりを凝視した。
目が慣れてくると、そこには年端も行かない少女の姿があった。二人のアロハシャツに囲まれて、かなり怯えている。
男は溜息をついた。チャラついた服装で夜の街を歩くガキなら良心の呵責など微塵も起きないが、見る限り少女はそういう類ではない。
いわゆる不慮の事故だ。
オールバックの金髪を撫でつけながら、男は路地裏に近づいた。
「おい、そこまでにしとけ」
「っ!……どうしたんすか?」
アロハシャツたちは、男の突然の登場に当惑した様子だった。
それはそうだろうな、と男は内心で納得していた。
路地裏に迷い込んだ猫は、捕まえた者が男へと引き渡す手筈になっているが、引き渡す前に好き勝手遊ぶ者も多い。
血も涙もない無法地帯。腐った環境だが、男は昼間の通常業務で溜めたストレスをぶちまける場として不満はなかった。
しかし、眼前で行われる行為を黙って見過ごせるほど、男自身は腐敗しきっているわけでもないらしい。
「偶然通りがかっただけだ。お勤めご苦労。後は任せな」
「そんなっ、折角の処女なのに――」
男は聞く耳持たず、ひとりを足払いで地面に倒すと、近くにあった古びたモップの柄を拾い、喉元につき付けた。
「ここからはこっちの領分だ。四の五の言わずに帰るんだな」
「ひっ……」
「お、おい行こうぜ」
アロハシャツたちは乱れた服装を直しながら、ほうほうの体で逃げ出した。
後に残されたのは、少女とスーツの男。
少女は未だに身体を震わせていた。
どうやら恐怖の対象には、アロハシャツだけではなくスーツの男自身も当てはまるらしいことに、男は十秒近く経ってから気づいた。
「あー……その、なんだ」
普通なら警告の言葉を発して、ただ家へと帰るよう促すべきだろうが、男は言い淀んだ。
なにせヤクザの恫喝めいたことを目の前でしてしまったのだ。何を言おうと受け入れてくれるはずもない。
男はなけなしの知識から、子供と話すときには相手の目線になることを思い出した。
膝を地面につけて少女を見据えると、男と頭の高さが近づいた。
なるほどこれなら、委縮させることはないだろう。男はそう思いながら、少女の瞳を見た。
「――っ!?」
その瞳を、男は知っていた。見たことがあった。
瞳の奥にある輝きを、男は――γ(ガンマ)は――誰より慕っていた。
少女の瞳を見たことが契機となり、γはそれまでの世界が崩れていく感覚に襲われた。
「……?」
呆然自失といった様子の男に対して、少女はなんの反応も返さない。
当然だ。少女はγのことをこれっぽっちも知らない、本当の赤の他人なのだから。
γも少女も、今この状況を正しく認識できていなかった。
(…………ようやくか)
ただ一人、認識している者がいるとすれば、それはたった今マスターとして目覚めた、男のサーヴァントに他ならない。
【クラス】セイバー
【真名】幻騎士@家庭教師ヒットマンREBORN!
【属性】秩序・中庸
【ステータス】
筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:B 幸運:E 宝具:B
【クラススキル】
対魔力:B
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
騎乗:E
乗り物を乗りこなす能力。幻騎士には騎乗の逸話が存在しないため、申し訳程度のクラス別補正である。
【保有スキル】
幻術:A
相手の脳に作用して幻覚を見せ、現実には起きていないことを起きていると思い込ませる術。
同ランクの直感スキル等で看破される可能性がある。
霧の炎:A
個々が持つ死ぬ気の炎の一種。藍色の炎。構築の性質を持つ。
限定的な魔力放出とも捉えることができ、汎用性は高い。
とりわけ幻術と併用して発動することで、その効果は増幅する。
【宝具】
『奥義・四剣(おうぎ・しけん)』
両手と両足に装備した剣を自在に操る技。幻覚や霧の炎も合わせて、相手の集中を奪いながら戦闘するスタイル。
『大戦装備(アルマメント・ダ・グエーラ)』
幻剣(スペットロ・スパダ)と霧の2番(ネッビア・ヌーメロ・ドゥエ)を装備した状態のこと。
この状態時に限り「幻剣舞(ダンツァ・スペットロ・スパダ)」、
及びその上位技「究極幻剣舞(エクストラ・ダンツァ・スペットロ・スパダ)」が使える。
これは幻剣と幻ウミウシによる、霧の炎で出来た斬撃とミサイルを固めて相手に飛ばす技。
【weapon】
- 霧のマーレリング(偽)
- 残像骨(オッサ・インプレッショーネ)のヘルリング
どちらも匣兵器を発動させるために必要なリングだが、ヘルリングは強大な力の対価に精神を喰われる。
無数のウミウシ型匣兵器。所有者の想像を映像化した幻覚を構築する。
また、追尾機能、誘爆機能を有している。
伸縮自在の大剣型匣兵器。
伸縮自在の鎧型匣兵器。
この二つは、強大な力を発揮できるものの、能力のないものが扱うと危険。
【人物背景】
ミルフィオーレファミリー6弔花の一人で、霧の守護者。
白蘭という男に命を救われたことで、それまで所属していたファミリーを裏切る。
四刀流の使い手であり、10年後の世界において、当代一の剣士と謳われていた。
【マスター】
γ(ガンマ)@家庭教師ヒットマンREBORN!
【マスターとしての願い】
???(まだ現状を呑み込めていない)
【weapon】
不明
【能力・技能】
不明
【人物背景】
幻騎士の裏切りにより壊滅に追い込まれたファミリーの、雷の守護者。
面倒見のいい兄貴分という面と、他人を嬲り殺すことも厭わない冷徹な面を持つ。
候補作投下順
最終更新:2016年03月14日 01:51