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「ただいまー…」


そんなことを言っても、返事は返ってきません。
そもそも自分は一人暮らしなのだから当然でした。
それでも何となく、帰宅の挨拶をしてみたくなってしまうのです。
つまるところ、ちょっぴり寂しい。
気持ちを紛らわせる為に挨拶をしてみたくなるのです。

住居であるアパートの部屋に帰宅し、私は靴を脱いで玄関へと上がりました。
スーパーの袋を両手にぶら下げ、台所にそれを置きました。


「ふー…特売間に合ってよかった…」


床に置いたスーパーの袋を見下ろし、そんなことをぼやいてみる。
夕方の特売で野菜が安売りしていたので急いで買いました。
他にも適当に調味料を買ったので、今日の夕飯は野菜炒めにするつもりです。
こう見えて家事には慣れています。
上京して、一人暮らしを始めてからそれなりに経つから。
地元―――――じゃなかった、ウサミン星で母親から料理も教わっています。
生活力という点においてはしっかり自立出来ている、と思います。


手洗いをしながら、私はぼんやりと思考する。
今日の昼間、私は唐突に『気付いた』。
自分が大きなプロダクションに所属するアイドルであるということに。
本来ならばプロデューサーにスカウトされ、そのプロダクションで駆け出しのアイドルとして頑張っていた筈なのです。
なのに今の自分は何故かメイド喫茶でのバイト生活に逆戻りしているのです。
プロデューサーや事務所、知り合ったアイドル達の電話番号も何故か携帯電話から抹消されていました。


そのときナナは気付いたのです。
この街は、私の知っている世界とは何かが違うと言うことに。


違和感を覚えながらもどうしようも出来ず、いつも通りに買い物をしていつも通りに帰宅をしました。
一体全体、何がどうなっているのだろうか。
頭の中で疑問をぐるぐると回転させていた、その時。



「おかえり、我がマスターよ」



唐突に挨拶の声が聞こえてきたのです。
一人暮らしで、他に誰とも同居していない筈の私の部屋で。
全く知らない誰かが―――――挨拶してきたんです!


びくっと怯えながら私は居間の方へと視線を向けました。
そこに居たのは、黒い服を身に纏った壮年の男性。
畳の上、卓袱台の横で胡座を掻き、窓の外を眺めていました。
もしかして夕焼けを見ていたのでしょうか。
そういえば今日の夕焼けは綺麗だったなぁ、と私は呑気なことを考えてしまいました。


「えっと……どちら様で?」
「ああ、そうか。確か君達マスターに聖杯戦争の記憶は与えられてないのだったね」
「な、何言ってるんですか?け……警察!警察呼びますよ!?」


意味不明な言動を繰り返す男性に、私は声を荒らげて言いました。
呆気に取られて驚いてしまったが、よくよく考えなくてもれっきとした不法侵入だ。
正直言って怖い。何でこんな人が家に上がり込んできているのか。
目的が全く解らないからこそ、恐怖が込み上げてくる。
それでも私は勇気を出して出来る限りの憤りを見せました。
しかし不審者の男性は特に焦ることも無く、飄々とした態度で私を見つめてきました。




「キャスター。それが私のクラス名さ」




次の瞬間―――――私は目を疑いました。
居間でくつろいでいた男性が、突如『変身』したのです。
その姿を、私の理解出来る範囲で表現するならば。
極彩色の身体を持つ、奇怪な宇宙人。



「う、ううううう、うう、う、宇宙人っ!!!?」
「察しが早くて何よりだ。私は君達が言う所の『宇宙人』さ。
 尤も、今の私は君の味方だ。安心してほしい」



ナナはつい腰を抜かしてしまいました。
何せ目の前にいるのは本当に宇宙人だったのですから!
ナナはついに本物の異星人との接触を果たしてしまったのです!


そんな私の驚きもいざ知らず、キャスターを名乗る宇宙人は柔和な態度で語り掛けてきます。
曰く、私の味方…とのことですが。
そもそも、何で私の元に宇宙人が来たのでしょうか?
これはもしや、ウサミン星人のハートウェーブが本当に宇宙人を引き寄せてしまった…?

直後にキャスターさんは私に手招きをしてきました。
こっちで座って話をしようじゃないか、とのことです。
私は恐る恐る近付き、卓袱台を挟んで畳の上に座りました。


「で、君からも自己紹介をしてほしいな。
 これから共に組む相手なのだからね」
「あっ、は、はい!」


自己紹介を求められて、私はその場で立ち上がりました
今座ったばかりなのについ立ち上がってしまったのはご愛嬌と思って頂ければ…。
相手は本物の宇宙人――――の筈なのです。
だからナナも、それに相応しい挨拶をします!



「私はウサミン星からやってきた17歳!
 その名も、ウサミンこと安部菜々です♪
 歌って踊れる声優アイドル目指してますっ☆」



そう、私はウサミン星からやってきた宇宙人!
歌って踊れる声優アイドルを目指して努力を重ねる17歳!
ウサミンこと―――――安部菜々です!
そんな名乗り口上を堂々と言いましたが。
キャスターさんは、ぽかんとした様子で沈黙。


「………君は地球人では?」
「………あの、ウサミン星人ってことにしてください」
「はあ、そうなのか……承知したが、変わった挨拶だね……」
「あ、はい……何かその……スミマセン…」


ナナ、明らかに引かれてます。
本場の宇宙人に引かれてます。
なんだか妙に恥ずかしくなって私はしょんぼりと座って謝りました。
異星人同士の文化交流はとても難しいものでした。






「――――えっと、ナナ達は聖杯戦争…って言う催しの、参加者なんですか?」
「そうだ。何でも願いが叶う聖杯を巡って争う催しさ。
 まあ、ちょっとした大会のようなものだと思ってくれればいい」


その後私はキャスターさんから色々なことを聞きました。
私が聖杯戦争という催しの参加者(マスター)に選ばれたことを。
聖杯戦争は、聖杯という何でも願いが叶うアイテムを巡って争うということを。
キャスターさんは聖杯戦争の参加者に与えられる、いわば使い魔のような存在だということを。
私以外にも複数名の参加者が会場内に存在しているということを。
マスターとなった者の身体には令呪という模様が証として浮かび上がるということを。
まさかこんなマンガのような世界に巻き込まれることになるとは。
ナナは驚かされるばかりです。


「とはいえ、実際に何かするのは主に我々サーヴァントの役割だ。
 君は何もする必要は無い。ただマスターとして気付かれないようにしていればいい。
 詰まる所、いつも通りに生活をしていればいいのだよ」


キャスターさんは穏やかな声色でそう語ります。
この人の言う所によれば、私がするべきことはそんなに無いらしいです。
ただいつも通りに暮らしていればいい―――催しだと言うのに、ちょっと退屈だなと思う。
そんなことを思いつつ、私はキャスターさんに問いを投げ掛けました。


「その、聖杯って言うのは本当に願いが何でも叶うんですか?」
「ああ、何でも叶う。君も好きに願いを考えておくといい」


そうきっぱりと断言されました。
何でも願いが叶う。まるで魔法みたいな話です。
とはいえ、急にそんなことを言われてもどうすればいいのか。
人と言うのは迷ってしまうものなんです。

歌って踊れる声優アイドルとして輝きたい―――――というのも考えましたが。
魔法みたいな力を使ってそれを叶えるのは何だかなぁと思い、却下しました。
あくまで自力で、自分の努力でそこは頑張りたいですしね。


「サーヴァントは、この催しに自分の意思で参加するんですよね?」
「ああ、そうさ」
「キャスターさんの願いって、何でしょうか?」


私はふと疑問に思い、そう問いかけた。
この宇宙人は一体何を願って催しに参加したのだろうか。
詮索と言うよりも、純粋な疑問による問いかけだ。
キャスターさんは少しばかり黙り込んだ後、ゆっくりと答えた。


「それは聖杯を手にした時のお楽しみ、ということでどうかな?
 少しばかり恥ずかしい願いなのでね。あまり大っぴらには言いたくないんだ」


そう言ってはぐらかされて、私はきょとんとした顔をしてしまいました。
恥ずかしい願い…ますます気になってしまいます。
ですが、人には余り言いたくないことというのは誰にだってあります。
ナナだって17歳を名乗っていますが、実年齢は――――いやいやいや、そうじゃなくて。
とにかく、聖杯を手にした時までの秘密にしておきたい…と言うのなら、ナナは追求しません。


「さてナナ、実際に何かするのは私…とは言ったが。
 実のところ、私は余り此処から動かないつもりだよ」
「え、どうしてですか?」
「私は隠れ潜み、あくまで漁父の利を狙うつもりなのさ。
 少々『せこい』と思うかもしれないが、私はサーヴァントとしては直接戦闘に向いていないタイプなんだ」


私は先程のキャスターさんの説明を思い返しました。
この聖杯戦争はサーヴァント同士による乱闘のようなものらしいです。
キャスターさんも他のサーヴァントと頑張って戦うのかと思っていましたが、どうやら違うみたいです。


「勝利するのに下手な力は必要無い。
 潰し合いを静観し、隙を突く…それが私の流儀だ」
「な、なんだか頭脳派ですね…!」


言われてみればその通りです。
何人も参加者が居るのだから、下手に動く必要は無い。
皆が戦っている好きに勝利をもぎ取ればいい。
確かに道理に適っています。キャスターさんは策士なのかもしれません!
ちょっぴりずるいな、と思わなくもないのは内緒です。


「まあ、兎に角…先程も言った通り、君はいつも通りに過ごしてればいいさ。
 聖杯戦争に当たるのは私の役目だからね。それで、話は変わるが…」
「はい、何でしょうか?」
「食事にしないか?もう夕飯の時間だろう」


確かにその通りである。
気がつけば、ぐぅぅぅと私のお腹の虫は鳴っていました。
私はキャスターさんの言う通り、食事を作ることにしました。
一人分の予定だった食事は二人分に。
宇宙人と食卓を共にすることになるとは、思いもしませんでした。



まさかこんな催しに巻き込まれるとは驚きです。
この時のナナは、まだ何も知りませんでした。
自分の巻き込まれている聖杯戦争の本質さえも。




◆◆◆◆




―――――驚きだ。
―――――まさか私が英霊となり、聖杯を巡る儀式に参加する権利を得られるとは。
―――――まあ、これも僥倖というべきか。
―――――折角与えられたチャンスだ、有効に活用させてもらうとしよう。
―――――勝ち残る為にも、今の自分に何が出来るかを確かめる必要がある。
―――――宇宙ケシの生成、加工は行えた。
―――――後は宝具の『実験』だ。



◆◆◆◆




昨日夕方、岩本町で同僚に暴行を加えた男性が現行犯逮捕されました。
逮捕されたのは会社員の×××容疑者(30)。
被害者の△△△さん(29)は病院に搬送されましたが、命に別状はありませんでした。
調べに対し容疑者は「自分は殴ってない」と容疑を否認しています。




昨日夕方、飯田橋で刃物を持った男による殺人事件が発生しました。
被害者は現場近くに住む◯◯◯さん(24)、△△△さん(45)、□□□さん(50)。
三人はその後病院に搬送されましたが、いずれも死亡が確認されました。
事件を目撃した近隣住人からの通報により警察官が駆け付け、現場近くに住む会社員、×××容疑者(30)を現行犯逮捕。
逮捕の直前、容疑者は警察官三人と揉み合いになり、うち一人が胸を刺されるなどして重傷。
調べに対し容疑者は「殺意は無かった」「記憶に無い」と曖昧な供述を繰り返しているとのことです。




昨日夕方、霞ヶ関で歩道に乗用車が突っ込む事件が発生しました。
歩道を歩いていた30代の女性と50代の男性がはねられ、頭を強く打ちその場で死亡が確認されました。
目撃者によると自動車は意図的と見られる運転で歩道に乗り出し、通行人を跳ねたとのことです。
警察は乗用車を運転していた区役所職員の×××容疑者(48)を現行犯逮捕。
調べに対し容疑者は「何も覚えていません」と供述しているとのことです。



【クラス】
キャスター

【真名】
メトロン星人@ウルトラセブン
※厳密には真名ではないが、便宜上この呼称が真名として扱われている。

【ステータス】
筋力C 耐久D 敏捷D 魔力C+ 幸運C 宝具C+

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
陣地作成:D
侵略者として自らに有利な陣地を作成可能。
効果範囲はせいぜいアパート一軒を乗っ取れる程度。

道具作成:D
人間を凶暴化させる宇宙ケシを生成可能。
対象に摂取させることで効果を発揮する他、後述の宝具にも用いられる。
侵略者としての側面が膨張したことによって応用の幅が広がり、結晶体以外にも液体などある程度の加工が可能。

【保有スキル】
変化:B+
自身の肉体を変化させるスキル。
メトロン星人の場合、通常時の宇宙人としての姿から人間の姿へと変化する。
人間に擬態している最中は魔力の気配を完全に遮断し、ステータスを視認されることもない。
そのため無力な一般人のように振る舞うことが可能となるが、後述の宝具「放逐の円盤」が使用出来なくなる。
なお本来ならば自身の身長を50メートルにまで巨大化させる能力も備えているのだが、サーヴァントとしての劣化により使用不可。

侵略の慧眼:B
数々の惑星を狡猾な作戦で侵略してきた逸話がスキルと化したもの。一種の戦術眼。
対象の能力と習性を冷静に把握し、効果的な作戦を導き出す“侵略論理”。

話術:D
言論にて人を動かせる才。
脅迫じみた忠告や柔和な言動などを使い分け、他者を牽制する。

【宝具】
「狙われた街」
ランク:C+ 種別:対街宝具 レンジ:1~10(対象指定有り)、会場全体(対象指定無し) 最大捕捉:1~?
生物を凶暴化させる宇宙ケシを利用し、人類の信頼関係を破壊することで地球を掌握しようとした逸話が宝具化したもの。
道具作成スキルで生成した宇宙ケシの結晶体や液体を空間転移させ、煙草や飲食物へと混入させる。
宇宙ケシが混入した煙草や飲食物を摂取した者はたちまち凶暴化し、周囲の人間に攻撃を仕掛けるようになる。
伝承で確認されている範囲では煙草にのみに宇宙ケシを用いているのだが、
「信頼関係の破壊によって地球支配を目論む侵略者」としての逸話が膨張したことによって能力の応用力が拡大している。
また宇宙ケシの転移は対処指定有り・対象指定無しを任意で決めることが出来る。

対象を指定する場合、特定個人が持つ煙草(飲食物)や自販機内の煙草等に任意で混入させることが可能。
ただし任意に指定する場合、一定の範囲内に対象が存在する必要がある。

対象を指定しない場合、レンジ内に存在する煙草(飲食物)にランダムで混入する。
結晶体の総量が多ければ多いほど結晶体は広範囲に拡散し、数多くのモノに混入することとなる。
なおマスターを中心とする一定範囲内にケシが転移されることはなく、マスターが事件に巻き込まれる危険性は抑えられている。

「放逐の円盤」
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
メトロン星人が搭乗する宇宙船。
空中を自在に飛行し、破壊光波によって対象を攻撃する。
二機に分離してそれぞれが飛行することも可能。
変化スキルによって人間に擬態している際はこの宝具の使用が不可能。

【Weapon】
素手

【人物背景】
「幻覚宇宙人」の異名を持つ宇宙人。
宇宙の彼方にある紅の惑星「メトロン星」よりやってきた侵略者。
狡猾な知能を持ち、地球に現れる以前から数々の惑星を侵略してきた。
地球では北川町のアパートを拠点とし、宇宙ケシを煙草に混入されることで人間を凶暴化させていた。
最終的に信頼関係の崩壊による全人類の同士討ちへと発展させ、人類が滅亡した際に地球を支配しようとしていた模様。
しかしウルトラセブンとウルトラ警備隊によって阻止され、夕焼けの街でウルトラセブンと対決するも敗北した。

【サーヴァントとしての願い】
メトロン星人による全宇宙の支配。

【方針】
下手に暴力を使う必要は無い。
自分達は潰し合いに乗じて漁父の利を得ればいい。

マスターには聖杯戦争について大まかに話したが、基本的には「ちょっとした催し」程度にしか語っていない。
殺し合いの儀式であること、自分が地球侵略を目論む存在であること、令呪の用途については隠している。
尤も、バレたとしても適当な言い訳で丸め込むつもりである。






【マスター】
安部 菜々@アイドルマスター シンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
元の世界に帰りたい。
聖杯戦争については把握したものの、サーヴァント同士を戦わせるゲームのような催し程度にしか聞かされていない。

【weapon】
ウサミミとメイド服

【能力・技能】
歌って踊れる声優アイドルになるべく、ダンスやボーカのルレッスンを行っている。
ただし無理をしすぎると腰を痛める。

【人物背景】
自称・ウサミン星出身、永遠の17歳。それがウサミンこと安部菜々である。
メイド喫茶でのアルバイトや地下アイドルとしての活動で下積みをしてきたらしい。
目指すは歌って踊れる声優アイドル。

この聖杯戦争においては秋葉原の安アパート暮らし。
メイド喫茶でバイトしてつつ地下アイドルとして活動している模様。

【方針】
キャスターの言う通り、とりあえずいつも通りに過ごす。

令呪の位置は鎖骨付近。



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 11:45