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―――選んだ色で塗った世界に囲まれて、選べない傷の意味はどこだろう?



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「朝か…今日は何しようか…」

怠惰な態度を隠そうともせず、少年高嶺清麿は朝日を浴びながら見慣れない天井を見つめていた。
少年にとって世界とは鬱陶しく、息苦しい物でしかなかった。
元いた世界も。
この場所ですら。
有無を言わせず自分を拉致し、慣れない一人暮らしを強制する。
そのくせ、周囲の環境だけは少年の元いた世界をなぞる様に、低レベルな人間で溢れていた。

――――ちっ、なんだよあいつ。

――――久々に来たと思ったらまたイヤミな事やりがってよ。

――――頭いいのは分かったから、他の学校にでも行っちまえよ鬱陶しい。

――――頭悪い俺達を見下して、優越感にそんなに浸りてーのかよ。


少年は孤独であり、孤立無援であり孤高だった。
だから、不登校を繰り返す。少年の元居た場所と何も変わらない。
いくら休んだところで、自分の頭脳なら進学などどうにでもなる。
所詮は義務教育だ。


それよりも目下重要なのは―――.
枕元にあったリモコンを取り、テレビに光を燈す。
電波と言う名の命令を吹き込まれたテレビには、この法治国家たる日本の首都東京で大虐殺を繰り広げた殺人鬼の話題で持ちきりだった。


「………」


無言で、しかし食入る様にテレビを凝視する。
戦争をしている訳ではないのだ、こんな事はありえない。
レポーターはテロリスト説を推しているが何の声明も出していない以上、その線も薄い。
当然であるが三ケタの人間を通り魔程度が一日で殺傷するのは非常に困難である。
それこそ、超強力な爆弾でもない限り――――


チッチッチッチ、おっぱ~い!ボイン!ボイン~!(ぼいん!ぼい~ん!)


その天才と称賛される頭脳をフル回転させ、推理の旋律を奏でようとした矢先に何もかもぶち壊しにするメロディーが怒涛の様に流れ込んできた。
出鼻を挫かれる所ではない。
どうやらタイミングよくCMに入ったらしい。TVを理不尽に睨みつけると情け容赦なく電源を落とす。
そして、体を再び寝かせ、手の甲に刻まれた奇妙な紋様を検分し、首だけを横に曲げた。

犯人など分かっている。考察などするまでもない。
問題はどのバカがやらかしたかだ。



「で、あれはどのクラスのサーヴァントがやった事なんだ。クラウス…いや、ランサー」
「やり口から見て。バーサーカーのクラスで間違いないかと」


見つめるキッチンの奥には紳士然とした男が立っていた。
否、確かに物腰や立ち振る舞いは紳士だが、その容貌は一言で形容するならば鬼だった。
あるいは紅き狼と言った所か。
見据えられるとそれだけで少々肝が冷える。

「飲みますか?」

ランサー…クラウスと呼ばれた男はキッチンから出るとずい、とほのかに湯気の立つコーヒーを差し出してきた。
何時ものように、不味かったら嫌味を言ってやろうという捻くれた考えをしながら口をつけ啜る。

「……うまい」

その感想にぶんぶんと頷き、男は嬉しそうな様子を見せた。
表情は無表情だが、仕草まで心なしか犬っぽい。
結局、俺が飲み終わるまでじっとどこかの銅像の犬の様に自分を待っていた。

「……飲み終わったら、始めましょう」

まただ、と清麿は思った。
自分が記憶を取り戻してからと言うもの、こいつは毎日自分にプロスフェアーと言うゲームを挑んでくる。
それもきっかり3時間。

様は、チェスと将棋を複合させたようなゲームだ。
最も、盤が常に縦横無尽に動き回るので複雑さははるかに増すが。
最初は、ルールを掴みながらとはいえ、自分が負けるはずがないと思っていた。
事実、清麿はそういった類のゲームで負けた事がなかったのである。
しかし、彼の予想とは裏腹に、とても三時間でランサーを敗北させることはできなかった。


最初は梃子でも動かないと言った様子の此奴に根負けした体だったが、
清麿は気づけばここ数日毎日このゲームに興じていた。
一応、聖杯戦争についての情報を引き出すのも兼ねていたのだが。
だが、

「―――対局は今日までにして頂きたい。マスター」
「何?」

清麿は顔を顰めた。
こいつは無類のプロスフェアーフリークでそもそもプロスフェアーの勝負を挑んできたのは此奴だ。
その事が不快なだけであって、決して此奴との対局を楽しみにしていた訳ではない。
確かに、MITの主席論文を読むより、よほど自分歯ごたえがあったのは確かなのだが。


「これよりこの地は死地となります。私も、同志たちもそれに備えねばならない」


その言葉に、清麿の表情が緊迫したものに変わる。
プロスフェアーの「宣誓」をしながら、クラウスに問いを投げる。

「俺は、聖杯なんてものに願う事なんて無い。みすみす死ぬつもりもないけどな
 ……お前はそれでいいのか?」

クラウスは首を縦に振り、肯定の意思を示した。
自分も、願いがあってここに召喚されたのではない、と短く語り、続ける。

「マスター、貴公はただ巻き込まれただけだ。闘争の渦中にいるべきではない人間だ。
貴公の安全は我々ライブラが保障する」

眼鏡の奥から凛とした男の瞳が覗く。
その一瞬の瞳の邂逅は、男の生き様がどれだけ頑固で強靭なものであるか、如実に語っていた。
底の見えぬ修羅の道を歩んできた者の雰囲気を前にして清麿はしばし言葉に詰まる。
すると、口を噤んだ分神経は視界に裂かれ、クラウスの隣に女が立っているのに気付いた。

「ボス、不審な人物は今のところ見られません」
「うむ、ご苦労だチェイン」

クラウスが労いの言葉をかけると同時にチェインと呼ばれた豊満な胸の女の姿が“希釈”されていく。
じっと見つめていたはずなのに、いつの間にか風景に融けるように見えなくなっていった。
清麿はそれだけで理解した。

この女も目の前のランサーやあの惨事を起こした者と同じ“モノ“だと。

「今の女は?」
「私の宝具であり、同志です。今は完全な発動はできませんが」

同志と来たか。
清麿は心中で毒づいた。
本当に、忌々しいほどに頼もしいものだ。
聖杯戦争と言う暴威に他の人間が晒されるなか、自分だけがこんな頼もしい存在に守られている。
人によっては、後ろめたく感じるかもしれないが…今の清麿はまったくそんな事は感じなかった。


(そうだ、生き残れりゃそれでいい。あんな馬鹿共がどうなった所で…)


――やっぱり高嶺君は天才だよ。


あの水野スズメはここにはいない。
お袋も、親父もだ。
見捨てて寝覚めが悪い人間はモチノキ町ではない東京にはいなかった。
正直願いなどこっちにはないし勝手に殺し合っていろ、と言いたいところだが、どうして生き残るために必要ならば他人を犠牲にすることに迷いはない。

そのはずだ。
問題は無い、何も。


「狂戦士(ベナルカントス)」


ダンッ!!と言う重い判を押したような音が響いた。
それとともに思考が遮られる。
盤上を見れば、魔王像のような駒が圧倒的な存在感を放っていた。
しまったと思うがもう遅い。
この駒を出されてしまえば、ここからはクラウスの攻勢が続くだろう。
このまま押し切られてしまうかもしれない。
しかし、圧倒的好機を前にしてクラウスは時計を一瞥する。


「ここから先のこの対局はこの戦いが終わってからにしましょう」
「!?」

その言葉に清麿は目を剥いた。
当然だ、舐められているとしか思えない。
時間を見ればまだ11時、あと一時間残っている。

「ふざけるな!あと一時間残ってるだろうが!」

圧倒的舐められる事への不慣れ。
そこから来る怒りから容赦のない清麿の糾弾が飛ぶ。
しかし、クラウスには寸毫の動揺も無い。

「いえ。私はその残された一時間を貴方のために使いたい」

「…何が言いたい」

自他共に天才と認める彼も流石に目の前の男の真意を測りかね、問いを投げる。
そして数秒後、訝しげだった眼は男の返答を聞いて見開かれた。


「聖杯戦争とは別に、私で力になれる事は無いだろうかという意味です。
 ―――友人として」


限界だ。
そう判断した清麿は盤から離れると、手早く身支度を済ませていく。


「どちらへ」

「周りは安全なんだろ。飯、食ってくる」

「しかし……!」


クラウスの制止を起器用に避けると、清麿はそのままワンルームマンションの扉へとスタスタと歩いていってしまう。
そして扉に手をかけ、クラウスを一瞥すると、

「迷惑なんだよ、そんな事義理で言われても。
第一、お前に俺の何が分かるってんだ」



そう言って、扉を閉めた。
心中で最悪の少し早い誕生日プレゼントだと吐き捨てながら。





――――全ては、彼が14歳の誕生日を迎える一週間前。
――――金色の少年が彼の運命を変える少し前のおはなし。


◇ ◇ ◇ ◇


少々不味い事になった。
スティーブンの言うように、生前、人身の掌握と言うものにもっと心血を注ぐべきだったかもしれない。
だが、この安寧があとどれほど続くかはわからないのだ。
自分が呼ばれた以上、この世界の均衡を脅かす何かがこの都市にはある。

満ちつつある“異界”の空気。
自分の宝具の特性。

それらを考えれば、遅かれ早かれこの東京はHLと同じく異界(ビヨンド)と現世が交わる魔都へと変貌するだろう。
そうなる前に、彼とは信頼関係を築いておきたかった。
彼とはただのマスターではなく、同志として、友人として、同じプロスフェアープレイヤーとして接したかったのだ。
だが、自らの不徳で彼を反発させてしまった。
猛省し、これからも根気強く付き合っていく必要があるだろう。

自分としても、彼とのプロスフェアーの対局の決着は楽しみなのだから。
その未来を迎えるために、この聖杯戦争自体も調査する必要がある。
もし…世界の趨勢を危険にさらすものであるのならば、聖杯を破壊する必要もあるかもしれない。

加えて、TVに映っていた惨劇を引き起こしたサーヴァント。
完全に実力は未知数な相手。
HLではない、実力を”まだ“十全に出し切れない自分の業がどれほど通用するかは分からない。

だが、やるべきことは決まっている。
どれだけ人智を超えた存在が相手でも、人を、人界を護るのが“ライブラ”だ。

空気がわずかに変質し、クラウスの背後の背後に薄いシルエットが表れた。
シルエットだけでも性別、年齢、種族、そのどれもが多種多様であることが伺える。
不完全な現界だったが、彼にはそれがたまらなく誇らしい。
彼一人ではライブラはライブラ足りえないのだから。
息を深く吸い込み、魔封街結社のリーダーとして叫ぶ。


「征くぞ、同志達よ。手始めに―――
 世界を救うのだ!!」




――――――そして、世界と世界のゲームが始まる。






【クラス】ランサー
【真名】クラウス・V・ラインヘルツ
【出典】血界戦線
【性別】男性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:A 耐久:B 敏捷:B 魔力:C 幸運:B 宝具:A+

【クラススキル】
対魔力: A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではランサーに傷をつけられない。

【保有スキル】

滅獄の血:A
血液を自在に操る流派ブレングリード流の伝承者。
対吸血鬼において与える宝具のダメージがワンランク上がる。

プロスフェアー愛好家(ファン):A
99時間プロスフェアーと言う遊戯の対局を異界の重鎮とやりあった逸話から創られたスキル。
駒を使ったゲームをするときに幸運がワンランクアップする。

HL:B
彼が住んでいた異常が日常の街、ヘルサレムズロットの逸話がスキルになったもの。
異界の存在。異界の事件に日夜触れられているため精神耐性が付与され、同ランク以下の精神干渉をシャットアウトする。
本来ならA相当だが、よく胃に穴を開けそうになるランサー自身の繊細さからランクを下げてしまっている。

【宝具】


『ブレングリード流血闘術』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1000人
殴打、特に拳による近接肉弾戦を主体とした体術。「細胞レベルまで浸食してダメージを与える血液」を相手に送り込む事でダメージを与える。それ以外にも血液を凝固させて大量且つ巨大な十字架型の剣や盾に変形させる事も可能。十字架型の強度は作中でも最硬クラスであり、最強のエルダークラスですらこれを砕いたものは居ない。
その拳は形容するなら盾と『槍』で武装した重装歩兵。

『999式 久遠棺封縛獄(エーヴィヒカイトゲフェングニス)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1
血の十字架によって相手を「密封」し、行動不能にする。
現人類が不死の種族に唯一対抗できる技。これを受けると対象は手のひらサイズの十字架内に封印「密封」される。
ただし、この宝具はただ使うだけでは通じず、そのサーヴァントの真明を呼び、心臓に技を打ち込む事で封印が可能。
正し、この宝具は耐久がA+以上、それこそ彼がこの技を見せてきた不死に匹敵する程の相手でなければ発動できない。

『血界戦線・魔封街結社(ライブラ)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ-
彼がリーダーを務めるライブラのメンバーをサーヴァントとして召喚する。
しかし、会場がHLはおろかNYですらないため一人しか現界させられない上に短時間の現界となり、燃費も非常に悪い。
しかし、舞台がHLと同じく魔都に近づけば近づくほど現界させられる人数は増えていき、燃費も良くなっていく。
東京が混沌の極みとなれば、全員の現界も可能且つランサーの全パロメーターがワンランクアップする
『不可視の人狼』『神々の義眼』の様に戦闘以外の使い道を持つ者もいる。

【weapon】
十字架型のナックル。

【人物背景】
世界の均衡を守る為暗躍する「秘密結社ライブラ」のリーダー
世界有数の超人が集うライブラに置いても「最強」と呼べるほどの戦闘力と精神力を持って人間界を守護する。
良家の育ち故か世間慣れしてない面もあり、お人好しで純粋な正義漢であるが、それゆえに子供っぽく直情的で理不尽なところもある
園芸やプロスフェアー等多趣味である。

【サーヴァントとしての願い】
なし。世界の均衡を保つ。

【マスター】
高嶺清麿@金色のガッシュ!!

【マスターとしての願い】
無し。だが脱出の方法が無いなら優勝を狙う。

【weapon】
IQ190の頭脳

【能力・技能】
「答えを出す者(アンサートーカー)」
過程をすっ飛ばして答えを得る能力。
清麿は原作終盤で死の淵に立ったことによりこの能力を手に入れた。
万能な能力だが欠点もあり、彼の出せる答えを超えた答えは出すことが出来ない。
参戦時期はこの能力に目覚める遥か前のため当然ながら使えない。
だが、死の淵に立った後復活するか、あるいはアホのビンタを受ければもしかしたら目覚めるかもしれない。

【人物背景】
マサチューセッツ工科大学の首席卒業生の論文を難なく読みこなすことができるほどの天才児。
しかし、頭が良すぎるためにクラスメイトからの妬まれ、いじめまで受けて自堕落になり、不登校気味の毎日を過ごしている。
真の意味での中二病。
本来は金色の少年王が彼を変えるはずだったが、そこへ至る前に彼はここへと導かれてしまった。

【方針】
この世界からの脱出。或いは―――、



候補作投下順



最終更新:2016年03月03日 11:58