「――黒より昏く 闇より黒き漆黒に 我が真紅の混光を望み給う」
蒼と黒の相反する二色彩が混合した、混沌の光が莫大な魔力を伴ってただ一点に収束していく。
路傍に重なる粉塵は巻き上げられ、台風のそれよりなお激しい暴風が吹き荒れる様は、あたかも世界が悲鳴をあげているようでさえあった。
汐華初流乃少年とて、この世に産声をあげてからこれまでの間に何度もハリウッド映画を見たことがある。
魔法使いが箒で空を飛び、呪文で炎や雷を呼び出して、美しいオーロラを背景に戦い合う姿は否応なしに見る者の心を踊らせる。若き日の初流乃も例に漏れずそうだった。
しかしこれは演出の賜物が作り出す銀幕の世界ではなく、れっきとした現実で起こっている現象だ。
「覚醒の刻来たれり、無謬の境界に堕ちし理――無形の歪みとなりて現出せよ!」
この世のどんな技術を結集させ、どれだけ時間をかけて撮った映画でも、所詮それはスクリーンを隔てた虚構。
本物の迫力と圧倒的なプレッシャーとは、到底作り物風情が辿り着ける域ではないのだと初流乃は理解した。
禍々しく、同時に雄々しく、美しくすらある光がうねりをあげ、壮絶な音色と共に集ってゆく。
初流乃は、この時ばかりは己の幸運に感謝した。
この力を意のままに操る者の『背後』に自分がいることに――自分がこれを放たれる側でないことに、胸を撫で下ろさずにはいられなかった。
汐華初流乃ほどの男をしてそう思わせるほどに、それは絶対的な力の結集であった。
「踊れ、踊れ、踊れ――! 我が力の奔流に望むは崩壊なり、並ぶ者なき崩壊なり!
万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれッ」
悪逆を尽くした敵は、情けない声を上げて全速力で踵を返して走り出す。
少しでも、ほんの少しでも、これから起こる破壊から離れるために足を動かす。
全てが遅いと悟っていながら、ほんの僅かな望みに全てを懸けて、無駄と分かっている足掻きへ走る。
きっと、この憐れな敵を従者と使役している主人も、水晶玉の向こうで絶望していることだろう。
戦いを挑む相手を間違えたと、最早取り返しの付かない失敗に嘆きながら、刻一刻と訪れる炸裂の瞬間を眺めていることしか出来ない。
暗殺者(アサシン)が――走りながら、振り向いた。
その顔は瞬く間に、より色濃い絶望へと彩られる。
「……あんたのつまらない願いの為に踏み台にされた者達の痛みを、少しは思い知るんだな」
初流乃の声に同情の色は一切ない。
彼は目の前の光景に驚愕し、目を奪われながらも、悪を許さないその一点は貫徹していた。
もしも彼がつまらない情や口先で丸め込まれるお人好しだったなら、ひょっとするとこれから起こる大破壊も未遂に終わり、暗殺者が奇跡の座に辿り着く未来もあったのかもしれない。
けれど暗殺者の英霊は致命的な過ちを犯した。
たとえ虚構の人間とはいえ、汐華初流乃の目前で、罪のない一個の家庭を踏み躙り、虐殺してしまった。
そして暗殺者には、「殺す」覚悟はあったが――逆に「殺されるかもしれない」危険への覚悟はなかった。
ただそれだけのこと。それだけのことで、彼の聖杯戦争は幕を閉じる。
「これが人類最大の威力の攻撃手段。これこそが、究極の攻撃魔法」
渦を巻いた魔力の奔流が――ただ一直線に。
天から降り注ぐ神なる裁きとして、灼熱の柱へと姿を変えた。
空を見上げて、目を見開いた暗殺者の顔は、最期の一瞬まで絶望の底にあり。
「『この素晴らしき世界に爆焔を(イクスプロージョン)』――――!!!!」
さりとて、彼に一切の懺悔さえ残す暇を与えず。
最大の熱量と、最高の威力で炎の鉄槌は降り注ぎ。
暗殺者の体を焼き尽くし、霊核までも焼滅させ、存在全てを灼熱にて否定し――
悪なる魂を文字通り粉砕して、英霊の座へと送り返した。
◆
汐華初流乃少年が、虚仮に彩られた日々を認知したのはひょんな偶然からだった。
それまで初流乃は、至って普通の学生として暮らしを送っていた。
毎朝起きて学校へ行き、授業を受けて、部活には入っていないので六時間目の終了と共に校門を出る。
そんな日常を繰り返す。良く言えば平穏、悪く言えば惰性で流れる日々。
飢えと乾きを胸に過ごす中、初流乃はある時――ふと、本物の記憶を取り戻した。
きっかけが何であったかと問われれば、日々の全て、と返すしかない。
初流乃が偽りの日々の中で常々抱いていた感情は、飢えであり、渇きだった。
愛すべき平和である筈なのに、どこかに物足りないと感じている自分がいる。
より正確に言えば、これでいいのかと、そんな問いかけを重ねてくる自分がいる。
鬱屈ともまた違った感情を胸に抱いたまま過ぎる時間の中、遂に汐華初流乃は『夢』から――いや。
『夢』から『覚める』のではなく。
『夢』に、『目覚めた』。
ギャング・スターになるという夢。
スタンド使いとして、イタリアンギャング『パッショーネ』へ所属した記憶。
ブローノ・ブチャラティを筆頭とした同僚たちとの劇的な出会いと、数多くの戦い。
初流乃の夢は、その黄金の憧れは、聖杯などの小細工で見失ってしまうようなものでは決してなかったのだ。
記憶を取り戻してから、初流乃が聖杯戦争へと接触するまでは迅速だった。
無論スタンド使いではあれども魔術師ではない以上、彼の聖杯戦争、ひいては聖杯そのものに対しての知識は皆無であったが、ギャングの世界に生きる者にとって争いの気配を感知することなど基礎技能の一つと言ってもいい。
聖杯戦争の実態を何も知らないままで、彼はとある場面へ遭遇した。
仲睦まじく町外れの公園で遊ぶ三人家族が、黒尽くめの暗殺者によって見るも無惨な肉塊へと変えられる瞬間に。
それがつい十数分前の出来事。初流乃が暗殺者に対して取った行動は、交戦であった。
しかし、暗殺者は彼の想像を遥かに上回る怪物だった。
機動力、身のこなし、更には摩訶不思議な力も含めて、完全に初流乃の上を行っていた。
それでも十分間以上食いついていたのは、流石に『とある男』の血を引き継ぐ才人故か。
あわやこれまでかと思われたところで――
『彼女』が現れた。
絵本に描かれる魔法使いにそっくりな格好をした、背丈の小さい華奢な少女。
片目を眼帯で覆い、これまた絵に描いたようにファンタジックな杖を片手に。
キャスターのサーヴァントを名乗る――聖杯戦争参加者・汐華初流乃の英霊(パートナー)が現界したのだ。
後の展開は、御存知の通り。
キャスターの発動した莫大な力は、公園の景色を一変させるのを代償に、悪なる殺し屋を一撃で焼き払った。
聖杯戦争における初めての戦いに、こうして初流乃は劇的な勝利を収めたのであったが。
初流乃達は戦いが終わるや否や、人が集まってくる前に近くの路地裏へと退避を決めた。
あの一撃は文字通り壮絶なものだったが、音といい見た目といい、あまりにも目立ちすぎる。
人が周囲へ居ないことを確認してからでなければ、迂闊に使わせる訳にはいかない力。
初流乃は肌寒い空気の立ち込める裏路地で、キャスターから今起こっていることについての説明を受けながら、彼女の能力についてそう纏めた。
それから、説明された内容に対して思考を向ける。
「キャスター。僕は、聖杯戦争を……聖杯を『破壊』しようと思う」
聖杯戦争。
英霊の座より呼び出した英傑を手駒として使役し、この街を舞台に殺し合いを行い、最後まで生き残った者には願いを叶える権利が与えられるという悪趣味極まりない趣向。
初流乃はそれに、素直に嫌悪感を覚えた。
誰が仕組んだのかは知らないが、これに乗って願いを叶えるなど、考えただけで背筋に鳥肌が立つ。
そのくらいには、聖杯戦争という儀式は彼にとって『邪悪』に写った。
だから――取るべき行動は決まっている。
たとえそれが、サーヴァントにとっては看過できないだろうものであろうとも。
「なるほど。それもまた一つなのではないでしょうか」
「……あなたは、聖杯にかける願いがないと?」
「そりゃ無いわけじゃないですよ。人並みに色々、叶えたい願いごとはあります。
ただ……別にそこまでして叶えようとは思わないといいますか。やり過ぎといいますか」
要は、キャスターは願いを叶える手段のあまりの物騒さに若干引いているようだった。
歴戦の英傑とするにはやや庶民的な反応だったが、初流乃にとっては都合がいい。
聖杯の破壊。それに伴う、聖杯戦争という儀式そのものの打ち止め。
彼女とならば、その目的を滞りなく果たすことが出来そうだ。
……ただ。一つだけ、気になることがある。
「もう一つだけ。
……どうして、あなたまで動けなくなっているんです?」
サーヴァントを撃破した後、キャスターは初流乃の前で俯せに倒れ臥してしまったのだ。
どうやらろくに動くことも出来ないようだったので、彼が彼女を背負ってここまで運んできた。
確かにあれだけの威力の攻撃――宝具を放ったのだから、反動はあって然るべきかもしれない。
初流乃はキャスターの口から、そういう答えが返ってくるのだろうと思っていた。
「爆裂魔法は絶大な威力と引き換えに、消費魔力もまた絶大なので……」
「なるほど。あなたの宝具はその消費魔力量故に、発動後暫くは行動不能になってしまう……と。
だったら、使い所は考えた方が良いでしょうね。通常時は他の技で――」
「あ、それは無理です」
「なに?」
背負われたまま、どこかぐったりとしてキャスターは続ける。
「私、爆裂魔法以外の魔法は一切使えないので。あとちなみに、爆裂魔法の目安は一日一発です」
「……キャスタークラスとは、魔術の扱いに手慣れた英霊が当て嵌められるもの――と聞いた筈ですが……」
「失礼な。我が爆裂魔法は最強の魔法と名高い、とても尊く素晴らしいもので……云々かんぬん斯く斯く然々」
爆裂魔法の素晴らしさについて延々と語る背中の少女を尻目に、初流乃は小さく溜息をついた。
初対面にも等しい相手にこんなことを言うのは失礼だが、彼女はサーヴァントとしては明らかに『外れ』だ。
超絶級の火力こそあるものの、それ以外は軒並み自分の方が優っているのではないだろうか。
聖杯戦争をどうこうしようと思うなら、早い内に同盟相手を――同じ志を持つ仲間を確保して、戦力面を増強する必要があるに違いない。
……というか、これで前線に出ようと思えば間違いなく詰む。
「そういえば、そちらの名前を聞いてませんでした。私ことキャスターの真名はめぐみんといいます。
食費と雑費その他諸々込みでアークプリーストの力を拝領できる超絶優良物件ですよ、よかったですね」
「僕は――」
汐華初流乃、と。
そう名乗ろうとして、「いや」と否定する。
この世界を生きる汐華初流乃は、夢に目覚めると共に消えた。
そう、彼女へ名乗るべき名前は――
「ジョルノ・ジョバァーナ。ジョルノ、とお呼びください」
やはり、これが一番しっくり来る。
【クラス】
キャスター
【真名】
めぐみん@この素晴らしい世界に祝福を!
【パラメーター】
筋力:D 耐久力:E 敏捷:E 魔力:A+ 幸運:A 宝具:A
【属性】
中立・善
【クラススキル】
陣地作成:-
できないし、できたとしてもやらない。
道具作成:-
できないし、できたとしてもやらない。
【保有スキル】
アークウィザード:A-
冒険者としての彼女の職業。
上級職であるため、余程の事情でもない限りは所属パーティーのアテには困らない。
彼女は一つの世界で最強と称された魔法の担い手であるためこのランクだが、後述するとある事情によってマイナス表記が足されている。
紅魔族:A
生まれながらに高い魔法使い適性を持つ一族の出身者。
ちなみに彼女の痛々しい言動とネーミングセンスは、この一族に共通して受け継がれるものらしい。
【宝具】
『この素晴らしい世界に爆焔を(イクスプロージョン)』
ランク:A 種別:対軍 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
キャスターが行使できる唯一の魔法にして、彼女がその生涯を通して愛し続けた究極の宝具。
めぐみんオリジナルの詠唱の後に、上空から猛烈な火力の大爆炎を降り注がせる。
その威力は凄まじく、地形すら容易く変えてしまい、接近されれば自分も仲間も巻き込んでしまうため使えないという弱点が存在するほどの規模と破壊力。
――但し。この宝具は猛烈な威力と引き換えにとんでもなく燃費の悪い代物で、マスターへの負担こそ少ないものの、一度使用すればキャスターは全ての魔力を使い尽くして当分まともに動けなくなり、使用限度は一日一回と扱いにくいなんてものではない。
一応令呪二画を消費することで掟破りの二発目を撃たせることも可能だが、その行為が持つリスクを鑑みれば現実的とは言い難いだろう(ちなみにキャスターは後のことなど考えずに大はしゃぎする)。
元々超威力の魔法であったが、「一つの世界の魔法体系にて最強と呼ばれている」ことから聖杯戦争では更に補正がかかり、元世界での威力より更に上の破壊を実現可能である。
【weapon】
杖
【人物背景】
爆裂魔法をこよなく愛する、紅魔族のアークプリースト。
本来何をどう間違っても英霊になれるような人物ではないが、爆裂魔法しか使わない(正しくは使えない)という生き様がどこかで湾曲されて伝わった結果、英霊の座に召し上げられたらしい。
【運用方法・戦術】
めぐみんはキャスターだが、先も言ったように宝具『この素晴らしき世界に爆焔を』以外のあらゆる魔術を使わないしそれ以前に使えないので、燃費の悪さも相俟って役に立つ場面は相当限られる。というか、多分マスターのジョルノが戦った方が圧倒的に強い。
ステータスもご多分に漏れず低いため、なるべく表に出さない方が無難だろう。
ただし幸運値だけはそこそこ高いので、案外なるようになるかもしれない。
【マスター】
ジョルノ・ジョバァーナ@ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の風
【マスターとしての願い】
聖杯戦争の破壊
【能力・技能】
スタンド能力『ゴールド・エクスペリエンス』
テントウムシをモチーフにした人型の近距離パワー型のスタンドで、殴るか触れるかした物質に生命を与え、地球上に存在する動物や植物に変える能力を持つ。
この能力で生まれた命は、ジョルノの意思で成長や死が自在であり、瞬時に生み出したり時間差で遅く生み出したりすることができ、命を失うと再び元の物体に戻る。また、持ち主のところへ戻っていく習性がある。
元々生命を持っているものに対してこの能力を使い、生命エネルギーを与え続けることで老化を加速させ一気にその命を終わらせるという芸当も可能。ただし、生命が物理的に生育しえない環境下では物体に生命エネルギーを与えても物体は生物へと変化しない。
この能力を応用し、人体の部品を生成して負傷した箇所に移植、外傷の治療を行うこともできるが、あくまで「治す」能力ではないため、治療には痛みが伴う他、瀕死の者は治療しても助からないことがある。
【人物背景】
ギャング・スターを目指す少年。かつて世界に大いなる野望を広げんと目論んだ、邪悪の化身の息子。
勇敢で正義感が強く、咄嗟の機転と行動力を持ち合わせる。常に冷静沈着で、仲間であっても丁寧に接し、物静かで感情的になることはほとんどない。しかし一度怒りを見せると徹底して容赦せず、報復を貫徹する。
参戦時期は少なくとも、ブチャラティ達と出会った以降ではあるようだ。
【方針】
聖杯戦争は『邪悪な儀式』なので叩き潰す。
それはそれとしてサーヴァントがひどすぎるので、志を同じくする同盟相手を確保したい
候補作投下順
最終更新:2016年03月03日 11:56