偽りの東京で開催される、聖杯戦争
万能の願望器をめぐる争いに選ばれたマスターたちが、それぞれ目覚めつつあった
地獄のフブキは、そんなマスターのひとりである。今日の仕事を終え、タクシーで帰宅への帰路へと赴いていた
(……ちょっと、疲れた)
疲労感を感じながら、窓の外に視線を向ける
仮初めとはいっても、ここは東京
摩天楼の下で、視界に収まりきらないほどの人混みにうんざりしながら、しかしもう慣れてしまった自分に驚く。フブキが記憶を取り戻したのはつい最近の事だった
「あのー……」
珍しく黄昏ているフブキに、遠慮がちに運転手が話しかけてきた。人が良さそうな年配の男性だ。染めていないのか、白髪が目立つ
「何かしら?」
気づかれない程度に身構えるフブキ
「すみませんが、何処かで御会いしたことはありませんか?」
ありきたりな、語尾は違えど、もう何度も訪ねられた台詞だった
「いえ、人違いでは?」
「あっ、そうですよね。すみません」
でも、どっかで見た気がするんだよなー。と、釈然としない運転手を尻目に、フブキは心中で再びため息をつく
(……知名度があるというのも考えものね)
現在のフブキは、下手に注目を集めないように、サングラスと帽子で軽く変装していた
何故なら、フブキの容姿はある程度は社会に知れ渡ってしまっているからだ
この世界では【ヒーロー】という職業は存在しない。
が、ここでも彼女がリーダーを勤めるフブキ組は存在している
もっとも、それはB級ヒーローの派閥としてではなく、なぜかアイドルグループという役割に置き換わっていたが
新人アイドルたちを纏めあげる、根強い人気を誇る古参のアイドル。それが、この世界におけるフブキのロールだった
ヒーローとアイドル。
細部は違えど、人の注目を集める職業といったところは共通している
元々容貌には恵まれていた上に、それを維持するための努力も抜かりなく行っていた点からしても、アイドルといった職業はわりとフブキに向いていたのかもしれない
それから何事もなく、目的地に到着した
フブキの自宅は、都内の高級マンションである。セキリティはしっかりしているので、それなりに安全だ
部屋に上がると、居間にひとりの男がいる
少し前までは、同居人はいなかったのだが、今は違う
その男はひたすら素振りだけを繰り返している。いや、フブキには実のところ、それが素振りかどうかよくわからない
あまりにも振るスピードが速過ぎて、腕から先がまったく見えないからだ
「……ただいま」
「お帰り、マスター」
挨拶こそするものの、フブキの顔もロクに見ずに、その暇さえ惜しいとばかりに、一心不乱に打ち込んでいた
フブキに召喚されたセイバーは、かなりの曲者であった
記憶を取り戻して混乱していたフブキの元に現れるやいなや、簡潔に聖杯戦争の知識を説明し、フブキがそれを理解したことを確認した後、ずっとこうして引きこもっている
あろうことかこのセイバーは、マスターであるフブキの側に霊体化し、護衛することを拒否した。いや、正確には断ったわけだが、大して意味は変わらないだろう
「まだ続けてたの? 私、貴方が素振り以外の事をしている姿を見たことがないのだけれど?」
「……」
熱中していて聞こえないのか、それとも無視しているのか、嫌みにも少しも反応しない。ただただ、素振りを続ける。
このセイバー、こうしてずっと、実体化した上で修行を続けている。テコでも止めようとしないのだ
べつに、それ自体に不満を持っているわけではない
姉を越える。そのためだけに血の滲むような鍛練を積んできたフブキにとって、ひたむきに修行に打ち込むセイバーの姿は好印象だった
人格そのものもけっして悪くなく、紳士的な印象を受けた。その上、S級ヒーロー並、下手したらそれを凌駕するほどの、確固たる実力も備わっている
だが、正直危なっかしい
話に聞けばサーヴァントとは、聖杯戦争において身を守る盾でもあり、武器でもある
超能力者とはいえ、当然サーヴァント相手に戦えるわけではない
危険が迫ったら念話で呼ぶか、令呪を使ってほしいと言っているが、身近に居ないとなると不安が残るものだ
(本当に……生前、どんな英霊だったのかしらないけど、少しだけ控えてくれたら……)
ヒーローとして殺戮の末の願望達成など、認められない。必然、フブキのスタンスは聖杯戦争からの脱出、もとい妨害である
意外にも、セイバーは協力してくれると言っていた。成就したい願いは、特にないらしい
修行バカな所を除けば、非常に素晴らしいサーヴァントだと断言できるのに……
地獄のフブキの受難は、まだ続きそうだ
【クラス】セイバー
【真名】ネスタ・グラウド@カイストシリーズ
【属性】中立・中庸
【ステータス】
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:D 幸運:C 宝具:EX
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する
騎乗:E
騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる
【保有スキル】
素振り王:EX
セイバーは生前、生きている時間の殆どを、それも、寝食も取らず一瞬たりとも休まず何万年もの間、上段斬りの素振りだけを延々と続けたという
セイバーの興味の対象は自身の強さだけで、世界や他人の存在はその強さを測る指標でしかなかった。
サーヴァントとなってもそれは変わらず、余程のことでもないかぎり彼が修行の手を止めることはないだろう
カイスト:A
強い意思をもって転生を続ける者達に与えられるスキル
精神干渉系魔術をシャットアウトする
【宝具】
『剣神』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:-
言ってしまえばただの上段切り。しかし、全てを捧げて尽くした一撃は、どんな相手も真っ二つに両断する
究極のワン・スキル・カイストによる強念曲理は、「相手が斬られて死んだ後でネスタが剣を振り下ろした」「別の世界にいたのに斬られた」などのエピソードに象徴されるように、ネスタの上段切りは「斬る」という過程を辿らず「斬った」という結果だけが残る。相手は死ぬ
【weapon】
仕込み刀
【人物背景】
カイストシリーズの登場人物
ガルーサ・ネットの主催するカイスト・チャート、無差別部門の一位をキープしていた、四千世界で最強のカイスト
通称『剣神』、悪意をもって呼ばれる名は『素振り王』
剣神とはいっても、彼の扱える剣技は上段切りだけではあるが、ただそれだけを追求し最強となった男
かの百億年戦争に参加したときには、一年間で一億六千万人のカイストを斬り殺したエピソードが有名
【マスター】
地獄のフブキ@ワンパンマン
【マスターとしての願い】
姉を越えたい。でも聖杯を使うのは望まない
【weapon】
【能力・技能】
サイコキネシスとテレキネシスを利用した、猛烈な物体操作を主戦力とする。
特に必殺技である大気ごと周囲の瓦礫を圧搾して竜巻現象を起こす「地獄嵐」は、手加減しても並のB級ヒーローでは瀕死確定の威力を誇る。
【人物背景】
黒いドレスコートを身にまとう長身の女性。
S級2位である戦慄のタツマキの妹。
類い稀な超能力の持ち主であるが、最強の超能力者であるタツマキには及ばず、そのことがコンプレックスになっている。
単独行動主義の姉を超えるため、トップになれるB級1位を守り続け、B級ヒーローを束ねた『フブキ組』という派閥を作っている
【方針】
アイドルとしてのロールをこなしつつ様子見。可能なようなら同盟を組む選択もする
候補作投下順
最終更新:2016年03月03日 12:43