真夜中の公道を、複数の影が駆け抜ける。
爆音を響かせ、荒々しくマシンを操り。
居場所無き『野良犬』達は、街を奔る。
改造された派手なバイクを操るのは、不良達だ。
挑発的なファッションに身を包んだ不良達―――暴走族は、深夜の公道を爆走する。
けたたましい轟音と吹き抜ける風に身を任せ、マシンを駆る。
「――――ヒャッホウッ!!」
バイクを操る不良達が、歓喜の声を上げる。
今、この刹那を楽しむ様に、彼らは疾走している。
法から外れた野良犬達は、一瞬の歓喜に生を見出す。
このスピードこそが全てだ。この速さこそが、自分達の人生だ。
そう感じていた。
前方を走る一人の不良を除いては。
暴走族のエース、特攻隊長。
それが彼女の――――向井拓海の肩書きだった。
拓海はこの暴走族を束ねる女傑だった。
18歳にして数々の武勇伝を打ち立てた筋金入りの悪“ワル”だった。
彼女もまた、この出来損ないの様な人生に命を張る不良だった。
そう思っていた筈だったのだ。
だと言うのに、彼女の心は上の空だ。
何か違和感を感じる。引っ掛かるものを感じる。
自分が自分で無い様な気がしてくる。
そんな感覚を、数日前から抱き始めていたのだ。
確かに自分は不良だ。
一端のワルだ。社会の逸れ者として色んなことをやらかしてきた。
だが、何かが違う。
まるで過去の所業を『また』やっているような既視感。
とっくに足を洗ったやんちゃに、『また』首を突っ込んでいるような違和感。
公道を駆け抜ける暴走族は、市街地の近くにまで辿り着く。
風をその身に受け、走り抜ける最中。
拓海は、擦れ違ったビルへと一瞬だけ視線を向けた。
彼女の動体視力が捉えたもの。
それは、ビルの壁にぽつんと貼られていたアイドルのポスター。
――――アイドルに、興味は無いか?
聞き覚えのある声が頭の中で響く。
ドクン、と心臓の鼓動が高鳴る。
何かを思い出したかの様な感覚が、胸の内を走る。
(…アタシは、何をやってんだ?)
何だ、この感覚は。
自分の違和感の正体に気付いた様な、奇妙な実感が在った。
自分は何をやっているのか。
何故こうしてバイクで走り回っているのか。
まるで『昔』のようじゃないか。
(アタシは、アイドルじゃなかったのか?)
かちりと、頭の中で歯車が噛み合った。
向井拓海は―――――アイドルだ。
出来損ないの人生から足を洗い、夢の様な舞台を歩き始めたのだ。
自分にそんな生き方、似合う筈が無いと思っていたのに。
彼女はいつの間にか、アイドルを楽しんでいた。
こういう生き方も悪くないかなと思い始めていた。
なのに。
何故自分は、こうして特攻隊長をやっている?
スカウトされてやんちゃからは卒業した筈なのに。
何故自分は、またしても不良に戻っている?
ここ数日の記憶を掘り返そうとしても、拓海は思い出せない。
自分がこの街で。アイドルとして事務所に赴いた記憶を。
自分がこの街で、アイドルとして活動していた記憶を。
思い出せるのは全て、野良犬めいた不良としての生活のみ。
何が、起こっている?
自分は何故、こんなことになっている?
一体ここは、何処なのか―――――
次の瞬間。
暴風が吹き荒れた。
漆黒の『悪魔』が、駆け抜けてきた。
『悪魔』は、拓海のバイクを通り過ぎ。
そのまま夜の闇に紛れる様に、姿を消した。
――――何だ、今のは?
呆気に取られていた拓海は、ハッとしたように後方へと振り返る。
「おい、おいッ!!大丈夫か!!?」
振り返った拓海と数名の不良が目の当たりにしたもの。
それは先程の『悪魔』の疾走に突き飛ばされ、ガードレールに衝突した仲間達の姿だ。
3人の仲間は道路上で横たわり、血を流しながら倒れている。
拓海達はすぐさま勢いよくバイクを止め、転倒した不良達の傍へと駆け寄った。
◇
後日。
病院を後にし、拓海は一瞬だけ振り返る。
彼女は先日に大怪我をした不良仲間の見舞いに来たのだ。
3人のうち、1人は頭を強く打ったことで死亡が確認された。
残る2人は奇跡的に助かったものの、重傷であることに違いは無かった。
少なくとも今後バイクに乗ることは出来ない、と医師から宣告された。
ふぅ、と溜め息を吐き、拓海は再び前を向く。
病院で自分を見ていた看護士や医師達の目が忘れられない。
まるで狂犬を目の当たりにしているかの様なおどおどした視線が、自分を何度も貫いていた。
彼らは怪我を負った際の状況から、拓海達が何をしていたのか薄々感付いていたのだろう。
当然と言えば、当然だろう。
彼女達は不良で、暴走族で、社会の逸れ者なのだから。
(何で、こんなことになってんだよ)
空を見上げ、拓海は思う。
自分はアイドルだった筈だ。
不良から足を洗い、芸能の世界に踏み込んだ筈だったのだ。
なのに、今の自分はこうして不良に逆戻りしている。
それどころか、この街でアイドルとして活動していた記憶が全くと言っていい程無い。
まるで初めから今に至るまで不良として生活していたかのような。
そんな奇妙な記憶が植え付けられているのだ。
此処が『自分の知る場所』ではないということは薄々理解している。
携帯にもプロデューサーや知り合ったアイドル達の連絡先が登録されていない。
明らかに異常なのだ。自分は見知らぬ世界に放り込まれてしまっているのだ。
何がどうなっているのか、拓海には解らない。
元いた場所に帰りたい。
しかし、その為にどうすればいいのか解らない。
(……あの『走り屋』……)
そんな中で、彼女の脳裏をよぎったもの。
それは先日不良仲間数名に大怪我を負わせた、あの漆黒の悪魔。
黒い流線型の異様なバイクに跨がり、公道を凄まじいスピードで駆け抜けた『走り屋』。
奴を目の当たりにした時、拓海の中に奇妙な感覚が走った。
まるであの相手との『繋がり』を感じたかの様な、そんな奇怪な実感に襲われた。
あいつが何かを知っているのではないか。
あの走り屋は、この世界の謎を何か理解しているのではないか。
確証は無いのに、そんな気がしていた。
故に拓海は、彼を追うことを決意する。
奴はこの謎めいた世界を解き明かす為の、唯一のヒントとも言える存在だ。
元の世界に戻る為に、プロデューサーの元へ帰る為に。
彼女は、悪魔の走り屋を追う。
それに、奴のせいで3人の不良仲間達は死傷した。
此処が異常な世界であるとはいえ――――彼らが仲間だったのは、確かだ。
故に彼女は彼らのカタキ討ちの為にも、あの『走り屋』を追い掛ける。
向井拓海は、義理に厚い人間なのだ。
(……待ってろよ、あの野郎)
◇
漆黒の『悪魔』の如しマシンが疾走する。
速さを追い求める疾走狂が、風の道を突き進む。
それは暴風の如く。
荒れ狂う疾風の如く。
駆け抜ける『スピードデーモン』の如く。
街が夜の闇に包まれた時、その魔物は姿を現す。
スピードに魅せられた悪魔は異様なバイクを操り、公道を駆け抜ける。
走る魔物は、サーヴァントだった。
クラス名は騎兵―――――ライダー。
彼が己のサーヴァントであるということを向井拓海は知らない。
彼自身も、誰が主人であろうと興味が無い。
向井拓海は聖杯戦争を知らず、ライダーは聖杯戦争に一切の関心を持たない。
余りにも異常な状況。主従として成り立ってすらいない関係。
しかし、ライダーはそれに構うことさえなかった。
風の道を通り、スピードになる。
それだけがライダーの目指す果てなのだから。
聖杯戦争の会場など、彼にとってはサーキットに過ぎない。
故に彼は走る。
さあ、スピードになれ。
神速の影に幸あれ(ヘイル・トゥ・ザ・シェード・オブ・ブッダスピード)。
【クラス】
ライダー
【真名】
クロームドルフィン@ニンジャスレイヤー
【ステータス】
筋力D+ 耐久D 敏捷C+ 魔力D 幸運D 宝具B
【属性】
混沌・中庸
【クラス別スキル】
対魔力:E
無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。
騎乗:C++
宝具「疾走する風翔獣」を完璧に乗りこなせる。
圧倒的な操車技術でモンスターマシンを操る。
【保有スキル】
精神汚染:B++
精神に異常を来しており、同ランク以下の精神干渉を大幅に軽減する。
自我科への通院生活を送っていた程の精神的負荷に加え、
薬物投与や婚約者の死といった要因も重なったクロームドルフィンはほぼ正気を失っている。
今の彼はただ只管にスピードを求めるのみ。
単独行動:A+
魔力供給なしでも長期間行動できるスキル。
A+ランクならばマスター不在でも現界が可能。
ただし宝具の使用を繰り返せば相応に魔力の貯蓄を消費する。
例えマスターを失おうと、スピードに魅せられた彼は宝具の使用を止めないだろう。
疾走の死神:A
夜の公道を駆け抜ける都市伝説的存在としての逸話が複合スキルと化したもの。
宝具「疾走する風翔獣」の消費魔力を大幅に軽減させる。
更にサーヴァントやマスターによる魔力探知を大きく阻害し、魔力の気配や痕跡を捕捉されにくくする。
【宝具】
「無銘(ニンジャソウル)」
ランク:C 種別:対己宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ニンジャとは平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在である。
クロームドルフィンに憑依したニンジャソウルそのものが宝具となっている。
ニンジャソウルに憑依されたものはニンジャとなり、超人的な身体能力と生命力を獲得する。
「疾走する風翔獣(イルカクロイ)」
ランク:C+ 種別:対道宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
肉体の檻を捨て、スピードとなれ。
オムラ・インダストリが開発立案したオーパーツめいたインテリジェント・エアロバイク。
あらゆるマシンを振り切る程の圧倒的なスピードを誇るモンスターマシン。
ホバー走行によって低空を浮きながら疾走するバイクであり、圧縮した空気を解放することで短時間なら飛行が可能。
更に車体の側面には接近戦用の電熱ブレードが仕込まれている。
クロームドルフィンはこのマシンを駆り、果てなき疾走を続けている。
「神速の影に幸あれ(ヘイル・トゥ・ザ・シェード・オブ・ブッダスピード)」
ランク:B 種別:疾走宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
風の道を突き抜けろ。ブッダスピードの果てを目指せ。
令呪、洗脳、暗示、デバフ等による“クロームドルフィンのスピードを縛る命令および状態異常”を完全に無効化する。
彼はスピードに魅せられている。風の道を追い続けている。
クロームドルフィンのスピードを縛ることは最早誰にも出来ない。
【Weapon】
「疾走する風翔獣(イルカクロイ)」
【人物背景】
ネオサイタマの巨大環状道路・ルート808に夜な夜な姿を現す正体不明のライダーニンジャ。
他の走り屋に路上レースを挑んでは圧倒的なスピードで走り抜ける都市伝説的存在。
彼の眼にはスピードが魅せる世界しか映っていない。
正気を失ったスピードデーモンは、果てなき風の道を疾走する。
【サーヴァントとしての願い】
ただ走るのみ。
【方針】
聖杯に興味は無い。
風の道を突き抜け、スピードとなる。
自分と同じ『走る者』には勝負を挑む。
立ちはだかる障害は全て排除し、そして振り切る。
【マスター】
向井 拓海@アイドルマスター シンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
聖杯戦争を全く把握していない。
とにかく元いた場所に帰りたい。
【weapon】
なし
【能力・技能】
アイドルとしてレッスンを受けていたので、ボーカルやダンスはそれなりにこなせる。
以前は不良だったらしく、腕っ節も強い模様。
【人物背景】
神奈川県出身、18歳のアイドル。
趣味はバイクいじりやバイクを乗り回すこと。
元々は不良であり、本人曰く特攻隊長だったとのこと。
半ば強引にプロデューサーにスカウトされた模様。
荒っぽい言動が目立つが、何だかんだで仕事はきちんとこなしている。
面倒見のいい姉御肌な一面も。
【方針】
現状について知りたい。
その過程で謎の走り屋(クロームドルフィン)を追う。
候補作投下順
最終更新:2016年03月03日 12:55