1945年8月15日。日本全土を高気圧が覆い、夏のうだるような暑さの中でラジオ放送が行われた。
「堪え難きを堪え忍び難きを忍び以て万世のために太平を開かんと欲す」
天皇陛下の肉声がノイズと共に電波に乗ってラジオのスピーカーから流れていた。
ブツブツと途切れてはいるも意味が分からないでもない。読まれているのは後に大東亜戦争終結ノ詔書と呼ばれているものだ。
「なんじ臣民それよく朕が意を体せよ」
この日、帝國は破れた。
泣く者がいた、怒る者がいた、安らぐ者もいた、呆ける者もいた。
もしも、駆逐艦『響』に肉体があったら、どのような反応を示しただろうか。
轟沈した姉に、妹達に、同胞に何というべきだったのだろう。
物言わぬ鋼鉄は何も言わない。新潟港に兵士達の慟哭が響くのみだ。
* * *
走る。走る。夜の闇を走る。
「はぁ、はぁ」
全力で、全霊で、一ノ瀬晴は走っている。
後ろから追ってくるのは何か、表現できない。名状しがたい危険なもの。
追いつかれれば殺されると本能が警告を鳴らしている。
とある学園に編入するために東京にきたはずだった。
しかし気が付けば全く知らない土地で、全く心当たりのない怪物に追われている。
いや、心当たり自体はあるが毛色が違いすぎる。
(何……あれ……)
いつもの暗殺とは違う。
人間でも、武器でも、獣でもない。
あれは駆け寄る死そのもの。いつでも追いついて晴を縊り殺せるのにやらないのは遊んでいるから。
諦めたら、走るのをやめたら死ぬ。
誰かが助けることは無い。警察に駆け込もうとも寿命を縮めるだけだ。
いつもの暗殺ならば権力が晴を殺し、今回の怪物ならば暴力で公僕たちごと圧し潰すだろう。
「はぁ……はぁ……」
かれこれ1時間近く走っている。
足には自信がある……あるが人間には限界がある、あれにはおそらく無い。
「え…?」
ストンと足にナイフが突き刺さった。
足がもつれて、前のめりに倒れる。
後ろにいたはずの怪物がいつの間にか前にいて、晴の足にナイフを突き立てていた。
「きゃあ!」
倒れた格好のまま、晴は必死に怪物と距離を取ろうとする。
だが、それは歩くより遅い。怪物からしたら止まっているに等しい悪あがきだろう。
怪物の表情は分からないが、愉悦を感じている雰囲気が怪物から漂っていた。
断末魔を愉しみ、絶望する少女の顔を楽しみ、そして殺して悦に入る。
おそらく目の前の怪物はそういった、快楽殺人者のような嗜虐性の強いナニかだ。
故に晴を見逃すことは万に一つもあり得ない。だが、その性情故に、致命的な隙が生まれた。
「あなたが私のマスターかい?」
突如現れた光る鱗粉の如き粒子が空を漂い、神秘的な光が暗い道を照らす。
怪物と晴の間、僅か2,3メートルの距離に少女が出現した。
背中には砲台のような物を背負い、背負っている鉄塊から錨が伸びている。
「ハラショー。なるほど危機一髪だったようだね」
逃げてと晴が叫ぶ前に怪物が少女の喉に刃を突き立てた。
頸動脈を切られて、少女の血から大量の血が噴き出る。
「クハッ」
怪物から笑い声がした。
当然だ、致命傷を与えたのだから目の前の少女は脅威になり得ない。
晴にもそう見えた。再び絶望が全身から励起し、焼け付くような幻痛を与えた。しかし────
「沈まんさ、不死鳥の名は伊達じゃない」
驚く怪物。その驚く瞬間が怪物にとって致命的なタイムロスとなる。
錨が怪物の鳩尾へと叩き込まれ、怪物の体が3,4メートル後方へ飛び、その間にも少女の腰にあった六本の黒い塊が発射された。
黒い塊は地面を潜り、まっすぐ怪物へと行く。
あれがどんなものかを晴は理解した。急いで耳を塞ぎ、目を閉じ、衝撃に備えて蹲る。
器官を閉じてても分かる爆音、衝撃、光、熱気。
晴に理解できたのはそれだけだった。
だが、何が起きたか理解するのはそれで十分だ。
瞼を開けると怪物はアスファルトの地面ごと跡形もなく消失していた。
「マスター、大丈夫かい?」
少女は振り返り手を差しのべる。
あなたの方こそ大丈夫なのと言おうと思って首を見ると、少女の首筋には確かに切り傷があるものの傷が浅くなっているように見えた。
ビデオの早送りのように傷は浅くなって消えてしまう。
「あなた、誰なの?」
「私は響。デストロイヤーのクラスで現界した貴女のサーヴァントさ」
周りが犠牲になって生き残された少女と生き残る度に周りが犠牲になった少女。
二人が出会った日だった。
【サーヴァント】
【クラス】
デストロイヤー
【真名】
響@艦隊これくしょん(プラウザ版)
【属性】
秩序・中立
【パラメーター】
筋力:E 耐久:D 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:C 宝具:C
【クラススキル】
破壊の権化:-
スキル『駆逐艦』により失われている。
ちなみに駆逐艦の事も英語でデストロイヤーという。
駆逐艦:A
人化して現界した駆逐艦の英霊に与えられるスキル。
水中では敏捷と攻撃の命中率に上昇補正がかかる。
また地上では昼は能力値の大幅低下と全艤装の解除を行うことでサーヴァントとして感知されなくなり、
夜だとBランクの気配遮断スキルを得る。
【保有スキル】
不沈艦:A
いかなる損傷を受けても沈まない運命。
駆逐艦響の場合、命を失うであろう戦いや事故を回避できるが響の代わりに周りの者が何らかの不幸に見舞われる。
幸運艦と呼ばれたのに幸運のランクが低いのは生き残る度に仲間を失うため。
応急処置:A
戦闘続行に似て非なるスキル。
致命傷を受けない限り死なず、応急処置をして戦場へ帰還もしくは離脱できるスキル。
単独行動:EX
マスターからの魔力供給を断っても現界できるスキル。
EXランクはマスター不在でも行動できるが宝具の発動にはマスターが必要。
【宝具】
『堪え難きを堪え、忍び難きを忍び』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:一人 最大捕捉:自分
三度沈没してもおかしくない損傷を受けて生存した逸話が具現化した宝具。
物理・魔術・概念に問わず致命傷を3度だけ重傷以下まで軽減する。
傷を負わない攻撃には未対応。
致命傷や死亡が決定してから攻撃がされる因果逆転の類のものはそのまま通る。
なお、軽減回数はマスターの魔力供給次第で回数は回復する。
【weapon】
10cm連装高角砲
61cm3連装魚雷発射管×2
3mm鋼製防盾
【人物背景】
大日本帝国の駆逐艦『響』が擬人化した艦娘という存在(転生、船霊の受肉など諸説ある)
軍艦としての駆逐艦『響』は昭和2年度艦艇補充計画で建造された暁型駆逐艦の中の一隻。
大規模戦闘は修理していたため悉く参戦できず、沈没に伝わるような事件の直前に事故や船員の病気で引き上げ、その結果終戦まで沈まなかった船である。
その幸運から『幸運艦』、『奇跡の艦』『不死鳥』などと呼ばれる。
ただし、生き残る代償とでもいうように彼女(生前は性別がないが)の代わりに何かが沈んでいる。
終戦後は賠償艦としてソビエト連邦に引き渡された。そのためたまにロシア語を喋る。
【サーヴァントとしての願い】
聖杯を日本へ持ち帰る。
【マスター】
一ノ瀬 晴@悪魔のリドル
【マスターとしての願い】
帰りたい
【weapon】
なし
【能力・技能】
プライマーと呼ばれる人を惹きつける能力を生来より有している。
そのため幼い頃より暗殺の危機にさらされており、肉体の一部に金属が
入っている他、毒や薬などの耐性が高く、危機感知能力が高い。
【人物背景】
人を惹きつける能力により幼い頃より暗殺の危機に何度も陥っている少女。
皮肉にもその能力のおかげで守ってくれる人間も存在し、そして自分だけが助かり周りは死んでいく。
【方針】
生き残る。
候補作投下順
最終更新:2016年03月03日 12:57