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Ver4/那須与一 - (2018/12/05 (水) 06:09:31) の編集履歴(バックアップ)
C 那須与一
最終更新日時 |
2019年02月25日 (月) 11時29分51秒 |
基本情報
名前 |
那須与一 |
種族 |
人獣 |
ジョブ |
アタッカー |
召喚コスト |
40 |
セフィラ |
エソド |
タイプ |
モノノフ |
HP |
450 |
ATK |
90 |
DEF |
60 |
PSY |
70 |
武装 |
可 |
血晶武装 |
可 |
アーツ |
無 |
CV |
佐藤 利奈 |
対象称号 |
紅鋼、鬼神の籠手に魅入られし 「鬼神の籠手」を巡る物語に関係する使い魔を使って50回勝利する。 |
アビリティ
状態 |
ボーナス |
アビリティ |
召喚 |
なし |
なし |
武装 |
なし |
なし |
血晶武装 |
なし |
射貫・鬼神の篭手 |
射程距離が延びる。 さらに、自身の攻撃に、「固定ダメージ」を上乗せし、「移動速度を一定時間下げる効果」を付与する。 |
パラメーター
状態 |
HP |
ATK |
DEF |
PSY |
備考 |
召喚 |
450 |
90 |
60 |
70 |
|
武装 |
500 |
120 |
90 |
90 |
|
血晶武装 |
600 |
160 |
130 |
120 |
|
修正情報
DATA・フレーバーテキスト
+
|
Ver4.0 |
ver4.0 |
No |
人獣:027 |
身長 |
五尺二寸 |
体重 |
聞くのか……? |
かつての主君 |
源義経 |
現在の職業 |
暗殺者 |
左腕に纏うもの |
鬼神の籠手 |
好物 |
生麩 |
イラストレーター |
ゆきさめ |
フレーバーテキスト(カード裏面) |
――もう そなたらの悲鳴も我が心には届かぬよ |
フレーバーテキスト(LoV4.net) |
月は雲に隠れ、空はひどく暗い。しかし、眼下の車道に流れる光の川は、そのようなことなどまるで気に留めること無く奔流を迸らせ、時代の栄華を絶え間なく謳い続けている。
そのように向こう見ずな光の裏には決まって濃い陰が出来るもので、並び立つビルの屋上に、光の海に浮かんだ染みのような闇を、ぽつりと一つ作り出していた。その中に、誰に気付かれることなく揺れる二人の影――。
「こんなところから……本当にやれるのかよ?」
黒スーツの男が尋ねる。
「そうでなければここにはいない。そなたはただ待っておればよい」
そう答えたのは同じく黒いスーツを着た――女。そのしなやかなたわみから、闇の中でも艶やかで美しいことがありありとわかる長い黒髪を風に遊ばせるがままにしている。
「“そなた”? あんたアレ? オタクとかの人? ……いろいろと驚かされるな。あんたみたいな美人が最近噂の凄腕スナイパーだってだけでもそうだがよ、何より――」
男は女がもつ「長弓」をしげしげと眺めた。
「――“弓”って……本気か? この距離じゃライフルのメダリストだってきついぜ。届いたとしても、街中で矢で撃たれるとか目立ち過ぎだろ。安くねぇ額なんだ。下手な仕事は困るぜ?」
「……よく回る口だな」
女は弦の張りを確かめながら、ちらりと男を見て、
「私は『銃』なるものは好かぬ。音がやかましいのもそうだが、“指先一つ”など、それでは一射に魂が乗らぬ。それに、私の矢は普通の輩には“見えぬ”よ」
と、矢を弓につがえるそぶりをし、真っ直ぐ天に向け弦を引き絞った。
「見えない…?」
女が言う通り、確かにその手に矢は見えない。
そのまま弦を放すとともに、ヒュンと小気味のよい、空気を裂いて飛び行く矢の音が闇に広がる。
「どうだ?」
矢は、見えなかった。
「……はっ、“黒塗り”とかだろ? そりゃこの暗さじゃ見えねぇさ――おっと」
短くバイブレーションの音が響き、男がヘッドセットに手を当てる。合わせて女も自分のヘッドセットからの声に耳を傾けた。
≪ターゲットがポイントを通過。今、橋の10m前だ≫
「本当に殺れるならなんでもいいさ。聞いた通りだ、しくじるなよ」
男の言葉に返事をすることなく、女は黙って屋上の端に向かうと、低目の欄干に片足をかけゆっくりと弓を構えて引き絞った。その目線は、遥か通くに見える川――そこに架かかる、多くの人が行きかう橋に向けられている。しかし、やはり弓引くその手に矢は見えない。
「マジかよ……」
男のつぶやきに重なり、ヘッドセットから緊張した声が流れる。
≪あと8mだ……6、5、4、――≫
「なるほど、そなたか」
女がそう言った瞬間――ビュホンと鋭く弦が空気を裂き鳴らした。
≪ぐぅっ!≫
「おい、どうした――おい!」
異変を悟った男が慌ててインカムに語り掛ける一方で、女は踵を返して欄干より離れる。そして弓持つ手を軽く振ると、不思議なことに、大きな長弓が蒼い燐光を発してかき消えた。
「心の蔵を射抜いた。返事が返って来ることはなかろう」
「てめぇ、“気づいて”たのか……誰に雇われた?」
男はスーツの内から拳銃を取り出し、女からじりりと距離をとる。
その様子を見た女は、目を伏せて首を振った。
「それはこちらが聞きたいな。そなたらが“組織”を裏切り情報を流していたことは、退いた“そなたの足”が示している」
「あ? 解んねぇことばかり言って――かふっ!」
突然、男はそのまま膝を付き、崩れ落ちた。まるでそうなることが分かっていたように、女は落ち着いた様子で倒れた男に近づき、その足元を見つめる。
「そなたが”敵”でなかったのならば、“そこ”には立たなかったろうよ」
そこに、女にだけ見えていたもの――それは天より真っ直ぐ落ちてきて、男の体を貫き地面に突き刺さった“矢”――これは、寸刻前に女が天に向かって放ったものか――。
その時、女のインカムが震えた。女が手を当てて耳を向ける。
≪――どうだ?≫
インカムから、先程とは違う声が流れる。
「委細問題無し――そなたの言う通り“間者”であったよ」
≪……そうか。こっちの仏は回収した。お前も撤収しな。それと、お前の探してたもんが見つかったかもしれねぇ。あとでな――“与一”≫
インカムのスピーカーから漏れる、通信の疎通を示すノイズが鎮まると共に、女はインカムを外して投げ捨てた。
「ようやく、か……」
そして、すでに冷たくなっている男を眺めつつ、左腕の袖をまくる――そこには、まがまがしい妖気を放つ“籠手”が皮膚に張り付くように巻かれていた。
「そなたらもまた、“こやつ”の呪いに巻き込まれてしまったのだろうな――そうして魂を喰われた者は数多にて、既に詫び方も忘れてしまったよ。そういえば、私が弓を使う理由だが、もう一つあった――」
女は遠く矢を射った先の橋に目をやりつつ、
「私は、誰かにこの矢を見つけて欲しいのかも知れぬ――」
そう寂し気に呟き、闇の中へと溶け入った。
~『源陛盛衰記』より~ |
|
+
|
Ver4.1 |
Ver4.1
Ver4.1 |
No |
人獣:1-017 |
身長 |
五尺二寸 |
体重 |
聞くのだな……? |
標的 |
源義経 |
現在の所属 |
AVAL科学財団 |
兄弟 |
兄十人、弟が一人 |
好物 |
葛切り |
イラストレーター |
麻谷知世 |
フレーバーテキスト(カード裏面) |
私の弓は 引くも寄るも無し――― |
フレーバーテキスト(LoV4.net) |
コンクリートがむき出しの暗い部屋、テレビモニターの光だけが照明となり薄青く部屋を照らす。しかし女はテレビを見るでもなく、無心に手に持った弓の手入れをしている。 ぎぃと扉が軋み鳴き、部屋に男が入ってくる。
「邪魔するぜ。暗ぇな……そんなんで見えるのか?」 「目はいらぬ。指が全て覚えておる」 女はソファーに座ったまま、男の方に目を向けることなく弓の手入れを続ける。 「浮かねぇツラだな。やっと見つけた“的”なんだろ?」 「やっと見つけた“的”だからよ」 女は弓を置き、顔を上げモニターに目を向ける。だが、その目は別のものを視ているようで――。 「やっとここまで来た。だが、はたして――」 「話せよ、聞くぜ?」 そう言って男が扉の傍で壁にもたれる気配を背で感じると、女は暫く間を置いたのち、訥々と語り始めた。 「――私には十人の兄がいた。私一人が女であったが、私は兄たちに憧れ、共に戦に出たいと、女だてら必死に武芸に励んだ」 「………」 「その中でも弓には幾ばくかの才があったようで、その腕前を褒められた時――私の頭を撫でてくれた、大きくごつく、そして温かい手……私は天にも昇る気持ちだったのを覚えているよ。だが――」 女は膝を上で手を握り、頭を垂れる。 「――戦が始まった時、兄たちは私を置いて敵方についた。何故そうすべきだったのかはわかっている。ただ、私は……」 艶やかな長い黒髪が肩よりゆるりと滑り落ち、 「……私も、連れて行って欲しかった」 その表情を覆い隠す。 「子供のような話だろう?私は『与一』―――“あまり”の一なのだ」 テレビモニターから流れるやけに明るい音楽が、寂し気に部屋に落ちる。 「そうして私は、義経様に戴いたこの籠手の力で、兄たちの想いを撃った。私のしたことは誇りある忠義であったのか――ただの、嫉妬だったのか――その気持ちを未だ清算できずにここにいる」 「兄弟……な。そいつは、おめぇのことが好きだったのかよ」 「わからぬ――しかし、私は好きだった」 女が左手に力を込めると、黒い炎と共に紫闇の籠手が現れる。 「この籠手には、私が討った兄たちの魂が食われている。身勝手な話だが、私は兄たちの夢を撃ち抜いたこの手で、兄たちの無念を晴らしたいと思っているのだ。そして、この“鬼の籠手”にてそれが成し遂げられた時、反魂の法は姿を現すという――私の命と引き換えにな」 「………」 女は立ち上がり男の方を向くと、悲し気な笑みを浮かべた。 「であるから、これが終われば別れとなる。話を聞いてくれてありがとう――葵」 青年は背を向けて扉に手をかけ、 「いいんじゃねぇか? オレは、テメェの覚悟はスジが通ってると思うぜ――与一」 そう言って部屋から出た。与一も弓を手に取り、その後に続いて廊下に出る。 「そいつは強ぇのか?」 「あぁ、恐ろしくな。この時代ではそう伝わっておらぬようだが、義経様の比ではないよ。一度目にしたとき、私は動けなかった――して、奴は今何処に?」 男は携帯デバイスを取り出し、画面を見る 「うちの兵隊から連絡だ。『源氏の紋』――今奴は、神奈川からこっちに向かってる」
~『源陛盛衰記』より~
|
|
+
|
ECR |
ECR
ECR |
No |
ECR:017 |
現在の所属 |
AVAL科学財団 |
配属 |
特殊実動部門 |
配属部門通称 |
『ブルースカル』 |
役割 |
狙撃手 |
服 |
契約したロードが錬成 |
苦手 |
きな粉 |
イラストレーター |
Tomatika |
フレーバーテキスト(カード裏面) |
- |
フレーバーテキスト(LoV4.net) |
暗く照明が抑えられたモニタールーム。多くのスタッフがそれぞれの観測データが映し出されたモニターに目を向けつつも、皆固唾を飲んで何かの合図を待つかのような緊張を漂わせている。
彼らが意識を向ける先――白衣のスタッフたちの中でひとり異彩を放つ、スーツ姿に鮮やかな銀髪を綺麗になでつけた壮年の男は、じっとメインモニターを見つめていた。
映し出されているのは、何かの実験室だろうか、小さなホール程の白い緩衝材の壁で覆われた部屋――そこには、黒いシャツを着た少年が一人。
男は、身に着けたブランド物の眼鏡やシックなオーダースーツに対しやけにカジュアルなデザインの腕時計に目をやると、
「始めてくれ」
と指示を出す。
同時に全てのスタッフが作業を始め、にわかに部屋中がタイプ音やクリック音、指示応答で騒がしくなる。そしてシステムチェックがオールグリーンであることを確認すると、インターカムを着けたオペレーターがモニターの中の少年に告げた。
「OK、葵順、スタートだ」
*
『OK、葵順、スタートだ』
スピーカーから流れた声を聴き、白い部屋に一人立つ少年が顔を上げた。
≪ねぇ順、本当にお手伝いしなくていいの?≫
“声”は、他の誰にも聞こえていない。少年の頭に直接届いているのだ。
「そういう仕事だからな」
そう言うと、広い部屋の中央に置かれた“それ”に目を向ける。
一本の矢――羽根がほつれ切り、やたら古めかしく見えるそれに近づくと、手に持つグリップを握り、その先に付いた針で親指の先を刺す。そのまま絞るように力を込めて赤い玉を指先に浮かべると、一滴――矢に落とした。
そして意識を集中するように目を閉じ、手をかざす。
「――“クリエイト”」
少年の声と共に、赤い雫が眩い輝きを放ち、白い部屋を赤く染める。
≪今回失敗したら終わりなのでしょう? 頑張ってね、私は貴方を見捨てはしないけど≫
声には応えず、少年は緊張した面持ちで手をかざしたまま赤い光の中心を睨み続ける。
光の塊が徐々に大きくなっていき、次第に何かを形作っていく。そして大人一人ほどの大きさになると、リーンと純度の高いガラスが砕けるような音を響かせて破裂した。
そこには、美しい黒髪を垂らし、扇の如き絢爛な弓を手にした女武者が立っていた。
女武者は周囲を見回し、少年に目を止める。
少年はその視線を真っ直ぐに受け止めつつも、小さく顔を曇らせた。
「……ちっ、また女か」
≪あら順、でもとっても可愛いわよ。食べちゃいたいくらい。こんなに“人の形”をしている子は初めてだからかしらね、“あちらのお部屋”の子たちもざわめいているわ≫
女武者は、自身の体の感覚を確かめるように左手を握り開きしながら少年に言った。
「……若いな。会うてすぐには不躾な物言いよ。“言葉”は届いているぞ――女では不服か?」
「喧嘩には向いてねぇ」
その鋭い視線にも、少年がひるむ様子はない。
「なるほど、そなたはそういう質か……では、“今のうち”に二三聞かせもらおう。いくつかの世界を渡ったが、そなたのような身なりの者は初めて見る。この『鬼神の籠手』の軋み方もまた然り――ここは、『マルクト』か?」
「……知らねぇな」
「では、そなたがこの世界の『紅蓮の王』か?」
「そいつも知らねぇ。ただ、俺は王じゃねぇことは確かだぜ」
「ではなんだ?」
「ただの“飼い犬”だ。悪ぃがよ、女――」
少年が首の関節を鳴らしつつ前に出る。
「――てめぇもそうなる」
気迫をまといゆっくりと近づく少年を見ながら、女武者はふぅと軽く息を吐くと、
「“犬”である事には慣れている。だが――」
優雅な仕草で弓に矢をつがえた。
「――私を“所詮女”と言い捨てた者は、皆死んだよ」
≪――順!!≫
弓の弦がびゅんと空気を震わせた。
同時に少年の視界を金色の雷光が覆う。
「つぅっ!!」
見ると、少年の左腕は上腕の半ばから吹き飛んでいた。
≪シャアアアアア!!≫
瞬時に、少年を守り囲うように濃い霧が立ち込める。
「ほぅ……」
女武者がさらに矢をつがえて向ける霧の中に、巨大な蛇のような影が浮かび上がる――
「手ぇ出すなっていったぜ! エキドナ!!」
が、少年の怒声と共に収まっていく。
≪……わがままな子ね……わかったわ≫
薄らいでいく霧の中、よろけつつ立ち上がる少年――不思議なことに、左腕の傷口は結晶のような輝きに覆われ塞がっており、こぼれ落ちる赤色もまた、光の粒子となって空気に溶け消えてゆく。
それを見た女武者は目を細め、
「最低限の“力”はあるようだな。それに、気を失わぬ性根も良きすわりよ」
「女……俺と組んでもらうぜ」
「組む……か。私は己が“どういう存在”なのかはわかっているし、もしこの世界が『マルクト』であるのなら、宿願を果たすためにも力の寄る辺は欲しいところだ。そなたが“紅蓮”に選ばれし者ならば身を預けるのも良し、たとえ“犬”であってもな。だが、“弱き犬”では足らぬ――力の程と覚悟を見せてもらおう」
改めて少年に向けられる女武者の矢――少年は目を逸らすことなく小さく舌をうつと、
「――悪かったな。女かどうかじゃねぇ……しっかりてめぇを見て、魂と殴りあうべきだったぜ」
そう言ってポケットからサングラスを取り出して掛ける。
「なんだそれは?」
「気合を入れたんだよ……うらぁああ!!」
雄叫びと共に、少年をぐるりと取り囲むように赤光がほとばしった。
そしてその中からギュルンと紅く輝く“鉤爪”が伸び、少年の吹き飛ばされた左腕を引き寄せる。
次いで光の繭の内から紅い腕が伸びて膜を引き裂くと、そこには元通り左腕が接合され、下半身と腕に紅い結晶の鎧をまとった少年が立っていた。
*
「葵順、『血晶』の『アームド』を確認」
「アルカナ因子転位濃度上昇、バイタル安定域まで回復しました」
「クインタ・エッセンティア・レイ照射濃度上げ。目視カメラの観測レンジ広げます」
少年の変化にモニタールームのスタッフたちがざわめくが、銀髪の男の表情に変化はない。
男の見つめるメインモニターには、少年が複数の鉤爪を使った立体的な動きで女武者に迫り、何度も拳を打ち込もうとする様子が映し出されている。しかし全てすんでのところで躱され、離れ様の一矢を受けて身を削られ続けていた。
白い部屋に飛び散る赤――その凄惨な様子にスタッフの幾人かが目を反らす。堪らずにオペレーターの一人が銀髪の男に訴える。
「会長、そろそろ止めますか? シンクロ抑制剤の効果も限界かと……」
「いや、続けよう」
*
「はぁ……はぁ……糞が、イケてねぇな……」
少年は自身の至るところに穿たれた矢傷を血晶で覆いながら、体を震わせて立ち上がった。しかし、その痛々しい様子にも、女武者は眉ひとつ動かさず弓に矢をつがえてみせる。
「なかなかの不死性だ。しかしそなたは戦人ではない。幾多の戦場を駆けた私を屈服させることはできぬだろうな。一撃を入れることも叶わぬよ」
「そうかい? まだわからねぇぜ?」
「……そなたもわかっているであろうに、なぜそこまでする? そなたの主はそうまでして仕えるべき価値があると?」
「さあな……けどよ、今はそうするべきだと俺が決めた」
そう言って足を引きずり前に歩を踏み出す少年の瞳は、サングラスに隠れて見えない。
女武者はすぅと息を吸うと、少年の眉間に狙いを定めた。
しかし少年の歩みは、止まるどころか徐々に加速してゆく。
びゅほんと弦が空気を裂いた。
少年の眉間を貫こうと迫る矢――かまわず直進する少年――。
女武者の手元がくるったか、それとも、少年の気迫に矢が圧されたか、僅かに逸れた矢の軌道は少年のこめかみを抉り取った。
「おおおおおおおお!」
衝撃で首を右上に跳ね上げられつつも勢いを殺すことなく駆けた少年は、撃ち際の刹那に動きを止めた女武者の懐に入り込み、その頬に拳を叩き込んだ――が、その拳に力はなく、どさりとその場に崩れ落ちた。
女武者は、自身の足にすがるように手を伸ばしたまま倒れる少年を暫く見下ろしていたが、弓を後ろに引いてしゃがむと、その頬にそっと触れた。
「若武者よ、良く打った。単なる怒りでも恨みでもない、己に貸した使命の重き拳であったよ」
「……ざまぁねぇ」
「いいや、手を合わせ解した。そなたの体を砕くことはできようが、私にはその魂を挫くことはできぬようだ。私の討つべき方は、人の魂をいとも容易く砕き飲み込む御力を持っている。そなたならば耐えられよう。私から頼もう……その紅き力を貸して欲しい――那須与一という。私は、良き犬となるぞ?」
そう言って女武者が手を差し出す。少年は顔を上げ、戸惑うようにその手をじっと見つめた。
「わからなかったか……『握手』という。前の世界で知った和解の作法だ」
「いや、それはこっちにもあるやつだ。よろしく頼むぜ――葵順だ」
少年が手を取る。
女武者は仄かな笑みを浮かべると何かを探るように宙を見た。
「姿を見せぬ妖異よ、果し合いを見守ってくれたこと、そなたにも感謝しよう」
≪ふふ、あと少しで絞め殺すところでしたけどね。仲間ができてうれしいわ。よろしくね、お嬢さん≫
女武者の手を握る少年の手がふっと緩み、その鎧が赤い粒子となって消えていく。
それに伴い、女武者もまた、赤い光となって宙に溶け消えた。
『葵順、ミッションオーバーだ。立てるか?』
スピーカーからオペレーターの声が流れ、少年が自力で立ち上がろうと体を震わせる。
『では検査室へ……あ、はい……』
『――葵君』
先程流れた声と変わった低く通るその声音に、少年の動きが止まった。
『君は結果を出した。今暫く「しろかぜの家」の存続は約束しよう』
その言葉に、少年は瞬時呆然と床を見つめたが、ぐっと体に力を込めて一気に立ち上がり、
「――ありがとうございます、会長」
そう頭を下げると、力が一気に抜けたかのように倒れ、気を失った。
*
インカムを外した銀髪の男を、オペレーターが戸惑いつつ見上げる。
「13号施設の実験、継続ですか……?」
「そう言ったよ。それと、彼にはうちの下部組織を任せようと思う。あの人型の『クリーチャー』を常に実体化できるよう訓練させておいてくれ。それと、彼女用の“こちら側の服”もね」
「承知しました、錬成訓練メニューに加えます――グラマン会長。その……彼は『器』、なのでしょうか?」
オペレーターの問いに、男は今一度モニターに映る少年を見る。そしてそのまま何かを考えるようなそぶりをすると、
「どうかな。だが、チユ以外で二体以上の『クリーチャー』を従えることができたのは優羽莉と、彼だけだ」
と腕時計を見る。文字盤の西暦には「2025年」と表示されていた。
「――あと5年、そこですべてが明らかになるさ」
その月日をもどかしく感じたか、迫る刻限に焦りを覚えたか、男は左右非対称の複雑な表情を浮かべ、ひとりモニタールームを後にした。
~『源陛盛衰記』より~ |
|
セリフ一覧
+
|
通常版/Ver4.0、Ver4.1、ECR |
通常版/Ver4.0、Ver4.1、ECR
召喚 |
与一、推参 |
武装 |
私の弓は 引くも寄るも無し――― |
血晶武装 |
ただ一点を貫くのみ! |
通常攻撃 |
好きに足掻け どうせ当たる |
タワー制圧 |
――もう そなたらの悲鳴も我が心には届かぬよ |
ストーン破壊 |
鬼よ 嬉しいか? 美味いか!? 人の魂は…!! |
死滅 |
それでもまだ… この鬼の力 手放すわけには行かぬ! |
サポート(Ver4.0) |
扇よりは大きな的だ |
サポート(Ver4.1) |
与一は、鬼となりました… |
サポート(ECR) |
鬼神の篭手よ! |
|
考察
90/60/70というAtk偏重のステータスにより、召喚時から序盤に自タワー妨害してくる敵使い魔を追い返すだけの有効なダメージを与えることが出来る。
そのため相手を追い返しながらカウンター気味に血晶武装をし、相手タワーを妨害する・・・といった動きが可能。
血晶武装によりリーチ延長、固定ダメージ20追加、移動速度低下効果付与の複合アビリティが発動、各効果がかみ合っており非常に優秀。
攻める際は伸びたリーチと移動速度低下により相手を逃がしにくく、逆に苦手ジョブであるディフェンダー等に追われる際は、リーチの伸びたフリックと移動速度低下効果により相手との距離を稼ぎやすい。どちらの場合も固定ダメージによって堅実にライフを削る事が出来る。
大型使い魔が出揃う終盤においても固定ダメージと移動速度の低下で自身の大型使い魔をサポートできる。リーチ延長によって自身が一歩引いた位置から攻撃できるというのも地味ながら強力。
血晶アビリティのレンジアップとは非常に高相性。伸びたリーチがさらに延長され、アタッカーらしからぬ遠距離からの攻撃か可能になる。
那須与一を採用するのであれば一考の予知あり。
序盤~終盤までしっかり仕事が出来る優秀な使い魔だが、40というコストは1枚目の使い魔としては重たい。
一生懸命血晶武装させたはいいが相手タワー付近でディフェンダーに邪魔されてフリックしながら逃げてきました、ではテンポロスになってしまう。
前述の通り、召喚時から序盤のタワー妨害に対してそれなりの戦力になるので、召喚後に血晶武装するのか、召喚状態で止めて別の使い魔を育てるのか、対面と相方によって柔軟に対応したい。
変わった運用法としては血晶武装時に上昇がない代わりに初期値自体が他の40コストより20高く、
ケリュネイアやギ・アロで補えば弱めの20コスト並の荒し使い魔として働ける。
速度や攻撃間隔の都合上、20コスト血晶武装には及ばないが、40コストであることと
相手の初手によっては武装、血晶武装で強化できることを考えると初手の荒し使い魔として破格と言える。
初手使い魔としての最大の欠点は通常のマナ収集で40という数値が半端になりやすいことか。
また召喚~武装まではそこそこの性能でしかなく、血晶武装済みの30コスト使い魔が守る塔を荒らせる性能ではない。
敵の30コストが完成したならおとなしく防衛に回そう。
キャラクター説明
那須与一は弓の名手として知られる源氏方の武士で、「屋島の戦い」にて平家が的に見立てて船の上に立てた扇を見事射落とした、というのは非常に有名な逸話。
しかしながら、生年没年共に諸説あり、実在したかどうかも実は不明。
LoV:Re2から久しぶりの参戦。LoVにありがちな女性化された人物の一人。後にマイナーチェンジの【心眼】那須与一も登場した。
当時は10コストながら優秀な特殊技と恵まれたFS、SSにより3速以下の低速人獣には欠かせないエースカードであった。
特に【魔導】ウィッチとのコンボは有名かつ凶悪で、彼女らの弱体スマッシュにお世話になった、ないしは苦しめられたロード諸氏も多いのでは
アビリティ名になっている「鬼神の篭手」というのはRe2のプロフィールによれば左手についている篭手の名前らしい
4.1にてキャンペーンで配布されたECRは男装の麗人な黒スーツ。
フレーバーは彼女と葵順の前日譚となっている。
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- ECRで現代風の衣装に身を包んだ与一さんがポイント応募で配布予定 -- ShadoW (2017-11-05 22:58:07)
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