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藤田:漫画家にとって一番大切なのは気迫じゃないかって思うんだよね。気迫ってどこから来るのかって、結局は必死さから来るんだと思うんですよ。
90年代の前半って、お互いに何とか引っかかってやろうってもがいていた頃じゃない?
鍋の中で、爪も引っかからないような壁に向かって、何とか爪を立てて「この業界にいさせて!」って。
その必死さが、もしかしたらオレはあの描き殴ったような絵柄だったのかもしれないし。
何か相手に届く武器を必死で探した人間だけが、何とか引っかかって生き残ってるんだと思うんですよ。

藤田:さっきの話と少し矛盾するけど、オレね、人に話をする時に、スピリチュアルな言葉が入るのが本当は好きじゃないんです(笑)。
エンターテインメントっていうのは公式があって、積み木みたいに組み上げていって、それに乗っかれば面白いものができるぜ!って。だから才能が無いなんて言うなって。
公式を覚えて、キャラクターのギャップをより多く見せるっていうことを覚えれば何とかなるからって言いたくて。本当は、感覚的な話をするのがイヤなんですよ。

藤田:みんなで協力して巨大な敵に立ち向かうっていうのが、結局みんな大好きだと思うんですよ。
みんなでクライマックスを盛り上げる。みんなで強大な敵にぶつかっていくっていうのは、エンターテインメントとしてみんなが一番好きな、最大公約数であるって気がしてならないんですわ。

藤田:『うしおととら』では、オレは絶対に最後にみんなで戦うシーンを描きたかったから、全員の感情をコツコツと積み上げていったんです。お腹を減らして、髪の毛もハゲながら(笑)。
「絶対にやるんだモン!ボク絶対にやるモン!」みたいな気持ちでやらないと無理ですね。
そうしないと最後の感動は無いので。

藤田:あの頃は本当に内面に向いていたんですよ。担当編集者と打ち合わせが終わって、家に帰ってから鏡を見つめて「お前、がんばれって!」って言い続けながら描いていたので。
からくりサーカス』のセリフは全部自分との対話から生まれたような気がするんですよ(笑)。

「もっと新しいジャンルを、もっと別の年齢層に向けた作品を描かないのか?」って言われても全然心がそれを欲さないっていうんですかね。「だってオレ少年漫画家だもん」って(笑)。

藤田:自分の漫画は行き先が見えないジェットコースターみたいな感じで、コレに乗ったらココに無事に帰ってこられるんだろうか?って不安感を読者に与えちゃうから、読者をポロポロと落としながら連載が進むんですよね。

うしおととら』は、妖怪をやっつける漫画なんだって理解してもらえるんですけど、『からくりサーカス』の場合、『からくりサーカス』ってなんの話なの?っていうのがあって、どうすればみんながハッピーエンドになれるんだろう?っていうのが最初の頃は提示できなかったんです。
もう乗客の少なくなったジェットコースターだけど、覚悟を決めて始めたんだから最後までちゃんとした漫画に仕上げようとして描いてたんですよ。そんな時こそ"気迫"が大切になる(笑)。
長く続く連載の作品に対して聞かれる「コレ、後付けだよね~」って言葉に対してワタシは言いたい!「後付けじゃない漫画があるかっ!」って。

新人の子にいきなり漫画の描き方の話をしても、心が耕されていないっていうか、「お前は上からモノを言っているようだけど、お前は俺の何を知っているの?」って気持ちがあるから。
心が開く時って、漫画とは全然違うことに対して話している時だったりするんですよね。

藤田:サラリーマンの組織論としては、オレは尖り過ぎだと思いますね(笑)。
オレの単行本に付いている四コマ漫画を読むと、アシスタントって楽しそうにやっている雰囲気があると思うんですよ。だけど実際は「お前らの会話でオレを気持ち良くさせてくれよ」ってことなんで、強制みたいなモンですよね(笑)。

藤田:この前どうしても断り切れなくて美術学校で講師をやったんですが、その時に「これだけは覚えて帰って欲しい」って言ったのが、「君達は編集者から自分の作品に対して酷いことを言われるだろう、そこで編集者さんが一通りしゃべり終わったら、『私がちゃんと理解するために、あなたの言ったことを私の言葉でもう一度復唱させてください。それで間違ったことがあれば教えてください』って言ってやれ」と。



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最終更新:2013年07月20日 01:48