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湯あたり3」(2006/09/08 (金) 09:21:30) の最新版変更点

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*湯あたり by 267さん **3 ---- 抵抗が無いのを意外に思いながら、唇を離した。 山田の顔を見る。 艶っぽい息。目が潤んで、色白の頬が微妙に薄紅に染まって。 思わず背筋がゾクリとする。 山田はこんなに色っぽかったか? と、いきなり腹に膝蹴りが入った。 ソファーから落ちる。 「おま・・・!痛いだ」 言いかけて、山田がいつもの表情に戻っているのに気がついた。 しまった・・・失敗した。 心の中で激しく後悔して、ふと見ると 山田の目からぼろぽろと涙が落ちていて、ぎくりとする。 「あ・・・そ、その、なんだ・・・す、すまん!」 反射的に謝ってしまった。 今までやってきたことが水の泡となったわけだが、 女性の涙に俺はめっぽう弱い。 今度は俺が動揺する番だった。 「よくあるだろ、その場の雰囲気に流されて、  ついやってしま・・・ってこれじゃフォローにならない・・・。  そうだよな、いきなり俺にキスされるのは  俺が女でも・・・ってこれじゃあ俺のキスは明らかに嫌なことに・・・」 「・・・このバカ上田!」 山田が握りこぶしで、一人でぶつくさ言っていた俺の胸に一撃食らわせた。 ---- 皆様は承知だと思うが、この女、外見に似合わず 腕っ節も足っ節も強い。(さっきの膝蹴りでもお分かりだろうが。) だが、今叩かれた胸は、あまり痛くなかった。 泣いていて力が入っていなかったのだろうと最初は思った。 けれども、どうも様子がおかしい。 泣いているのか、怒っているのか、叩いたまま 胸に置かれた手が微妙に震えている。 「・・・・・・あの、もしもし?山田奈緒子さん?」 「・・・・・・あー、そうだよ」 泣き顔で、きっと俺をにらみつけて、 一気にまくし立てた。 「わかりましたよ、男と女は例え思いが通じ合って一旦告白しても  なかなか先には進まないんですよ!だけど、それは  心の準備ってものが要るからなんですよ、相手が  いきなり自分を押し倒しでもしたら恋人だって驚くでしょうが!  それまでの付き合いが長くて心地よかったら  崩したくないって思うのが人間でしょ!?  だから今まではっきり言えなかったんだよ、  今までの関係崩したくなかったから!!」 激しい運動の後のように、山田はぜいぜいと空気を吸って、 落ち着いたというように大きく息を吐いた。 ---- 呆然として、俺は、 「・・・・・・え、それは、つまり」 山田はこの分からず屋!とでも言うように泣き顔で俺を睨んで、 「嫌じゃないって言ってるんです!!」 と、顔に手を当てて泣き始めた。 これは、つまり、・・・落ちたということか? そう分かって、拍子抜けした、というよりは安心した、というか だんだんうれしさが込みあがってきた。 ソファーの上で泣いている山田の背に手を回し、 こわごわ、できるだけやさしく抱きしめる。 「わかった・・・悪かったな。な?」 山田も、俺の首の後ろに手を回して抱きしめ返す。 それを感じて俺は、一応恋人になれたのかな、などと バカなことを考えていた。 ---- 気まずくなったのが、夜になって 俺が風呂に入ってからだ。 ご存知かもしれないが、一人暮らしもあって 俺は風呂上りはパンツ一丁のことが多い。 いつもの調子で鼻歌交じりに風呂場から出てきて、 すっかり普段の様子に戻った山田と目が合ってしまった。 照れ、というよりはどっちも「しまった」という 顔をしたのは、言うまでも無い。 そうだ、今晩こいつはうちに泊まるのだ。 しまった。 私は今晩こいつのうちに泊まるんだった。 出された晩御飯をありがたく全部頂いて油断していた。 上田はその手のことに関して完全にアホなので、 この為に告白をさせようとしたとか (危うくそれより先の行為に至りそうだったとか)、 油断させるために晩御飯を出したとは思っていないが、 完璧に夜、ここで寝ることを忘れていた。 どうしよう・・・昼間の感じで行くと、 間違いなく今夜・・・以下省略。 ---- 「・・・今夜は、俺のベット使って寝ろ」 完璧に固まって、どうにもならなくなったので 俺はしょうがなく先に口を開いた。 「ちょ、いやですよそんな、告白したその日にいきなり」 瞬時に山田の顔が真っ赤になる。 「そうじゃない!俺がソファーで寝るって言ってるんだ!」 「あ、そういうことか・・・」 あからさまにほっとしている。 ふん、その手のことに関してはホントにお子ちゃまだ。 「君みたいなお子ちゃまにすぐに手を出すほど  僕は腐っていないんでね」 上田が小ばかにしたように言ったので、 さすがの私も少々ムカッと来た。 「な、私だってもう二十代後半なんだ、  十分大人の女ですよ」 「はっ、大人の女だ?一緒に寝ると誤解して  真っ赤になる大人の女がどこにいるんだよ」 からかっている。明らかにからかって楽しんでいる。  ・・・ほおぉ。ふーん!私の魅力がそんなにわからないか。 ひさびさにかなり頭に来た。 「そこまで言うんだったら試せばいいじゃないですか」 「は?」 完璧に予想外というように、上田が間抜けに返事をした。 ---- 売り言葉に買い言葉、というんだっけ。こういうのは。 私は湯船に浸かってぼんやりと考えていた。 この二、三年、こういう事がよくある気がする。  そうだ、インチキ霊能力者たちと勝負するときだ。  ただし、あいつらの時はただトリックを暴けば良いが、 今からのことには、トリックも何も無い。  ・・・私、馬鹿だ。 自分の愚かさを呪っていると、上田の声がした。 「のぼせてるのか?」 「いいえ!」 声が上ずってしまった。 風呂場にいる山田に聞こえないようにドアを離れて、 俺は台所で腹を抱えて笑いをこらえた。  ・・・笑ってはいけない。山田にとっては貞操の危機だ。 しかし・・・。 本当に抱くのか? 俺にも多少戸惑いがあった。 山田はあの調子だし、何より俺のモノが・・・じゃない、 今まで俺たちはへんてこな関係で、 これからもそれが続くものと思っていた。 もし手を出すのだとしたら・・・そうなるのなら あいつも俺も真面目にならなければ。 ----  ・・・遅い。 さっき声をかけてからゆうに三十分は経っている。 風呂に入ったのがそれより二十分前だから もう五十分だ。  ・・・のぼせてるんじゃないだろうな。 風呂場のドアをノックする。 「おい、山田。聞こえなかったら返事しろ」 返事は無い。聞こえてない。 「・・・入るぞ?殴るなよ?」 注意しておく。俺の風呂場のドアには鍵がついていない。 そっと開けると、かなり蒸気がこもっていてむんとする。 曇った眼鏡をぬぐって浴槽を見てみると、 案の定のぼせて顔を赤くした山田が寝ていた。 色白の全裸に分身が少なからず反応したことは隠さないが、 いきなり襲うほど俺は野獣ではない。 「・・・アホか」 聞こえていないことをいいことに大きくため息をついて、 浴槽から山田を抱き上げた。 ---- バスタオルでくるんでベットまで運ぶ。 くれぐれも言っておく。俺は野獣ではない。 例えモノが反応しているとしても。 横たわらせて、団扇を持ってきて扇ぐ。 顔にかかっていた髪をよけてやる。 ふと、手が止まる。 上気した頬、聞こえてくる息。  ・・・・・・。 だめだ。そんなことは断じて駄目だ。 手をどけようとしたとき、山田が目を開けた。 [[NEXT>>>湯あたり4]]

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