371 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/07/30(月) 08:11:22.06 ID:SFWIyure0 [2/3]
まどっちがさやかちゃんを守るお話を投下させていただきます。
先々週くらいにうpるつもりだったのですが…orz
思ったより長くなってしまったのでお時間の余裕のある時にでもどうぞ。
幾箇所かおかしい場所があるのは笑って誤魔化してやってください(汗
―タスケテ……タスケテ…タスケテ……―
深い深い青の中で、ぼんやりと自分を感じるのが精一杯だった。
遠くから誰かの助けを求める声が聴こえるが、手を伸ばしても届かない。
「………誰…誰なの…?」
しかも声は不可思議なエフェクトと残響音によって声の主は不鮮明だ。
それでも…鹿目まどかにとっては確かに聞き覚えのある声に感じられた。
―……タスケテ……タスケテヨ……―
ここは恐らく夢の中だろう。ここ数日まどかは同じ夢ばかり体験していた。
自分と空間の境界線すらも曖昧な世界では、他者への応答さえも雲を掴むに等しい行為の様だ。
「ねぇ…貴女は何処に居るの…?
わたしはここだよ、ここに―――(ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ…)
夢の終わりは目覚まし時計によって唐突に告げられた。
尤もこれも初めてではない事なので、またかと思って素直に現実に引き戻されてゆくだけだが。
[since//anone~"助けて"の声に呼ばれて~]
―朝の登校―
「鹿目さん、またその夢ですかぁ…?」
「うん…今朝も同じ夢で目が覚めたの。誰かが"助けて"…ってわたしを呼んでる夢で…。」
まどかはここ最近続いている夢の事を、同じ魔法少女仲間の暁美ほむらに話していた。
誰かに助けを求められているというのに、こちらの声は届かないという腑に落ちない内容だ。
「魔女退治で疲れが溜まっているのかもしれないわね。
ワルプルギスの夜も無事乗り越えたのだし、戦う時以外はもう少し気を抜いてもいいのよ?」
もう一人の仲間は1年先輩の巴マミ。
魔法少女としての師匠であり、強大な魔女であるワルプルギスの夜を乗り越えた戦友でもある。
右手を覆う白手袋はワルプルギスの戦いで重傷を負い失った義手を隠す為のものだ。
失った右手首から先は時間を掛ければ再生可能であるが、本人曰くこの方が"替えが利くから"とそのままにしているのだ。
ちなみにこの義手はほむらの手製だったりするのだが。
すっかり魔法少女仲間として馴染んだ3人は街の見回りだけでなく、登下校時も行動を共にする事が多くなっていた。
そんな中、唐突にほむらは道行く生徒達の中の一人に目を向ける。
「鹿目さん鹿目さん、あれ…美樹さんですよ。」
「ふえ? あ……さやかちゃんだ…。」
ほむらに促された方角には二人とは逆に、ここ最近すっかり疎遠になってしまった美樹さやかが歩いていた。
いつも活発で人付き合いも良い彼女にしては珍しく、今日は一人で登校している様子だ。
「…あの…そのぉ…。魔法少女のお仕事ばかりで忙しいのは仕方ないのですが…。
美樹さんとは遊んだりしなくていいんですか…?」
自分の意見を遠慮がちにおずおずと言うほむら。
これでも彼女は出会った当初より随分前向きになった方である。
「えっ? うん、そういえば…最近さやかちゃんと全然お話してないかも…。
でもでも…わたしはこの街を守る魔法少女だから…。」
「鹿目さん。貴女の友達を守る事だって立派な魔法少女のお仕事よ。」
伏目がちにするまどかをマミが優しく諭す。
要するに"仕事にかまけてばかりでは駄目だ"と言う事だろう。
マミが重傷を負った事が影響してか、まどかは魔法少女として一層真面目に取り組む様になっていたのだ。
「魔法少女としての勤めも大切だけど、家族や友達だって同じくらい…ううん、それ以上に大切よ。」
「そうですよ鹿目さん。前にお話してくれたじゃないですか。美樹さんは鹿目さんの"大好きな人"なんでしょ?」
「あっ……うん…。そうだよね。」
一瞬躊躇うまどかだったが、二人の仲間に後押しされてプライベートも大事にしようと心に決めた。
そうこうしている間にさやかは先に行ってしまった為、追い付いたのは学校に着いてからだったが。
………♭♭♭………
教室に入るとまどかは真っ先にさやかを探す。
そのさやかは教室の隅っこで、窓際で窓の桟(さん)に肘を立てて空を見つめていた。
「さやかちゃん! お早う!」
「………。………まどか……? うん…おはよ…。」
まどかは冴えない反応のさやかに一瞬自分が避けられているのかと危惧する。
幼少の頃から自分を支えてくれた相手に随分距離を置いた後で今更虫の良い話ではあるのだが…。
それでもまどかがめげずに話し掛けるのは二人の仲を信じているからだ。
「さやかちゃん、今日の放課後予定空いてる? もし良かったら一緒に遊びたいなって。」
「…あたしなんかに気い使わなくてもいいよ…。あんた、忙しいんでしょ…?」
さやかはあからさまに目を逸らしながら不機嫌そうに返す。
やはりここ暫くまどかが付き合い悪くしていた所為なのだろうか…?
「あっ…えと…その…。わたし、これから当分は忙しくなくなったんだよ。
だから前みたいにさやかちゃんと遊びたいんだけど…迷惑…かな…?」
「…ごめん…あたし、今日はそんな気分じゃないのよ…。」
「ぁぅぅ…。そ、それじゃ…明日とかどうかな…?」
「……っ…! 嫌だっつってんでしょ!!」
「っ!!」ビクッ
尚も食い下がるまどかに嫌気が差したのか、さやかはついに本気で怒鳴ってしまった。
しかし身を強張らせるまどかの姿にハッとしてさやかはすぐ我に戻る。
「…ごめん…急にデカい声出したりして…。」
「ううん。わたしだって…自分の都合ばっかりでさやかちゃんに嫌な思いさせちゃったから…。」
さやかは申し訳なさそうな顔でまどかの肩に手を置き謝罪の意を込めた。
大きな擦れ違いがあろうとも、結局こうして和解出来るのが幼馴染故の付き合いである。
「ただ、その…今日はホントに気分が乗んないのよ…。だから…ごめん…。」
「うん、いいよ。それじゃ明日ならどうかな? あっ、わたしの都合は心配しないでね。」
「…明日か………。理解った。都合付けとくよ…。」
さやかは少し間を置いてからやっとまどかの誘いを承諾した。
いつものさやからしくない影を落とした様子がまどかにとっては少し気掛かりだったが…。
結局今日のまどかはいつも通り魔女退治に参加し、明日の予定を空けておく事になった。
………………………………………………♭♭♭………………………………………………………
―…タスケテ……ゥゥッ…タスケテ…タスケテ……―
「わたしはここだよ! お願い気付いて…!」
次の朝もやはりまどかは昨日と同じ夢の中で目を醒ました。
どんなに足掻いても言葉はすり抜けてしまうばかりで届かない。
登校時にはマミとほむらに挨拶してからさやかの元へ向かうつもりだったが、その前に思い掛けない光景を見てしまった。
「ほら、恭介さんしっかり。」
「ありがとう。でも女の子にこんな事させちゃ悪いよ…。」
「わたくし身体は鍛えておりますから心配はご無用ですわ。恭介さんの支えになれるのでしたらこのくらいは…。」
さやかがよく病院に付き添っていた上条恭介が、退院して松葉杖で登校していたのだ。
その隣にいるのはさやかではなく、もう一人の友人である志筑仁美の姿。
未だ自立歩行もままならない恭介を支えるその姿は唯の知人以上の関係にも見える。
「(どうして仁美ちゃんが上条君の隣にいるの…?!)」
「(私達の知らない間にこんな事になってたんですね…。
鹿目さん、こういう時こそ美樹さんを支えてあげるべきじゃないですか?)」
「(…うん…そうだよね…!)」
この日さやかは仁美達を避ける為なのか、通学路にも朝の教室にも姿を見せない。
結局彼女が学校に姿を現したのは昼前の授業中だった。
………♭♭♭………
「………。」
昼休みだと言うのにさやかは弁当も持たずに屋上の端で独り佇んでいた。
憔悴した様で眼の虚ろな姿は、心成しか昨日よりも重々しく感じられる。
「…さやかちゃん…。隣…いいかな…?」
まどかは恐る恐る囁く様に話し掛け、返答を待たずして隣に座り込む。
さやかとの付き合いを疎かにしている間に友人達との関係は激変してしまっていた。
そんなさやかにどんな声を掛けてあげれば良いのか理解らず、まどかはそっとさやかの手を握っていた。
「……まどか…?」
「…さやかちゃん…。」
躊躇いがちに控えめな笑顔を向けるまどかに釣られて、さやかも誤魔化す様に不器用な笑みを返す。
それはとても全うな笑顔などと呼べるものではなかったが…。
まどかが魔法少女と言えども、今はこうして傍に寄り添う事くらいしか出来ない。
「…なんか…昨日からいじけてばっかでごめんね…。」
「わたしこそ…ごめんなさい…。さやかちゃんの気なんてちっとも知らなくて…。」
「………あたしさ…駄目だったんだ…。仁美より先にあいつに告白したのに…。
あたしってさ…女の子らしさの欠片も無いんだって…。」
「そんな…!」
さやかの口からはっきりと、恭介を巡って仁美に"敗北した"のだと告げられた
以前からさやかの気持ちを知っていたまどかはショックを隠せない。
本当は誰より女の子らしく繊細なさやかを目の前にして、まどかはこれ以上何も言えなかった。
まどかがここまで落ち込んでいるさやかを見るのは初めてだった。
一方のさやかも自分を気遣おうとするまどかを下手に傷付けたくない思いで沈黙を保っている。
「………。」
「………。」
(ぐぅぅぅ~…!)
一分程静寂に包まれていた屋上で、突然何とも形容し難い間抜けな音が響いた。
「へ…? 何、今の音…。」
「っ!! わ、わたしじゃないよ!わたしじゃ……。」アタフタ
盛大に音を立てたのは、何とまどかのお腹だった。
途端に真っ赤になるまどかを見たさやかは込み上げる笑いを堪えきれなかった。
「…ぷっ…あはっ…あっはははははは!!」
「あうう…さやかちゃん酷いよぉ…そんなに笑わなくてもいいのに…。」
「だ、だってさあ…ぐうーなんて漫画みたいじゃん!おっかしい~!」
先程までの暗い影は何処へやら、さやかは大笑いし過ぎて目に涙を浮かべる程だ。
それでもまどかにとってはさやかが笑ってくれた事が心から嬉しかった。
「へへっ、そうだ…いつまでも凹んでても何もならないもんね…。
…って、やっべ! あたし昼飯作って来んの忘れたあ~!!」
まどかのお腹が空気が壊したお陰で、さやかも空元気ながら少し前を向けたらしい。
忘れたというよりは昼食を取る気力すら無かったのが本音ではあるが。
まどかはまだ赤い顔のままだがこの機会にと、昼食用に持ち寄ったお弁当箱を二人取り出した。
「さやかちゃん、一緒にお弁当食べようよ。」
「う、うん…。でもこれ…二つあるんだけど…もしかしてあたしの分…!?」
「えへへっ♪」
まるで奇をてらったかの用に置かれた二つのお弁当箱。
一つは間違い無くまどか自身の物であろう。そしてもう一つは………
「ふー…テレパシーで伝えて時間止めてバレずに鹿目さんに渡せましたけど…。
ホントに良かったんですか…? これじゃ巴さんのお昼が…。」
「いいのよ。あの子から鹿目さんとの時間を奪ったお詫び…とでも言うべきかしら。私は今から購買に行って来るわ。」
「あっ…待ってください、私も一緒に行きますよぉ~…。」トテトテ
さやかが自分の弁当を持っていなかったのは勿論想定外だったが、
別の校舎の屋上からこっそり見守っていた二人による超いきなりの連携プレーである。
こうしてまどかとさやかは久し振りに一緒に昼食を取る事が出来たのだった。
「そういえばさやかちゃん…今日の放課後、ホントに大丈夫…?」
「…ホント言うと……まだちょっと…。でも昨日約束したもんね。
おーし!今日はさやかちゃんのウサ晴らしにとことこん付き合って貰うからね!」
「わーい!(えへへ、今日はさやかちゃんと一緒♪久し振りだなぁ…。)」
まず帰りの足でカラオケを2時間熱唱、それからゲームセンターに立ち寄った。
まどかの自室には今日さやかから貰ったぬいぐるみが新たに並べられるのだろう。
こうして二人はそれぞれが忘れかけていた大切な時間を無事取り戻したのだった。
………………………………………………♭♭♭………………………………………………………
―タスケテ……タスケテ…タスケテ……―
「(またこの夢…。)貴女は誰なの…? 何処に居るの?」
―……ワカラナイ…ワカラナイヨ……スゴク…サムイ……タスケテ…―
救いを求める声は今までよりもずっと強いものだった。
まだ声そのものは不明瞭だが、夢の中の背景として深い水の中が現れた。
それに今日の夢では、声の主が僅かばかりまどかの言葉に反応してくれたのが進展かもしれない。
………♭♭♭………
送信者:美樹さやか
本文:ごめん、今日は調子悪いから休むよ。明日元気だったら遊ぼうね。
家を出る直前に届いたメールを見てまどかは落胆していた。
「…今日はさやかちゃんお休みみたいです…。」
「でもちゃんとメールを送ってくれたんだから、鹿目さんを頼ってくれてる証じゃない。」
「あっ…そっか…そうですよね。」
「今日帰りにお見舞いに行ってあげたらどうですか?」
「お見舞い…さやかちゃんのお部屋で二人きり…えへへ…///」
お見舞いに行くだけだと言うのに、想像しただけで頬に手を当てて嬉しそうなまどか。
メールを見た時の凹みモードは既に無く、今はデートにでも誘われた様な表情だ。
「あらあら鹿目さん、まるで恋する乙女ね。」
「ふふっ…。もしかすると鹿目さんはホントにそうなのかもしれませんよ。」
「えっ…???」
あさってを向いたほむらの答えにマミは目を丸くしていた。
まどかがさやかに抱いた仄かな感情はマミの知る所ではないのだ。
そんな疑問はさて置き、マッミは夢の事をまどかに尋ねる事にした。
「それにしても鹿目さん、まだあの夢は続いてるのかしら?」
「あ、はい…。でも今日はちょっとだけ視界がはっきりしたって言うか…
わたしの言葉に夢の中の声が返事をしてくれたんですよ。」
未だ見えぬ声の主が幽かにまどかの声に反応したのは確かだった。
またこれまでより強い呼び掛けに、僅かばかり距離を近付けた様にも思えた。
「それって…もしかしてキュウべぇの声とかじゃないんですか?」
「うーん…ちょっと違うかなぁ…。
機械っぽく加工された声なんだけど、もっと感情があるって言うか…可愛いっていうか…。」
………♭♭♭………
帰りにマミとほむらはまどかの見舞いの品の買い物に付き添う事になった。
二人はそのまま魔女退治の巡回に、まどかはさやかの家へと一人足を運ぶ。
(ピンポーン)
インターフォンを鳴らすと親は留守らしくさやか本人が玄関のドアを開けた。
寝巻き姿にボサボサの髪を見ると、どうやらさっきまで横になっていたらしい。
「さやかちゃん、具合はどう?」
「んー…だいぶ寝てたからもう結構平気かな…。」
咳や鼻水は見られないので風邪ではない様だが、やはり顔色は思わしくない。
まどかは以前によく遊びに訪れたさやかの自室に入ると、早速飲み物と食べ物を並べて見せた。
「プリンとゼリー両方持って来たんだよー。どっちが食べたい?」
「じゃぁプリンがいい。」
「えへへ…。それじゃさやかちゃん、あーん♪」
「へっ!? あ、あーん…」
"あーん"はさやかがよく冗談でまどかにする遊びみたいなものだが、
自分がして貰う側になると恥ずかしいものを感じてしまうさやか。
やや頬を赤らめながらも、結局はまどかに差し出されるまま堪能するのだった。
「さやかちゃん元気そうだから、ちょっと遊んで行こうかなー♪」
「いいよー。じゃぁゲーム機でも出すか…―――…っ…?!」クラッ
ゲーム機のある液晶テレビへ立ち上がり向かおうとしたさやかは突然バランスを崩す。
魔法少女として戦った経験故か、まどかは俊敏な動きでさやかを抱き留めていた。
「さやかちゃん!大丈夫!?」
「うっ…。やっぱ…まだ駄目かも…。頭痛い…気持ち悪い…。」
さっきまでと打って変わり、さやかは搾り出す様な声で自分を伝えるので精一杯だ。
まどかに肩を借りながら何とかベッドに辿り着いて横になった。
「やっぱり風邪なのかな…?」
「んー…一応風邪薬飲んでみたんだけどね…なんかイマイチでさ…。」
力無く微笑むさやかに布団を掛けてあげたまどかはある事に気付いた。
さやかの首が白い包帯でぐるぐる巻きにされているのだ。
「さやかちゃん!その首どうしたの!?」
「あー…なんか寝てる時に自分で引っ掻いちゃったぽいんだよ。
起きたらなんか血だらけだった。熱くなってきたし汗疹かなー…。」
残りの食べ物と飲み物を冷蔵庫にしまってからまどかはさやかの自室に戻った。
本当はもう少し話していたかったのだがそういう訳にもいかない。
まどかが扉を開けた瞬間に、さやかが閉じようとしていた目を慌てて開けたからだ。
本人の意思とは無関係に辛さから逃れる為、本能的に眠ろうとしていたのだろう。
「それじゃ、寝るの邪魔すると悪いし…そろそろ帰るね。」
(クイッ)
しかし不意に、背を向けようとしたまどかの服の裾が引っ張られていた。
引っ張っているのは言うまでもなくさやかの手である。
「ふぇ?」
「い、いや…あの…その…。」
幼ない頃から常にさやかがまどかをリードする側だった所為か
気恥ずかしくて目を逸らししどろもどろになってしまうさやか。
「えへへ、じゃぁ寝るまで傍に居てあげようか?」
「…うん…お願いします。」
付き合いの長さ故にまどかはさやかの性格も良く知っていた。
そんなまどかに観念したのかさやかは途端に素直になる。
「さやかちゃんって実は甘えんぼさんなんだね♪」
「う、うっさい! いいじゃん別に…あたし等の仲なんだし。」
「そうだよね。わたし達親友だから、困った時や辛い時は助け合わなきゃね。」
「………。……うん…親友…か…。そうだ…あたしとまどかは…親友…。」
「さやかちゃん…?」
苦しいからなのかさやかの笑顔は消え失せていて、
うわ言の様に繰り返しながらさやかは眠りに就くのだった。
………………………………………………♭♭♭………………………………………………………
―タスケテ……タスケテ…助けて…―
「ねぇ、貴女はどうしてそんなにも泣いているの?
どうしていつもわたしに助けを求めるの?」
―……理解らない……淋しいよ…寒いよ…―
夢の世界で響く声のエフェクトは薄くなり、以前よりかなり鮮明な声色だ。
その声はやはりまどかにとって何処かで聞き覚えのあるもので…。
―…誰か気付いて……助けてよ…―
今までとは違い、周囲の青よりやや薄い影が"彼女"だとはっきり認識出来る。
声の主と思われる影は人の姿に見えなくもない。
「わたしが力になるから!独りじゃないから!だから―――(ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ…)
あと少しで手が届きそうという所で、夢の世界は現実に断ち切られてしまった。
それでも今までとは違い、明らかに彼女と意思疎通を図れたという点においては大きな進展である。
「はぁっ…今日はもうちょっとだったのになぁ…。」
………♭♭♭………
―朝の登校―
「おーっすまどかーっ!」(ギュッ)
「わわわっ!?」
背後から抱き付かれたまどかは思わず声を上げた。
同時にこの匂いと温かさが随分久し振りに思えてまどかの頬を緩ませる。
魔法少女になって初めてではないだろうか、こうして元気なさやかと触れ合うのは。
「さやかちゃん、今日は身体大丈夫なの?」
「ん? まぁ何とかね…。風邪でもないのにゴロゴロしてる訳にもいかないっしょ。」
若干空元気かもしれないが、それでもウインクして健在をアピールするさやか。
彼女の首には今日も包帯がぐるぐる巻きになったままではあるが。
………♭♭♭………
―放課後―
「まどか、今日これから暇だったりしない?」
「あ、えーっと…ちょっと待ってね…。」
まどかはバレない様にポケットの中のソウルジェムに手を当てた。
傍目に見れば携帯に手を触れている様にも見えるこの行為は、
同じ魔法少女仲間とテレパシーで連絡を取る為のものだ。
―マミさん、その…。今日は…大丈夫ですか…?―
―ほらほら遠慮しないの。友達との時間を楽しんで来なさい。
それにお仕事なら昨日したばかりじゃない。―
―あ、ありがとうございます!―
「今日は大丈夫みたいだよ。」
「ん…? そっか。まどかがそう言うなら。」
さやかは暫く黙って考え込んでいたまどかを少し疑問に思ったが、
顔を見る限りは嘘を吐いている訳でもなさそうなので気にしない事にした。
―ショッピング―
「さやかちゃん、このアクセ可愛いよ!ヘアピン付けてみようよ!ほらほら!」
「ちょっ…!ピンクのなんてあたしに似合う訳ないでしょーが!」
「そんな事ないよ。さやかちゃん可愛いし結構美人さんだよ?」
「なっ…そ、そんな事…ないよ…///」カァァ
やたら可愛い物を進めるまどかに拒否しつつもたじろぐさやか。
心成しか以前より容姿を褒められる事に対して弱そうにも思え、
また失恋による傷心も影響しているのかもしれない。
―喫茶店―
さやかは入店時に意味も無くまどかの手を握った上で席へ案内されてみた。
「まどかまどか。ほれ、あーん。」
「ふぇっ!? あ、あーん…」パクッ
恋人同士でする"あーん"を敢えて喫茶店でやってみる二人。
女同士だと言うのに両方共ノリノリでかつ初々しく赤面していた。
「ねえまどか。こうしてるとさ…なんだかカップルみたいじゃん?」
「もう…さやかちゃんってば。わたし達女の子同士だよ!///」
さやかの一見冗談にも聴こえる台詞はいつになく真剣だった。
またまどかの方は冗談として受け流しつつ動揺を隠せずにいる。
「………。そりゃそうだわ、あっははははは!」
やはりさやかの言葉は冗談でしかなかったのだろうか?
さやかが馬鹿悪いするまでには一瞬間があった気がした。
最終更新:2012年08月04日 17:49