■・ブレイン
■・ブレイン P 水文明 (3) |
呪文 |
■多色ではないクリーチャーを1体選ぶ。そのクリーチャーの持つ■能力1つにつき、カードを1枚引く。 |
※殿堂入り |
作者:SCA6
2016年、DMX-22「超ブラック・ボックス・パック」で収録されたジョークカード。《レアリティ・レジアスタンス》の同期であり、そちらと同様ネタカードが次第に環境を歪めるカードパワーに至ってしまった1枚。ジョークカードの調整の難解さを示す好例である。
裁定
「■能力1つにつき」は原文ママ。
「
ブロッカー」や「
S・トリガー」などの「■」で始まらない能力はカウントされない。
環境において
少なくとも最低2ドローは容易かろうということで、当時期待されていたのは採用率が落ちていた《エネジー・ライト》に変わる強力な初動ドローソースとしての役割。しかし当時のカードプールでは最速で唱えようとしても相性のいいウィニーが少ないという点から思うような活躍は見られなかった。ドローソースとしての枠割を期待するには盤面に依存しすぎているため、結局引ける枚数に再現性がないというのが評価を落とした原因である。
もちろん、能力を多数持つ大型クリーチャーを対象にできれば3,4枚程度のドローは当たり前に期待できる。相手のクリーチャーも対象にできるのもかなり大きく、環境や構築次第でドロマー系やアナカラー軸の
デッキに積極的に顔を出す強力なドローソースであった。
それでもRev~RevFは踏み倒し能力インフレによるゲームスピードの加速が深刻であり、環境への鋭い考察を要求される玄人好みのパワーカード……という評価に落ち着いた。
これには「
多色クリーチャーを対象にできない」という調整点が大きかった。当時は「■マナゾーンに置くときこのカードはタップしておく」が1つの能力としてカウントされていたこと、また単色クリーチャーに比べると能力を多数持っている傾向にあることが調整の理由だろう。
「ブロッカー」や「S・トリガー」などのウィニーにオマケでついてくる効果をカウントできないという裁定もそれを踏まえた調整だと考えられる。もしこれらの縛りがなければ、例えば2ターン目に出したベルリンを対象にしてなんと
一気に5ドローもできてしまうのだ。
しかし新章デュエル・マスターズ(ジョー編)以降は状況が一変する。
「コスト論」の崩壊である。
判りやすい例が《異端流し オニカマス》。2コストでパワーが2000もありながら、相手限定の踏み倒しメタに加えてアンタッチャブルまで持っているこのカードは、
コスト論ではなく「使いやすいか」で能力の調整がなされるようになったことを物語る好例だろう。(これと
スチームハエタタキが出てきた辺りからオリカ界隈も「カードパワーの調整とは(´・ω・`)」みたいな空気になってきたと思う)
特に《デスマッチ・ビートル》の登場は大きく、2コストでありながら能力を3つも持っているこのメタクリーチャーはこの呪文と無類の相性を誇る。
……この手の踏み倒しメタを最速で並べる動きと次のターンに堅実なドローする動きが必ずしも相性がいいというわけでもなかったが、「特定の低コストクリーチャーの働きをデッキの核にする」という今までの
デュエマには見られなかった方向性は《■・ブレイン》の運用性に大きな革命をもたらした。
双極篇以降もこの傾向は加速する。
実用的な初動カードがSR、VRで収録されることも増え、そしてもちろんそういったカードはバニラ並みのパワーを持ちながら強力な能力を多数備えているのだ。《こたつむり》が好例だろう。
その手の優良カードはどんな環境、どんなデッキであろうと当然採用されたわけだが、ここで《■・ブレイン》が相手のクリーチャーも対象にできるという点がゲーム性を大きく歪めるポイントとなった。相手が出した優良ウィニーを対象として先駆けて《■・ブレイン》を唱えることで大量ドローする、という先に引いたもの勝ちの様相を見せたのだ。
さすがに世紀末GR環境においてはその採用率を落としたが、GRの衰退と同時にその勢いを再び取り戻す――ことはなかった。2020年7月1日、《MEGATOON・ドッカンデイヤー》の規制と同時に殿堂入り。GRの使用率が落ちれば当然《■・ブレイン》の採用率も上昇するのは明らかで、先手を打った規制になるだろう。
「デッキの回転率を上昇させて継続的なアドバンテージをもたらす類のパワーカード」ではなく、純粋に使いきりドローソースとしての過剰性能を危険視される……という、まるで初期デュエマを思わせる規制だった。
しかしどんなデッキにでも採用できる類の汎用性はなく、採用率自体はマチマチだったため早めの規制についてはやや予想外という感想が多く持たれた。
とはいえ今後デュエマがさらにインフレが進むのは既定路線であり、■能力を4つ、5つともった2コストウィニーが普通になる日が近い以上早めの制限も妥当だろう。どちらかというとプレイヤーより開発側に嫌われたといえるか。
そもそもインフレに伴い能力が長く、複雑になっていくのはなにもデュエマに限った話ではなく、もし仮にこれが他のTCGであっても似たような結末を辿ったのだろう。
その他
デメリット系の能力を持ったクリーチャーととても相性がいい。
例えばだが「攻撃できない」という能力を持ったクリーチャーはそれと引き換えにその他のボーナス効果を複数備えていることが多いのだ。《冥界の不死帝 ブルース》がわかりやすい。
- 《紅の猛り 天鎖》があると3ターン目に4ドローできるアホみたいな動きができる。
- こういうカードが本当にあったとしたら、キリフダッシュみたいな「■」ではじまらないデザインの能力がもっと増えてたと思う。
- フレーバーテキストを見る限り、もともとは相手が調子に乗って並べたクルーチャーをバニラビートで逆利用することを前提としたデザインだったらしい。もちろんバニラビートでこのカードが採用されることはなかった。
フレーバーテキスト
2016年、年始。常日頃から馬鹿にされてきたバニラたちが一致団結して反撃を開始した。奴らが自慢げに並べる力を逆に利用してこちらの知識に変換するという「■・ブレイン」システムは圧倒的で、一時的ではあるが天下はバニラたちのものとなった。……ちなみに彼らに「ブレイン」の秘儀を提供して火種を煽ったのは、例によってアクアンである。
評価
- 滅茶苦茶綺麗な「殿堂入り」デザインですね…… -- はんむらび (2021-08-20 17:33:07)
- ま、まさかはんむらびさんにコメントいただけるとは……すごい時間をかけて考えた1枚なのでメチャクチャ嬉しいです! 元々はカードパワーのインフレそれ自体に歯止めをかけるにはどういうメタカードを刷ればいいのかって発想からスタートしました。いつごろ刷られるのが妥当かなとか考えるのも難しかったですね…… -- SCA6 (2021-08-20 19:10:33)
最終更新:2021年08月20日 19:10